Ⅰ.子どもの消化器系の病気


1.腸重積




Ⅰ.子どもの消化器系の病気    2023.9.1更新

1.腸重積

腸重積は、生後5ヶ月から2歳前後の乳幼児(ピークは7~8か月児)に多い病気です。3か月未満、6歳以上にはあまり見られません。

大体2:1で男児、特にまるまると太った赤ちゃんに多いといわれています。腸重積は1000人に2~4人の割合で発病するという、それほど珍しい病気ではありません。また、腸重積になったお子さまの10%が再発するといわれています。

腸重積とは、腸の中に腸がめり込んでいってしまう病気で、早期に発見できれば特殊な治療(高圧浣腸)で腸は元に戻りますが、発見が遅れると腸が腐って、手術が必要になってしまいます。

腸重積は一刻を争う病気であるので、腸重積が赤ちゃんにとってきわめて重大な病気であることを理解している、小児科医の診察を受けることが大切です。


腸重積とは

腸重積とは、腸のなかに腸がめりこんでしまう病気です。小腸の最後の部分が大腸にめり込む回盲部型が最も多く、その他小腸に小腸がめり込む回腸-回腸型、大腸に大腸がめり込む結腸-結腸型もみられます。

めり込んだ腸は、腸の動きによってさらに奥に入り込んでしまい、外側の腸に締め付けられて血流が途絶え、組織がくさって壊死(えし)におちいっていきます。

そのため、早期に発見し、早期に元に戻す(整復する)ことが重要です。


腸重積の症状

症状は、間欠的腹痛、嘔吐、血便が三主徴(三つの主な症状)となります。

突然の激しい啼泣、嘔吐で発症します。今まで元気で機嫌のよかった赤ちゃんが突然大泣きしたり、嘔吐したりします。

冬季、かぜの症状の後、起こることもあります。火がついたように激しく泣いたかと思うと、けろりとして機嫌が直ります。

このような啼泣が間欠的に続きます。やがて吐物は黄緑の胆汁様に変わっていきます。

この時点で腸重積が疑われ浣腸すると、イチゴゼリー状の真っ赤な血便が出てきます(70~90%)。


腸重積の原因

腸重積の原因はよくわかっていません。ただ、かぜが流行るときに多いため、腸をつつむ腸管リンパ節が腫れて、これが腸を引き込むのではないか、という説があります。(特にアデノウイルスやロタウイルスの感染が約30%にみられます)

また、小腸にはメッケル憩室(けいしつ)といって、先天的に脹らんだ小袋が付いていることがあり、これが先進部になって腸重積を引き起こすこともあります(特に年長児)。また、アレルギー性紫斑病も、腸が腫れるため、腸重積の原因となります。


腸重積の治療

腸重積が疑われたら、まずおなかを触って、硬い腸のしこりがあるかどうかを確認し、次に浣腸して血便が出るかみます。超音波検査、腹部レントゲン検査、腹部CT検査を行い、腸の入り具合や腸閉塞の程度を評価します。

腸重積と診断されたら、バリウムやガストログラフィン、空気を肛門から注入し、レントゲンで透視しながら、めりこんだ腸を圧力で引き出す高圧浣腸が行われます。

75~85%はこの高圧浣腸で腸が元に戻り、それとともに赤ちゃんはみるみる元気になります。

しかし、腸重積が起こってショックを起こしている例、48時間以上たってしまった例、高圧浣腸でも整復がうまくいかない場合は、開腹手術をして腸を戻し、またすでに壊死を起こしている部分は切除します。


腸重積の予後

腸重積は発病後、12時間以内に治療を始めれば、98%は整復に成功し、手術などまで至りません。

腸重積は約10%で再発します。腸重積を起した赤ちゃんは、嘔吐、血便、激しい啼泣などの症状に注意して下さい。


*ロタウイルスの自然感染は、腸重積の原因となります。そのため、ロタウイルスワクチンも、ワクチン由来の腸重積を警戒しなければなりません。

国立感染症研究所の調査では3ヶ月児では、ワクチン接種によって、わずかに腸重積の頻度が上昇するようです(有意差はないようです)。 そのため、当クリニックでは腸重積の頻度が低い2ヶ月、3ヶ月までにロタウイルスワクチンの接種が終わるよう、1価のロタリックスをお勧めしています。

国立感染症研究所:腸重積症サーベイランスのアップデート

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