Ⅵ.その他の子どもの病気


1.自家中毒


2.臍ヘルニア

3.鼠径ヘルニア

4.周期性発熱(PFAPA症候群)



Ⅵ.その他の子どもの病気 2023.9.15更新

1.自家中毒


自家中毒症とは、210歳のお子さまが特に原因が無く、又は病気の経過中に急に吐き始め、顔色が青くなり、ぐったりする病気です。

この病気はどちらかというと神経質な子が起こしやすく、何度も症状を繰り返すので周期性嘔吐症とも、また血液中に脂肪のカスであるケトン体(アセトン体)が異常に増えるため、アセトン血性嘔吐症とも呼ばれます。

小児特有の病気で、小学校の高学年くらいになると起こらなくなります。


自家中毒の症状

症状は、悪心、嘔吐、腹痛、下痢と頑固な頭痛がよく見られます。このような症状がある時、尿の検査を行ってケトン体が陽性であれば、自家中毒と診断します。

自家中毒の原因

原因は、かぜや嘔吐下痢症、運動後の疲れ、強い緊張などの精神的ストレス等により、体の脂肪が分解され、脂肪の分解産物(燃えカス)であるケトン体が大量に作られると発症します。

また、子どもが夕食を抜いたりすると、エネルギー源であるブドウ糖が消費されて無くなり、(非常用エネルギーである)脂肪が動員・分解され、やはりケトン体が大量に作られます。このケトン体が血液中に溜まってくると、人間は気分が悪くなり、吐き気がし、ぐったりします。


自家中毒の治療

治療は、吐き気止めの坐薬(ナウゼリン坐剤)を入れて、できるだけ水分(経口補水液など)と甘いジュースなどを少量ずつ頻回に与えます。

吐き気が強い場合はブドウ糖を注射すると、脂肪の分解が抑えられ、症状が改善します。脱水を伴う場合は、点滴(輸液)を行います。


自家中毒の予防

予防としては、肉体的精神的にストレスが加わった時は、甘いものを早めに食べて、脂肪の分解(ケトンの産生)を抑える。食事を抜いて空腹のまま、就寝しない。適度のおやつを食べる。ふだんの食事で脂肪をとりすぎない。

などの生活上の注意があげられます。




2.臍ヘルニア

臍ヘルニアは赤ちゃんのでべそです。

赤ちゃんはお母さんのお腹にいる(胎児)ときは、へその緒(臍帯)で母体から栄養を受け取り、老廃物を捨ててもらっています。そのため、赤ちゃんのおなかの中までへその緒が続いているため、臍の周りに筋肉や筋膜はありません。この部分は臍帯を通すために、穴があいているのです。

出生後、臍帯が切れると、へその緒は速やかに乾燥して脱落します。穴の開いていた臍の周囲の部分にも筋肉の膜が被い、穴を塞ぎます。
しかし、何らかの理由でこの穴がふさがらず、泣いたりしてお腹に圧力がかかった時に、塞がっていない穴の部分から腸が飛び出してくるのが、臍ヘルニア(でべそ)です。

臍ヘルニアの症

泣いたとき腹圧でへそが飛び出します。特に痛みなどはありません。このでべその部分は触ると軟らかく、押すとぐにゅっと腸がつぶれる感触があります。指で押し戻すと、穴(ヘルニア門)の部分からお腹の中に戻せますが、泣いたりして腹圧が増すとまた出てきます。

この臍ヘルニアは日本人の5~10人に1人の割で見られ、珍しいものではありません。未熟児ではさらに頻度が高く、実に3分の2ぐらいに臍ヘルニアを認めます。

ヘルニアは生後3ヵ月ぐらいまではだんだん大きくなり、その後はおなかの筋肉がしっかりしてくると、だんだん飛び出さなくなり、1歳ごろまでには80~95%は見られなくなるといわれています。

また、臍ヘルニアは先端の皮膚が破けて腸が飛び出すこともないし、途中で突出部がねじれて危険な嵌頓ヘルニアを起こすこともまずない、といわれています。

したがって、特に心配することなく、経過をみることができるでしょう。


臍ヘルニアの治療

小さなでべそは治療の必要はなく、放置でよいと思います。

現在、臍ヘルニア圧迫療法を行うと早くきれいに治るので、大きな臍ヘルニアには当クリニックでは積極的に圧迫療法を行っています。
(くわしくはこちらをご覧下さい→臍ヘルニア圧迫療法)。

もしも、1歳過ぎても治らなかったり、皮膚のたるみが目立つ場合は、小児外科で手術します。(大学病院を紹介いたします)



3.鼠径ヘルニア

鼠径(ソケイ)ヘルニアは腸や卵巣が鼠径部や陰嚢に入り込み、そこが異常に膨らむ病気です。

鼠径ヘルニアの症状

泣いたり、いきんだりしたときに鼠径部や陰嚢に異常な膨らみがみられます。特に痛みなどはありませんが、押してみるとぐじゃぐじゃしたり、硬く張りつめた感じがします。

ふくらみが赤黒くなったり、異常に痛がり大泣きする、おなかが硬く張ってきたときは嵌頓(かんとん)ヘルニアの可能性があり、この時は緊急の手術が必要です。


鼠径ヘルニアの原因

睾丸(こうがん。おちんちんの玉)は生まれるまでに、腹膜鞘状突起(ふくまくしょうじょうとっき)という腹膜の突起(出っぱり)の管を通って、陰嚢に移動します。

この腹膜鞘状突起は睾丸が移動した後、自然に閉じますが、これが生まれてからも閉じず、この袋に腸や卵巣が入り込んで鼠径部が異常に膨らむものが鼠径ヘルニアです。

鼠径ヘルニアの治療

生後3ヶ月までにヘルニアが出たときは1歳ごろまでに自然に治る可能性もあるため、とりあえず様子をみます。

嵌頓へルニアの場合は緊急で手術になります。いつ手術になるかは小児外科医の判断を待ちます。




4.周期性発熱(PFAPA症候群)

子どもの発熱の原因は感染症がほとんどですが(ほかには、熱中症などのこともあります)、感染症では無いのに高熱が出て、炎症反応も高い値を示す病気のグループがあります。この病気は、周期性発熱と呼ばれています。

周期性発熱とは

定期的に熱を出し、病原体(細菌、ウイルスなど)の感染が原因でない病気です。周期性発熱という病気のグループには、PFAPA症候群や家族性地中海熱(FMF)、高IgD症候群(HIDS)などが含まれます。

このうち、家族性地中海熱(FMF)や高IgD症候群(HIDS)は遺伝的な病気で珍しい病気です。
(家族性地中海熱の詳しい解説はこちら、高IgD症候群の詳しい解説はこちら

これらに対し、小児科外来で比較的よく見るのは、PFAPA症候群です。

この稿では、このPFAPA症候群について、詳しく解説いたします。


PFAPA症候群とは


毎月1回ぐらい(平均28日ぐらい。3~8週位の間隔で)、同じぐらいの間隔で39.0℃~40.0℃の高熱を出します。熱は3日から7日ぐらい(平均5日ぐらい)続き、その後、解熱します。

口の中に潰瘍(アフタ)ができるアフタ性口内炎、喉が腫れる咽頭炎、頸のリンパ節が腫れる頸部リンパ節炎を合併することも多いため、それぞれの頭文字を取って、PFAPA(
Periodic Fever=周期性発熱、Adenitis=リンパ節炎、Pharyngitis=咽頭炎、Aphthosis=アフタ、の頭文字を並べたもの)症候群と呼ばれます。

この病気は1987年に初めて報告された時は、マーシャル症候群と呼ばれていました。


PFAPA症候群の疫学

家族性地中海熱などの遺伝性疾患とは異なり、遺伝する病気ではないと考えられています。

まれに家族内発生の報告もみられます。正確な頻度は不明ですが、当クリニックにも何人かこの病気のお子さまがいるので、それほどまれな病気ではないようです。

また、PFAPA症候群は感染症ではないため、他の子どもに感染させることもありません。

PFAPA症候群の症状

5歳までに発症し(2~3歳が多い)、一定の間隔で定期的に発熱を繰り返します。しかし、熱と熱の間はお子さまには元気で、普通と変わりありません。

10歳ぐらいになると症状が落ち着き、発熱しなくなることがほとんどです。

まれに、10歳を過ぎても発熱を繰り返したり、最近では大人になってから発病する人も報告されるようになりました。

急に熱を出し、39.0℃~40.0℃の高熱が3日から7日ぐらい(平均5日ぐらい)続き、その後解熱します。高熱が出ている間はぐったりしているお子さまが多いですが、元気な子もいます。

口の中や舌にアフタ性口内炎が出現します(50~70%位)。

扁桃炎は50~70%のお子さまにみられ、中にはアデノウイルス扁桃炎のような滲出物=白いぶつぶつが出現することもあります。

また、喉が痛くなる咽頭炎は60~90%に認められます。これらの症状は、熱が出る前日ぐらいから、起こることが多いようです。

頸部リンパ節炎は、左右両側の頸部にリンパ節の腫れ=しこりを触れます。少し痛みを伴うことが多いようです。

その他、頭痛、腹痛、関節痛なども発熱時にみられるようです。

また、PFAPA症候群は免疫の暴走で起こる病気で、感染症では無いため、咳鼻、結膜炎などはみられません。

PFAPA症候群を示すお子さまは、成長・発達には問題なく、発作がないときは、全く健康に生活できます。また、10歳を過ぎるとあまり熱を出さなくなって、症状が見られなくなるお子さまがほとんどです。

PFAPA症候群の検査

特別な検査はありません。症状と血液検査の結果から診断します。

血液検査は重症感染症と類似した、白血球増多とCRP高値という炎症反応を示します。そのため、重症感染症や周期性好中球減少症との鑑別が重要です(治療法が全く異なるため)。

また、他の遺伝性の周期性発熱症候群の病気やなどと鑑別するため、遺伝子検査が必要になることもあります。

PFAPA症候群の治療

PFAPA症候群は感染症では無いため、抗菌剤(抗生物質)は無効です。

高熱で本人がつらいときは、アセトアミノフェンなどの解熱剤の服用がある程度有効です。

治療としては、第1にステロイド剤が投与されます。少量のステロイド剤によって、熱は1日以内に速やかに下がりますが、ステロイド剤投与によって、発熱の期間が短縮されるといわれています。

第2に、シメチジン(タガメット)、ガスターなどの胃薬です。これらの胃薬は免疫調節作用ももっているため、PFAPA症候群の約60%に効果があります。

これで十分効果が無く、高熱が頻回で学校に十分登校できない場合は、喉の奥にある扁桃やアデノイドを手術で切除します。

この手術により症状は劇的に改善しますが、再発する例もあり、全身麻酔が必要とされるため、実施には慎重なな検討が必要です。

*「高熱を繰り返す病弱な子どもだったが、扁桃腺を取ったら、見違えるように元気になった。」というエピソードのお子さまが、昔は結構いらっしゃいました。
今考えると、この中にはPFAPA症候群のお子さまがかなり含まれていた、と思われます。

参考
免疫系疾患分野|周期性発熱・アフタ性口内炎・咽頭炎・リンパ節炎症候群(PFAPA)(平成24年度):難病情報センター

PFAPA症候群 (Periodic Fever with Aphtous Pharingitis and Adenitis)について:自己炎症疾患友の会



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