2019年度(令和元年度)品川区議会厚生委員会行政視察報告

 
2019年10月28日(月)から10月30日(水)の3日間、品川区議会厚生委員会は兵庫県加古川市、大阪府大阪市、大阪府豊中市、滋賀県栗東市を訪れ、感染症対策、保健衛生検査、障害者対策、高齢者施策について現地調査を行いました。

 私は厚生委員会委員長として、全体の行政視察の責任者として積極的にかかわりました。以下、順を追って、報告いたします。


1.兵庫県加古川市行政視察

 2019年10月28日(月)、品川区議会厚生委員会委員は午前8時55分に品川駅に集合しました。

 東海道新幹線に乗車、兵庫県に向かいました。途中、西明石駅で新幹線からJR明石線に乗り換え、加古川駅で下車しました。駅近くで昼食をとった後、最初の視察地である加古川市の兵庫県立健康科学研究所を訪問しました。

 兵庫県立健康科学研究所は地方衛生研究所の一つであり、検査や試験業務によって、兵庫県の感染症対策、保健衛生行政を支えている検査機関です。

 今回の視察の目的は、2020年の東京オリンピック・パラリンピック大会を控えて、品川区の感染症対策、保健衛生施策を考える上で、その土台となる検査、試験等の現場の業務の実際を体験することでした。

 まず、会議室では私の挨拶の後、大橋秀隆兵庫県立健康科学研究所所長がご挨拶されました。大橋所長は兵庫県立こども病院に小児外科医として勤務されていたそうです。

 次に、秋山由美感染症部長から、兵庫県立健康科学研究所の感染症対策および衛生対策について、兵庫県における感染症の情報発信のシステム、感染症部の検査実施状況をご説明いただきました。

 委員からの質疑応答の後、実際に研究所を視察しました。
 最初に、3階部分の細菌研究、ウイルス研究、形態学的検査、遺伝子検査などが行なわれている、感染症部のエリアを見学しました。

 微生物の同定を行うための、MALDI-TOF MS(マルジトフマス)、次世代シーケンサーやいろいろな病原体の形態を見る共焦点レーザー顕微鏡などの機器を見せていただきました。電顕写真やインフルエンザウイルス、腸管出血性大腸菌などの微生物の検査方法について、具体的に解説していただきました。

 次に1階の健康科学部エリアに移動し、放射線測定機器を見学しました。

 その後、トリプル四重極型液体クロマトグラフ質量分析計を用いた化学物質を分析、同定方法を説明していただきました。

 私も小児科医として、東京都の感染症動向調査には定点医療機関として参加していますが、その感染症患者発生月報や週報の作り方、麻疹ウイルス、風疹ウイルスなどの検体を保健所に提出した後のPCR検査を見学して、大いに勉強になりました。

 兵庫県立健康科学研究所の視察の後は加古川駅に戻り、JR神戸線、関西空港線、阪和線と乗り継いで、大阪に移動し、本日の視察を終えました。


2.大阪府大阪市行政視察

 10月29日(火)は大阪市東住吉区にある、大阪発達総合療育センターを訪れました。

 この施設は、もともと1970年開設の聖母整肢園という脳性麻痺児の入園、通所を行っていた施設でした。その後、肢体不自由児だけでなく、難聴児、重症心身障害児者の診療に加え、訪問診療、訪問介護、発達支援と次々と事業を拡大していき、さまざまな事業所、医療機関を持つ巨大な組織に発展したのでした。

 まず、私の挨拶の後、鈴木恒彦大阪発達総合療育センター長が挨拶されました。鈴木恒彦センター長はこの施設が精力的に実施している、脳性麻痺児に対するボバースメソッドという訓練法に精通された整形外科医です。

 続いて、梶浦正運営局長から、社会福祉法人愛徳福祉会の事業内容についての説明がありました。

 愛徳福祉会は入所サービスとして、医療型障害児入所施設わかば、療養介護フェニックス、通園・通所サービスとして、児童発達支援センターふたば、あさしお園、ゆうなぎ園、児童発達支援事業として、なでしこキッズ、生活介護事業として、なでしこ、医療機関として、南大阪症小児リハビリテーション病院、あさしお診療所を持っているのだそうです。また、スタッフも充実しており、各種の専門家をそろえており、人気も高く、介護士以外は十分な応募もあるのだそうです。

 この施設のスタッフの中にはなんとボッチャの日本代表の選手がいて、職員対抗ボッチャ大会なども行われているそうです。品川区にもボッチャのコロンビアチームが滞在することになっていて、関心が高いことをお話ししました。

 次に船戸正久副センター長から、大阪府内の重症心身障害児者に対する具体的な取り組みについての説明がありました。船戸副センター長は長らく淀川キリスト教病院で新生児医療に従事されてきた、小児科医です。

 その後、施設の見学をさせていただきました。私と船戸副センター長は新生児科医として活動している時期が重なっており、船戸先生の活動を良く存じ上げていたため話が弾み、とても密度の濃い会話ができました。

 充実した施設内容と豊かで多岐にわたる事業、やる気のある素晴らしいスタッフ、このような子どもと障害児のための巨大な療育センターが品川区にもぜひほしいと強く思いました。



3.大阪府豊岡市視察
 
 10月29日午前中の大阪発達総合療育センターの視察が終わった後、鶴ヶ丘駅近くで昼食を取りました。そして再び、JR阪和線、大阪環状線、宝塚線を乗り継いで、伊丹駅からタクシーで豊中市に入り、次の視察地である「みずほおおぞら」を訪問しました。

 会議室では私の挨拶の後、豊中市福祉部障害福祉部主幹で障害福祉センターひまわりの畑一朗所長から、まず豊中市の地域生活支援拠点等整備事業についての事業説明を受けました。

 豊中市立みずほおおぞら園の閉園に伴い、豊中市は大阪府社会福祉事業団に委託し、民設民営の障害者支援事業と高齢者支援事業を合わせ持つ、多機能拠点型施設を作りました。

 施設の建物は3階建てで、1階は障害者の就労支援A型、B型、生活介護、相談事業など、障害者の日中活動の場を提供し、2階部分は入所、短期入所など障害者の暮らしの場を提供します。
 3階は地域密着型特別養護老人ホームとして、高齢者の生活の場を提供しています。

 しかし、説明を聞く限り、1~2階の障害者エリアと3階の高齢者エリアが密に交流している、というような動きはないようでした。

 さらに、みずほおおぞらでは職員の方が輪番制で夜間、土日も電話対応を行っているそうです。

 相談事業も、豊中市の9つある委託相談支援事業所の一つとして、計画相談、地域移行相談支援、地域定着支援を行っているそうです。

 説明の後、謝世業みずほおぞら所長のご案内で、施設内を見学させていただきました。施設全体が職員の方が制作された、ハロウィーンを始めとする院内装飾で飾られており、心温まる施設だという印象を受けました。

 視察の後は伊丹駅に戻り、JR宝塚線、神戸線を乗り継ぎ、滋賀県の栗東駅まで移動し、10月29日の視察を終えました。


4.滋賀県栗東市行政視察

 10月30日(水)は、行政視察も最終日となりました。
 ホテルで朝食をとった後、栗東市立ひだまりの家を訪問しました。栗東市は駅を中心に新しいマンションが林立しており、駅前の雰囲気が東武東上線の沿線の新興住宅地、たとえばみずほ台駅などに酷似していました。

 施設について、まず会議室で事業説明を受けました。冒頭、栗東市議会の田中英樹副議長が来所され、ご挨拶されました。

 その後、栗東市長寿福祉課の松本正人課長から、住民主体の介護予防についての取り組みとしていきいき百歳体操の説明をお聞きしました。今回は高齢者対策で栗東市にお邪魔しましたが、栗東市は現在、京阪神のベッドタウンとして発展しており、人口は増加し、高齢化率は高くないのだそうです。

 この「いきいき百歳体操」は、 もともと高知市が行っていたものを平成21年に栗東市が取り入れ、普及啓発をはかったものだそうです。
 
 市の関わりとしては、啓発用のDVDを市で製作し配布していること、住民が体操を始めるときに市職員が対応し援助すること、手につける運動用のおもりを市が貸し出すこと、保健師など市の専門職が1年に1回継続支援の援助することを行っているそうです。

 ただし、基本的には住民が自主的に近くの公民館などに集まり、いきいき百歳体操を行います。令和元年10月現在で、約75団体、約1300人が体操を続けているというお話しでした。

 年齢に関係なく、筋力は向上することと、体操の実践を通じて住民同士の交流にもなっているというご説明でした。素晴らしい取り組みだと思いました。

 説明の後、いきいき百歳体操のプロモーションビデオが上映されました。私としては、ぜひ百歳ビデオを参考に実践してみたいと思いましたが、残念ながら実際の体操ビデオではなく、住民の方の活動記録やインタビューでした。(これはこれで参考になりましたが…)

 ビデオ視聴の後、栗東市の介護予防施策について、担当の方と質疑が行われました。

 最後に、交流施設ひだまりの家の施設見学を行い、その後市の職員の方に栗東駅まで送迎していただきました。

 全ての日程が終了したので、栗東駅で視察団は解散しました。私はとんぼ返りに東京に戻り、午後の診療を木村先生と行いました。


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