鈴木博の医療-子育て政策の提言と実現状況

A 予防接種


「予防接種とは、すべての子どもたちが、健康に育つ権利を最低限保障するものです。ワクチンで防げる病気は、ワクチンで防ぎたい。親の経済力のちがいや地域差によって、必要なワクチンが受けられず、重い病気になって苦しんだり、後遺症が残ったり、亡くなることは許されることではありません。」(平成23年第4回定例会一般質問から)

ワクチンの定期接種化、任意接種の接種費用助成は、2011年(平成23年)品川区議会選挙で初当選して以来、区議会で一貫して小児科医として私が訴え続けてきた、医療保健政策です。

私が区議会議員に当選した当時、我が国は定期接種の種類は数えるほどしかない「ワクチン最貧国」で、ヒブワクチン、肺炎球菌ワクチン、水痘ワクチン、HPVワクチン、不活化ポリオワクチンなどは定期接種になっていませんでした。そのために、先進国では見られなくなった重い感染症の脅威に、我が国の子どもたちは曝されて続けていたのです。

また、生ポリオワクチンの集団接種がまだ続けられており、四種混合ワクチンではなく、三種混合ワクチンの時代でした。

区議会議員に当選してからは、品川区の任意接種の接種費用助成に精力的に取り組んできました。予防接種接種費用の助成によって、子育て家庭の経済的負担が軽くなり、接種率が高まり、子どもたちが病気の脅威から解放される環境を作り出すことができる、と確信していたからです。

この10年間の私のワクチン接種費助成実現の活動によって、他区に先がけ、品川区はB型肝炎ワクチン、ロタウイルスワクチン、さらにおたふくかぜワクチンの2回分の接種費用の助成を次々と実現してきたのです。




1.B型肝炎ワクチン  

 
B型肝炎ワクチンの接種の重要性と、接種費用の助成の意義について、2013年決算特別委員会、2013年一般質問、2013年予算特別委員会などで、たびたび区に要望を行ってきました。

 この要望が区を動かし、2014年(平成26年)4月、B型肝炎ワクチンに対する接種費用助成が実現しました。B型肝炎ワクチンは、その後2016年(平成28年)10月に定期接種に昇格になりましたが、それまで任意接種として、品川区の接種費用助成が続いたのです。

 B型肝炎ワクチン接種費用助成が実現するまでの、私と品川区の担当者の質疑応答をご覧ください(品川区HPより、一部修正しています)。



2013年(平成25年)、平成24年度決算特別委員会衛生費質疑 B型肝炎に関する部分(2013.10.7)

◯鈴木(博)委員  
 本日は成果報告書の139ページの定期予防接種、同じく任意予防接種、同じく感染症予防費のうちで感染症対策費、140ページの肝炎ウイルス検診に関連してお尋ねします。
 まず、任意予防接種と健康診査の肝炎ウイルス検診から、B型肝炎についてお尋ねいたします。B型肝炎について、簡単にご説明をお願いいたします。

◯伊津野保健予防課長  
 B型肝炎は、患者の血液や体液によりましてB型肝炎ウイルスを感染しまして、症状としましては倦怠感、黄疸、腹痛などの症状を起こします肝臓の病気です。

◯鈴木(博)委員  
 B型肝炎は今ご説明があったとおり、B型肝炎ウイルスによって起こる肝臓の病気です。

 感染すると急性肝炎になり、劇症型ではそのまま死亡しますが、山を越えれば1カ月ほどで回復します。しかし感染者の5%から10%は持続感染状態、すなわちキャリア化し、その一部が慢性肝炎になり、慢性肝炎の患者の一部はさらに肝硬変に進展し、その3分の1は肝臓がんを発病し、死亡する恐ろしい病気です。

 現在世界中で20億人の感染者がおり、大体世界中で3.5人に1人はB型肝炎ウイルスに感染したことがあると言われています。また、3億5000万人の持続感染者、キャリアとなっていて、年間世界中で50万から70万人が死亡していると推定されています。

 まず品川区の肝炎ウイルス検診の受診者数、およびその中でB型肝炎ウイルスの陽性者数と、陽性率についてお尋ねします。

◯江部健康課長  
 肝炎ウイルス検診実績は4172件でございまして、陽性者は16人、0.4%でございます。

◯鈴木(博)委員  
 肝炎ウイルス検診は、B型とC型と行っておりまして、今、健康課長からのお返事があったのは、お聞きしたB型肝炎ウイルスのことだと思います。

 肝炎ウイルス検診受診者の中で、B型肝炎には大体0.4%が陽性になっております。これは大ざっぱに言えば、大体250人に1人がB型肝炎ウイルスに感染したことがあるという計算になります。
 
 我が国では急性B型肝炎は1987年に感染症サーベイランス事業の対象疾患に加えられて、5類感染症、ウイルス性肝炎、Ae(ジェノタイプ)を除くとして、患者は全員報告することになっております。
 
 ところが2009年で報告者数は170例にとどまり、非常に報告者数が少なくて、これは実態とかけ離れているのではないか、あまり信頼できるデータではないと言われています。

 日本のさまざまな計算、研究によりますと、B型肝炎ウイルスの感染者は約1%と推定されており、この中で慢性肝炎に移行し、一部は肝硬変、肝臓がんに進行して、死亡しております。

 このB型肝炎を予防する有効な手段が、B型肝炎ワクチンの接種であります。B型肝炎ワクチンは現在任意接種に位置づけられておりますが、我が国では現在どのような方が、B型肝炎ワクチンを主に接種しているのか質問します。

◯伊津野保健予防課長  
 我が国におきましては、妊娠中にB型肝炎ウイルスの抗体をはかりまして、感染しているかどうかを検査します。妊婦が感染していた場合、生まれてくる赤ちゃんに対してリスクが大きいということでワクチンを健康保険の適用で接種しております。

◯鈴木(博)委員  
 現在B型肝炎ワクチンは主に、B型肝炎に感染している母親から生まれた赤ちゃんが、B型肝炎ウイルスに感染するのを防ぐため、接種されています。1986年に始まりました、B型肝炎母子感染予防事業、この施策によりましてB型肝炎ウイルスに感染する赤ちゃんはいなくなって、日本ではB型肝炎が根絶されるのではないかということが、今から30年ぐらい前に期待されていました。

 しかしながら現実には、B型肝炎はなくなりませんでした。1986年以降に生まれて、B型肝炎ウイルスの持続感染者になった赤ちゃん57名を研究した専門家の研究によれば、母親から感染してしまった例が37例、父親から感染した例が14例、原因不明で感染した例が4例と、赤ちゃんのB型肝炎は、父親あるいは原因がわからないという母親以外の原因で、3分の1も感染者がいたことがわかりました。

 母親からの感染例は、抗体の注射がうまくいかなかったことと、ワクチンが何らかの理由で効果を上げられなかったということですが、3分の1はこのような事業である母親への措置と無関係に、B型肝炎に感染しております。すなわち母親の状態のみで、ワクチン接種を決めるのは不十分ではないかと考えられるようになりました。

 また3歳以下のお子さまがB型肝炎に感染すると、ウイルスを体の中から排除することができずに、高率で体の中に取り込んだままになる持続感染、キャリアになる率が高いと言われております。

 実はB型肝炎ワクチンを、母親のB型肝炎ウイルス感染者に限って接種している、セレクティブワクチネーションというのを行っている国は、今、世界中でほとんどありません。世界保健機関(WHO)はB型肝炎ワクチンについて、今どのような方針を推奨しているのでしょうか。

 また我が国で現在、B型肝炎の患者は、どのような年齢層に多く見られるのでしょうか。あわせてご回答をお願いいたします。

◯伊津野保健予防課長  
 WHOでは、先ほど申しましたようなリスクの高い赤ちゃんのみならず、そういうことに限定することなく、全ての赤ちゃんにB型肝炎ワクチンの接種を勧奨しております。
 
 またB型肝炎ですが、我が国でも20代から30代の男女ともに、その年代に多い感染を示しております。

◯鈴木(博)委員  
 世界保健機関(WHO)では現在、B型肝炎の患者が20億人もおり、3万5000人がキャリアになっていて、年間50万から70万人の方が死亡しているという事態を重く見て、B型肝炎ワクチンを全ての赤ちゃんに接種すること、これをユニバーサルワクチネーションと言うんですが、これを強く推奨しております。

 これに従いまして、今、世界中でB型肝炎のワクチンは定期接種化が進んでおります。しかもB型肝炎は、世界的に見てその発生に地域差がありまして、北欧は少なく、日本を含むアジア地域は広範にB型肝炎が蔓延している、非常に流行しているというか、患者さんが多い地域になっております。

 現在世界中で179カ国が、B型肝炎ワクチンを赤ちゃん全員に接種するユニバーサルワクチネーションを行っておりまして、世界のWHO加盟国の中で、B型肝炎がほとんどいない北欧諸国とイタリア、アイスランドとともに、ユニバーサルワクチネーションを行っていない7つの国のうちの一つが、我が日本です。アジアでは日本だけが定期接種を行っておりませんで、北朝鮮も定期接種を行っています。

 しかし、近年我が国でもB型肝炎ワクチン接種の重要性を理解して、公費負担を行う自治体が増えてきています。東京23区内でも本年4月1日から、渋谷区が1回5000円の一部助成を始めました。公的な補助がなくても意識の高い保護者の間では、小児科学会、かかりつけの小児科医の勧めで、生後2カ月から我が子にB型肝炎ワクチンを積極的に接種する方が増えてきました。2012年3月の厚生労働省の予防接種部会でも、B型肝炎ワクチンを定期接種に組み込むことが提言されております。

 
ぜひ品川区でもB型肝炎ワクチンの大切さを理解して、品川の子どもたちがB型肝炎ウイルスに感染し、持続感染を起こし、一生苦しむことがないように、定期接種化されるより以前に接種費用の助成を始めてほしいと考えております。区のご見解はいかがでしょうか。

◯伊津野保健予防課長  
 委員ご指摘のように、昨年5月の国の検討会におきましても、第2次提言としましてB型肝炎ワクチンを含みます7つのワクチンが、定期接種化について提言されております。
 この4月から、そのうちの3つのワクチンでありますHibワクチン、小児用肺炎球菌ワクチン、子宮頸がんワクチンについて定期化されたところであります。残りの4つのワクチンにつきましても、国の動向を見据えながら検討していきたいと考えております。

◯鈴木(博)委員  
 わかりました。ぜひ積極的にご検討をお願いしたいと思います。

 それと、先ほど保健予防課長のご答弁にありましたように、B型肝炎は20代、30代に現在発病のピークがあります。B型肝炎は血液とともに精液、唾液などの体液で感染する、これは性感染症でもあります。

 エイズよりも感染力は強く、エイズと異なるのは、これが予防ができる病気だということです。20代のB型肝炎は急性肝炎の形をとることが多いのですが、最近新しいタイプの遺伝子への割合が増えてきて、B型肝炎に感染した方の大体10%は慢性肝炎に移行していくという、非常に憂慮すべき状態になっています。
 ノルウェーでは1995年に、注射器を介して発生したB型肝炎が、性行為を通じて広がって流行した事例があります。ちなみにノルウェーは日本と同じ一部の人だけにしかワクチンを打たない、セレクティブワクチネーションを行っている国であります。

 エイズ予防啓発事業の中で、ぜひB型肝炎の正しい理解と、B型肝炎あるいは肝炎の検査の勧め、それと任意接種でありますがワクチンの積極的な接種の勧奨を行っていただきたいと考えますが、区のご見解はいかがでしょうか。

◯伊津野保健予防課長  
 B型肝炎は、先ほど申しましたように20代、30代に感染のピークがありますし、多くは性交渉によって感染するということですので、エイズ予防啓発の中で、予防あるいはワクチンの接種を考えていきたいと考えております。

◯鈴木(博)委員  
 B型肝炎は最終的には少なからぬ人が肝硬変、肝臓がんになり、命を落とす恐ろしい病気です。またB型肝炎訴訟の患者のように注射器から偶然にも感染してしまい、B型肝炎を発病し、慢性肝炎に進展して今なお苦しまれ、差別と戦っている方もいらっしゃいます。

 
B型肝炎はワクチンで防げる病気です。特に乳幼児期に他の定期接種のワクチンとともに接種すれば、ほぼ100%予防できると言われております。ワクチンで防げる病気はワクチンで防ぎたい、これは子どもの健康を考える上で最低限の保障であります。ぜひB型肝炎に対する理解と積極的な取り組みを区に強く要望いたしまして、次の質問に移りたいと思います。



2013年(平成25年)、平成24年度決算特別委員会総括質疑 B型肝炎ワクチンに関する部分(2013.10.16)

◯鈴木(博)委員  
吉田委員に引き続き、みんな・無所属品川を代表して総括質疑を続けます。よろしくお願いいたします。

◯鈴木(博)委員  
 次に、衛生費に引き続きB型肝炎について質問を行います。

 我が国のB型肝炎感染者は、衛生費の質疑でも明らかにしたように、持続感染者は約100万人と推定されており、その10%は慢性肝炎、肝硬変、肝臓がんに進展していきます。我が国の肝臓がんの死亡者数は3万人代で推移しておりますが、B型肝炎の陽性者は大体15%と報告されております。したがって、子宮頸がんで死亡する3000人に対して、B型肝炎はその1.5倍以上の毎年5000人近くの人々が亡くなっているという計算になります。

 まず、今回はB型肝炎の治療について伺います。B型肝炎を発病した場合、どのような治療が行われているのでしょうか。またその医療費は、高額療養費制度の対象になるようですが、おおむねどのくらいかかっていると考えたらよろしいのでしょうか。

◯矢野品川区保健所長  
 B型肝炎にかかった場合の治療および費用ということでございますが、治療に関しては、インターフェロンや坑ウイルス薬などによる治療が行われます。年間におよそ80万円以上かかると言われております。

◯鈴木(博)委員  
 今、ご回答にあったように、B型慢性肝炎は、インターフェロンや核酸アナログ製剤という坑ウイルス剤を服用すれば、ウイルスの増殖を押さえて病気をコントロールできるようになりました。しかし、高価な薬を一生飲み続けなければならないこと、治療を続けても、残念ながら100%肝臓がんを防ぐことができないこともわかってきました。

 乳児期にB型肝炎ワクチンを受けてさえいれば、このような恐ろしいB型肝炎にはかかることはないのです。肝硬変、肝臓がんで苦しむ必要はないのです。しかも、現在、B型肝炎の肝硬変や慢性肝炎で苦しんでいる成人の方は、3歳以前に感染し、キャリア化した方が多く含まれています。
なぜ我が国は、このような大切なワクチンを定期接種化しないのか、理解に苦しむところです。

 まず、B型肝炎ワクチンについてお尋ねいたします。このワクチンはどのようなワクチンで、接種方法、副反応、現在の予防接種システムの中で位置づけられているのでしょうか。また、既に今年4月に定期接種化された小児に対するインフルエンザ菌b型(Hib)ワクチン、小児用肺炎球菌ワクチンと、価格、接種回数、ワクチンの安全性についての比較はいかがでしょうか、ご答弁をお願いいたします。

◯矢野品川区保健所長  
 B型肝炎ワクチンは、国の検討会において第二次提言で定期接種化すべきということで、区としても重く受けとめているワクチンでございます。ワクチンの単価がおよそ5000円くらいで、3回の接種が必要とされております。
 30年前くらいから実用化されているワクチンでございますので、接種時にちょっとした腫脹等があることもございますが、安全性は高いと言われております。
 Hibワクチン、肺炎球菌ワクチン等は、先に国のほうが一部助成ということで、任意接種化されていたところでございます。

◯鈴木(博)委員  B型肝炎ワクチンは、B型肝炎ウイルスの遺伝子を酵母菌に組み込んで製造された不活化ワクチンで、3回皮下接種で行います。3歳までならほぼ100%、40歳でも95%の方に免疫ができます。
 
副反応は、今、お話があったように、接種した腕が少し腫れるくらいで、ほとんど重い副反応は認められません。

 世界保健機関(WHO)も、平成4年に、全ての赤ちゃんにB型肝炎ワクチンを接種すること(ユニバーサルワクチネーションといいます)を勧告しました。これを受けて平成24年9月現在、WHO加入の194カ国のうち、実に184カ国がB型肝炎ワクチンを定期接種化しております。日本は、世界でも数カ国、アジアではWHO加盟国の中で唯一、B型肝炎を定期接種していない国になってしまいました。

 実は、我が国でも、平成24年5月23日の第22回厚生科学審議会、感染症分科会、予防接種部会で七つのワクチンの定期接種化すべきワクチンとして、Hibワクチン、小児用肺炎球菌ワクチン、子宮頸がん予防ワクチン、おたふく風邪ワクチン、水痘ワクチン、成人用肺炎球菌ワクチンとともに、B型肝炎ワクチンが挙げられていたのです。

 しかし、このうちHibワクチン、小児用肺炎球菌ワクチン、子宮頸がん予防ワクチンの3種のみが平成25年4月から定期接種となり、B型肝炎を含む残りの四つのワクチンは、任意接種のまま据え置かれてしまいました。

 ここでお尋ねします。この七つのワクチンが、定期接種化として取り上げられた理由と、なぜ、三つのワクチンのみしか定期接種にならなかったのか、区のご見解をお伺いいたします。

◯矢野品川区保健所長  
 七つのワクチンのうち、三つのワクチンが先に定期接種化されましたのは、先ほど一部お答え申し上げましたが、国のほうが任意接種であるが、一部助成をして接種を勧めていくという状況であったということでございます。

◯伊藤決算特別委員長  
 なぜ三つしかできていないかということについての質疑のようですが、わかる範囲でお答えください。

◯鈴木(博)委員  
 三つのワクチンが、一応助成が始まっているということで、先行して定期接種化されたことと、あとは財源上の問題で、お金がないからという理由で、残りが保留にされたみたいです。

 B型肝炎ウイルスは、血液だけでなく、唾液、精液、それから涙、汗からも感染します。まれですが、保育園や学校の運動部での感染例も報告されています。3歳前に感染すると慢性化する可能性が高く、慢性肝炎から肝硬変、肝臓がんに進行していきます。赤ちゃんにワクチンを接種することは、赤ちゃんをB型肝炎の感染から守り、将来の肝臓がんの発病を確実に防ぐのです。

 品川区では、定期接種が見送られた四つのワクチンのうち、水痘ワクチン、おたふく風邪ワクチン、成人用肺炎球菌ワクチン(ニューモバックス)には、他区に先駆けて先進的に3000円の一部助成が始まり、現在も行われております。

 ところが残念なことに、B型肝炎ワクチンのみ、いまだに助成がありません。私も小児科医として、水痘ワクチン、おたふく風邪ワクチンとともに、B型肝炎ワクチンについても、その大切さを保護者の方に十分にご説明し、接種を勧めておりますが、区の助成のあるなし、区の予診票のあるなしは、区のお墨付きと感じる保護者の方も多く、保護者の方のご判断に大きな影響を与えているように思われます。

 衛生費の質疑では、国の動きを見ながら検討していくというご答弁がありましたが、国の動きは現在のところ不透明です。国全体で定期接種化するには、財源の問題もあり、それが障害となってなかなか進まないということを聞いております。

 
緩慢な国の動きを待たずに、定期接種化されるまでのつなぎとして、区のご判断で任意接種に対し接種費用の助成をすることは、自治体として高い見識があると高く評価されることと思われます。

 ぜひ、区のご英断を求めたいと思いますが、区のお考えはいかがでしょうか。

◯矢野品川区保健所長  
 B型肝炎ワクチンの一部助成という件につきましては、区の財政上の負担を考慮しつつ、事業実施の効果等を比較して検討してまいりたいと思います。

◯鈴木(博)委員  
 ぜひ、前向きなご検討をお願いして、次にまいりたいと思います。


2013年(平成25年)第4回定例会 B型肝炎ワクチンに関する一般質問部分(2013.11.21

 最後にB型肝炎ワクチンについて、再度お尋ねいたします。

 本年6月の共同通信の配信ニュースでは、B型、C型肝炎による死者がアジア地域で急増し、2010年の死者は当初の予想を超える140万人以上になりました。危機感を持った、世界保健機関(WHO)は、エイズウイルスと同様に、肝炎対策に対しても本格的に取り組む方針を明らかにしました。 B型、C型のウイルス性肝炎に関連する死者は約144万人で、HIVとほぼ同数、結核やマラリアの死者数を上回ったそうです。


 世界肝炎連盟は、日本を「B型肝炎ワクチンの定期接種が義務化されていない数少ない国の一つだ」と名指しで指摘し、さらに、B型肝炎が近年性交渉によって若者の間で感染が広がっていることに懸念を示しました。

 我が国と同じ、限定されたワクチン接種selective vaccinationを行っていたノルウェーでは、1998年に性感染によって、B型肝炎が流行しました。 今、日本の多くの子ども達はB型肝炎ウイルスに、無防備で集団生活をしています。一刻も早く対策を急がなければなりません。


B型肝炎ワクチンを接種すれば、ほぼ100%、B型肝炎は防げるのです。 区はこのような世界の情勢について、いかがお考えでしょうか。


品川区保健所長答弁:
 最後に、B型肝炎ワクチンにつきましては、国の検討会で定期化すべきと提言されておりますので、区といたしましても、ワクチン接種の重要性は十分認識しているところでございます。

(鈴木議員再質問)

◯鈴木博君 
 自席から再質問させていただきます。

 1点だけ、B型肝炎についてお伺いします。先日の決算特別委員会で言及した、定期接種化が提言されている7つのワクチンのうち、3つは定期接種になって、水痘と、おたふくと、成人用肺炎球菌は半額補助が出ておりますが、B型肝炎のみまだこれが要するに残っているというような状態だということをご指摘しました。きょうは、国際情勢についてさらに今こういう状況なんだということをお伺いしたんですが、ぜひB型肝炎は補助の実現をお願いしたいと思います。

 もう一度ご答弁をお願いしたいと思います。

◯品川区保健所長答弁(矢野久子君):
 B型肝炎ワクチンについての再質問にお答えさせていただきます。
 区といたしまして、
助成につきましては財源確保も含め検討を進めてまいりたいと考えております。



解説)2013年、決算特別委員会の2度にわたる質疑、さらに一般質問によって、区にB型肝炎ワクチンの接種の重要性をご理解いただきました。区もB型肝炎ワクチン接種費用助成に動き出し、2014年から新規事業として、B型肝炎接種費用助成が実現したのです。

 下段は、B型肝炎ワクチン接種費用助成決定後の区の担当者とのやり取りです。



2014年(平成26年)平成26年度予算特別委員会衛生費(第5日目)B型肝炎に関する部分 (2014.3.10)

◯鈴木(博)委員  おはようございます。本日は、259ページの予防接種費のうち、定期予防接種、任意予防接種と、259ページの感染症対策費のうち、先天性風しん症候群対策。時間があれば、263ページ、母子健康診査費のうち、妊婦健康診査に関連した質問を行いたいと思います。よろしくお願いいたします。

 まず、259ページの任意予防接種の中のB型肝炎について質問いたします。
今回の予算案で新規事業としてB型肝炎ワクチンの接種費用助成が盛り込まれました。簡単にB型肝炎ワクチン接種費用助成事業の概要をご説明お願いします。

◯伊津野保健予防課長  
 この事業は、0歳児を対象としまして、1回3000円、3回まで、B型肝炎ワクチンの費用を助成するものです。

◯鈴木(博)委員  
 B型肝炎ウイルスは、血液だけではなく、唾液や精液や涙や汗からも感染します。B型肝炎ウイルスに感染すると、20~30%は黄疸・発熱などの急性肝炎症状となり、うち1%は劇症肝炎となり死亡します。残りの多くは1カ月ほどで回復しますが、10%は持続感染者、すなわちキャリアになります。
 我が国のB型肝炎の持続感染者、キャリアは、約100万人と推定され、その10%は、慢性肝炎、肝硬変、肝臓がんに進展していきます。

 我が国の肝臓がんの死亡者数は、年間3万人台で推移していますが、B型肝炎陽性者、B型肝炎ウイルス陽性者率は大体15%ぐらいなので、毎年約4500人の方がB型肝炎に関連して亡くなっていることになります。

 赤ちゃんにB型肝炎ワクチンを接種することが、赤ちゃんをB型肝炎の感染から守り、将来の肝臓がん発病を確実に防ぎます。3歳前ならほぼ100%、40歳でも95%の人に免疫ができます。
 副反応は、接種した腕が少し腫れるぐらいで、ほとんど認められません。

 品川区は、定期接種が見送られた4つのワクチンのうち、水ぼうそうワクチン、おたふく風邪ワクチン、成人用肺炎球菌ワクチン、ニューモバックスは、他区に先駆けて3000円の一部助成を行ってきましたが、B型肝炎ワクチンのみ助成がありませんでした。

 私も現場の小児科医として、水ぼうそうワクチン、おたふく風邪ワクチンとともにB型肝炎ワクチンの大切さを保護者の方に十分説明し、ワクチン接種を続けてきました。それとともに区議会でもたびたびB型肝炎について、それを予防できるB型肝炎ワクチンの接種の重要さについて訴え、助成の要望を行ってきました。

 今回、国の緩慢な動きを待たずに品川区がB型肝炎ワクチンの接種費用助成を始めることは、濱野区政の保健予防に対する高い見識が示されたものとして歓迎いたします。

 助成を要望してきた区議会議員として、この決定を誇りに思うものであります。B型肝炎接種を始めるに当たって、担当者からその意義について一言説明をお願いいたします。

◯伊津野保健予防課長  
 このワクチンは、国の専門部会でも提言されているワクチンですので、定期化されるまでの間、任意接種として区の事業として行うことは、保健施策として胸を張れるものであると考えております。

 また、このワクチンは特に今、肝炎訴訟とかも起こされております大きな問題ですので、将来の肝臓がんの予防、肝硬変の予防、そういう意味でも大変意義のあるワクチンであると考えております。


2014年(平成26年)第3回定例会 B型肝炎ワクチンに関する一般質問部分(2014.10.23

 待望のB型肝炎ワクチンの助成が4月から始まりました。今年度の接種の実績をお示しください。また、品川区では、どのようにB型肝炎ワクチンの接種費用の助成を広報していくのかお尋ねいたします。

◯品川区保健所長答弁(矢野久子君) 
 B型肝炎ワクチン接種費用助成の本年度の実績につきましては、平成26年4月から8月で延べ約1300件でした。周知につきましては、予診票の個別発送に加えて、区報、ホームページ、ポスター、子育てガイドなどを用い、進めております。


2016年(平成28年)第3回定例会 B型肝炎ワクチン接種費用助成実施後の一般質問部分(2016.9.23)

 B型肝炎ワクチンについてお伺いいたします。

 品川区では、平成26年4月から他の自治体に先駆けて、B型肝炎ワクチンの接種費用の半額助成を行ってきました。ようやく国も重い腰を上げ、 平成2810月から、B型肝炎ワクチンは定期接種となります。

 ところが、B型肝炎の定期接種の対象年齢は1歳までですが、厚労省の発表によると、 平成2641日生まれの乳児からが、 新しい定期接種制度の対象となるのだそうです。だとすると、1歳未満のB型肝炎対象者のうち、定期接種として実際にB型肝炎ワクチンを受けられるのは、平成28年10月1日の時点で、生後5か月までの児ということになります。6 か月以上1歳未満の乳児は、定期接種の対象者であるにもかかわらず、定期接種として、接種を受けることができません。

 これは非常におかしな話です。そのため、品川区は独自の救済処置として、平成27年10月3日から平成28年3月31日までに生まれた児に対し、 任意公費接種として接種費用の全額補助を行うと公表しました。

 任意接種の時は半額3000円だった助成が、定期接種と同じ全額助成となります。生後6か月以上の乳児が定期接種からこぼれてしまう事態に、ほとんどの区が何の対策も打ち出さない中で、この決定は高く評価されるものと思います。

 また、B型肝炎ワクチンが定期接種になる話を聞いて、年長児を持つ保護者の方からB型肝炎ワクチンを任意でも受けた方が良いか、質問を受ける機会が増えました。

 
 質問いたします。今回のB型肝炎ワクチン接種の救済処置の意義と、その周知方法について伺います。また、時に外来でお母さまから質問を受ける、 B型肝炎ワクチンの年長児への接種について、区のご見解はいかがでしょうか。

◯健康推進部長答弁(西田みちよ君) 
 私からは、感染症対策と健康施策についてお答えいたします。
 まず、予防接種についてですが、B型肝炎ワクチンは平成26年度より接種費用の一部を助成してまいりました。今回の救済措置は、定期接種化に伴い、1歳未満にもかかわらず定期接種の対象から外れてしまう児に対して、今年度限りの経過措置として定期接種の対象者と同等の助成を行うこととしたものです。

 周知は、広報、ホームページ、しながわパパママ応援アプリ、案内チラシ等により行い、できるだけ多くの対象者に受けていただきたいと思います。

 また、今回の定期接種化は早期に水平感染を予防する目的等から0歳児が対象となっており、その年代の接種率向上が優先的課題です。年長児への接種は有効でありますが、接種費用の一部助成等については考えておりません。


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