Ⅱ.子どもの循環器(心臓血管)の病気


1.川崎病



Ⅱ.子どもの循環器(心臓血管)の病気  2023.9.1更新 

1.川崎病


川崎富作博士によって発見されたため「川崎病」とよばれるようになった、乳幼児に高熱が出て全身の血管に炎症が起こる病気です。

正式には急性熱性皮膚粘膜リンパ節症候群(MCLS)といいます。

心筋梗塞を起こし、赤ちゃんの突然死の原因として怖れられてきましたが、現在では治療法が進歩し、専門医に管理されていればそれほど心配しなくてもよい病気になりました。


川崎病とは

川崎病は38℃以上の高熱が、5日以上1週間ぐらいも続く、赤ちゃんの病気です。

発熱は1週間以上続く例もあり、しかも顔や身体も赤くなり、お母さまは大変ご心配になると思います。

しかも、この病気が恐ろしいのは、冠動脈という心臓を栄養している大事な血管が腫れて、冠動脈に瘤(動脈瘤)ができることです。この冠動脈瘤に気づかれずにいると、突然心筋梗塞を起こして死亡することが怖ろしい病気です。

川崎病は高熱が続く病気ですが、熱も発疹もそのうちおさまります。

「かぜが長引いた」などと川崎病に気づかれず、治療もされずに放置されていると、25%に冠動脈瘤が残るといわれます。

川崎病と正しく診断されて、アスピリン治療が行われれば、後遺症の発生は4~5%まで激減します。さらにガンマグロブリン大量投与という強力な治療が行われれば、1~2%まで後遺症を低下させられると報告されています。

川崎病の特徴ある顔は、小児科専門医にとってはなじみのものです。発熱が4日以上続くときは、必ず小児科専門医を受診して、診察を受けることが大切だと思います。

川崎病の症状

突然38℃以上の高熱が出ます。そのほか、咳、鼻水がみられることもあり、最初はかぜと同じような経過をたどります。

しかし、熱は下がらず、5日以上続き、白目が真っ赤に充血してきます。ただし、目やには出ません。

唇が真っ赤に腫れて切れ、舌がぶつぶつとして、苺舌状になります。

発熱から2~3日後に、いろいろな形の発疹が体中に出没します。そして、BCGの痕が、赤く腫れます。

手足の先が、テカテカパンパンにむくみ、その後指先から皮がべろべろむけてきます。さらに、頚のリンパ節がはれます。
これらは典型的な川崎病特有の症状です。

ここで小児科専門医なら川崎病を疑い、厚労省川崎病研究班の川崎病診断の手引きに照らして、川崎病かどうか判断します。

*(「内科・小児科」=内科医は成人病には詳しくても、川崎病は知らない人もいるかもしれません。必ず発熱が続くときは、小児科専門医を受診することを強くお勧めします)

発病は4歳以下、特に生後6ヶ月~2歳の乳幼児に多く見られます。

1.3倍の割り合いで男子に多く、現在、年間発病数は60008000人、冠動脈の合併症は5.9%、死亡率は0.1%以下と報告されています。

なお、川崎病に2回かかる再発例は全体の3~4%、兄弟でかかる同胞例は1~2%と報告されています。

川崎病の原因

川崎病は全身の血管に炎症が起こる病気です(血管炎)が、原因はいまだに不明です。ただ、スーパー抗原といって、川崎病になると免疫をつかさどるリンパ球が異常に活性化することがわかっています。

そして、溶連菌感染が何らかの役割を演じているのではないかと考えられています。


川崎病の治療

川崎病と疑われたら、入院して治療を行います。

川崎病と診断されたら、血液の凝固を抑えたり、炎症をやわらげたりする抗凝固剤(アスピリン、フロベンなど)を飲みながら、心臓の合併症(冠動脈瘤=心臓の血管にこぶができて、心筋梗塞を起こすことがある病気。発熱10日目ぐらいから出現する)ができていないか、超音波検査や血液検査を行いながら経過をみます。

ガンマグロブリン製剤を大量に点滴注射します。これらの治療によって、現在死亡率も冠動脈瘤の合併率も、劇的に低下してきました。

川崎病の退院後の生活

川崎病で入院したときは、退院後も抗凝固剤は必要な期間は飲み続けなければなりません。

また、心臓の合併症(冠動脈瘤)の経過をみるため、定期検診は必ず受診しましょう。外来では、心電図、超音波などの検査を行い、冠動脈の状態を評価します。


予防接種については、ガンマグロブリンを大量投与された場合は、生ワクチン(MR、水痘、おたふくワクチン)は6ヶ月はあけるようにします。不活化ワクチン、BCG、ロタウイルスワクチンは、通常通りでかまいません。詳しくは、受診時にご説明いたします。

川崎病は全身の血管炎のため、動脈硬化のリスクが高まるといわれています。赤ちゃんのうちから、濃い味付けやファーストフードは避けるなど、食生活にも気を配りましょう。

*新型コロナウイルス感染症に罹患した小児に、川崎病類似の小児多系統炎症性症候群(MIS-C)が欧米で多数報告されました。しかし、川崎病との関連ははっきりしません。

ただし、両疾患ともに免疫の暴走で起こると考えられていますが、MIS-Cは川崎病に比べて発症年齢が高いこと(平均8歳)、おなかの症状が多いことが異なる点といわれています。

松裏浩行:川崎病;ドクターサロン、65巻7月号(6 . 2021):杏林製薬

 


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