鈴木博の医療-子育て政策の提言と実現状況

Ⅳ 教育施策




3.自殺予防教育

子どもの自殺が減りません。平成28年には、品川区でも女子中学生の自殺がありました。自殺教育の重要性を指摘し、品川区の取り組みを質しました。



2016年(平成28年)第3回定例会 自殺予防教育に関する一般質問部分(2016.9.23)

 まず、自殺について、お尋ねいたします。

 平成285月、本区の女子中学生2名が自殺するという痛ましい事件がありました。亡くなられたご本人、ご遺族の方には深い哀悼の意を表します。

 まず、今回の事例について、改めて、概略をご説明ください。

 平成10年以来、我が国の自殺者は年間3万人を超え、やや減少はしたものの、 今なお高い水準を保っています。国も平成18年に「自殺対策基本法」を制定し、自殺予防は社会全体で取り組む課題だと宣言しました。 一方、未成年者の自殺は、警察庁の統計によれば、自殺全体の2%ほどです。しかし、1534歳の死因第1位が自殺というのは、G7中、日本だけであり、豊かな未来を自ら閉ざし、命を絶つという、 「自殺に追い込まれる」悲劇は、何としても食い止めなければなりません。

 文部科学省も、平成21年に「教師が知っておきたい 子どもの自殺予防」、平成22年に「子どもの自殺が起きたときの 緊急対応の手引き」、平成26年に 「子供に伝えたい自殺予防 学校における自殺予防教育導入の手引」を相次いで発表し、子どもの自殺予防に向けた取り組みの強化を求めているのです。 一度自殺が発生すると、いじめがあったか、なかったか、だけが問題視され、周囲の方の心の傷をさらにえぐるような事態も起こっています。

 一般に自殺に至るには、長い道程があり、さまざまなだんだん積み重なって鬱積していく「準備状態」と、 最終的にわずかな負荷が忍耐の限界を超えて、自殺に導く「直接の引き金」the last strawがあるといわれています。

 したがって、直前の状態だけを詮索しても、真に有効な自殺予防対策を導き出せるとは思われません。

 自殺を予防するには、一次予防、二次予防、三次予防の3段階の対策が必要だといわれています。

 一次予防、すなわち予防活動とは、全ての人を対象にその原因を事前に取り除き、 自殺を予防するという対策です。「子供に伝えたい自殺予防」によれば、学校における自殺予防教育の目標は、 早期の問題認識(心の健康)と援助希求的態度の育成、すなわち心の危機は誰にでもあることを自覚し、 必要な時には信頼できる大人に援助を求める態度を育成する、という2点だとされています。

 生きる力を育む授業、心と体の健康づくりも、きわめて大切な自殺予防教育と思われますが、 自殺に対する直接的な予防教育も重要だと考えます。品川区では現在、どのような自殺予防教育が行われているのか、お示しください。
 また、いじめ、虐待も、自殺の誘発因子として重要です。
 
自殺予防の観点から、品川区の現在の取り組みをご紹介ください。

 二次予防、すなわち危機対応とは、自殺の兆しのある人を見つけて、自殺を防ごうとする対策です。そのためには、身近な人の自殺のサインに気づき、見守りながら、支援機関に繋ぐ役割を担う、ゲートキーパーの存在が重要だといわれています。

 
現在学校現場では、どのようにゲートキーパーを育成しているのか、またその活動を、ご紹介ください。

 三次予防、すなわち事後対応とは、不幸にして自殺が生じてしまった後に、他の人に及ぼす心理的影響を、可能な限り少なくするためのケアを言います。一般に病死や事故死に比べて、自殺は残された人々に、きわめて複雑な死別反応を引き起こすといわれています。

 自殺未遂や既遂が1件あれば、強い絆のあった周囲の最低5人は、深い心の傷を負うといわれており、 自殺に強く影響を受ける人たちに対するケアと支援を、十分の行う必要があります。

 品川区では、事後対応として、現在、どのような対応が行われているのでしょうか。

 
9月10日から916日は、自殺予防週間でした。「誰も自殺に追い込まれることのない」、「かけがえのない個人として尊重され」、「生きがいや希望をもって暮らすことのできる」、品川区にするために、自殺予防対策の推進をお願いいたします。

◯教育次長答弁(本城善之君) 

 私からは、品川区の教育についてのご質問にお答えします。

 まず、自殺につきまして、今回における対応について概略を説明いたします。当該校におきましては、翌朝の5月10日に臨時の集会を行い、校長が事実について伝え、亡くなった生徒への黙祷を行いました。その後、在校生全員のストレスチェックを行うとともに、必要に応じてカウンセラーによる面談を実施しました。

 5月16日には臨時保護者会を開催し、学校の対応や子どもたちの様子について説明いたしました。教育委員会では、事故翌日からHEARTSやカウンセラーを派遣し、子どもと教員の心のケアを行いました。

 また、都のアドバイザリースタッフを派遣要請するなど、学校への人的支援を行い、現在も定期的に生活アンケートを実施し、子どもの心の変化を捉える体制を継続しております。

 次に、自殺予防教育についてお答えします。

 まず、生きる力を育む教育等においては、議員ご指摘のとおり、これまでも市民科を中心として、さまざまな学習を進めております。また、直接的な取り組みとして、担任等がチェックリストで気になる子どもに声をかけたり、相談機関の連絡先を記載したカードを生徒に配布したりして、子ども自身がSOSを発信できるようにしております。

 いじめについては、学校いじめ対策委員会を中心に、HEARTS等との連携も図りながら、さまざまな方法で早期発見・対応に努めております。また、虐待においては、疑いのある場合も含め、報告を徹底するとともに、即、関係機関が連携を図る対応を行っております。

 次に、危機対応でのゲートキーパーについてのお尋ねですが、校長を初めとする各校の生活指導主任や養護教諭等がゲートキーパーに関する研修を受講しております。その後、校内で全教員に対して伝達を行う等の取り組みを広げているところです。

 最後に、事後対応についてですが、関係する子どもや大人の精神的ケアを最優先に考え、何かあった場合には本区カウンセラー等を派遣し、すぐ面談や助言ができる体制を整えております。

 教育委員会といたしましては、自殺により尊い命が二度と失われることがないよう、考えられる全ての手段を講じて予防対策を進めてまいります。



2018年(平成30年)平成30年度予算特別委員会教育費 自殺予防教育に関する部分(2018.3.14)

◯鈴木(博)委員

 続きまして、自殺予防教育についてお伺いいたします。

 平成28年10月28日に開催された第38回教育再生実行会議の配付資料によれば、我が国の児童・生徒の自己肯定感が、諸外国に比べて著しく低いという結果が報告されています。これは、都の報告でも、同様の傾向が認められております。特に各教科の正答率が低い、達成感を感じたり、意欲的な意識が低い、規範意識が低い、社会・地域に対して否定的な意識を持つ生徒ほど、自己肯定感が低いと分析されています。

 なぜ日本の子どもは、みずから肯定する自尊感情が低いのでしょうか。自尊感情の低さは自殺のリスク因子にもなります。区のご見解をお示しください。

 また、品川区の学校の中で、自己肯定感を高める、自尊感情を高める教育はどのように行われているのか、ご説明をお願いします。

◯大関教育総合支援センター長  

 区の若者の自殺がやはり課題であると、教育委員会も認識しております。

 そして、学校ではやはり子どもたちに、SOSの出し方なども含めまして、指導を深めているところですが、今、委員からご指摘があったように、自尊感情という部分をやはりしっかりと育てていきたいと、これは教育活動全体を通じて教員は願っているところでございます。

 具体的には市民科の中で、自分の住んでいる地区、あるいは品川区民として、どのように自分は何ができるのか考えさせる学習を、繰り返し繰り返し、各学年の発達段階に応じて実際に考え、自分の課題として捉え、実践し、振り返るというような学習を市民科では行っております。その中で、自身のアイデンティティというものをしっか
りと育てていく。地域社会の一員であるという所属感が必要だと考えております。そのときに重要となるのが自尊感情です。自分が役立っている。家族の中で役立っている。地域の中で役立っている。

 そういった思いを子どもたちに育てていきたいと考えております。

◯鈴木(博)委員  

 平成29年6月2日の参議院厚生労働委員会で、自殺総合対策の更なる推進を求める決議が行われました。

 この決議に対し、精神科医らでつくる日本自殺予防学会は、本決議の特徴が、自殺の背景には、過労、生活困窮、育児や介護疲れ、いじめや孤立などの種々の社会的な要因があると述べて、社会的要因に焦点を当てているが、自殺の原因・動機として最も多い健康問題への言及が全くなく、その結果、現実に健康問題や家庭問題、経済・生活等の社会的支援を要する複雑な困難を抱え、自殺のリスクの高い人たちへの具体的な支援の強化になっていないと批判しました。

 そして、決議文の、児童・生徒を含む若年層の自殺対策については、生活上の困難やストレスに直面しても適切な対処ができる力を身につけさせるための教育が重要であることに鑑み、全ての児童に対してSOSの出し方教育を行うという文言に対しても、自殺問題は精神保健の問題との認識も重要で、精神疾患が五大疾病となった今、精神保健の理解は義務教育上の課題としても重要であるというようなことを提言しております。

 SOS教育について、SOSの出し方教育等、日本自殺予防学会の提言も含めて、区としてはどのようにお考えでしょうか。

◯大関教育総合支援センター長 

 今ご指摘いただいたように、自殺者統計によれば、やはり健康問題が一番大きな要因となっていると考えております。

 これは、児童・生徒も例外ではございませんので、やはり、頑張れ、頑張れという、個々に頑張りを求めるなどではなくて、SOSを出せる、あるいは周りが気づいてあげられることが重要だと思っております。

 このような観点から、教員も子どもたちの様子について把握して、担任が1人で抱え込まずに、区であれば、教育委員会、HEARTS等とも共同で事に当たる。そして、関係機関とも連携しながら、適切な支援をしていきたいと考えております。



 当クリニックは品川区議会の中で、自殺予防教育について、質問と要望を繰り返してきましたが、実は平成29年度、30年度品川区自殺対策連絡会にも荏原医師会代表として参加しています。この会は、高止まりが続く中高年男性の自殺、数は少ないものの増加している少年の自殺に対して、品川区の自殺対策計画を策定するために、各界代表、区役所内の各部署が一堂に会して話し合いを行うというものでした。

 保健所、医師会、警察、消防、品川児童相談所、ハローワーク、東京都労働情報センター、中学、小学校長、荏原保健センター、子ども未来部の部署からの情報提供と会議が行われました。当クリニックも地域の小児科医療機関の立場から、自殺について報告を行いました。(報告内容はこちら

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