ダイアモンド・プリンセス騒動について


0.はじめに

アジア周遊の航海を行っていた、豪華客船ダイアモンド・プリンセス号(写真はプリンセスクルーズHPより)で、新型コロナウイルス感染症が発生しました。

 日本のマスコミとワイドショウの「コメンテータ」デンパ芸者たちは、日本政府のCOVID-19対応に、「感染を抑えられなかった。」「感染をむしろ広げた。」「船の中は地獄だった。乗船客は可哀想だ。日本政府は何やっているんだ。」と頭ごなしに日本政府を批判し、大騒ぎしたのです。

 たしかに後で振り返ると、厚労省の対応はいろいろと批判すべき点は多々ありました。

 しかし、経験したことのない新しい感染症に対して、初めての防疫作業に、現場の医師、看護師、薬剤師、救急隊員、自衛隊などのチームが生命の危険をさらして、感染を食い止めようと必死に努力したのです。彼らの行為は賞賛されこそすれ、薄汚い口で非難すべきではありません。

 TVで騒ぐ馬鹿どもは、現場の人たちの必死の努力に寄り添うこともなく、自分は何にもしないくせに(せいぜいTV番組のプロデューサーのご機嫌を取ることか、厚化粧ぐらいしかできないくせに)、安全地帯からギャアギャアと屁の役にも立たない無の饒舌で、出演料を稼いでいたのです。

 さらに、鼻持ちならない白人エリートの権化=ニューズウイークやニューヨークタイムズなどアメリカメディアもここぞとばかりに同調し、我が国は感染対策も出来ない、だめな国というレッテルを張り、嘲笑したのでした。

 *今、ブーメランのように、アメリカでもグランド・プリンセス号というクルーズ船内でCOVID-19集団感染が発生しました。偉そうに日本と日本人を罵倒していた、白人「ジャーナリスト」とそのポチどもがどのような言動を行うか、注視していきたいですね。

 日本のマスコミの皆さん、またまた我が日本が欧米から馬鹿にされまくって満足ですか。(最も彼らは日本国民ではなく、世界市民でしたっけ。)そして、この連中が大騒ぎするたびに、我が国の大切な血税が湯水のように垂れ流しされていったのです。

 しかも、彼らの批判が正当なものなら、まだしも救いもあります。しかし、そのほとんどが医学的根拠に基づかない、でたらめの嘘八百のフェイクだったのです。

 事実に基づいて、ダイアモンド・プリンセス騒動の経過を今一度振り返ってみましょう。


1.ダイアモンド・プリンセス号について

 まず、今回の騒動の舞台になった、ダイアモンド・プリンセス号です。

 この巨大船舶は、2004年に長崎県の三菱重工業長崎造船所で建造されました。この船には、サファイア・プリンセス号という姉妹艦があります。乗船定員数は2706人、乗組員1100人、総トン数115875トン、全長290m、水面上の高さが54mに及ぶ、巨大な観光クルーズ船です。

 運航会社はプリンセス・クルーズ社というクルーズ会社で、この会社の親会社はカーニバル・コーポレーションという、100隻の大型クルーズ客船を所有する、世界最大の巨大クルーズ客船運航会社です。

 しかし、この船は出生時から不吉な出来事がありました。実は、ダイアモンド・プリンセス号にはサファイア・プリンセス号という姉妹艦がありますが、当初は現在のダイアモンド・プリンセス号が、サファイア・プリンセス号になる予定だったのです。

 2002101日、当時長崎造船所で建造中だったダイアモンド・プリンセスになる予定の1番艦が火災を起こして損傷し、納入期限に間に合わなくなってしまいました。そのため、火災から無傷だった2番館が急遽突貫工事で建造され、ダイアモンド・プリンセス号として、無事に納期に間に合い、竣工されたのでした。そして、もともとダイアモンド・プリンセス号となるはずだった1番館は、7か月遅れて工事が完成し、サファイア・プリンセス号としてデビューしたのでした。

 ダイアモンド・プリンセス号は、就航後、2014年にアジア向けに改造され、日本の横浜港を拠点として沖縄、台湾、韓国、香港などを周遊する、日本発着クルーズの定期運行に従事していたのです。

 このプリンセス・クルーズというクルーズ会社は、2017年に、アメリカの裁判所から廃油を含む汚水を不法投棄した行為で、4,000万ドルの罰金(執行猶予5年)を課せられています。しかも、執行猶予中であるにも関わらず、バハマ海などでゴミの不法投棄を繰り返し、2019年、アメリカ裁判所から改めて不法投棄や環境破壊に対して、2000万ドルの罰金と査察の受け入れを要求されています。

 裁判官は、今後もプリンセスクルーズが態度を改めない場合は、カーニバル傘下のクルーズ船を全て、アメリカの港から締め出すと宣告したそうです。なかなか、したたかな会社のようですね。(くわしくはこちら


2.発端

ダイアモンド・プリンセス号は、2020年1月20日、いつもの通り、横浜港を出発し、鹿児島、香港、ベトナム、台湾、沖縄周遊の航海に出ました。予定では、125日に香港に到着、ベトナムや台湾を巡り、21日に沖縄の那覇に寄港した後、母港の横浜港に戻る、というスケジュールでした。別にいつもと変わらない、楽しい航海になるはずでした。

 ところがこの乗船客のなかに、120日に横浜港から乗船し125日に香港で下りた、80歳の香港人がいました。すべては、ここから始まったのです。

 この老人は123日から咳をして、だんだん悪化したそうです。しかし、彼は船内でサウナに入ったり、レストランで食事を取ったりしていました。そして、下船後の130日に発熱し、香港の病院で検査を受けた結果、21日に新型コロナウイルス陽性であることが確認されたのでした。


3.帰港 

この老人が新型コロナウイルスに感染していると判明した時、ダイアモンド・プリンセス号は香港を出港し、那覇港への寄港も済ませ、横浜港に向かっている航海の途中でした。

新型コロナウイルス陽性の知らせを受けた日本政府は、ただちにそれぞれの乗船客の出身国の政府に連絡し、乗船者の自国への帰国を提案したのです。

 しかし、330人と日本人に次いで乗船客の多かったアメリカ政府は、「早期の下船、あるいは帰国を促すよりも、船内に留まることが、感染拡大を防ぐための最善の方法」と返答しました。また、アメリカ疾患管理センター(CDC)も、船内にアメリカ人がとどまることを支持したのです。

 感染の可能性のある人々を国内に大量に入国されることは、国内に感染を広げる危険があります。この時の日本政府の対応は、国民を未知の感染症の脅威から守るための妥当な対応と評価できると思います。

 *しかし、従来から日本に対して非常に厳しい視点で報道する、アメリカの有力紙ニューヨーク・タイムズ紙は、専門家の見方として、「公衆の衛生に関わる危機について、『こうしてはいけない』と教科書に載る見本だ」などと伝えました。

 さらに同紙は、日本政府の対応について、「信頼を低下させた」とした上で、 「すでに汚染されたクルーズ船に、これほど多くの人を閉じ込めておく以外に、他の手段があったのではないかと思わせる」と批判しています。言いたい放題ですね。出典:TBSニュース(https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3904239.html)

 しかし、今度は自分の足元のグランド・プリンセス号で新型コロナウイルス感染が集団発生したのです。 日本が嫌いで嫌いでしょうがない、ニューヨークタイムズやニューズウイークが、どのように報道するか、興味のあるところですね。

ダイアモンド・プリンセス号は、当初の予定では、24日に横浜港帰港のはずでしたが、日程を早めて23日夜に横浜港の大黒埠頭沖に停泊しました。ダイアモンド・プリンセス号は21日、すでに那覇港で検疫を受けていましたが、乗客の新型コロナウイルス陽性の連絡を受けて、日本政府は乗客の下船を許可しませんでした。

 そして、23日から4日にかけて、船内に検疫官が乗り込み、乗客の健康診断が行われました。そして、船内の症状のある人と濃厚接触者には、COVID-19(新型コロナウイルス)の検査が行われました。

 その結果、25日に31名中10名がCOVID-19陽性と判明し、日本の感染症法(「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」)が適用され、陽性者は神奈川県の医療機関に全員搬送入院となりました。費用はもちろん全額、我が国の負担となったのです。

そして、症状のない乗員、乗客合わせて約3,700人は、感染の可能性のなくなるまで、14日間は船内で待機することになりました。この時、ダイヤモンド・プリンセス号には、56カ国の乗客2666人と1045人の乗務員、計3711人が船内に乗船していたのです。おそらく、日本政府は14日間乗員に船内で待機してもらい、その後乗員全員を下船させて、この事案は終了すると考えていたかもしれません。

しかし、ダイアモンド・プリンセス船内では25日の早朝まで、乗船客の行動は特に制限されませんでした。ショーなどの船内のイベントも、通常通り開催されていたそうです。後の検討では、この時に広汎なCOVID-19感染が起ったのではないか、と推定されています。

29日、運航会社プリンセス・クルーズは全乗客の旅行代金等を払い戻し、無料とするコメントを発表しました。日本のマスコミは、この間の船内の感染管理、船会社の責任などにはいっさい触れず(船長に指揮権があったのです)、「人道的で素晴らしい対応だ。」と、心から賛辞を送ったのでした。


4.感染爆発

25日に防疫作業が本格化し、クルーズ乗員には日本政府から個人防護服が配布され、正しい着用法が指導されました。(守ろうともしない、乗務員もいたようですが。後述。)

 また、乗船客には体温計が渡され、12回検温し、37.5℃以上の場合は、報告するよう周知されました。発熱など症状のある人には、船内医療チームによって、新型コロナウイルスの検査が行われました。また、船内には診療所もあり、さまざまな病気に対応していました。

COVID-19の検査は当初は、発熱などの症状のある人とその濃厚接触者(夫婦など)に限られて行われていましたが、検査体制が整備されるに従い、高齢者と基礎疾患がある人から順に、乗客、乗員全員に検査が行われるようになりました。

 その結果、211日を除く毎日、感染陽性者が続々と見つかり、船内での感染者数は218日の時点で542名に達し、全乗員の14.3%にのぼったのです。しかし半数近くは無症状の人でした。

月日   2/5  7  8  9  10  11  12  13 14   15  16  17  18  19 20   23  26  3/2
陽性者数   10  20  61  64  70  135  135  174  218  218  285  355  454  542  621  634  691  705  706

 しかし、クルーズ乗務員の一部は、船の運航やサービスを維持するために、検疫下ではありますが、船内業務に従事したのだそうです。乗務員の一部に、雑な対応があったという情報もでています。(情報はこちら

また、船の性格上、すべての人を個別に隔離することはできず、夫婦などは同室となり、感染がおきた可能性はあったようです。

 イギリス船籍の客船で、アメリカの運航会社、イタリア人の船長など、指揮系統がはっきり貫徹できなかった負の面もあったようです。

 28日の河野防衛大臣のツイートによれば、アメリカ政府から、船内に留まる方が感染拡大を防ぐための最善の方法であるという、米衛生当局の判断に基づく申し出があったといいます。

そのため、ニューズウィークなど反日白人メディアの口汚い日本非難に、アメリカ政府やCDCは基本的に同調しませんでした。(アメリカCDCは感染対策がうまくいかなかった。

 しかし、日本政府は最善を尽くした、とコメントしています。逆にCNNのドキュメント記事は、ぼろくそですね。CNNさん、ダイアモンド・プリンセスだけではなく、グランド・プリンセスもぜひ迫真のドキュメント記事を伝えてくださいね。)

 日本防衛省は自衛隊を派遣し、長期化する船での生活に備えて、26日から乗客乗員へ向けた生活物資や医療などの支援活動を行いました。しかし、日本マスコミはこれらの日本政府の努力は全く無視し、船内の乗客の不満を大げさに騒ぎたてました。

ダイアモンド・プリンセス号の周りをうろつきながら、乗客に不満をぶちまけてもらおうという、さもしいTV局まで現れました。(ツイッターでの写真はこちら)

 右図は国立感染症情報センターが発表した、ダイアモンド・プリンセス号における、COVID-19(新型コロナウイルス)陽性者の経過です。
 青が乗客、赤が乗員で、発病のピークは26日~9日です。

 COVID-19の潜伏期をおおむね5日と考えると、検査陽性者の多くは21日~4日前後に感染したと推定されるでしょう。

 25日に検疫が始まったので、乗客のほとんどはそれ以前に、横浜港に寄港する途中で感染していた可能性が強いことがわかります。


5.混乱

 218日、突発的な事件が起こりました。今回の主人公は、神戸大学病院感染症内科の岩田健太郎教授でした。突然、彼はyou tubeに動画をあげ、ダイアモンド・プリンセス号の感染対策が非常に混乱しており、こんなに怖い場所はない、と強く船内防疫体制を批判したのです。

 岩田教授の主張に、沖縄中部病院の高山義浩医師がFBで反応しました。実は、岩田教授がダイアモンド・プリンセス号に乗船できるよう、いろいろと関係者と折衝し、乗船できるよう、骨を折ったのは、高山医師その人だったのです。高山医師はたんたんと経過を明らかにしました。

両者を比較すると、岩田教授の「勇み足」が明らかになり、旗色が悪くなってきた岩田教授は動画を削除しました。

 ところが、ここにさらに新しい人物が登場しました。岩田教授の主張に反発した、橋本岳厚労省副大臣がツイッターにダイアモンド・プリンセス号の内部の写真を掲載しました。しかし、彼の意図に反して、この写真は船内の防疫がお粗末であることの逆に証明し、だれが見ても、岩田教授の主張に一定の正しさがあることを反証してしまったのです。

 これに勢いづいた岩田教授は、外国記者クラブやテレビのワイドショウ、さらにバカチン国会議員連中との会談をはしごし、ダイアモンド・プリンセスの感染対策が破綻していること、自分が正しいことを全力で世界にアッピールしたのでした。

 結局、岩田教授は日本の感染対策がお粗末なことを世界に宣伝し、自分は素晴らしい感染症専門家であることを世界に誇示し、自分のために努力してくれた高山医師の善意と立場を踏みにじり、この「岩田騒動」は鎮静化していったのです。 


6.終章

 WHOの健康観察期間である14日間発熱等の症状がなく、下船前にPCR検査が陰性だったとされた乗客は、219日から21日にかけて順次下船しました。しかし、下船後は専用バスで複数のターミナル駅まで移動し、それぞれ公共交通機関などで帰宅するよう、指示されました。しかし、この厚労省の方針は、感染を拡散させるのではないか、と大きな批判を呼びました。

 案の定、栃木県在住の女性、さらに225日には徳島県在住の女性がPCR検査で感染が確認されました。さらに、226日以降も下船した人から感染者がさみだれ式に発生しており、226日時点で45人に発熱などの症状がみられ、229日までに計6人の新型コロナウイルス感染が確認されてしまいました。

 また、PCR検査が陰性であったため、下船を許可したとされる970人の乗客乗員のうち、23人は下船に必要なPCR検査を行っていなかった、というお粗末な事態も明らかになりました。

214日頃から、乗客の各国がチャーター機の手配を開始し、 米国、イスラエル、台湾、香港、カナダなどが乗客を帰国させました。

  現場の必死な努力にもかかわらず、日本の厚労省のレベルを世界的に曝し、ダイアモンド・プリンセス騒動は週末を迎えたのです。


7.その後の出来事

 20202月、香港に寄港したオランダのクルーズ船ウエステルダム号は、COVID-19感染症の流行を理由に、フィリピンと日本とタイへの入港が拒否しました。台湾や米領グアムも入港を拒み、さまよった挙句、213日にカンボジア南部のシアヌークビル港に入港した。

 アメリカ周航中の大型クルーズ船でも日本と同じようなCOVID-19による集団感染が起きました。

 2020211日に、バミューダ船籍の大型クルーズ船、グランド・プリンセス号でも新型コロナウイルス感染が発生しました。21人のCOVID-19感染者が確認された時点で、米国当局により寄港を拒否され、カリフォルニア州の沖合に停泊しました。

 この船は、ダイヤモンドプリンセスと同じプリンセス・クルーズの船でした。3月9日、グランド・プリンセスは、カリフォルニア州オークランドの港に接岸し、乗客約2400人が下船しました。アメリカ政府も、ダイアモンド・プリンセス号の経過を参考にしたようです。