授乳中の薬について
                                                    2025.11.3

授乳中にお母さまが病気になることもありますよね。こんな時、薬を飲んでもよいのか、赤ちゃんのために薬を我慢したほうがよいのか、悩むところです。実際医師によっては断乳するように指導されるケースもあるようです。

本当に薬を飲んだら、赤ちゃんに母乳をあげるのは好ましくないのでしょうか。

授乳中に飲んではいけない薬は少数ですが存在します。これらは、母乳中に大量に移行し、しかも赤ちゃんに重い副作用を起こすおそれのある薬剤です。抗がん剤(一部)、免疫抑制剤、放射性医薬品がこれにあたります

また、新生児期(生後1ヶ月)から生後2ヶ月までの赤ちゃんは、肝臓、腎臓の機能が未熟なため、薬が体内に蓄積し、副作用が発現するおそれがあります。
したがって、この時期の赤ちゃんに授乳中のお母さまは、薬の服用には慎重な対応が必要です。特に副作用に注意しなければならない薬は、この時期の服用は避けたほうがよいでしょう。


薬の添付文書には、「投与中は授乳を中止する」という記載が多くみられます。
これは実際の服薬では問題はないことがほぼわかっているのに、安全性を証明したデータがそろっていない薬に多く見られるようです。製薬会社の自己防衛の観点から書かれた文書も多いといわれています。

当クリニックは母乳栄養を推進する小児科医の立場から、授乳中のお母さまへの投薬を行っています。当クリニックが処方を行っている薬剤の一覧を下記に示します。


ただし、処方された薬を飲み始めても、以下の点にはご注意なさってください。
@服用中でも、念のため赤ちゃんの状態にはよく注意しましょう。母乳の飲み(食欲)、機嫌、眠りの状態、便性はどうか観察します。また、服薬中、赤ちゃんが母乳を飲まなくなる、寝てばかりいる、眠らなくなる、ぐずる、変に興奮している、下痢をする、発疹が出るなど、心配な症状があらわれたら、一度当クリニックにご相談下さい。

A一般的に母乳中の薬の濃度が最高になるのは、服薬2〜3時間後だといわれています。そのため、服薬直後に授乳するのが一番母乳に影響が少ないといわれています。このときにお薬を飲むのがよいでしょう。

授乳中、服用可能な薬のリスト(当クリニック処方薬一覧)

 薬剤種類  薬剤名  評価 *
抗菌剤 サワシリン A
バナン A
メイアクト A
セフゾン A
クラリス A
ジスロマック B
ホスミシン A
抗ウイルス薬 ゾビラックス A
バルトレックス A
タミフル B
解熱剤 カロナール A
ブルフェン A
ロキソニン B
抗ヒスタミン薬 ジルテック A
アレグラ A
ザイザル -
クラリチン A
デザレックス -
ニポラジン B
アレジオン -

鎮咳剤 メジコン A
アスベリン B
アストミン B
去痰剤 ムコダイン B
ムコソルバン B
喘息治療薬 キプレス B
パルミコート A
フルタイド B
ホクナリンテープ B
消化器系薬 ガスター A
タガメット B
ナウゼリン A
プリンペラン B
下剤 酸化マグネシウム A
ラキソベロン A
プルゼニド A
ブスコパン B
止痢整腸剤 ロペミン B
整腸剤 A
タンナルビン B

*評価Aは多くの授乳婦で研究した結果、安全性が示された薬剤。Bは 限られた授乳婦で研究した結果、乳児へのリスクは最小限と考えられる薬。

参考:大分県『母乳と薬剤』研究会「母乳とくすりハンドブック」


    国立成育医療研究センター:授乳中の薬の使用について

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