2.新型コロナウイルス感染症を押さえ込むカギは何か



 2019年12月に新型コロナウイルス感染症が発生して以来、世界中でさまざまな治療薬候補が浮かんでは泡のように消えていきました。その中で、正当な評価を受けた薬がある一方、いじめのような不当な差別的な扱いを受けてきた薬もありました。

 2021年5月現在、日本で公式に使用できる治療薬は、レムデシビル(ベクルリー)、デキサメタゾン(デカドロン)、バリシチニブ(オルミエント)の3剤のみです。自宅~ホテル療養の患者さんに投与できる薬はありません。本当にこれでコロナと戦えるのでしょうか。他の薬はなぜ認可されないのでしょうか。

 この章では、コロナの治療薬の現況について、役人発のバイアスのかかっていない、客観的な情報を提示していきたいと思います。



B 治療薬
(新型コロナワクチンの個々の治療薬については、別論文治療薬剤についてで、詳細に解説してあります。より詳細なコロナ治療薬についての知識をお求めの方は、本文をぜひご一読ください!)

①コロナワクチンの病勢の経過と治療薬の作用について

 まず、現在までに明らかになっている、新型コロナウイルス感染症COVID-19の病勢病期を簡単におさらいし、それぞれの時期に効果が期待される治療薬を確認していきましょう。(詳しくは治療薬剤についてをご参照ください。)

 

 新型コロナウイルス感染は、まずSARS-CoV-2(新型コロナウイルス)が飛沫感染、接触感染、一部空気感染によって、主にヒトの呼吸器に侵入することから始まります。

 ヒトの呼吸器に侵入したSARS-CoV-2は、ウイルスの突起の部分(S蛋白)によって、ヒト細胞の表面にあるACE2受容体という部分にくっつきます。そして、細胞の膜表面にあるTMPRSS2(膜貫通型蛋白分解酵素)という酵素が、ウイルスのS蛋白の一部を溶かすと、ウイルスはヒト細胞内に侵入できる状態と変わり、容易にヒト細胞内に侵入していきます。わざとヒトの細胞に食べられて、細胞内に入り込む別ルートも存在します。

 そして、ヒト細胞の中で、SARS-CoV-2は自分の遺伝子=RNAを放ちます。このウイルスRNAはヒトのRNA依存性RNAポリメラーゼという酵素を使って、ヒトの細胞成分を材料にして、ウイルスRNAを大量に作りだします。このウイルスRNAは、今度はヒトの細胞成分を使ってまくって、たくさんのSARS-CoV-2ウイルス本体を作り出します。

 そして最終的にヒト細胞を食い破って、大量のSARS-CoV-2が細胞外に拡散されていくのです。エイリアンの世界みたいですね。そして寄生されていたヒト細胞は死に、他の細胞がどんどんウイルスに侵されていくのです。

 このようなウイルスによる組織の崩壊や炎症による攻防が、まず呼吸器系の組織で繰り広げられます。そのため、感染した人は、咳、鼻水、熱などの症状がみられます。しかし、新型コロナウイルス感染症に感染した患者の80%の感染者は、このかぜ症状のみで病状は軽快し、治癒に向かいます。
 これが、新型コロナウイルス感染症の第1期、「ウイルス増殖期」の経過です。レムデシビルやファビピラビルはこの時期に効果が期待されているのです。

 しかし、残りの20%のヒトは、段々肺のダメージがひどくなり、呼吸状態が悪化していきます。この時期に胸部MRIを撮影すると、左右の肺の下部に影(肺炎の影)を認めます。
 5~10%のヒトはさらに肺炎が増悪し、呼吸困難がひどくなり、酸素吸入と必要になり、人工呼吸器の助けがないと呼吸することができなくなります。これが重症者です。その一部は、ボロボロの肺を休めるために、体外式膜型人工肺(エクモ:ECMO)が装着されます。それでも病状が悪化すれば、死に至ることになります。

 これが、新型コロナウイルス感染症の第2期「免疫暴走=サイトカインストーム期」です。この時期は、ウイルスが直接悪さをするというよりは、身体をウイルスから防衛するために発動されたヒトの免疫反応が、混乱状態の中で指揮系統から逸脱して、コントロール不能な暴走状態=サイトカインストームとなり、周囲の細胞を無差別に攻撃、殺戮し、組織が崩壊していく状態です。
 この時期には炎症を抑えるステロイド剤=デキサメタゾン、免疫の暴走を抑える抗IL-6抗体=トシリズマブ、JAK阻害薬=バリシチニブなどが効果が期待されています。


 さらに、新型コロナウイルスが侵入する部位であるACE2受容体が分布する、脳や心臓、腎臓、血管などでは、炎症とサイトカインストームの嵐の中で小さい血の塊=微小血栓が大量に形成されます。

 この微小血栓はこれらの臓器の小さな血管を詰らせ、患者は心筋梗塞、脳梗塞、肺塞栓などで急死してしまいます。これが、新型コロナウイルス感染症の最も致命的な合併症である、第3期=免疫血栓期です。この治療薬は、血栓を溶かすヘパリンです。

 それでは、COVID-19の第1期、第2期、第3期に効果が期待される治療薬を、個別にみていきましょう。



②コロナワクチンの薬物療法の比較

 分類  薬剤名  商品名  投与方法  開発状況  対象  当クリニックの短評
抗ウイルス薬 RNA依存性
RNAポリメラーゼ阻害薬
レムデシビル ベクルリー 注射剤  特例承認(使用可) 中~重症 臨床症状が数日改善が早まる、改善に
有意差なしとの両報告あり

少しでも有効な薬剤に見せるため、厚労省と国立国際医療研究センターの大先生達の涙ぐましい努力あり
抗ウイルス薬 RNA依存性
RNAポリメラーゼ阻害薬
ファビピラビル アビガン 錠剤  観察研究で投与
(条件付使用可)
軽症対象 解熱短縮傾向認めるも、統計学的に有意差出ず(検討患者数が少ない)
アビガンを推奨することは、厚労省と国立国際医療研究センターに刃向かうことになるため、専門家での推奨の声は小さい
免疫抑制薬 デキサメサゾン ステロイド剤 錠剤、散剤
液剤、注射剤
 承認(使用可) 酸素投与が必要
な中~重症
重症例で死亡率を改善。
死亡率改善は認められた、唯一の薬剤(英国の研究)。
蛋白分解酵素阻害薬 カモスタット フォイバン 注射薬  臨床試験中
酸素投与が必要
な中~重症?
P3臨床試験中、有効との評価あり
(5月に研究終了、6月に申請検討か)
蛋白分解酵素阻害薬 ナファモスタット フサン 注射薬  臨床試験中
 酸素投与が必要
な中~重症
アビガンと併用で、ICU退院早まる
報告あったが、誰かの圧力で中断?
駆虫薬 イベルメクチン ストロメクトール 錠剤  臨床試験中
 軽症例? 有効、無効と両報告あるが、著効は示せないよう。一部で強く推奨の声あり
抗IL-6R抗体 トシリズマブ アクテムラ 注射薬  臨床試験中
酸素投与が必要
な中~重症
死亡率改善の有効性は示されず
理論的には有効。今後の研究に期待
抗IL-6R抗体 サリルマブ ケブザラ 注射薬  臨床試験中
酸素投与が必要
な中~重症
死亡率改善の有効性は示されず
JAK阻害薬 バリシチニブ オルミエント 錠剤  特例承認(使用可)  中~重症 レムデシビルの併用薬のため、特別扱いで承認(いーな)。1日症状改善早くなる
JAK阻害薬 トファシチニブ ゼルヤンツ 錠剤 (欧州で臨床試験中)  中~重症? 欧州で臨床研究中。バリシチニブと同種。レムデシビルと絡まないため、承認微妙
抗血栓薬 ヘパリン ヘパリン 注射薬  承認(使用可)  凝固系に異常のある中~重症 血栓症が疑われる重症例に、免疫血栓予防に有効。現在、広く使用されている



③新型コロナウイルス感染症の主な治療薬の解説

1)レムデシビル(ベクルリー)

 現在、レムデシビルは新型コロナウイルス感染症の標準的治療薬として確固たる地位を確立し、世界50カ国以上で使用されています。ただ、この薬の最大の欠点は、新型コロナウイルス感染症にあまり効かないことです。

 しかし、何故このような、あまり効かない薬が他の薬を押しのけて、新型コロナウイルス感染症の世界標準的な治療薬という栄光ある地位を勝ち取ることができたのでしょうか。

 それは、ひとえにアメリカの力業によるものです。アメリカは国の総力を挙げて、アビガンなどを押しのけて、このアメリカ製抗ウイルス薬を新型コロナウイルス感染症の世界標準治療薬に押し上げました。

 レムデシビル製造元のギリアド・サイエンス社は、オセルタミビル(タミフル)の世界的独占特許権も持つ、世界第2位の巨大バイオ製薬企業であり、アメリカ国防長官だったドナルド・ラムズフェルドも会長を務めていました。

 2020年に中国で行われた、レムデシビルの新型コロナウイルス感染症重症患者に対する臨床試験NCT04257656では、レムデシビルは有効性を示せませんでした。
 しかし、2020年、アメリカ政府、NIHの肝いりで、世界中の一流医学者を網羅して行われた多国間医師主導治験ACTT-1では、臨床的改善が偽薬15日、レム群では10日と、めでたく5日間の症状の改善を短縮する効果が報告されました(死亡率には差なし。重症患者では有効性みられず)。
 この国際的治験には、我が国からも国立国際医療研究センターの偉い専門家の先生方が参加され、以降彼らは我が国におけるレムデシビルの元締めとして、競争薬アビガンを叩き潰し、大いに活躍されることになったのです。

 また、2020年に行われた多国間臨床試験GS-US-540-5774では、レムデシビル5日間投与群の投与11日目のみ、症状改善が認められました(その他では有意差無し)。ただし、5日投与と10日投与で差が無かったため、標準的投与期間は5日となりました。
 これに対し、2020年WHOが主導し、世界30カ国5000人を対象に行われたSOLIDARITY Trialでは、レムデシビルは死亡率に有意差を認めませんでした。その結果、WHOは2020年11月20日、入院患者でのレムデシビルの使用を、症状の如何に問わず推奨しないと声明しました。

 このWHOの指針について、厚生労働省のペーパー医者役人は腰を抜かして驚きました。なぜなら、彼らは何か行う時に、たびたび権威付けにWHOを利用してきたからです。今回、アメリカ勢(NIH、CDCなど)とWHOの対立が、WHOによるレムデシビルの非推奨という声明になってしまったため、あわててお太鼓持ちのマスコミ族記者に「承認時に根拠にした治験のデータが否定されたわけではないうえ、有効性がないという結果でもないため、厚労省は承認について見直す予定はない」などと書かせて、火消しを図ったのでした。

 そのくせ、その一方で彼らは例によって、こそこそと陰で姑息な軌道修正を謀っていきました。
 まず、2021年1月7日、それまで「酸素投与が必要、ECMO導入、人工呼吸管理が必要な重症患者」としていたレムデシビルの投与対象を、「SARS-CoV-2による肺炎を有する患者」まで拡大しました。これは重症患者ではレムデシビルが効果を示せないため、軽症~中等症まで投与の幅を広げれば、もう少し効果がはっきりでるかもしれない、などと考えたためと思われます。
 しかし、アビガンに対して、彼らが嫌がらせのように執拗に要求してきた、それが必要とされるデータ、変更すべき医学的な根拠は全く明示されませんでした。

 さらに2021年4月23日、バリシチニブ(オルミエント)が新型コロナウイルス感染症の第3の治療薬として承認されました。しかし、バリシチニブは単独ではなく、あくまでレムデシビルとセットで使用するという条件でした。レムデシビル+バリシチニブの2剤を組み合わせで使用すると、レムデシビル単剤の時より、何と
1日も症状が早く改善するという結果が報告されたため(多国間医師主導治験の第2弾ACTT-2の結果)、喜び勇んで超スピードの認可となったものと思われます。
 もちろん、アビガン審査のような重箱の角をつつくような超厳密な臨床試験の結果は求められませんでした。何としてもレムデシビルが効果がある素晴らしい薬剤であることを示したい、厚労省の小役人と国立国際医療研究センターの偉い大先生達の熱い想いがひしひしと感じられますね。

 レムデシビルは重篤な肝障害、腎障害、発疹、下痢が報告されています。アビガンの催奇形性だけが、情報弱者とアベガー左翼どもの間では馬鹿の一つ覚えのように連呼されていますが、レムデシビルの副作用も十分に警戒しなければならない性質のものです。したがって、自宅療養やホテル療養の軽症患者には、この薬は基本的に投与できません。

 いずれにしろ、レムデシビルは大して効かないが効く例もある、というレベルの治療薬です。抗ウイルス薬なので、「ウイルス増殖期」の中等症からの積極的に使用すれば、ある程度の効果は期待できると思われ、今後も「特例承認薬」として、使用されていくものと思われます。

2)ファビピラビル(アビガン)

 厚労省のペーパー医者役人と国際レムデシビル友の会員のエライ感染症専門医の先生方の激しい敵意と中傷を一身に浴びて、日陰の身を余儀なくされているのが、我が日の丸抗ウイルス薬=アビガンです。

 詳しい経緯は別稿論文を参照していただきたいと思いますが、客観的に見て、メイド・イン・アメリカのレムデシビルのように、国を挙げた支援があれば、 アビガンはとっくの昔に処方ができるようになっていたはずです。そして、今自宅待機を余儀なくされている沢山のコロナの患者さんへ、症状軽快するための治療薬として大いに貢献していたでしょう。本当に残念です。

 まず、アビガンが現在使われていないと思っている情報弱者の人もいるかも知れませんが、現在アビガンは適応外compassionate useとして、手続きを行えば、使用は可能です。ただし、アビガンを使わず、 「標準的治療薬」レムデシビルを使用するように、さまざまな圧力が加えられるようです。

 受診料で上級国民のお大尽生活を満喫しているNHKの厚労省癒着のお太鼓族記者の書いた、バイアスのかかった「啓蒙科学記事」を見つけたので、紹介いたします。

 政府は、当初、2020年5月中の承認を目指し、 富士フイルム富山化学が治験を進めていました。しかし、データが思うように集まらず、2020年7月には藤田医科大学などのグループが「初日から投与すると熱が下がりやすい傾向などが見られたものの、 統計的に明確な有効性は確認できなかった」などと発表しました。(NHK)

→当時のコロナの緊迫した状況で、偽薬投与ならコロナで死亡するかも知れないという恐怖から、偽薬を嫌がる医療関係者が出るのは当たり前ではないですか。この状況下で厚労省は研究をまとめるのあたって、藤田医大に何か支援などはしたのでしょうか。

 そもそも藤田医大がアビガンの研究を任されたのは、ダイアモンド・プリンセス号の乗客の治療を開院前の藤田医大病院で行ったことに対する報奨だったためと思われます。厚労省が本気でアビガンを認可するつもりなら、国立国際医療センターで治験するはずであり、そもそも安倍首相=経産省ラインの強い要請に面従腹背でしぶしぶ応じただけで、厚労省のペーパー医者役人にとって、「身内」ではない富士フィルムの薬など、端から本気で認可するつもりなどなかったのです。彼らは今後も認可するつもりはありません。さまざまな言い訳を行いながら、アビガンの適応拡大に抵抗を続けていくでしょう。

 藤田医大は地方の小さな私立大学として、孤軍奮闘して臨床研究を立派にやり遂げましたが、実際担当した教授が、「症例数が少ないために有意差が出なかった、悔しい。」と述べたように、国立国際医療センターのような親方日の丸ではないため、力不足は如何ともし難かったようです。有意差がでるだけのスケールで被験者を集めることができませんでした。

 
2020年9月になって富士フイルム富山化学が、「アビガンか偽薬かを患者に伝えずに投与する方法で治験を行った結果、 PCR検査で陰性になるまでの期間を2.8日短縮する効果が確認された」などと発表し、10月に厚生労働省に承認申請を行いました。

 これに対し、2020年12月に開かれた厚生労働省の専門家部会では、「投与した医師の先入観が影響している可能性を否定できない」 などと慎重な判断を求める意見が委員から相次ぎ、厚生労働省が海外の治験のデータなどを踏まえて改めて審査を行う方針を示しています。(NHK)

→筋書き通りの結末ですね。しかも審議会の詳細は公表されていません(マスキングされています)。
 投与した医師の先入観で、結果が影響される?もしもこんな阿呆な「意見」を、役人に媚びて発言した「大先生委員」がいたとしたら、この大先生委員は今までご自身でも、先入観で結果に影響を与えるような行動を取ってきたわけですね。語るに落ちるとはこのことではないしょうか。

 普通はこんなことはあり得ないでしょ。治験医師の尊厳を踏みにじる、このような馬鹿げた暴言を吐く、医師の風上にも置けぬ上級大先生の名前と業績をぜひ明らかにしてほしいものです。しかし、「企業秘密のため」厚労省は発言者を隠しています。卑怯ですね。

 ちなみに医薬品第二部会委員は以下の大先生達です。中野教授のような立派な業績を上げている小児科医も入っていますが、国際レムデシビル友の会の有力メンバーも鎮座されているではないですか。

     浦 野 泰 照 うらの やすてる 東京大学大学院薬学系研究科薬品代謝化学教室 教授
     大 隈 和 おおくま かず 国立感染症研究所血液・安全性研究部第一室 室長
     大 曲 貴 夫 おおまがり のりお 国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院 国際感染症セ ンター長
     亀 田 秀 人 かめだ ひでと 東邦大学医学部内科学講座 教授
   ○ 川 上 純 一 かわかみ じゅんいち 公益社団法人日本薬剤師会 副会長
     川 崎 ナ ナ かわさき なな 横浜市立大学生命医科学研究科創薬再生科学研究室 教授
     菊 池 嘉 きくち よしみ 国立研究開発法人国立国際医療研究センターエイズ治療・研究開 発センター臨床研究開発部 部長
   ◎ 清 田 浩 きよた ひろし 井口腎泌尿器科・内科 新小岩 副院長
     島 田 眞 路 しまだ しんじ 国立大学法人山梨大学 学長
     宗 林 さ お り そうりん さおり 独立行政法人国民生活センター 理事
     田 島 優 子 たしま ゆうこ さわやか法律事務所 弁護士
     登 美 斉 俊 とみ まさとし 慶應義塾大学薬学部薬剤学講座 教授
     中 野 貴 司 なかの たかし 川崎医科大学小児科学 教授
     濱 敏 弘 はま としひろ 公益財団法人がん研究会有明病院 院長補佐・薬剤部長
     半 田 誠 はんだ まこと 慶應義塾大学医学部輸血・細胞療法センター 非常勤講師
     増 井 徹 ますい とおる 慶應義塾大学 医学部臨床遺伝学センター 特別招聘教授 /国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター MGC 特任研究員
     南 博 信 みなみ ひろのぶ 神戸大学大学院医学研究科腫瘍・血液内科 教授
     宮 川 政 昭 みやかわ まさあき 公益社団法人日本医師会 常任理事
     山 口 拓 洋 やまぐち たくひろ 東北大学大学院医学系研究科医学統計学分野 教授
     山 本 善 裕 やまもと よしひろ 富山大学大学院医学薬学研究部感染予防医学講座 教授
     渡 辺 亨 わたなべ とおる 医療法人社団圭友会 理事長

 しかも、この大先生たちからぼろくそに言われた単盲検試験は、実は富士フィルムが事前にPMDAに相談し、PMDAから了解を得ていたのです。すなわち、厚労省は自分(PMDAは所管独立法人)が相談されて認めた試験を、自分でダメだしするという茶番を演じているのです。

 そもそも、富士フィルムがアビガンの申請を出すたびに、「××(人名)から00月までにアビガンを認可するよう圧力がかけるので、厚労省のお役人が困っています。」という、他の薬の申請では考えられない、ネガティブ報道が
必ず行われてきました。
 2020年前半期は安部首相が圧力をかけたことにされて、××が安部首相のため、世の中のアベガーどもと朝日新聞が大騒ぎし、アビガンは巻き添えを食って徹底的に罵倒されたのです。

 ところが、2020年冬は安部首相はすでに退陣し、菅首相はアビガン承認にあまり積極的ではなかったにもかかわらず、「アビガンが12月までに承認されることに決まっていて、厚労省のお役人は困っています。」とまた性懲りも無く、全く同じ内容の悪意ある報道が垂れ流されたのです。


 田村大臣は、承認の見通しについて、「申請前から承認の時期が決まっていることはありえない。申請してもらい、有効性や安全性を確認したうえで、承認するかしないかを決めるので、いつ承認するか、予断を持って答えられる状況にない」と説明しました。


 あれれ、コロナワクチンとは全くトーンの異なる、厚労省の役人の筋書き通りの発言に終始しているのです。

 質問している厚労省の癒着お太鼓持ちの族記者どもに、「なぜあなた達はアビガンにだけ、毎回毎回そのようないやらしい質問をするの?」「安部さんは退陣していますよ。他の薬やコロナワクチンでも、同じ質問をしたことがあるの?」「こんな馬鹿なネガ質問を、誰に頼まれてしているの?」と逆に質問したい気持ちです。(もちろん、こんな逆質問をすれば、「ホードーの自由に圧力かけた!!」とか、逆ギレして馬鹿騒ぎしそう。冗談ですよ。)

 現在ワクチンの接種が進み、COVID-19の病態も明らかになり、軽症者の重症化リスクと在宅、ホテル療養の患者に対する治療管理が焦点になってきます。このときに、いつまでも2020年4月のように、自分たちは白亜の大病院にこもって、治療はおいらたちがレムデシビル+バリシチニブ+デキサメタゾンでしっかり行うから、おまえ達は往診だけして、指をくわえてみていればいいよ。では済まないのではないですか。
 一線で診療する医師にも、傍観するだけではなく武器が必要です。

 少なくともレムデシビルと同程度の効果があるアビガン、フサン、イベルメクチンなどが、治療の障壁=厚労省のペーパー医者役人の抵抗を打ち破り、治療薬として認可され、全ての医師が自由に投薬できるようになれば、我が国の新型コロナウイルス感染症制圧が見えてくるのに、本当に残念です。

3)イベルメクチン(ストロメクトール)

 現在、一部のマスコミではアビガンに変わって、イベルメクチンの特例承認を求める声が上がっています。イベルメクチンとはどのような薬剤なのでしょうか。

 イベルメクチンは、伊東市のゴルフ場近くの土の中から、ノーベル賞を授賞した大村智博士によって発見された、放線菌という細菌が産生する物質から作られた薬です。イベルメクチン(ストロメクトール錠)は腸管糞線虫症と疥癬の治療薬として、現在も日常診療で処方されている駆虫剤です。

 副作用は悪心、下痢、腹痛、かゆみ、発疹、肝機能障害などが報告されていますが、特に重大なものはありません。

 イベルメクチンがコロナの治療薬の候補に挙がったのはかなり昔です。2020年4月4日、オーストラリア、メルボルン市の研究チームは、1回量のイベルメクチン投与で、SARS-CoV-2の複製を48時間以内に止めることができたという実験結果を報告しました。

 その後、アメリカのユタ大学などの研究チームが、イベルメクチンを使用した患者の死亡率が、非投与の患者に比べて、約6分の1に抑えられたという驚異的な臨床報告を発表しました。ところが、このデータをまとめたサージスフィア社という会社が、たびたびデータの捏造を行っていた会社とわかり、この論文は撤回されてしまうという、イベルメクチンにとって幸先の悪いスタートとなってしまいました。

 我が国でも、2020年5月6日から北里大学でイベルメクチンについて、臨床研究が行われています

 一方、発展途上国では、イベルメクチンは廉価であり、すでに駆虫剤として広く使用されていたため、現在も幅広く投与されているようです。そして、有効だという報告も多数出ています。また、我が国でも、東京医師会長やマスコミ、国会議員の一部がイベルメクチンの認可を求めているようです。

 しかし、尾崎東京医師会長は2020年5月18日に、日本医師会COVID-19有識者会議が緊急声明文を発出したことをご存じないのでしょうか。この緊急声明文は、あまりにも上から目線で感情的に「既存薬」を攻撃しているせいか、現在では全文は読めなくなっているようです。以下に再録いたしましょう。

 一方で、現在治療薬の候補として検討されている薬剤には、すでに他の疾患を適応として承認を得ているものもあるが、これらの既存薬は、適応外処方であるものの、日本の医療保険制度のもとでは一律には禁止されておらず、医師の裁量及び患者のインフォームドコンセントにより、現時点においてもCOVID-19 に対する処方は可能である。

 「今回のCOVID-19パンデミックは医療崩壊も危惧される有事であるため、新薬承認を早めるための事務手続き的な特例処置は誰しも理解するところである。しかし
有事だからエビデンスが不十分でも良い、ということには断じてならない。

 「特にCOVID-19のように、重症化例の一方で自然軽快もある未知の疾患を対象とする場合には、症例数の規模がある程度大きな臨床試験が必要となる。」

 「観察研究だけでは有意義な結果を得ることは難しいことを指摘しておきたい。

 「観察研究により有望とされた事項は、質の高いランダム化比較試験により厳格に確認または否定されなければならない」と述べられているとおり、適切な臨床試験の実施は必須である。一般にランダム化比較試験に患者を登録するよりも観察研究の方が患者の同意も取得しやすい。また試験参加医師の負担も少ない。パンデミック下の臨床研究ではその傾向がさらに顕著である。しかし
「エビデンスの判定基準を下げる」 という誘惑には抗うべきである。 そうしないと当該薬の有効性は承認前には証明されず、有効かつ安全な治療薬の開発にも悪影響を及ぼすであろう。

 「有効性を永遠に証明できなかった薬剤は過去にも存在した。
科学的に有効性が証明された治療を選ばずに証明されていない薬剤を患者が強く希望したために、治癒するチャンスをみすみす逃した事例が過去にあったことを忘れるべきではない。

 そして「科学」を軽視した判断は最終的に 国民の健康にとって害悪となり、汚点として医学史に刻まれることなる。最近COVID-19に感染した有名人がある既存薬を服用して改善したという報道や、一般マスコミも「有効』ではないかと報道されている既存薬を何故患者が希望しても使えないのか、と煽動するような風潮がある。 またパンデミック下のランダム化比較臨床試験不要論を主張する医師も存在する。

 「しかし我が国が経験したサリドマイドなど数々の薬害事件を忘れてはならない。 品質、有効性、および安全性の検証をないがしろにした結果の不幸な歴史をのりこえるべく、今日の薬事規制が存在している。」(引用ここまで)

 これは2020年5月当時、アビガン承認を推進する安部首相と経産省主体の官邸に対し、それを阻止しようと厚労省ペーパー医者役人とそのお仲間のレムデシビル国際友の会会員の偉い感染症のセンセイ達が、タッグを組んで食らわした特大カウンターパンチだったのです。この緊急声明の破壊力は絶大で、アビガンは葬り去られてしまい、安部首相もアビガン押しを断念したのでした。

 しかしこの緊急声明文の「既存薬」攻撃は、すべてイベルメクチンについても当てはまるではありませんか。
 
 2021年4月、東京医師会がイベルメクチンの使用を要望するのなら、少なくともこの高飛車で傲慢な医師会有識者会議の声明をまず撤回するよう、働きかけるべきです。

 イベルメクチンが発展途上国で新型コロナウイルス感染症の治療に貢献しており、しかも副作用があまり問題にならないなら、厚労省はこれらの国の新型コロナウイルス感染症治療支援のためにも、レムデシビルグループには行っている、特例承認を考えても良いのではないでしょうか。

C.PCR検査 に続く

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1.新型コロナウイルス感染症流行は終息するのか?
2.新型コロナウイルス感染症を押さえ込む鍵は何か-A.ワクチン