2020年7月のコロナ-2

Ⅱ 今回の流行の特徴-新型コロナウイルス感染症の軽症化


 今回我が国で広がっている新型コロナウイルスの新宿発第3波(マスコミのいう第2波)流行を、欧州発ウイルスの第2波(マスコミのいう第1波)と対比しながら、検証します。

①PCR検査陽性者(マスコミのいう「感染者」)の意味

 第一に、PCR検査陽性者数を比較してみます。まず、PCR検査陽性者は患者ではありません。あくまで、SARS-CoV-2の遺伝子断片を体液中に持っていたという人を意味します。

 このPCR検査陽性者には次の4群の人が含まれています。

①発熱、咳、鼻、下痢、嗅覚味覚障害などの症状を有する、本当の意味の新型コロナウイルス感染症の「患者」
②元気溌剌で何の症状も無く、ただウイルスを身体に持っているだけの、健康な「無症状保菌者」、(ほとんどの今回の検査陽性者は、この人達です。)
③すでに感染は治癒したのに、PCR検査の陽性のみが続いている、「元患者」(発症後1週間立てば、SARS-CoV-2の感染力はなくなりますが、PCR検査は、しばしば2週間~1ヶ月ぐらい陽性が続く例もあるようです。)、
④本当はSARS-CoV-2に感染していないのに、PCRが陽性となり、患者扱いされている「ニセ陽性者=実は感染していない健康人」(PCR検査の特異度を99%とすると、10万人検査すると1000人はこの無実の犠牲者=偽陽性の感染者が出てしまいます)そして検査数が増えれば増えるほど、間違って陽性とされた冤罪被害者は増えていきます。

 これらの人々の集合が、PCR検査陽性者、今マスコミが馬鹿騒ぎしているところの「感染者」数となります。


②PCR検査陽性者(マスコミのいう「感染者」)の現在の推移

 マスコミの馬鹿騒ぎ「感染者」数は、実は日本全国でも、東京でもすでにピークは過ぎ、減少を始めています。
 また、PCR検査の実施数も減少してきています。(基本的に患者や疑わしい人が減れば、検査数も減少するのは当たり前です。)
 狂騒マスコミはまだ未練がましく、「いや、まだピークが過ぎたか分からない。」「重症者数は減っていないから、まだ大騒ぎさせて。」と相変わらず、騒ぎネタを探して、必死のようです。それでは、重症者についても見ていきましょう。

*ただし、世田谷区の馬鹿げた愚策のように、意味の無いPCR検査の大盤振る舞いを行うパフォーマンス首長やソフトバンクのような企業が出てくれば、検査数は人為的に増加する可能性もあります。(「世田谷方式」についての当クリニックの見解は、こちらもご覧ください→今週のお知らせ

*当クリニックの引用するデータは、以下のサイトから引用、転載したものです。

 1.厚労省の新型コロナウイルス感染症について
 2.東洋経済オンライン:新型コロナウイルス国内感染の状況(荻原和樹)…最も詳細正確なデータです。PCR検査陽性者をきちんとPCR検査陽性者と記しており、信頼できます。
 3.worldometers.COVID-19 Coronavirus Pandemic
 4.人口あたりの新型コロナウイルス感染者数の推移【国別】、人口あたりの新型コロナウイルス死者数の推移【国別】(札幌医大)

 PCR検査陽性者数(日本全国)1 日本全国でもPCR検査陽性者は明らかに減少しています。
 
 PCR検査実施数(日本全国)1 PCR検査の実施数も減少しています。8/23の時点で累計166万件の検査が行われています。
 
 PCR検査陽性者数(asahi.comから一部抜粋) 東京都でもPCR検査陽性者は8月1日をピークに減少しています 


③新型コロナウイルス感染症の重症者、死亡者の意味と傾向


 新型コロナウイルス感染症が検査陽性者が何人いても、それだけでは問題にはなりません。なぜなら、元気な溌剌、ピンピンした健康保菌者(無症状PCR検査陽性者)は治療の対象にならないし、そもそも病気ですら無いからです。彼らは自宅で静養していれば十分だし、家族にうつっても家でおとなしくしていれば、1週間で治ってしまうのです。

 そして、今回の「マスコミの騒ぐ、第2波」(実は第3波。新宿発の6-7月の流行)では、ほとんどがこの元気な健康保菌者でした。そして、1回2万円弱の高額な費用をかけて、湯水のように税金を浪費し、治療の対象でも何でも無い、この健康保菌者を大量に拾い上げては、差別、迫害の対象としているのが、現在の我が国の狂騒マスコミと素直に洗脳されているワイドショウ馬鹿(ワイドショウのデマ情報を素直に信じる情報弱者)、最近では保坂某です。

 これは、無症候性インフルエンザ感染者や病原性大腸菌保菌者でも同じことです。保菌者は感染予防に注意は必要ですが、生活は基本的に普段通りでかまわないし、治療の必要はないのです。

 繰り返しますが、このような健康人に対するむやみに拡大されたPCR検査の乱用は、健康人を恐ろしい疫病の病人に仕立て上げ、医療現場を混乱させ、こどもと親を孤立化させ、正常な愛情に包まれた密な子どもの成長の機会を奪い、マスコミの「視聴率」という営利商売の絶好の餌食として、ワイドショウに洗脳されたワイドショウ馬鹿による差別や偏見の対象にされるという、全く愚かな結果を現実に生み出しているのです。

 では、何を問題にしたらよいのでしょうか。それは、保坂サンや某政党の方には何回言っても理解不能のようですが、医療関係者では自明の事である、症状を持つ患者数、特に重症の患者数死亡者数こそが問題とされるパラメータなのです。

 まず、今回の新型コロナウイルス感染症の流行全体を鳥瞰するために、季節型インフルエンザを取り上げます。やれ「コロナで重症者が2人増えた。大変だあ。」とか、「死者が6人が18人に3倍増えた。大変だあ。」とか、「ついに死者全体が1000人越した。大変だあ。」とか、マスコミに煽動されるがままに、脅え、あせりまくるワイドショウ馬鹿になる必要はありません。他の疾患の流行のデータや流行の歴史を学び、対比しながら今回の新型コロナウイルス感染症を見つめ直すことが大切です。

 まず今回の新型コロナウイルス感染症COVID-19流行の全体像を、感染症の王様である季節性インフルエンザ感染症と比較しながら、把握していきましょう。

 下図は左は、インフルエンザ感染症の患者数、右側はインフルエンザの直接的死亡者数(茶色)(死因は肺炎とされていますが、インフルエンザと関連あると考えられる超過死亡者数は含まれていません)を示します。

季節型インフルエンザは1000万人が罹患します ウェザーニュース 季節型インフルエンザは年間2000~3000人は死亡しています プレシデント

 インフルエンザは1シーズンに800万人から1500万人が罹患し(ちなみに新型コロナウイルス感染症は、健康なPCR検査陽性者を合わせても、現在7万人弱です)、毎年1000~3000人の死亡者がでています。2018年のシーズンの死者は3325人でした。(ちなみに新型コロナウイルス感染症は、今年の2月からの流行の総計で1225人です。)

 たしかに、山中教授のいうように無策で10万人も死者が出れば、恐ろしい立派な指定感染症となりますが、現在の新型コロナウイルス感染症の死亡者数は1000人ほどです。(付け加えれば、暗黒勢力の妨害でHPVワクチンの勧奨が止まっている、子宮頸がんの年間死亡者は3000人を越えています。)

 アメリカで、現在COVID-19が大流行していますが、実は昨年2019年10月から2020年2月にかけては、B型インフルエンザ感染症が大流行し、アメリカ疾病管理センター(CDC)によれば、2019年10月1日~2020年2月1日に、アメリカ国内で合計2200万~3100万人がインフルエンザに罹患し、21万~37万の人が入院し、1万2000~3万人の人が死亡したと推定しています(くわしくはこちら)。ちなみに同時期の我が国のインフルエンザ流行は、罹患者は730万人、死亡者は3325人でした。

 「アメリカでは今、インフルエンザで何万人も死んでいる。ロックダウンだ!非常事態だ!」などと、ワイドショウは馬鹿騒ぎしたでしょうか。インフルエンザは営利企業のマスコミ業界にとって、おいしいネタでは無かったのです。(たくさん死亡者が出ても、ニュースにならない。)このころすでに登場していた、新鮮でおいしいネタである武漢肺炎コロナに食いついて騒いでおり、インフルエンザなどには見向きもしませんでした。

 今回の新型コロナ騒動でも、とかく「アメリカでは~、ニューヨークでは~」とか「イギリスは~」、「ドイツでは~」などと白人目線で我が国をさげすむ、外見はアジア人だが中身は白人マインドのバナナ人種、よく分からないのですが、何故か自分はえらいと本人だけは信じている、「出羽守」と馬鹿にされている、アサヒ好みの滑稽なクラウンどもが騒々しく登場し、戯言を撒き散らしています。本人だけは素晴らしいと思っているらしい、全く条件の異なる外国との比較は無意味なだけです。

 例えば、アメリカやヨーロッパでは、こどもが多数川崎病類似の重病になっているから日本のこどもも危ない、といった類いの脅しもその一つです。この欧米の報告例については、日本川崎病学会が調査して、我が国では見られないと報告しています。(川崎病学会の声明はこちら。)

 次にワイドショウの最後の砦=今回の新型コロナウイルス感染症の入院数、重症者数の推移を見ていきましょう。

 池田正行医師の精力的な労作があるので、 池田先生の著作も参考にしながら、第2波の欧州発流行(3-5月)と、今回の新宿発流行(6-8月)を、PCR検査陽性者数、入院者数、重症者数、退院者数、退院入院者数比、 死亡者数の各項目で比較してみます。
       
指標 4/2 5/2 増加数 対PCR
陽性者数
7/10 8/10 増加数 対PCR
陽性者数
PCR陽性者数 2601 15053 12452 21107 49387 28280
入院患者数 1980 11724 9744 78.3% 2139 13724 11585 41.0%
重症者数 64 321 257 2.1% 33 171 138 0.5%
退院者数 489 4194 3705 29.8% 17633 33722 16089 56.9%
退院/入院比 0.38 1.39
死亡者数 60 458 398 3.2% 981 1051 70 0.2%
池田正行氏作成図表より

①PCR検査陽性者(全国)



 
 第2波(黄色)のピークは、4/10の709人。第3波(緑色)のピークは、8/5の1597人。それ以降はゆるやかに減少しています。このPCR検査陽性者=「感染者」は、無症状の保菌者と患者(発症者)の合算です。

 ちなみに同時期のPCR検査施行数(下図)は、大体1日20000件ぐらいで、最大55000件となります。したがって、25000件ぐらい検査をして、検査陽性が1200~1400件ということになります。




②入院数(全国)



 PCR検査陽性者は指定感染症(二類扱い)のため、原則入院となります。第2波(黄色)の時は、入院患者が多く、しかも重症が多く、病棟は逼迫しました。

 COVID-19の入院患者のピークは、4/11の688人でしたが、重症患者が多く、長期の治療が必要なため、退院は1ヶ月後ぐらいからようやく増えています。(退院まで1ヶ月近くかかっています。また、死亡退院も見られました)

 第3波(緑色)は軽症が圧倒的で、宿泊療養、自宅療養に回る人も多く、8/2の955人がピークで、しかも速やかに退院ラッシュが始まっています。 退院基準が変更されたこと(①発症日から10日間(前は14日間)を経過し、かつ、症状軽快後72時間経過した場合に退院可能と4日間短縮された。②症状軽快後24時間経過した後、24時間以上の間隔をあけて2回PCR検査陰性を確認できれば、退院可能は変更無し。)も影響していると思われますが、主な原因は症状が軽く、早期に退院する人が多いためです。

 入院数/PCR検査陽性者の割合は、第2波(欧州発、黄色)では78.3%であったのに対し、第3波(新宿発、緑色)では41.0%にすぎず、入院が必要ない軽症者が激増していることをうかがわせます。


③重症者(全国)



 マスコミが「感染者数」をあげつらい、相変わらず大騒ぎを繰り広げていますが、無症状の健康な陽性者は全く問題にする必要はありません。(そもそも治療をしなくても、治ってしまいます。)
 問題なのは、症状のある患者、特に発症して1週間後ぐらいから重症化する重症患者であり、この重症者の数を減らし、軽快退院させること、さらに急性呼吸窮迫症候群(ARDS)や多臓器不全で死亡する患者を減らすことが最重要の治療戦略となります。

 最重症患者の行われる、体外式膜型人工肺(エクモ)の装着数は、日本集中治療学会の「日本COVID-19対策ECMOnet」のHPで公開されています。(国内COVID-19におけるECMO治療の成績累計

 

 日本COVID-19対策ECMOnet代表武田晋浩先生に転載のご承諾をいただいたので、「国内のCOVID-19におけるECMO治療の成績累計」の図を転載いたします(赤はECMO実施中、黒は死亡者、青はECMO離脱者数です)。

 COVID-19患者に対するエクモの使用は、2/9ごろから始まり、4月に入り大幅に増加、4/24が58例でピークとなっています。その後エクモは減少し、7月上旬はほぼ0に近づきましたが、7/30ころから再び使用が増加し、8/26現在、23台のエクモが稼働している状況です。それでも、第2波に比べると、稼働数は半分以下の状態です。

 また、同国内COVID-19におけるECMO治療の成績累計から、「国内のCOVID-19重症患者に対する、国内のCOVID-19における人工呼吸治療(ECMO除く)の成績累計」を転載いたします(赤は人工呼吸実施中、黒は死亡数、青は軽快数です)。

 人工呼吸器の装着数(ECMO症例含む含む)の推移です。COVID-19では呼吸不全が続き、人工呼吸器の使用も長期になる患者さんが多いようです。


 
 人工呼吸器の施行数も4月に入り増加し、4/21に213例でピークとなっています。その後は減少し、50例ぐらいで横ばいで続いていました。なかなか呼吸状態が良くならない、患者が多かったようです。ところが、新宿発の第3波の流行に伴い、7/25ごろから再び人工呼吸器を使用する患者増えだして、8/26現在人工呼器吸は169例で施行されています。しかし、それでも第2波の8割ぐらいです。

 重症者数については、欧州発第2波(3-5月)ではピークは4/15の25人、4/30以降は重症者数はマイナスになっています。第3波(緑色)の流行に伴い、7/12ごろから重症者がまだ増加し始めましたが、8/12の26人をピークに8/24にはマイナスに転じています。
4/15のPCR検査実施数は8255件、検査陽性者は511人でした。そして、8/12のPCR検査実施数は3倍の25782件、PCR検査陽性者も2倍の969人でしたが、エクモ装着数、人工呼吸施行数、重症者数のいずれも第3波で増加していません。


④死亡者(全国)



 最後に死亡者数の推移を見てみます。
 第2波流行での死亡者のピークは5/8の49人で、7月に入ると死亡はほとんど見られませんでした。ところが、第3波の流行(緑色)に伴い、7/30ごろから増え始め、8/17、8/19は16人、8/26は17人となり、高止まりが続いています。8/12に重症者数がピークだとすると、2週間後が8/26となります。死亡者数は今がピークで、9月にはいれば、減少してくるものと思われます。


 上の図は厚労省HP東洋経済オンライン:新型コロナウイルス国内感染の状況(荻原和樹)国内COVID-19におけるECMO治療の成績累計から転載しました。

 以上見てきたように、第2波(欧州発)と比較して第3波(新宿発)はPCR検査陽性者は3倍近くも増えているのに、症状を持つ患者数、特に重症の患者数死亡者数も全て第2波を下回り、しかも患者数、死亡者数の減少が始まっている、すなわち流行は軽症化しつつ、終息に向かっていることは明らかです。

⑤実効再生産数

 「1人の感染者が、平均して何人に感染させるか」を表す指標で、この数字が高いほど、「感染が急速に拡大している」ことを意味し、逆に1未満では、「感染が収束しつつある」ことを意味します。

 8/11から、実行再生産数は1.0以下が続いています。すなわち、この指数も、今回の新宿発の第3波が終息に向かっていることを示しているのです。