鈴木博の医療-子育て政策の提言と実現状況

Ⅰ.予防接種


「予防接種とは、すべての子どもたちが、健康に育つ権利を最低限保障するものです。ワクチンで防げる病気は、ワクチンで防ぎたい。親の経済力のちがいや地域差によって、必要なワクチンが受けられず、重い病気になって苦しんだり、後遺症が残ったり、亡くなることは許されることではありません。」(平成23年第4回定例会一般質問から)

 ワクチンの定期接種化、任意接種の接種費用助成は、2011年(平成23年)品川区議会選挙で初当選して以来、区議会で一貫して私が訴え続けてきた、第一の保健医療政策です。

 私が議員に当選した当時、我が国は定期接種の種類は数えるほどの「ワクチン最貧国」で、ヒブワクチン、肺炎球菌ワクチン、水痘ワクチン、HPVワクチン、不活化ポリオワクチンなどは定期接種ではありませんでした。そのため、主な先進国では見られなくなった重い感染症で、我が国の子どもたちは亡くなっていたのです。
 また、生ポリオワクチンの集団接種がまだ続けられており、四種混合ワクチンではなく、三種混合ワクチンDPTの時代でした。

 区議会議員に当選してからは、任意接種の接種費用助成に精力的に取り組んできました。予防接種接種費用の助成によって、子育て家庭の経済的負担が軽くなり、接種率が高まり、子どもたちが病気の脅威から解放される環境を作り出すことができる、と確信していたからです。

 この7年間の、ワクチン接種費助成実現のための活動によって、他区に先がけて、品川区はB型肝炎ワクチン、ロタウイルスワクチンの接種費用の助成を次々と実施してきました。

 そして現在、おたふくかぜワクチンの2回接種費用助成の実現のために、区に強く要望を行っています。





3.流行性耳下腺炎(ムンプス)ワクチン

 B型肝炎ワクチン、ロタウイルスワクチンと、品川区は子どもに大切なワクチン全てに、定期は全額、任意は半額の接種費用助成を実施している区になりました。まちがいなく、わが品川区は、渋谷区と並んで、こどもの予防医療の最先端に位置する区になったのです。

 次の課題は何か。ワクチン後進国から脱した我が国の予防接種制度の残る課題は、現在、問題になっている、おたふくかぜの後遺症であるムンプス難聴を発生させないため、おたふくかぜワクチンの2回接種助成(現在は1回助成)を実現することです。

 現在、おたふくかぜワクチンの2回接種助成に向けて、区に働きかけを行っています。

2017年(平成29年)第3回定例会 おたふくかぜワクチン接種費用助成拡大についての一般質問部分(2017.9.22)

 平成29年9月、日本耳鼻咽喉科学会は、全国5,600の耳鼻科医療機関に調査を行い、平成27年(2015年)から2年間に、おたふくかぜの後遺症であるムンプス難聴の発生数を公表しました。その調査では336人に難聴が見つかり、うち高度難聴が261人、両耳の難聴が14人、人工内耳、補聴器使用が必要になった例もあったそうです。年齢分布では、10歳未満が151人、10代が69人で、若年者が半数以上を占めていました。

 この結果に、守本倫子耳鼻咽喉科学会乳幼児委員長は、「おたふくかぜは自然にかかっておいたほうがいいといううわさは間違っている。ワクチンの定期接種化を進め、難聴になって後から苦しむ人をなくしたい。」と述べています。

 平成19年4月から、品川区は、おたふくワクチン、水ぼうそうワクチンの接種費の助成を始めました。この当時は、まだ予防接種の重要性が社会的にあまり認識されておらず、予防接種といえば、その効果よりも副作用を声高に問題視する一部の風潮もある中で、この決定は品川区の保健衛生行政の見識の高さを示すものとして、高く評価されています。

 しかし、おたふくワクチンは、現在まだ任意接種のままです。我が国では先進国で唯一、おたふくワクチンの定期接種を行っていない国になってしまいました。品川区のおたふく風邪の患者報告数と、おたふくワクチンの接種費用助成件数をお示しください。

 昨年は全国的におたふくかぜが流行し、品川区でも、東京平均よりは少ないものの、一定の患者が発生しました。おたふくワクチンは1回接種で患者が90%、2回接種で99%減少すると言われていますが、この結果を見ると、おたふくワクチン1回接種では、残念ながら流行を抑え込めないようです。おたふくかぜにかかることは、難聴の子どもを増やすことになるのです。

 おたふくワクチンもMRワクチンと同様、1歳、5歳の2回接種が必要だと考えます。

 おたふくかぜの流行を抑え込むために、おたふくワクチンの接種費用助成を、現行の1回から2回に増やすことを要望いたします。既に中央区ではおたふくワクチンの接種費用助成を2回に増やしています。
 
品川区もぜひ2回助成を開始し、その保健衛生行政の見識の高さをいま一度全国に示していただきたいと希望しますが、区のお考えはいかがでしょうか。

◯品川区保健所長答弁(西田みちよ君)

 次に、流行性耳下腺炎についてですが、品川区の過去3年の患者報告数は、平成26年は21件、平成27年は53件、平成28年は158件となっており、昨年の全国的な流行に伴い、区においても患者報告数は増加いたしました。

 また、予防接種の助成件数は、平成26年度3,210件、平成27年度3,372件、平成28年度3,441件となっており、接種率は90%以上になっております。

 流行性耳下腺炎ワクチンについては、現在、国が定期接種化に向けて検討をしており、
小児科学会が、2回接種を推奨していることは認識しております。費用助成の回数増については、今後、国の動向等を見ながら検討してまいります。



2017年(平成29年)平成28年度決算特別委員会歳入 おたふくかぜワクチン接種費用助成拡大に関する部分(2017.10.2)

 次に、おたふくワクチンについて、再度お尋ねいたします。おたふくかぜは、流行性耳下腺炎、ムンプスとも呼ばれ、耳の下の耳下腺、顎の下の顎下腺が腫れる、ムンプスウイルスによる感染症です。
 軽い発熱と、4日間から7日間、頬が腫れ、かなりの痛みを伴います。おたふくかぜは、髄膜炎、脳炎、膵炎、睾丸炎、卵巣炎など、多彩な合併症が知られています。しかし、現在問題になっているのは、おたふくかぜにかかった後、耳が聞こえなくなる難聴、ムンプス難聴です。

 そのムンプス難聴について簡単にご説明をお願いします。

◯舟木保健予防課長  
 おたふくかぜ自体は、比較的、予後がよい感染症ではありますが、脳炎や難聴など、今おっしゃいましたように、予後が悪い合併症もあります。このムンプス難聴は急性に発症しまして、感音性難聴で不可逆性のものなので、治療の効果が認められません。
 また、難聴の程度としては高度のものが多く、一側性の場合がほとんどなのですが、両側に発症する場合もあると言われています。

◯鈴木(博)委員  
 今お話があったように、ムンプス難聴は一側性、片方の耳のことが多く、その聴力が失われます。感音性難聴というのは、耳の奥の内耳が障害されるために、聴力が戻ることはありません。
 合併する頻度は、おたふくかぜに感染した200人から1000人に1人と言われ、一般質問でも紹介したように、日本耳鼻咽喉科学会の最近の調査では、この2年間で336人がムンプス難聴と診断され、約80%が高度難聴だったそうです。

 しかしながら、そもそもおたふく風邪にかからなければ、ムンプス難聴にはなりません。そして、おたふくかぜはワクチンで防げるわけです。おたふくかぜに対するワクチンの効果と、ワクチン1回接種、2回接種での予防効果の違いについて、簡単にご説明をお願いします。

◯舟木保健予防課長  
 ムンプスワクチンの有効率についてです。こちらは、1回接種ですと抗体の陽性率が73%から91%、2回ですと79%から95%と言われております。他国のデータでは、1回の定期接種で患者数自体は90%、2回定期接種することで患者数が99%減少したとも言われています。

 そのように、ムンプスワクチンについては、病気の発症予防だけではなく、合併症を予防する効果もあるということが言われています。

◯鈴木(博)委員  
 昨年、おたふく風邪が全国的に流行しましたが、品川区では、東京都全国平均に比べて、おたふくかぜの届け出数が少なかったと、一般質問でご答弁をいただきました。

 品川区では、おたふくかぜの任意接種助成を行っているために、おたふくかぜを発病した人を減らすことはできました。しかし、おたふくかぜ流行そのものを抑えることはできませんでした。

 現在、日本小児科学会やVPDの会は2回接種を推奨しています。

 また、WHOの発表によれば、おたふくかぜワクチンの定期接種を行っている世界118カ国のうち107カ国では2回接種を行っています。現在、おたふく風邪は、エジプト、リビアを除くアフリカ諸国と、日本など東アジアのみ流行が続いているのが現状です。

 補聴器をつけた難聴のお子さんと、時々お会いします。中には人工内耳の手術をお待ちのお子さんもいらっしゃいます。みんな素直でかわいいお子さんたちです。
 全てがおたふくかぜの合併症ではありませんが、新生児聴覚スクリーニングで異常がなかった子に、その後、感音性難聴が見つかった場合、多くはおたふくかぜの合併症によると言われています。

 ムンプス難聴の看護師の方とお会いしてお話しする機会がありました。彼女は片側性の難聴のために日常生活には支障ありませんが、片方の聴力が完全に失われており、もしももう片方の耳が聞こえなくなったらどうなるか、考えると不安で、夜も眠れない日があるということでした。

 近い将来、おたふく風邪ワクチンはMRワクチン(麻疹風疹混合ワクチン)と一緒になって、新三種混合ワクチン、いわゆるMMRワクチンとして定期接種2回になる予定です。国もそのための準備をしています。

 しかし、今現在は任意接種であり、1歳のときにMRワクチン、みずぼうそうワクチンと同時に
1回接種のみです。他の生ワクチンは、全て2回接種です。ムンプス難聴はおたふくワクチンを2回接種することにより、おたふくかぜの発病を防げれば起こらない病気です。1回接種より2回接種のほうがより確実に防げると思いますが、品川区のお考えはいかがでしょうか。

◯舟木保健予防課長  
 国において定期接種化に向けて、より安全性の高いワクチンの開発を進めていることは、こちらも存じております。区としましても、国の動向等を見ながら検討してまいりたいと思います。



2017年(平成29年)平成28年度決算特別委員会衛生費 おたふくかぜワクチン接種費用助成拡大に関する部分(2017.10.6)

 次に、歳入に続いて、おたふくワクチンの2回接種助成について、再度お尋ねします。そもそもおたふくかぜにかからなければ、おたふくかぜによるムンプス難聴は起こりません。

 歳入でも簡単に触れましたが、品川区はおたふくワクチンの任意接種助成を行っているために、昨年、おたふくかぜの流行のときも、他の地域に比べて、おたふくかぜの患者、発病数を減らすことはできました。しかし流行そのものを抑えることはできませんでした。
もしも品川区がおたふくワクチンの2回接種の助成を行っていたとしたら、昨年のおたふくかぜの流行はどうなったと、区はお考えでしょうか。

◯舟木保健予防課長  
 予想ですが、いろいろな要素があるため難しいとは思いますが、おたふくかぜ自体の不顕性感染が3割程度あるということで、おたふくかぜの症状が出ない、不顕性感染の方でもウイルスを排泄して感染源となり得るので、流行そのものを抑えることはできなかったのではないかと思います。
 ただ、2回助成することで2回接種する方が少しでも増えれば、発生、患者の報告数自体は減った可能性はあると思ってはいます。

◯鈴木(博)委員  
 ムンプス難聴は、おたふくワクチンを2回接種することにより、おたふくかぜにならなければ起きません。

 しかも、
1回接種より2回接種のほうがより確実に、おたふくかぜにかからず、ムンプス難聴を防ぐことができます。ぜひ、中央区に続いて、おたふくワクチンの接種費用の助成を2回実施することを強く要望したいと思います。

 今回は要望といたしますが、「予防できる難聴が、こんなに多いのが残念だ。行政などの関係者や国民にも広く、このワクチンの重要性を知っていただきたい」という、前回紹介した耳鼻科学会の乳幼児委員長の発言も受けとめて、前向きな検討をぜひよろしくお願いしたいと思います。



2018年(平成30年)第3回定例会 おたふくかぜワクチン接種費用助成拡大についての一般質問部分(2018.10.26)

 まず、品川区の感染症対策についてお伺いいたします。

 この間、おたふくかぜの接種費用の2回目の助成を要望してきました。おたふくかぜになると、約1,000人に1人ないし2人の割で難聴を残します。このムンプス難聴と呼ばれる難聴は片耳のことが多く、一生聴力が戻らない深刻な後遺症です。

 守本倫子日本耳鼻咽喉科学会乳幼児委員長は、「おたふくかぜは自然にかかっておいたほうがいいといううわさは間違っている。ワクチンの定期接種化を進め、難聴になって後から苦しむ人をなくしたい」と述べています。また、朝日新聞にも、「おたふくかぜは一度どこかでうつればいいものだと思っていた。一定の比率で難聴になるのがわかっていたら、ワクチンを受けていた」という切実な患者の母親の声が掲載されていました。

 ワクチンで防げる病気はワクチンで防ぎたい。今年度の品川区医師会、荏原医師会の両医師会の政策要望にも、ともにおたふくかぜワクチン2回目の接種費用の助成が挙げられています。今、品川区の全ての子どもにかかわる医療関係者が、おたふくかぜワクチンの2回接種費用助成を求めているのです。

 おたふくかぜワクチンは、1回で90%、2回で99%患者が減少すると言われています。おたふくかぜワクチンは生ワクチンの一つであり、麻疹・風疹混合ワクチン、水痘ワクチンと同じく2回接種で免疫を完璧につけることが世界の常識であり、日本小児科学会も強く勧めている方式です。

 
おたふくかぜワクチン接種費の助成を1回から2回に増やすことを再度要望いたします。それは、おたふくかぜワクチンの接種費用助成を行うことによって接種率の向上が期待でき、その結果、恐ろしいムンプス難聴で苦しむ子どもを減らすことができるからです。

 ムンプス難聴は、生まれてから起こる難聴の最も多い原因です。おたふくかぜワクチンの助成を行うことは、ムンプス難聴の発生を減らすことであり、広い意味で障害者支援にもなるのです。

 既に2015年から中央区が、2017年からは中野区も、おたふくかぜワクチンの2回目の接種費用助成を始めています。品川区もぜひおたふくかぜワクチンの2回目の接種費用助成を行うことを再度強く要望いたしますが、品川区のご見解はいかがでしょうか。

◯品川区健康推進部長答弁(福内恵子君) 

 私からは、品川区の感染症対策と健康施策についてお答えします。

 まず、おたふくかぜワクチンについてですが、区では、平成19年度より1歳から3歳児を対象に接種費用の助成を開始し、区内の契約医療機関で接種を受けた場合、3,000円の助成を1回行っており、90%を超える接種率となっております。

 確実におたふくかぜの免疫をつけるため、
今後、国の定期化を待たずに、2回目の助成について検討を進めてまいります。



2019年(平成31年)平成30年度予算特別委員会衛生費 おたふくかぜワクチン接種費用助成拡大に関する部分(2019.3.11)

 次に、おたふくかぜワクチン(以下、ムンプスワクチンと呼びます)について伺います。

 ムンプスワクチンの2回接種が4月から始まる予定です。まず、ムンプスワクチン2回接種の具体的な事業内容をご説明ください。

○鷹箸保健予防課長
 これまで任意で1回接種のみ全額助成とさせていただいていましたムンプスワクチンですが、1歳から小学校就学前までの2回接種を半額助成とさせていただくものです。

○鈴木(博)委員
 我が会派および品川区の両医師会が、強く実施を希望してきたムンプスワクチンの2回接種が、今回予算化されたことを高く評価したいと思います。

 MRワクチン、水痘ワクチン、ムンプスワクチンは、生きたウイルスの病原性を失わせて体に接種し、体の中で繁殖させ、強い能動免疫をつくる生ワクチンです。以前は生ワクチンは1回接種で生涯免疫が持続すると言われていましたが、近年、1回接種では5%は免疫ができない人がいること、時間がたつと免疫が下がってきて、発病を阻止できなくなることがわかり、2回接種が生ワクチン接種の基本方式となりました。
 ムンプスワクチンの接種費用助成を2回行うことによって、接種率の向上が期待でき、その結果、ムンプス難聴で苦しむ子どもを減らすことができるのです。

 ムンプスワクチンの1回接種補助を行っているのが、2018年12月現在では、23区中15区しかなく、2回目の接種まで行っている区は、中央区、中野区に次いで、品川区は第3番目ということになります。

 昨年あるところで、小児科専門医の資格を持つ政治家の方が、「あまり世間では知られていませんが、品川区は予防接種では23区のトップなんです。」と、お話されていました。
 おたふくかぜをワクチンで予防するという、子どもの健康を考えれば、最低限の接種費補助の施策も行えない区が8区もあるなか、しっかり生ワクチンの基本である2回接種の助成に踏み切った品川区の子どもの予防接種行政は、23区中トップクラスだと専門家の間では高く評価されているのです。

 今回のムンプスワクチン2回接種の意義について、今一度区の抱負をお聞かせください。


○鷹箸保健予防課長
 ムンプスワクチンの1回接種で88%、2回接種で99%、発症者を減らせると言われておりまして、この2回接種は日本小児科学会でも推奨しているところでございます。
 今回、1回から2回へ助成を増やしたことで、委員のお話にもありましたムンプス難聴にかかられるお子さんを、とにかく減らしていきたいと考えているところでございます。



 品川区は平成31年予算案に、おたふくかぜワクチン接種費用の2回助成を盛り込みました。平成29年から、おたふくかぜワクチン接種費用の助成を要望してきましたが、ついに実現することができました。

 これで、品川区はロタウイルスワクチン、おたふくかぜワクチンと、子どもに必要なワクチン全てに接種費用の助成を行っている、子育て医療先進区になったのです。(現在、都下23区のうち、ロタウイルスワクチン、おたふくかぜワクチン2種ともに接種費用の助成を実施しているのは、当クリニックの調べた範囲では、品川区以外は、渋谷区、杉並区、中野区のみでした。)


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