HPVワクチンについて-第2編   シルガード9の登場       2021.4.5更新



目次

Ⅴ.HPVワクチン 更新

  ①ガーダシル
  ②サーバリックス
  ③シルガード9
  ④HPVワクチンの効果
  ⑤HPVワクチンと多様な痛みの関係について

Ⅵ.その後の情勢



Ⅴ.HPVワクチン 更新

 2021年4月現在、わが国では承認されたHPVワクチンは、4価のガーダシル、2価のサーバリックス、9価のシルガード9の3種類となりました。ガーダシル、サーバリックスは、現在、未だに残念ながら勧奨停止のままですが、定期接種として無料で接種はできます。

 アメリカ、オーストラリアなどをはじめ、全世界では9価のHPVワクチン=シルガード9が接種されています。シルガード9はほとんどの発がん性HPVの感染を阻止できる、すばらしいワクチンです。我が国でも2020年7月21日に薬事承認されたにもかかわらず、脅える厚労省の役人のサボタージュによって、接種できない異常な状態が続いていましたが、ようやく、2021年2月24日に正式に発売となりました。

 邪悪なワクチン反対派が跋扈し、ワクチン推進を訴える良心的な医療者に対し、さまざまな嫌がらせ、妨害、脅迫的言動が繰り返され、日本の子どもたちが恐ろしい感染症の犠牲になっていた、かつての「ワクチン冬の時代」が残念ながら、今なお残存し、継続しています。

 ワクチン反対カルト集団と、その同伴者である従僕マスコミお太鼓左翼記者どもの妨害と脅迫と圧迫のために、我が国だけが世界の趨勢から取り残され、世界中でただ一国、日本の若い女性だけが悲惨な子宮頸がんで苦しみ、命を奪われていく、この悲しむべき地獄絵図を、
残念ながら我々良心的ワクチン推進医療者は未だに打ち破ることができず、若い女性を業病の救い出すことができないのは、切歯扼腕する思いです。



ガーダシル(4価ワクチン=組換え沈降4価ヒトパピローマウイルス様粒子ワクチン)

●予防接種の内容
 

 子宮頸がんの主要な発がんウイルスである、ヒトパピローマウイルス(HPV)16型、18型に、 外性器にいぼができる「尖圭(せんけい)コンジローマ」などの原因となるHPV6型、11型の4つのHPVの感染を予防する、4価の不活化ワクチンです。

 ガーダシルにはアジュバンドとして、アルミニウム塩(アルミニウムヒドロキシホスフェイト)が使用されています。

 2013年4月より、定期接種になりましたが、現在も積極的な勧奨は停止されたまま放置されており、保健所から予診票は送付されてきません。

  *品川区では、2020年8月下旬からHPVワクチンのお知らせが配布されるようになりました。2021年3月12日には、中学1年生~新高校1年生の約5000人の家庭に、厚労省リーフレットが情報提供として配布されました。また、3月26日には新小学校6年生約1400人の家庭に同じリーフレットが配布されました。(詳細は後述

 
HPVワクチンは定期接種です。予防接種法に基づく接種として、接種費用を負担することなく、受けることができるのです。お子さまを悲惨な「マザーキラー」子宮頸がんから守るため、当クリニックは品川区の小学校6年生から高校1年生の全てのご家庭に、HPVワクチンを接種することを強く呼びかけたいと思います!

●予防する病気

 子宮頸がんを引き起こす、発がん性高リスク型ヒトパピローマウイルス(HPV)のうち、HPV16型、18型の感染を予防します。

 また、尖圭(せんけい)コンジローマは性交で感染し、外性器、肛門周囲に1~3mmぐらいの球形~カリフラワー状のいぼ(乳頭腫)が次々とできる性感染症です。性器いぼとも呼ばれます。命に別状はありませんが、難治性で再発を繰り返すやっかいな病気です。

 原因ウイルスは主にHPV6型、11型です。HPV6型、11型は尖圭コンジローマの原因にはなりますが、子宮頚がんを起こすことはなく、また尖圭コンジローマも生命に危険が及ぶことはありません。そのため、これらのウイルスは、低リスク型HPVと呼ばれます。

 ガーダシルは、尖圭コンジローマ(性器いぼ)を99%予防したと報告されています。したがって、アメリカなどでは肛門がんにも有効なため、男性にも接種が行われています。ようやく2020年12月、我が国でも、男性にもHPVワクチンの接種を拡大されました。(詳細後述

 また、ガーダシルは出生時に生まれてくる赤ちゃんが、産道でHPVに感染して、出生後に(赤ちゃんの)喉にいぼができて、重い呼吸困難を繰り返す「再発性呼吸器乳頭腫症」という、稀ですが非常に重い病気の発生も防ぎます。

●接種の方法

 9歳以上の女性が対象で、計3回、上腕三角筋に筋肉注射をします。1回目の注射の後、2ヶ月後に第2回めの注射、さらに4ヵ月後に第3回目の注射をします。

 日本小児科関係学会もまた、中学1年女子に定期接種として、接種を勧めています。(小児科学会の声明外来小児科学会の声明小児科医会の要望



サーバリックス(2価ワクチン=組換え沈降2価ヒトパピローマウイルス様粒子ワクチン)

●予防接種の内容

 子宮頸がんの主要な発がんウイルスである、ヒトパピローマウイルス(HPV)16型、18型の感染を予防する、2価の不活化ワクチンです。

●予防する病気

 ヒトパピローマウイルス16型、18型(HPV)のヒトへの感染を防ぎます。

 サーバリックスにアジュバンドとして使用されている、AS04アジュバンド複合体には、水酸化アルミニウム塩とモノホスホリルリピッド(MPL)が含まれ、ワクチンを接種した場所に抗原を長く留めたり、抗原認識細胞を刺激し活性化を高めたりして、少ない抗原量で免疫を高める働きがあります。

●接種の方法

 10歳以上の女性が対象です。1回目の接種の後、1ヶ月後に第2回めの接種、さらに5ヵ月後に追加接種を、左右交互に上腕三角筋に筋肉注射します。(計3回接種します)

 *多くの小児科医、産科医の啓発活動と子宮頸がん予防に正しい理解を持つ保護者の増加によって、HPVワクチンの接種数が大幅に増えたため、サーバリックスは2020年10月から出荷数の調整が行われることになりました。(→製造会社の医療関係者への連絡はこちら



シルガード9(9価ワクチン=組換え沈降9価ヒトパピローマウイルス様粒子ワクチン)

●予防接種の内容

 2020年7月21日に薬事承認され(報道はこちら)、2021年2月24日にようやく発売となりました(報道はこちら)。当クリニックでも3月30日(火)に第1回目の接種を行いました。
(写真はMSD;「適正接種の手引き」から)

 子宮頸がんの原因ウイルスの約90%をしめている、ヒトパピローマウイルス(HPV)16型、18型、31型、33型、45型、52型、58型の高リスク型の7種類と、尖圭コンジローマの原因ウイルスの90%を占めている、HPV6型、11型の低リスク型の2種類、合わせて9種類のHPVに対応した9価組み替え不活化ワクチンです。

 アジュバント(免疫賦活剤)を含んでいます。アメリカ産のワクチンで、現在世界でのシェアは第1位です。
 

 ガーダシル(4価)がHPV16型、18型の2種類の高リスク型HPVを含有し、子宮頸がんの60~70%の発病を防ぐのに対し、シルガード9(9価)は7種類の高リスク型HPV(16、18、31、33、45、52、58型)を含むため、子宮頸がんの約90%の発病を予防できると報告されています。

 ちなみに我が国のがん研有明病院のホームページでは、「HPV52型、58型は欧米の報告ではがんから見つかることが少ないとされ、あまり注目されていません。しかし、日本ではHPV52型、58型ががん組織から高率に見つかる傾向があり、私たちはこれらHPV52型、58型を高危険型HPVと考えています。」と記載があります。シルガード9はこれらのHPV52型58型にも対応しています。

 また、最近発表されたWHOのPosition Paper(声明書)では、9~14歳の女児に対しては、2回接種(0ヶ月、6ヶ月の2回)で十分な効果が期待できる、と報告されました。15歳以上については、従来通り3回接種が勧められています。

●予防する病気

 子宮頸がんを引き起こす発がん性高リスク型ヒトパピローマウイルス(HPV)のうち、HPV16型、18型、31型、33型、45型、52型、58型の感染を予防します。 子宮頸がんの発病の90%近くを予防できることになります。(HPV52/58型は、アジア人に特に多いと言われています。)

 すでにHPVワクチンの接種を公的接種として行っているオーストラリアでは子宮頸がんの発病は激減しており、2028年までに子宮頸がんの診断を受ける女性が10万人あたりに4例未満(ちなみに我が国は16例)まで減り、2066年には10万人あたり1例未満と、先進国の中で最初に子宮頸がんという病気を制圧する国になると言われています(Lancetの論文はこちら。横浜市大産婦人科による日本語訳と解説はこちら)。



 The projected timeframe until cervical cancer elimination in Australia: a modelling study Hall MT et al. Lancet Public Health. 2018 Oct 1.   (Lancetの原著です。)

 また、シルガード9は、低リスク型HPV6型、11型の感染を防ぎ、尖圭コンジローマの発病を予防します。


 HPV16、18、31、33、45、52、58型は、子宮頸がん以外にも、外陰部がん、膣がん、肛門がんなどの原因と報告されており、男性においては、中咽頭がんや頭頚部がんの原因としても、近年注目を集めているのです。(そのため、HPVワクチンは男性にも接種が始まっており、我が国でも2020年12月24日に、やっと4価HPVワクチンが男性にも接種適応が拡大されました。詳しくは後述)

●接種の方法

 9歳以上の女性が対象で、計3回、上腕三角筋に0.5ml 筋肉注射で接種します。1回目の注射の後、2ヶ月後に第2回めの注射、さらに4ヵ月後に第3回目の注射を行います。(ガーダシルの改良型なので、基本ガーダシルと同じです。)
 
 ただし、ガーダシルとシルガード9を比べれば、当たり前ですが、ガーダシルをバージョンアップしたシルガード9の方が圧倒的に優れています。
 2013年に小児用肺炎球菌ワクチンが、旧式の7価プレベナーから13価プレベナーにバージョンアップしたときは、7価の旧ワクチンから新発売の13価ワクチンにスムーズに切り替えが行われました。(当時の説明はこちら

 なるべく早く、4価HPVワクチンから9価HPVワクチンに定期接種を切り替えなければなりません。なぜ小児用肺炎球菌ワクチンではできて、HPVワクチンではできないのでしょうか。厚労省の役人は何を脅え、誰の顔色を窺っているのでしょうか。

 「産婦人科診療ガイドライン婦人科外来編2020」によれば、HPVワクチン接種が最も強く推奨されるのは、10~14歳女性、次に15~26歳女性で、さらに次が27~47歳女性となっています。

 したがって、12~15歳女性は定期接種年齢のため、当面ガーダシル接種を行いましょう。その上の高校2年生から26歳女性には、当クリニックはシルガード9の接種を強くお勧めいたします。また、47歳未満の保護者の方も、もしもご希望があれば、当クリニックではシルガード9の接種を行います。

 シルガード9は、定期接種ではなく、任意接種のため、接種費用が当クリニックでは3回で75000円(25000円×3回)かかります。

 また、強化安全監視活動という厚労省の命令により、接種を受けるためには、接種希望者はスマホから「ワクチンQダイアリー」というサイトに事前登録が必要となります。接種ご希望の方は、まずクリニック受付にお問い合わせください。詳しくご説明いたします。

●接種の流れ

 ①接種希望の人(患者)は、クリニック受付に電話します。受付で仮の予約後、接種の流れについてご説明いたします。

 ②それから、患者さんはご自身で自分のスマホからシルガード9サポートシステム「ワクチンQダイアリー」にアクセスします。この「ワクチンQダイアリー」は、予診票(シルガード9接種記録)、通知一覧、日程確認の機能をもっています。

 ③まず、接種希望者は「ワクチンQダイアリー」にご自身の基本情報を登録します。それから、「予診票」を選択し、予診票の質問に回答します。

 ④予約してある接種当日に来院し、クリニック診察室で医師が登録してある、接種医用システム「HPV全例登録」から、「ワクチンQダイアリー」上で希望者の接種登録を確認するために、「ワクチンQダイアリー」上の予診票の閲覧申請を医師が「HPV全例登録」から行います。接種希望者が「ワクチンQダイアリー」上で医師の閲覧申請へ同意すると、医師は接種希望者の予診票を「HPV全例登録」で確認します。その後、紙の予診票をもとに、接種前診察を行います。

 ➄
やっと、シルガード9を上腕三頭筋に筋肉注射します。接種後30分は、別室で様子を見ます。(接種については、ガーダシルと全く同じです。)

 ⑥医師は接種後の情報を「HPV全例登録」に入力します。接種希望者は接種が終わった後、予約をクリニックで行い、次回接種予定日を「ワクチンQダイアリー」に入力します。接種医が次回接種予定日を「HPV全例登録」に登録して、長い長い接種タイムは終了します。しかし、ほとんどはコンピュータ操作の時間です。

 ⑦接種後、30分間特に異常が認められなければ、帰宅します。接種当日は、激しい運動(+成人は深酒)は控えます。


            ワクチンダイアリーの操作手順(Welby)




HPVワクチンの効果

 HPVワクチンがHPV感染を予防すること、前がん状態(高度異形成)への進展を予防することは、すでに多数の報告が行われています。(本編HPVワクチンの効果参照)

 しかし、HPVワクチンが子宮頸がん(浸潤がん)発症予防に有効だという、報告はありませんでした。そのために、HPVワクチン反対カルトはしきりに「危険な子宮頸がんワクチンが、子宮頸がんに効果があるという実証されたデータはありません!」と声を大にしてHPVワクチンを罵倒し、否定してきたのです。

 しかし、HPVワクチンは登場してまだ10年余しか経過していませんでした。子宮頸がんは、必ず前がん病変を経て浸潤がんへと進展していくことから、HPVワクチンを接種した女性にワクチンの効果があったのかどうかを検証するには、10年以上の歳月が必要でした。

 そして、HPVワクチンが大規模に接種され始めて10年以上が経過し、いよいよHPV接種によって、前がん状態の減少だけでなく、浸潤がん(子宮頸がん)そのものも減少したという報告が、次々と発表され始めたのです。

1)HPVワクチンの浸潤がんに対する効果(フィンランド)


フィンランドでは、3つの臨床試験のワクチン接種者と非接種者のその後の浸潤がんの発病率を、2007年~2015年の7年間で比べました。その結果は、HPVに関連のない浸潤がんの罹患率は、ワクチン接種の有無で差がありませんでした。

 それに対し、HPVに関連した浸潤がんの発生は、子宮頸がん、外陰部がん、口腔咽頭がんにおいては、HPV非接種群では発病者が出たのに対し、HPV接種群では認めなかったと報告されました。(論文はこちら

 Vaccination protects against invasive HPV‐associated cancers . T.Luostarinen et al:Int J Cancer.2017.


2)HPVワクチンの浸潤がんに対する効果(スウェーデン)

●スエーデンから150万人以上の大規模集団に対するHPVワクチンの効果を調べた、決定的な研究結果が報告されました。

 HPV Vaccination and the Risk of Invasive Cervical Cancer.J.Lei et al:N Engl J Med 2020;383:1340-8. 

 スエーデン・Karolinska Institutetの研究は、スエーデンの住民登録データやワクチン接種登録データなどを用いて、ワクチン接種を受けた女性と受けていない女性の子宮頸がん(浸潤がん)の発生率を調べたものです。

 2006年~2017年に10~30歳だった女性167万2983人(研究期間中に、4価HPVワクチンを少なくとも1回接種した女性は52万7871人、全く接種しなかった女性は、114万5112例。)が31歳になるまでに、子宮頸がんを発症した頻度を追跡調査しました。

 調査終了時に、4価HPVワクチンを接種した女性19人と、接種していなかった女性538人が、子宮頸がんと診断されていました。これは、ワクチン接種群の10万人、年あたりの累積発症者率が47例であったのに対し、ワクチン非接種群では94例でした。(下図。Medical Tribune2020.11.5より転載)

 この結果は、HPVワクチン接種によって、子宮頸がん発生率が63%減少した事を示しました。

 さらに詳細は検討では、子宮頸がん発生率は、17歳になる前にワクチンを接種した人々で最も低値でした。

 17歳未満でワクチン接種を受けた女性の子宮頸がんの劇的な減少は、学校でのHPV予防接種プログラムの有用性を明確に示している、と論文ではコメントされています。

 HPVワクチンがすべてのHPV株を予防できるわけではないので、ワクチンを接種している女性にとっても、子宮頸がん検診はいまだ重要な意味を持っている。とも論文では述べられています。(原著論文はこちら。日本語訳の解説はこちら。)

 日本婦人科腫瘍学会も2020年10月7日、 「HPVワクチンによる子宮頸癌の発生リスク減少を示す新たなエビデンスについて」という通達を発表し、
 本研究結果は、HPVワクチンによって子宮頸癌の発生リスクが劇的に減少することを科学的に証明したエビデンスと言えます。会員の皆様には、本論文をご高覧いただき、HPVワクチンの啓発にお役立ていただきたくお願い申し上げます。
と、HPVワクチン接種の啓発を進めるよう、学会会員に奮起を促しています。

        参考: 岩永直子:17歳未満でのHPVワクチン接種で子宮頸がんを88%減少 がん予防効果を示した論文は世界初



⑤HPVワクチンと多様な症状(広い範囲に広がる痛みや、手足の動かしにくさ、不随意運動など)の関連について


 HPVワクチンを接種した後に、広い範囲に広がっていく痛みや、手足の動かしにくさ、不随意運動などの多様な症状が報告され、これがHPVワクチン接種の副反応であるとして、マスコミでセンセーショナルな大キャンペーンが行われ、痛恨の接種勧奨停止に追い込まれてしまったことは周知の通りです。

 しかし、平成29年11月の厚生労働省専門部会において、慢性疼痛や運動障害などHPVワクチン接種後に報告された「多様な症状」とHPVワクチンとの因果関係を示す根拠は報告されず、これら「多様な症状」は機能性身体症状と考えられる、との見解が発表されました。

 一方、平成28年12月の厚生労働省第23回副反応検討部会において、厚生労働省研究班(祖父江班)による全国調査結果が発表され、HPVワクチンの接種歴のない女性でも、HPVワクチン接種歴のある人と同様の「多様な症状」を起こす例が、多数存在することが報告されました。

 さらに国内の調査として、名古屋市で行われた大規模な疫学調査では、ワクチン接種後に報告された多様な症状とワクチン接種との間に、有意な関連が認められなかったことが報告されました。(原著はこちら。横浜市大産婦人科による、日本語訳と解説はこちら

No association between HPV vaccine and reported post-vaccination symptoms in Japanese young women: Results of the Nagoya study.S.Suzuki et al:Papillomavirus Research Vol. 5, 2018, P.96-103

 我が国で問題となった「多様な症状」について、国際機関でもさまざまな検討、報告が行われてきました。

 2015年、2017年のWHOのワクチン安全性諮問委員会(GACVS)によるHPVワクチンとCRPS(複合性局所疼痛症候群)やPOTS(体位性頻脈症候群)などの自律神経障害による痛みなどの間には因果関係はみられないという声明、2015年の欧州医薬品庁(EMA)の両者には因果関係はないという声明、アメリカ予防接種諮問委員会(ACIP)によるHPVワクチンを接種することに問題はないという見解発表、英国医薬品医療製品規制庁(HHRA)の「ワクチンの成分によるというよりは、針を刺すという行為そのものから生じた可能性がある」という見解は、全てHPVワクチンとHPVワクチンによって生ずるとされる、CRPS(複合性局所疼痛症候群)やPOTS(体位性頻脈症候群)などの自律神経障害による痛みなどの間に因果関係は認めないというものでした。(詳細は本編、HPVワクチンの副反応をご確認ください。)

HPVワクチンと自律神経障害を伴う症候群を伴う症候群に因果関係なし(デンマーク)

●2020年にはデンマークから新しい報告が行われました。

 この論文は、デンマークで生まれた10~44歳の女性1375737人を対象に、2007年~2016年の間のHPVワクチンの接種歴、自律神経障害を起すCRPSなどの病気の診断歴を調べ、HPVワクチン接種と自律神経障害を伴う症候群の発症率を比較検討したものです。その結果は、HPVワクチンと自律神経障害を伴う症候群(CFS、CRPS、POTS)の間に有意な因果関係は認めなかった、というものでした。

Association between quadrivalent human papillomavirus vaccination and selected syndromes with autonomic dysfunction in Danish females: population based, self-controlled, case series analysis.A.Hviid et al: 2020; 370: m2930.



その後も現在に至るまで、HPVワクチンと「多様な症状」の関連性を医学的に証明した、学会で認められた学術的な論文は日本にも国際的にも一つもありません。反対に、因果関係はないという論文の発表は現在も続いています。

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Ⅵ.その後の情勢

①品川区の対応

 品川区は2020年8月から、定期接種の対象年齢の区民に「HPVワクチンについて」のお知らせの配布を始めました。(品川区保健所の区議会厚生委員会への報告
 
 この処置は定期接種であるにもかかわらず、HPVワクチンに対する情報が提供されず、定期接種の年齢が過ぎ、打ちそびれとなってしまう女性が発生することへの対応策として、始められたものです。HPVワクチンの周知の一歩として、ほんのちょっぴりですが、評価したいと思います。

 2021年3月12日に新中学1年生から高校1年生の約5000人の女生徒の全家庭に、HPVワクチンについての厚労省のリーフレットが品川区から配布されました。また、3月26日には約1400人の新小学6年生の家庭に厚労省の同じリーフレットが配布されました。(品川区保健所の区議会厚生委員会への報告

  参考:厚労省のHPVワクチンに対する説明パンフレット



②ガーダシルの男性への接種の拡大
 
 2020年12月4日、厚労省薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会は、 4価HPVワクチン「ガーダシル」を、9歳以上の男性にも適応拡大することを了承し、12月25日に薬事承認されました。(詳しい報道はこちら

 意識の高い保護者の方から男児へのHPVワクチン接種の問い合わせが今までも時々ありましたが、残念ながら男性への接種は適応外としてお断りしてきました。 しかし、2021年からは、ご希望の男性へも接種できることになりました。(ただし、任意接種のため、接種費用が発生します。)

 HPV 感染は、女性特有の子宮頸がんや外陰がんだけでなく、肛門がんや陰茎がん、咽頭がんも起します。肛門がんや咽頭がんなど、HPV感染による男性のがんの報告も増えてきています。
 また、低リスク型HPVが原因の尖圭コンジローマは、男女ともに感染し、再発率も高いです。

 男性がHPVワクチンを接種することは、「自身の感染予防」や「パートナーの防衛」、さらには「社会全体の防衛」につながると期待されています。したがって、風疹ワクチンがそうであったように、男性へのHPVワクチンの定期接種化も必要だと考えます。

 男性への定期接種化については、「担当の厚生科学審議会で、必要に応じて議論を進める可能性がある」などと厚労省ペーパー医者役人はいつものように逃げを打っていますが、シルガード9の定期接種化とともに、4価、9価HPVワクチンへの男性への定期接種の拡大は必須です。

 2021年3月12日の品川区議会予算特別委員会教育費款別審査の質疑において、当クリニックは品川区教育委員会に対し、保健の授業において、男性へのHPVワクチン接種についての情報提供を行うよう、要望を行いました。

●接種方法
 ガーダシル接種を希望する男性は、鈴の木こどもクリニック受付にお問い合わせください。接種の手順を受付でご説明いたします。

  
参考:NHK:子宮頸がんワクチン 男性接種も承認へ 肛門がんなど予防効果も…「子宮頸がんワクチン」などと表現しているところから、すでにレベルの低さが露呈している杜撰な記事。高給もらってふんぞり返っている親方日の丸なのだから、もう少し勉強してほしいです。

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