2020年(令和2年)区議会 第1回定例会 一般質問全文


自民・無所属・子ども未来を代表して、一般質問を行います。よろしく、お願いいたします。

 燎原の火のごとく燃え上がった、2020年の新型コロナウイルス感染症の大流行は、2009年の新型インフルエンザ感染症を上回る、大きな惨禍を 日本の社会にもたらしました。

 今回の新型コロナウイルス感染症の流行について、小児科医の視点から振り返り、品川区の今後の取り組みと対応について、お尋ねしてきたいと思います。

Ⅰ. 品川区の感染症対策について

1.新型コロナウイルス感染症対策について


 まず、新型コロナウイルス感染症について、現在までに明らかになった知見をまとめてみます。

 新型コロナウイルス感染症は、中国武漢市から、あっという間に世界中に広がりました。

 潜伏期は、平均約5日で最大14日、感染様式は飛沫感染と接触感染です。感染力は2.6人とほぼインフルエンザ並みですが、三密では感染力は18.7倍に高まるようです。 また、我が国の検討では、感染を広げているのは感染者の2割のみで、8割は他の人に移すことはありませんでした。 感染力は発病数日前が最も強く、発病5日後にはほぼ無くなる様です。

 患者年齢はインフルエンザ感染症とは大きく異なり、子どもに少なく、 高齢者、基礎疾患を持つ人、肥満、喫煙者に集中しています。我が国の検討だと、致死率は020歳代までは0%、80歳代以上では11.9%でした。

 新型コロナウイルス感染症の症状は、発熱、かぜ症状、頭痛、全身倦怠感、味覚・嗅覚障害などです。80%は1週間以内で治りますが、20%は1週間を過ぎた頃から悪化し、肺炎となります。さらに5%は重症肺炎に進行し、3%がARDS(急性呼吸窮迫症候群)などで死亡します。重症化は、からだの免疫機構がコントロールを失って暴走し、感染細胞と正常細胞を見境いなく殺してしまう、サイトカインストームが起こるため、といわれています。

 80%の人は自然に治るため、治療は必要ありません。重症となる人をいかに早く発見し、治療を始めるかがポイントとなります。レムデシビルが特例承認されましたが、アビガンも治験薬として投与されています。

 患者数は、欧米からの帰国者が持ち込んだ4月がピークで、急増する患者で品川区も医療体制が逼迫しましたが、徐々に落ち着き、6月に入りほぼ流行は終息した状態となりました。

 感染の確認のために、現在PCR検査、抗原検査、抗体検査が実施できるようになりました。ただし、早く検査を行っても、重症化を防ぐことはできません。

 まず、PCR検査は、ウイルスに特徴的な遺伝子の部分を、特殊な器械を使って増幅し検出する検査法です。陽性になれば、新型コロナウイルスが存在している証拠にはなりますが、検出率は70%ぐらいです。したがって、PCR検査が陰性だからといって、新型コロナウイルスにかかっていないという証明にはなりません。

 次に、抗原検査は、検体中のウイルスを検出する検査法で、主に鼻咽頭から検体を採取します。抗原量が少ないと陽性にはならず、陽性率は3766.7%に留まっています。

 最後に、抗体検査は、過去に新型コロナウイルスに感染したことがあるか昔の感染歴を調べる検査です。したがって直近の感染はわかりません。検体採取は、血液を採血します。陽性の感度も低いですが、かぜのコロナウイルスの抗体も拾ってしまうため、特異度も低く信頼性の低い検査です。
 以上、新型コロナウイルス感染症について、簡潔にまとめました。

 
まず、今回の新型コロナウイルス感染症流行に対する、品川区の2-5月の取り組みについて、簡単にご報告をお願いいたします。

 今回の新型コロナウイルス感染症において、 患者は一般診療所ではなく、主に帰国者・接触者外来を持つ感染症指定病院などに誘導され、診療が行われました。品川区では、東京品川病院がこの間のコロナ診療に大きな役割を果たしました。

 しかし、一般診療所には新型コロナウイルス感染症に関して限られた情報しか提供されず、帰国者・接触者外来に患者を紹介しても情報のフィードバックもありませんでした。

 
かなり緊迫した状況でそれぞれが対応に追われていたことは十分承知しているのですが、今後の第二波に備える準備として、 保健所・病院・診療所の連携と情報の共有化は極めて重要と考えますが、区のご認識と取り組みの現状はいかがでしょうか。

 5月12日から品川区が設置し、品川区医師会が運営するPCR検査センターが稼働し始め、現在順調に運営されています。私も参加しますが、今後のクラスター対策として必要に応じてPCR検査を行う体制作りは必須です。

 
この間のPCR検査センターの実績について、お示しください。

 また、唾液によるPCR検査も保険適用となりました。唾液PCR検査はエアロゾル感染のリスクが低く、PPE(個人防護具)を装着しなくてもよいため、一般診療所でも検査が可能です。

 
鼻咽頭からと唾液からのPCR検査の取り扱い、検査対象者の拡大、夏に向けて検査を行う医療関係者の熱中症対策など、PCR検査センターの今後の運営と改善点につき、ご説明をお願いいたします。
 
 第二波への備えについては、今後さらに議論を深めてまいります。

2.予防接種について

 次に新型コロナウイルス流行下での予防接種について、お伺いします。
 4月7日に、緊急事態宣言が発出されて以来、 医療機関の受診者は、乳幼児健診、予防接種を含めて激減しました。当然この事態は予想されており、「予防接種の接種率が落ちている。予防接種は不要不急のものではなく、こどもの健康を守るために、必要不可欠な行為。その事を区からもさまざまな方法で、積極的に広報していただきたい。」と、たびたび区にも要望を出してきました。

 3月19日、厚生労働省は定期接種の期間延長を打ち出しました。品川区もまた519日、おたふくワクチンに対する接種費用の助成期間の延長を決めました。これらの決定を大いに評価いたします。

 そこで、質問いたします。
 
予防接種についての区の認識と、接種が低下している現状に対する危機感、今後の予防接種に対する積極的な勧奨の具体的な方策について、区のお考えを説明願います。

 続いて、HPVワクチンについて、お伺いします。
 HPVワクチンの積極的勧奨が停止されてから、とうとう7年が過ぎてしまいました。HPVワクチンの有効性については医学的にはすでに決着がついており、いつ勧奨を再開するのか、そのタイミングを残すのみとなっています。

 現在、新型コロナウイルス感染症が流行し、ワクチンの開発が望まれています。
 しかし、新型コロナウイルス感染症の現在までの我が国の感染者数は約18千人、死亡者数は総数で963人です。これに対して、子宮頸がんの年間発病者数は 11千人、死亡者数は毎年3000人と、新型コロナウイルス感染症を遙かに凌駕する、多数の死者が出ているのです。「コロナ、コロナ、ワクチンを早く。」 と騒いでいる人の大多数は、より身近により恐ろしい病気が存在し、しかもその病気を防ぐことのできるワクチンがあることを知らずに過ごしているのです。

 現在、新しいHPVワクチン・シルガード9が認可を待っています。このワクチンは主要な7種の発がん性HPVをカバーし、子宮頸がんの90%を防ぐことができる、素晴らしいワクチンです。一時も早く承認され、多くの日本人女性が子宮頸がんの病魔から救われる日が来ることを強く望みます。

 小児科医、産婦人科医の地道な努力の結果、HPV ワクチンの接種を希望する若い女性が増えてきていることは喜ばしいことです。しかし、それと共に、定期接種の年齢が過ぎ、「接種漏れ」となってしまった女性への救済措置は急務です。
 2019年10月の決算特別委員会総括質疑でも要望しましたが、その時の区のご答弁は、定期接種の時期が過ぎた女性への任意接種としての接種費用助成は難しいというお返事でした。

 しかし、彼女たちは当然行われるべき定期接種の勧奨も、そもそもワクチンに対する情報提供さえも受けることなく、定期接種の期限が過ぎてしまった人達です。HPVワクチンは自費で接種すると、約5万円かかります。現在、「対象年齢が過ぎても、HPVワクチンを無料で打てるようにして。」と、女子大生有志がオンライン署名活動を始めました。私も含め、多くの小児科医も応援しています。


 彼女たちへの救済措置は必要であり、接種費用の助成を改めて強く要望いたしますが、区のご見解はいかがでしょうか。


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Ⅱ.品川区の子育て支援施策について

1.乳幼児健診について

 子育て支援施策のうち、まず乳幼児健診についてお伺いします。

 品川区は新型コロナウイルス感染症が拡大したため、4月から、4ヶ月、1歳半、3歳の集団健診を中止しました。この措置は、集団健診実施による、クラスター発生のリスクを回避するため、妥当だったと考えます。

 しかし、乳幼児健診、特に4ヶ月健診は、体重増加、頸の坐り、音への反応、追視、心雑音の有無など、乳児の発育・発達状態を評価する上で、 極めて大切な機会です。その中止は、リスクのある児の発見が遅れ、対応が後手になる危険があります。
 保護者へのアンケート調査と保健師による電話相談が行われたようですが、それでは全く不十分であり、赤ちゃんを実際に診察することがきわめて大切だと考えます。

 区は6-7ヶ月の個別健診時に、健診担当医に4ヶ月健診の重点項目の再確認も求めました。 しかし、集団健診が実施できないなら、このような医療機関に4ヶ月健診も依頼すべきだったと思われます。この事についても、たびたび区に要望を行ってきました。

 実際、横浜市では518日から、集団健診を休止している期間の特例対応として、保護者あてに市内の医療機関を案内し、通知が受け取った保護者は個別に4ヶ月健診を受けています。さらに、豊島区、多摩市、町田市なども、4ヶ月健診を一部個別健診で実施するようです。

 品川区もこの6月から、4ヶ月健診、16ヶ月健診を少人数で、実施回数を増やして再開しました。しかし、3歳健診はいまだ未実施のままです。NHKによれば、厚労省も集団健診の中止に危機感を持ち、1歳半、3歳の集団健診を個別健診で実施した自治体に対しては、費用の半額を補助する方針を固めたということです。

 ここで質問いたします。

 再開される乳幼児集団健診の実施回数と対象人数をお示しください。また、この措置で今までの健診待ちが解消されるのでしょうか。
 4ヶ月健診を、特例で個別健診として実施しなかった理由についてもご説明ください。
 遅れている1歳半健診、まだ未施行の3歳健診について、今後どのように対応されていくおつもりなのでしょうか。さらに、今後、新型コロナの第二波が、到来したときの対応についても、ご説明ください。

 以上、あわせてご答弁をお願い致します。

2.子育て支援について

 次に、子育て支援について、お尋ねいたします。

 公益社団法人「子ども環境学会」は、5月に「新しい生活様式を画一的でなく、年齢層ごとの行動指針を」と呼びかける、代表理事の寄稿文を発表しました。

 この寄稿文では、「
こどもの成長において、密接は重要である。こどもは触れ合うことによって、成長していく。 体を接触させることにより、さまざまな感覚を発達させていく。 こどもにとって、あそびは「まなび」なのだ。」 そして、小さなこどもほど密接、親密が必要なのだ。こどもの成長のためにも、コロナ対策が長期化すればするほど、年齢層別の行動ガイドラインをつくるべきだ、と提言しています。

 
大人の社会が感染予防と経済のバランスが大切なら、子どもの社会は感染予防と遊びのバランスが大切だと思います。特に小さな子どもほど、触れる、触れられる、いだかれる事によって安心を得、愛情に包まれて、成長していくのです。小さな子どもに無理にマスクをさせたり、小さなテーブルをアクリル板で仕切ってみたり、距離を大げさに離したり、いっさいお話しをさせずに食事をさせるなどは、百歩譲って今は感染予防のため、やむおえない処置だとしても、決して長期間、続けて良いとは思われません。

  「保育所における感染症対策ガイドライン」にしっかり準拠した上で、周囲の流行状況や子どもの発達段階を踏まえつつ、画一的にならない、きめの細かい年齢別の行動指針を作成することが重要ではないでしょうか。

 
品川区の保育所では、現在どのような対応が行われているのか、ご説明ください。

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 Ⅲ.品川区の教育について

 最後に教育について質問いたします。

1.感染予防教育について

 まず、感染症予防教育についてお伺いします。
 新型コロナウイルス感染拡大防止のために3月3日から行われてきた、全国小中学校の一斉休校も解除となり、6月から品川区の小中学校、義務教育学校も再開されました。

 文部科学省が522日に発行した、「学校における新型コロナウイルス感染症に関する、衛生管理マニュアル」では、「新しい生活様式」、すなわち三つの密を避け、基本的な感染対策を守りながら教育活動を再開し、子供の健やかな学びを保障していくことが記されています。

 ところが、大阪市では全校生徒にフェイスシールドを配布し、授業を行ったと報道されました。フェイスシールドはつけた人の目を守る、ゴーグルと並ぶ防御具あり、他人から移されるリスクが高いときに、主に医療関係者が使用するものです。

 これに驚いた大阪小児科医会は、613日に「学校でのフェイスシールド着用、ちょっと待ってください!」というポスターを作成し、子どものフェイスシールドの着用は、1.熱中症のリスクが高まる。2.物がゆがんで見えたり、光が反射して授業に集中できない。3.転倒などで顔や眼を傷つける心配がある。 などのリスクがあることを指摘し、学校生活において児童・生徒がフェイスシールドを着用する必要はなく、むしろ過剰な感染予防策は子どもの心身へ悪影響を及ぼす可能性がある、と声明しました。

 学校におけるマスク着用についても、スポーツ庁は学校の体育の授業で感染予防に留意すれば、基本的にマスクの着用は必要ないと通達しています。これから夏になり、マスクの画一的な使用は熱中症のリスクを高めます。

 マスクは、主に感染している人が飛沫を撒き散らして、周囲に感染を広げないために着用するものです。さらに無症状の感染者が飛沫をまき散らすことや、マスクを着用することで、汚染された手で直接口や目、鼻に触る事を防ぐ、という効果も期待されるものです。したがって、マスクは必要な時に正しく着用することが大切だと考えます。

 手洗いに関しても、厚労省は石鹸やハンドソープで10秒間もみ洗いした後、流水で15秒すすぐだけで、手指に付着していた100万個のウイルスがわずか数十個、約0.001%に減少すること、さらに2回手洗いを繰り返すだけで、数個、約0.0001%までウイルスを減らすことができる実験結果を示しています。
 わざわざ、アルコールを使用しなくても、ましてや、次亜塩素酸ナトリウムや界面活性剤を使用する必要はないのです。

 
エビデンスに基づく正しい感染予防対策の実施を、区には強く求めたいと思います。コロナファッションというべき過剰な感染予防スタイルは、子どもの心身へ悪い影響を及ぼす危険があることを認識すべきです。

 
現在の品川区の学校現場における感染予防教育と、じっさいの感染予防対策はどのように行われているのでしょうか。具体的にご説明をお願いいたします。

2.子どもの心を育てる教育について

 ある小児科クリニックが保護者に、新型コロナウイルス感染症に対する知識をどこで得ているかアンケート調査を行った所、95%がテレビだったそうです。

 しかし、テレビ、特にワイドショウの出演者の発言には明らかな医学的誤りや事実誤認の発言も多く、テレビの影響力もあり、たびたび大きな社会不安が引き起こされてきました。

 一例を挙げると、「日本の新型コロナウイルスの死亡者が極端に少ないのは、PCR検査が行われず原因不明の死者として扱われているからで、実は葬儀は激増しているのだ。」というようなコメンテータの発言は、小学生でも調べれば、事実かどうか検証可能です。

 
テレビの放送内容の検証を学校の授業として行えば、マスコミの報道を鵜呑みにして騒ぐ風評被害を減らすことができるのではないかと期待されます。

 
このような授業こそ、メディア・リテラシー教育と考えますが、区のご見解はいかがでしょうか。

 6月から授業が再開されましたが、自殺対策白書でも指摘されているように子どもの自殺は学校の長期休業明けに増加する傾向があります。ことに今回の新型コロナに伴う休校は長期にわたり、しかもStay Homeの影響もあり、子どもが抑うつ傾向や情緒不安定に陥る危険が高い、と指摘されています。

 5月に予定されていた、「品川区自殺対策連絡協議会」もコロナの影響で延期になってしまいましたが、
区の自殺予防取り組みについて、ご説明をお願いいたします。
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子どもは未来であり、希望そのものです。
 品川区の子どもと保護者のための医療・子育て支援施策が、新型コロナウイルス感染症の惨禍を乗り越えて、さらに大きく広がることを期待して、本年度の私の一般質問を終わります。

 ご清聴ありがとうございました。



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