アレルギー編

ようこそ!鈴の木こどもクリニックアレルギー外来へ


Ⅰ.アレルギーとは何か

Ⅱ.気管支喘息(作成中)

Ⅲ.アトピー性皮膚炎(作成中)

Ⅳ.スギ花粉症

Ⅴ.食物アレルギー(作成中)

Ⅵ.ダニアレルギー



Ⅰ.アレルギーとは何か


 「変な反応」-オーストリアの小児科医ピルケPirquetによって名付けられたアレルギーは、「大騒ぎの、けたたましい」免疫反応です。免疫とは本来、外敵から自己を守る防衛反応で、自然界では下等な生物でもこの防衛システムを有しています。それがヒトにおいて高度に完成し、複雑かつ巧緻な免疫システムが日々発動され、私達を守っているのです。人間のからだには不断に異物が侵入してきます。それなのに、私達が平穏な日々を送れるのは、からだの中の免疫システムが外界からの侵入者を捕捉し、排除し続けているからなのです。

 まず、このすばらしいヒトの免疫の仕組みを見てみましょう。そして、次に免疫の脱線であるアレルギーを理解していきたいと思います。(アレルギーについては無数の解説本がありますが、最もわかりやすい(と当クリニックが評価している)北中進日大教授の解説をもとにお話しを進めます。)

Ⅰ 免疫反応

 ①リンパ球

 人間のからだには動脈、静脈のほかにリンパ管という第3の血管が身体中にはり巡らされています。このリンパ管には、リンパ球と呼ばれる白血球の一種が巡回しており、侵入者に目を光らせています。赤血球は流れていないため、リンパ管は白い血管とも呼ばれます。また、リンパ管は血管と相互に乗り入れしているので、リンパ球は血管の中にも自由に移動し、探索を続けています。 

  このリンパ球をさらに詳しく分類すると、Tリンパ球(T細胞)とBリンパ球(B細胞)に大別され、さらにナチュラルキラー細胞、キラー細胞などという少数派のリンパ球もいます。このうち、T細胞はヒトの防衛システムの司令官で、Tはthymus(胸腺)に由来します。このリンパ球は胸腺(thymus)で、徹底して「自己」と「非自己」を区別する高等教育を受けたエリートリンパ球です。このT細胞がヒトの防衛軍を指揮して、外敵にあたります。このT細胞はさらにその役割から、Th細胞(ヘルパーT細胞)とサプレッサーT細胞に分けられます。

 もう一つのリンパ球、B細胞は全てのリンパ球のふるさとであるBone Marrow(骨髄)から名付けられました。B細胞は下士官で、T細胞の指令で抗体(ミサイル)を作り発射するのが仕事です。実際に戦場で戦うリンパ球部隊です。

 ②免疫反応                   

 異物(抗原と呼びます)がヒトの体内に侵入してくると、まず門番であるマクロファージが立ちはだかります。マクロファージは大食細胞とも呼ばれ、身体中いたる所に存在し、外部から侵入した細菌、ウィルス、寄生虫や、さらに老廃物やごみなども始末しています。

 このマクロファージが抗原を食ってしまいます。しかし、外敵が強力で呑み込んでしまえなかったり、処理しきれない時は、侵入者の情報=たんぱく質の組成情報をT細胞に伝え、外敵の侵入を知らせます。また、周辺にいる好中球(白血球の一つ、顆粒球とも呼ぶ)も抗原を食べて、マクロファージに協力します。

 マクロファージからの外敵侵入の情報を受け取ったT細胞はただちに戦闘モードに入り、Th1細胞とTh2細胞に役割分担します。Th1(ティ-エイチワン)細胞はマクロファージを励まし、Th2(ティ-エイチツー)細胞は抗原(侵入者)に見合った抗体(迎撃ミサイル)を作るよう、B細胞に指令を出します。Th2細胞から抗体の設計図を受け取ったB細胞はそれに基づき、抗体を作り出します

 抗体(免疫グロブリン)

 B細胞が作り出した抗体は、抗原を撃退するミサイルです。カギとカギ穴のように抗原を補足しやすい、Y字形をした抗体ミサイルはしっかり抗原を捉まえ、無力化します。抗原と抗体が反応することを抗原抗体反応と言います。

 抗体は5種類あり、グロブリンというたんぱく質からできているので、免疫グロブリンImmuno-globulin(Ig)と呼ばれ、それぞれ  

     IgG (アイジージー)  
     IgM (アイジーエム)  
     IgA (アイジーエー)  
     IgD (アイジーディー) 
     IgE (アイジーイー)

 と名付けられています。

 抗原が侵入するとまずIgMが作られます。これは巨大なグロブリンで、他の免疫グロブリンが一つのミサイルなのに対し、5本のミサイルを持っています。これが最初に先端を開きますが、5日ほどで主力部隊のIgGと交代します。(IgMは寿命が短い)

 IgMに代わって登場するIgGは抗体の主力部隊で、寿命(個々の活動期間)も3週間ほどあり、終始戦いをリードします。また、IgGは胎盤を通過するので、生まれたばかりの赤ちゃんを守っているのも、胎盤を通って移動してきたお母さまのIgGです。

 IgAは消化管、目、鼻の粘膜など他の抗体が働きにくい、組織の表面などを守ります。また、母乳中に含まれており、生まれたばかりの赤ちゃんの消化管を守ります。

 (IgDはその働きがいまだによくわかっていません。)

 IgEはもともとは寄生虫に対する抗体でしたが、現在アレルギーの原因になっています。IgEについては、次章で詳しく見ていきます。

 このように戦いが始まって、3~4日でIgGが作られると外敵は駆逐され、免疫反応は終了します。

 サイトカイン

 マクロファージ、T細胞、B細胞はおたがいにサイトカインという情報伝達物質を出して、連絡を取り合います。たとえば、Th2細胞はB細胞に対して、インターロイキン4(IL4)、インターロイキン5(IL5)、インターロイキン6(IL6)というサイトカインを放出して、抗体を作るよう命令します。また、Th1細胞もインターロイキン2(IL2)を放出して、T細胞を増やしたり、マクロファージを活性化させたりしています。このほかにも、Th1細胞はインターフェロンガンマ(IF-γ)というサイトカインよって、Th2細胞の働き過ぎにブレーキをかけることもあります。Th1細胞とTh2細胞はお互い働きすぎないよう、バランスを取っているのです。マクロファージもサイトカインを出して、T細胞やほかの免疫担当細胞の働きを助けています。このように、免疫担当細胞同士はサイトカインをお互い交換し合って情報ネットワークを形成し、組織的に外敵と戦っているのです。

 ⑤その他の免疫担当細胞

 好中球はマクロファージと同じように抗原を食べてしまいます。数をたのんで密集した陣形で敵と戦います。ナチュラルキラー(NK)細胞は、独自にガン細胞やウィルスと戦っていますが、外敵が侵入すると他の細胞と協力して戦います。キラー(K)細胞やキラーT細胞も抗体といっしょに戦います。サプレッサーT細胞は、Th2細胞やB細胞の働きにブレーキをかけるのがその役目です。このように、ヒトの免疫反応にはさまざまな細胞がお互い協力し合いながら、戦いを展開しているのです。 

Ⅱ アレルギー反応

 アレルギー反応は、今見てきた人間の免疫反応が過剰に働いた状態と考えることができます。

 ①IgE

 まず、ダニのフンやスギの花粉など、人間にとって無害なごみのような抗原(異物)が身体のなかに侵入してきます。これをいつものようにマクロファージが貪食します。そして、このとるにたらない抗原の情報をT細胞に伝えます。するとT細胞はTh2細胞に分化し、Th2細胞は何を勘違いしたのか、けたたましく騒ぎ出し、IL4というIgEをつくる指令(サイトカイン)をB細胞に伝達します。

 これに驚いたTh1細胞はIFγ(インターフェロンガンマ)を放出して、Th2細胞をなだめようとしますが、Th2細胞の暴走を抑えることができません。

 このようにアレルギー反応とは、マクロファージから送られてきた、たわいもない抗原情報にTh2細胞がけたたましく大騒ぎしてB細胞にIgEを大量に作られること、さらにTh2細胞のパートナーであるTh1細胞が、Th2細胞の暴走を止められないところからスタートします。

 ②マスト細胞(肥満細胞)

 B細胞がせっせと作った大量のIgE抗体はダニのフンやスギの花粉とくっつくことができないため、やむおえず皮膚や鼻、呼吸器の表面近くに分布するマスト(肥満)細胞のレセプターに結合します。(マスト細胞のカギ穴とIgEのカギはぴったりはまる関係にあります。)

 マスト細胞は細胞の中に沢山の化学物質を抱えているため、ボツボツをいっぱい抱えた太った細胞で、肥満細胞とも呼ばれます。マスト細胞の表面に、無数のIgEがとげのようにくっついた状態を「感作」といいます。

 やがて再び、同じ抗原が侵入してくると、この抗原はマスト細胞の表面のIgEのとげにひっかかり、架橋を作ります。その結果、マスト細胞に抗原抗体反応が始まり、マスト細胞から大量の蓄えられていた化学物質(ヒスタミン、セロトニン)が放出されます。また、同時進行でマスト細胞の内部でロイコトリエン、プロスタグランディンが製造され、これも放出されます。

 マスト細胞から飛び出したヒスタミン、ロイコトリエンなどは、マスト細胞周辺の気道、皮膚、鼻粘膜などを手当たり次第に攻撃し始め、戦場となった組織は赤く腫れあがり、炎症を起こします。また、気管支平滑筋を急に収縮させたり、血管の壁をもろくして内部の血液中の水分(血漿=けっしょう)を漏れ出させたりして、組織は大混乱に陥ります。

 ③好酸球(エオジン細胞)

 マスト細胞からヒスタミンなどが放出されて炎症が起きると、白血球の一つである好酸球が遅れてこの場に集まってきます。好酸球もまたさまざまな物質を分泌し、炎症をさらに悪化させる役割を果たします。この好酸球の行動もまた、Th2細胞からIL5という指令を受けて行われているのです。

 このようなアレルギー反応によって、気道が腫れて狭くなりゼイゼイヒューヒューしたり、鼻がつまったり、皮膚が赤く腫れかゆくなったりと、さまざまなアレルギーの症状が現われてくるのです。

 アレルギー反応のタイプ

 アレルギー反応にはいくつかのタイプがあります。今まで、みてきたアレルギーのメカニズムはⅠ型(即時型)アレルギーについてでした。気管支喘息、アレルギー性鼻炎(花粉症)など子どものアレルギー疾患はほとんどⅠ型アレルギーが原因になっています。ただし、アトピー性皮膚炎は、Ⅰ型、Ⅲ型、Ⅳ型が関係するといわれています(詳細後述)。

タイプ

名称

主な関係者

反応時間

主な病気

Ⅰ型

即時型

IgE、マスト細胞、化学伝達物質

15分~8時間

気管支喘息、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹

Ⅱ型

細胞障害型

IgG、IgM、補体

15分~8時間

自己免疫性溶血性貧血、血液型不適合

Ⅲ型

免疫複合体

IgG

4~6時間

糸球体腎炎、リウマチ熱

Ⅳ型

遅延型

T細胞(感作リンパ球)

24~48時間

接触性皮膚炎、ツベルクリン反応

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