平成26年(2014年)品川区議会厚生委員会 行政視察


 平成26年(2014年)度の品川区議会厚生委員会の行政視察は、9/2(火)から9/4(木)にかけて、北海道旭川市、札幌市、千歳市を調査しました。以下、順を追って、ご報告いたします。


1.旭川市行政視察-障害者福祉施策調査

 9/2(火)は、羽田空港から旭川市に飛びました。

 空港を降りてから、まず、旭川市の障害者福祉センターおぴったを訪問しました。「おぴった」とはアイヌ語で、「みんな」という意味で、障害者の方と健常者の方がともに交流できる場所、身体機能の訓練、健康増進、レクリエーションなどを総合的に提供できる場所をめざしているのだそうです。

 体育館 プール
おぴった入り口

 この施設は障害者の方たちの強い要望によって、平成14年開館し、平成17年からは指定管理者制度により、市内17の障害者団体が直接運営をしているということでした。

 プール、健康体力チェック室、体育館、調理室などを見て回りました。特にプールは人気で、障害者の方、支援学級、健常者の方が多数利用し、利用料金収入のかなりの部分を占めているのだそうです。

 おぴったは、年間入場者が14万人で横ばいなこと、原発停止による燃料費の高騰が現在の問題だというお話でした。


2.旭川行政視察-健康施策調査

 昼食後、旭川市役所に行き、保健所保健予防課の保健師さんから「健康男子プロジェクト」の事業説明を受けました。

 健康男子プロジェクトは、健康に関心が低いといわれる20~40歳代の成人男子に健康に関心を持ってもらい、健康づくりに積極的に取り組む環境づくりを作ろうという事業だそうです。

 特に力を入れているのがマスメディアを通した情報発信(ラジオやケーブルTV、新聞等で健康男子プロジェクトを取り上げてもらう)、WEBを活用した情報発信(健康男子宣言やサポーターの紹介)、健康男子コンテスト(メタボ改善の取り組みを行った方の発表)で、ゆるく「まず1個から健康管理を」と呼びかけているそうです。


3.札幌市行政視察

 9/3(水)は都市間高速バスあさひかわ号で旭川市から札幌市まで移動しました。到着後、まず札幌市役所を訪れ、厚別区の「あつべつ箱ものプロジェクト」の事業について、説明を受けました。何と市役所の前には、あの札幌時計台がありました。


 北海道でも高齢化は進んでいますが、札幌市のみ高齢者数は増加しており、他の地域はすでに高齢者数は減少に転じているというお話でした。

 「あつべつ箱ものプロジェクト」とは、高齢化の進む札幌市の厚別区において、そこに住む高齢者が入院して自宅に帰ってきてからも、不安なく過ごせるよう、地域における医療介護職が相互理解と連携を深めるためのプロジェクト、なのだそうです。

 厚別区を大きな箱(空間的実態的な場)に見立てて、同じ空間の中で医療職、介護職がみんなで協力しよう!という思いが込められた命名なのだということでした。

 医療・介護連携は社会福祉士などの福祉専門職が中心になって、認知症、介護に関して事例検討会なども積極的に行い、病院職員と介護職員が「顔の見える連携」になるよう、合同勉強会も行ったり、「在宅情報提供書」を作成して、連携したりしているのだそうです。

 過去の厚生委員会の視察でも、地域における医療介護の連携についてはいろいろな先進的取り組みを見てきましたが、この地域では福祉の専門職の方が事業を牽引されているようで、お話を聞いていろいろと勉強になりました。


4.札幌市行政視察-知的障害者アート施設調査

 午後は札幌市西区の知的障害者アートギャラリーである、「ともにアートギャラリー」を訪問しました。たくさんの障害者の方の絵がかざられた、きれいで小さなギャラリーでした。

 そもそもここは、染料会社の社長が篤志家で、自分の会社に知的障害者のための作業所を設けたのが嚆矢なのだそうです。その後、通所施設を運営しながら、障害児のお子さんを持つ銅版画家のご協力をいただき、障害者のための創作活動のプログラムを実施している、と副施設長の方からうかがいました。

 掲げられている絵画もすばらしかったですが、この社長さんの生き方にも感動しました。

 世の中には、人ばかりを頼りにして、「○○は、××に○○してやれ」と自分はいっさい手を汚さず、自腹を切ることもせず、要求ばかりする人も身近にもいますが、この社長のようにもくもくと社会貢献されている人には、こころから拍手を送りたいと思いました。


5.千歳市行政視察

 9月4日(木)は雨の降る中、札幌市から千歳市にJR快速エアポート電車で移動し、千歳市こども通園センターを見学しました。

 まず、センター長の臨床発達心理士・言語聴覚士の方から、説明を受けました。

 千歳市はもともと自衛隊の基地があり、人口比で若年層が多かったそうです。それもあり、「子育てするなら、千歳市」という標語をかかげているのだそうです。

 また、千歳市の元福祉事務所長が、障害児の早期療育は市の単独事業としてでも行うべきだという、極めて先進的な考えの持ち主で、千歳市の療育体制整備にはこの方の功績が大きかったということでした。

 千歳市のこども通園センターは、千歳市内の発達の遅れや弱さを持つ子どもたちや保護者への支援を、センター内で完結できるよう、「こども発達相談室」「指定障害児相談支援事業」「児童発達支援事業」「多機能型支援事業」などを立ち上げ、多職種の専門家がチームでかかわれる施設を目指しているとのことでした。

 千歳市では、個別教育支援計画として、通称「イエローファイル」と呼ばれている、こどもの成長応援ノートを作っています。このファイルには、そのお子さまの幼少時の記録、発達支援計画などさまざまな情報が記載されており、保護者が保育園、幼稚園、小学校などに持参し、情報の共有化をはかり、よりよい教育支援をめざすのだそうです。

 これはとてもよい取り組みで、品川区でも活用できないか、検討すべきだと思いました。



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