小児用肺炎球菌ワクチン プレベナー13について


1.プレベナー13とは

 13価肺炎球菌結合型ワクチン(プレベナー13)は、90種類以上ある肺炎球菌の血清型から、子どもに重い肺炎球菌感染症を引き起こす可能性の高い、 13の血清型の殻(血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F、23F)を精製し、免疫が高まるよう、ジフテリア毒素を処理して結合させて作られたワクチンです(プレベナー13)。

 2013年11月1日から定期接種として、使用されています。それ以前は、7価(血清型4、6B、9V、14、18C、19F、23F)の肺炎球菌結合型ワクチン(プレベナー7)が使用されていましたが、 この日をもって、全面的に切り替えられました。

 プレベナーは子どもの肺炎球菌感染症(髄膜炎、敗血症、肺炎、中耳炎など)に有効です。また子どもがプレベナーを接種することにより、高齢者の重症肺炎球菌感染症も減少する効果も認められています。

 肺炎球菌感染症のうち、特に恐ろしいのは細菌性髄膜炎で、わが国では年間1000人ぐらいのお子さまが発病していたと推定されています。1999年4月から2001年12月までに報告された、細菌性髄膜炎患者総数は763例 (1999年4月から12月までに235例、 2000年に256例、 2001年に272例) でした。この763例中、病原菌が報告されたものは約半数で、インフルエンザ菌b型(Hib)が143例と最も多く、 次いで肺炎球菌が90例でした。

 第1位のインフルエンザ菌b型(Hib)による髄膜炎はヒブワクチンの定期接種により、現在消滅しました。第2位の肺炎球菌による髄膜炎も、2010年2月に開始されたプレベナー7の接種により、患者数は大きく減りました。

 厚労科研庵原班の平成24年のデータによれば、5歳未満児の侵襲性肺炎球菌感染症(髄膜炎や菌血症のような、重い肺炎球菌感染症)の、人口10万人当たりの罹患率(罹った人の割合)は、2008年-2010年で髄膜炎をおこした児の割合が2.8から、2012年には0.8と、73%も減少していたのです。すばらしい効果です。

 しかしその一方、肺炎球菌感染症はプレベナー7によって、重症者、患者数は激減しましたが、新たな問題が起こってきました。それは、プレベナー7でカバーできない血清型の肺炎球菌が増えてきたことです。

 右図のように、2007-2010年には、PCV7(プレベナー7)は重い感染症を引き起こした肺炎球菌の76.8%をカバーしていましたが、2011-2013年では37.0%まで低下しています。

 もちろん、侵襲性肺炎球菌感染症そのものが激減しているため、ワクチンが利かなくなったというより、ワクチンが有効な血清型の肺炎球菌が姿を消したため、ワクチンでカバーできない肺炎球菌の比率が増えたと考えるべきでしょう。

 今回、新たに登場したプレベナー13は、プレベナー7でカバーすることができなかった6つの血清型(1、3、5、6A、7F、19A)にも有効です。
 このうち特に、小児の重い肺炎球菌感染症(侵襲性肺炎球菌感染症)の18%を占める、19Aに効果があり、2011-2013年においても、66.1%のワクチンカバー率が認められています。

 したがって、今後肺炎球菌感染症を制圧していくには、プレベナー7でカバーできない血清型にも有効な、プレベナー13の接種を進めることが必要です。


2.プレベナー13の補助的追加接種について

 2013年11月1日からプレベナー7の代わり、プレベナー13を用いた、定期接種が始まりました。接種の方法は生後2ヵ月から3回と、7~13ヵ月後に1回追加で、計4回皮下注射を行います。

 2013年10月までに小児用肺炎球菌ワクチンをプレベナー7で接種されたお子さまは、現在侵襲性肺炎球菌感染症(髄膜炎、菌血症などの重い肺炎球菌感染症)の病原菌のうち、37%しかカバーされていないことになります(上図)。このため、プレベナー13を1回追加接種することにより、プレベナー13に含まれる6つの血清型(1、3、5、6A、7F、19A)に対し、1回接種で十分な免疫を獲得できると報告されています。

 また、肺炎球菌感染症は1歳~1歳半をピークに3歳まで高い発生数を示します(下図右)が、5歳以降の罹患率は減っていないといわれています。

 したがって、初回3回、追加1回の肺炎球菌定期接種を、プレベナー7で行った5歳のお子さまは、プレベナー13の補助的追加接種をお勧めいたします。


 ただし、補助的追加接種は任意接種となります。接種料金は、当クリニック受付でご確認ください。公費の助成はありません。また、プレベナー13は6歳未満(生後60か月)が対象となるため、6歳以上のお子さまは接種できません。

本文中で使用した図表3点は、厚生労働省健康局 結核感染症課予防接種室、第2回予防接種・ワクチン分科会「13価小児用肺炎球菌(PCV13)の 導入についての検討」資料3-1より引用させていただきました。あつく御礼申し上げます。

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