新型コロナウイルス感染症の流行について

はじめに

 
武漢で発生した「新型コロナ肺炎騒動」で、マスコミはいつものように、連日けたたましく大騒ぎしています。

 当クリニックにも、「肺炎かどうかX線をとってほしい。」と受診もしたこともない方から、問い合わせが来る事態となってきました。悪夢のような新型インフルエンザ騒動の、阿鼻叫喚の地獄絵図が思い出されます。

 今回も繰り返される、マスコミの無責任で愚かな騒音報道公害…。

 一例を挙げると、足止めを食らっているイギリス船籍で、プリンセスクルーズという国際クルーズ会社の豪華客船を巡るマスコミの報道です。

 ます、イギリス豪華客船の乗船者一人一人にPCR検査などを行っていたら、我が国の地方衛生研究所の、住民の健康を守る日常の検査業務など、はなからパンクしてしまいます。

 日本国民に対する保健衛生の日常業務の全て犠牲にして、イギリス豪華客船の全乗客の新型コロナウイルス検査を日本国民が費用を負担して優先して行え、その理由は「可哀想だから。」とマスコミとそのチンドン屋コメンテータ連中は愚かにもがなり立てているのです。

 そもそもそれは日本の保健所が、行わなければならない業務なのでしょうか。中国で発生した肺炎に感染した外国籍の人に対する巨額な検査費用を、われわれ日本人が全額負担して、検査して差し上げなければならないというのでしょうか。

 自国民を保護する義務は、その国の政府が負っているのです。なぜ、日本のマスコミ連中は、日本政府ばかり責め立てて、自国民に救いの手を差し伸べない各国政府、船の所有会社プリンセスクルーズ(このクルーズ会社は、過去にバハマ海などで船舶から不法投棄を繰り返し、アメリカ政府から罰金刑を受けている会社です)やイギリス政府(イギリス船籍)に言及しないのでしょうか。(「船会社が船賃をただにした。人道的で素晴らしい!!」…馬鹿馬鹿しい。正気で言っているのでしょうか?)写真はクルーズの客に不満をぶちまけてもらおうとまとわりつく、某TV局のチャーター船。
(引用元 https://twitter.com/d__kaien/status/1228276538086313984。)

 *さすがにばつが悪くなったのか、アメリカ、オーストラリア、香港、カナダ、イタリア、台湾、韓国、イスラエルなどはそれぞれチャーター機を手配したりするなど、自国民を帰国させようとようやく動き出したようですが、その国の国民を守るのはその国の政府であり、日本政府ではないことを日本のマスコミもいいかげん思い出してほしいものです。そんなに自分の国の政府を貶めて、何が楽しいのでしょうか。最も、彼ら日本マスコミ人は、日本国民ではなく、世界市民なのかもしれませんが。(2020.2.18)

 相も変わらぬマスコミの低次元の騒音公害に当クリニックの患者さんが振り回されないよう、現時点における新型コロナウイルス感染症についての当クリニックの見解をまとめてみました。

 この見解は、当クリニックを信頼するかかりつけの患者さんに対する、2020年2月20日の時点における、当クリニックが発信する情報提供です。

 また、読まれる方の理解が進むよう、参考文献とリンクはなるべく多数付けてあります。なるべく、引用先も目を通すことをお勧めします。写真もできる限り出典を付けましたが、一部インターネットサイトから転用したものもあり、その場合は引用元を記すようにしました。

 もちろん、小児科医として、フェイクと思われる内容は全て排除してあります。この記事の内容は、当クリニックが自信を持って、患者さんに提供する、正しい情報です。

 
TVの番組、特にワイドショウの「報道特集」なるシロモノが、公共性からほど遠い、恣意的で興味本位で低レベルのゴシップ記事以上でも以下でもないことが、最近広く認識されてきています。にもかかわらず、その事実にうすうす気づいているのに、いざとなるとTVのエセ情報に振り回される人々が少なくありません。踊るTV局やマスコミに、いいように操られることはやめましょう。大切なわが子を守るためには、正しい客観的な情報をもとに、冷静に対応することが必要です。すでに和歌山では、一部でパニックが起きています。

 そのために、本章で論述する、新型コロナウイルス感染症に関する解説をぜひ参考になさってください。

  刻一刻と、コロナ関連のニュースは変化し、状況は激変しています。加筆するだけでは追いつかない事態になったため、続編を刊行していきます。(2020年2月22日)

Ⅰ.コロナウイルスについて

 まず、今回の新型コロナウイルス感染症、「武漢肺炎」騒動の病原体である、「コロナウイルス」から見ていきます。コロナウイルスは、実は私たちの周りのさまざまな動物に感染し、病気を引き起こしている、よくみられる、ありふれたウイルスです。

 コロナウイルスは、その出自はニドウイルス目コロナウイルス科に属する、大きさが100nmぐらいのRNAウイルスです。ちなみにインフルエンザウィルスも100nmなので、ほぼ同じ位の大きさのウイルスということになります。

 ウイルス表面に突起(スパイク蛋白)が林立し、あたかもウイルスの形が王冠のように見えることから、王冠を意味するcoronaと名付けられました。(右写真は国立感染症研究所HPから)

 コロナウイルスは自然界で、動物ごとに棲み分けをしていて、その宿主(ホスト。いつも感染している相手)にはほとんど悪さをせず、軽いかぜ症状や下痢を引き起こすだけで、おとなしく共存しています。

 これはある意味、当然のことであって、宿主が死亡するということはウイルスも存在できなくなり、死んでしまいます。宿主が元気な状態が、ウイルスも共存するためには必要な条件なのです。

 実は人間にもしっかり4種類のコロナウイルスが感染しており、かぜの10~15%(流行時には35%)はヒトコロナウイルス(Human Coronavirus:HCoV)が引き起こしているのです。人にかぜを引き起こすHCoVは、HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV-NL63、HCoV-HKU1の4種類です。そして、6歳までにほとんどの人は、これらのコロナウイルスの感染を経験します。これらのコロナウイルスは、人に感染しても軽いかぜの症状しか起こさないで、人と長い間共存してきました。

 最近、2種類の別のコロナウイルスが人に感染し、流行しました。この2種類は、重症急性呼吸器症候群(Severe Acute Respiratory Syndrome:SARS)コロナウイルス(SARS-CoVと略します)と、中東呼吸器症候群(Middle East Respiratory Syndrome:MERS)コロナウイルス(MERS-CoVと略します)です。

 この2種のコロナウイルス(CoV)はもともと、SARSコロナウイルスはキクガシラコウモリ(当初は、ハクビシンが疑われていました)、MERSコロナウイルスはヒトコブラクダが宿主でした。それが、何らかの理由でヒトに感染力を持ったために、人に感染し、発病させ、その力加減がわからず、ヒトを重症化させたり、殺してしまったと考えられています。

 SARSコロナウイルスは、中国広東省で大流行し、2002年11月から2003年7月にかけて、8098人が感染し、774人の死者がでました。SARSコロナウイルスは高齢者や慢性疾患を持つ人を重症化させたり、死亡させたりしましたが、子どもにはほとんど感染しませんでした。

 MERSコロナウイルスは、アラビア半島で大流行し、2494人が感染し、858人が死亡しました。しかし、実はサウジアラビア国民の0.15%はMERSコロナウイルスに抗体を持っていると報告されており、実際は感染しているヒトは5万人を越えているのではないかともいわれています。また、SARSと同様に、高齢者や慢性疾患を持つ人が重症化・死亡し、子どもはほとんど感染しなかったようです。
 
 以上、人に感染することがわかっている、6種類のコロナウイルス(軽症4種、重症2種)をまとめてみます。

ウイルス名  ヒトコロナウイルスHCoV
HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV-NL63、HCoV-HKU1
SARS-CoV MERS-CoV
 病名 かぜ SARS (重症急性呼吸器症候群) MERS(中東呼吸器症候群)
 発生年 毎年 2002~2003年 2012年~現在
 発生地域 世界中 中国広東省 アラビア半島とその周辺
 宿主動物 ヒト キクガシラコウモリ ヒトコブラクダ
 死亡者数/感染者数 不明/70億人 778人/8098人 858人/2494人(50000人?)
 好発年齢 多くは6歳以下 中央値 40歳(0-100歳)
子どもにはほとんど感染しない
中央値 52歳(1-109歳)
子どもにはほとんど感染しない
 主な症状 上気道炎、(胃腸炎 高熱、肺炎、胃腸炎 高熱、肺炎、胃腸炎、腎炎
 重症化因子 重症化しない 糖尿病等の慢性疾患、高齢者 糖尿病等の慢性疾患、高齢者
 感染経路 飛沫、接触 飛沫、接触、糞口 飛沫、接触
 ヒト-ヒト感染 1人→多数 1人→1人以下。
多数に移すス-パースプレッダーも。
1人→1人以下。
多数に移すス-パースプレッダーも。
 潜伏期 2-4日 2-10 2-14
 感染症法 指定無し 二類感染症 二類感染症

コロナウイルスとは 2020.1.10 国立感染症研究所から引用

 そして、今回の新型コロナウイルス(COVID-19)は2019年に新たに登場した、ヒトに感染する7番目、重症化させる3番目の新しいコロナウイルスとなるのです。

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Ⅱ.中国における新型コロナウイルス感染爆発の経過

①新型コロナウイルス感染症の発生

 この新しいコロナウイルス、COVID-19による第1号の肺炎は、2019年12月8日に発生しました。最初の新型コロナウイルス肺炎の患者は、湖北省武漢市「華南海鮮卸売市場」の関係者だと言われています。

 この「華南海鮮卸売市場」では、魚介類だけでなく、100種類以上の野生動物を「食品」として、生のまま売ったり、目の前で殺したり、冷凍して宅配したりしていたそうです。市場のメニューによれば、ヘビ、アナグマ、ハクビシン、キツネ、コアラ、野ウサギ、クジャク、サソリ、ワニ、ネズミなどが食べ物として売られていたようです。

 しかも、これらには「野生動物保護法」や「食品安全法」に違反している、捕獲してはいけない動物や食べてはいけない動物も多数含まれていました。すなわち、このような市場は中国の法律においても、違法な営業ということになります。それが、武漢政府当局の「お目こぼし」で営業を続けていたのです。


(右写真2枚は、Gigazize https://gigazine.net/news/20200123-china-coronavirus-market-wildlife/ より転載させていただきました。)

 そのため、武漢政府当局としてはこの違法市場から発生した、新型コロナウイルスによる肺炎をできるだけ表沙汰にしたくなかったため、隠蔽に走ったと言われています。

 新型コロナウイルス肺炎の最初の感染者は、2019年12月8日に発生しました。華南海鮮市場で、おそらく、野生動物(コウモリ?)を生で食べた人物が最初の感染者ではないかと推定されています。この新型コロナウイルス2019-nCoVは、遺伝子配列がSARS-CoVと75-80%共通であり、いくつかのコウモリコロナウイルスときわめて類似していたと言われています。

 海鮮市場の原因不明の肺炎が、全く新しい新型のコロナウイルスの感染だとわかったのは、12月26日、上海市の公共衛生臨床センター科研プロッジェクトが通常の研究の一環として、武漢市中心医院、武漢市疾病制御センターから、発熱患者のサンプルを入手して検査したところ、新型のコロナウイルスであることがわかったためでした。そして、1月5日、武漢の原因不明の肺炎は「歴史上見たことのない、新型コロナウイルスが原因だ」と発表されたのです。

 しかし、武漢市衛生健康委員会は、武漢肺炎が華南海鮮市場と関係あること、27例の症例と重症7名の退院例があったが、ヒトーヒト感染はなく、医師への感染の事実もない。武漢肺炎は、予防可能で制御可能であると、うその発表を行って沈静化に努めたのです。

 それどころか、「微進」というSNSに「海鮮市場で、7件のSARSに似た肺炎が発生した」と書き込みを行い、注意を喚起した8人の医師グループを「オンライン上でデマを流布し、深刻な社会秩序の混乱を引き起こした」という理由で訓告処分とし、最初に発信した李文亮医師にこれ以上「違法行為」をしないと誓う誓約書まで書かせたのです。

 武漢協和病院では、1月7日に趙軍実という患者に脳外科手術が行われました。ところが、この患者は1月11日に肺炎を発症し、1月15日には新型コロナウイルスに感染していることがわかりました。その後、手術、治療に係わった医師、看護師14人が次々と新型コロナウイルス感染症を発病したのです。したがって、1月中旬にはヒトーヒト感染が存在することは事実として把握されていたのです。

 李文亮医師(右写真。CNNより)はその後も武漢中央病院で新型コロナウイルス感染症の診療に従事していましたが、自らも感染し、1月12日、同病院ICUに入院、2月7日に亡くなりました。34歳の、壮絶な戦死でした。
 李医師は死亡する数日前に、アメリカCNNの取材に応じ、「自分は何もできなかった」「すべては公式(政府)の方針に従わなければならなかった」と話したということです。( 新型ウイルスを告発した武漢市の医師が死亡、自らも感染 中国)

 2020年1月6日に、武漢政府は新型肺炎の問題は鎮静したと発表し、2020年3月5日に北京で開催される予定の、全国人民代表大会(全人代)の準備のための湖北省の「両会」地方大会を、1月12~17日に開催すると発表しました。

 1月10日に武漢市の両会は終了し、1月17日には湖北省の両会が勝利の内に閉幕したと宣言されました。しかし、同日浙江省で新たに新型肺炎の患者5人が発病し、新型肺炎は終息していないどころか、ますます拡大していることが明らかになったのです。

 しかも、感染者が続々と増えている時期に、武漢市では「湖北省春節祝賀園芸会」を大々的に開催し、政府関係者は全員出席し、登壇した園芸員の中には感染者もいたということです。(新型コロナ 武漢 春節伝統「4万世帯の大宴会」で感染拡大か

 1月10日、国家衛生健康チームの応広発北京大学呼吸・重症学科主任は新華社の取材に「疫病は制御できている。」と答えました。彼は12月30日に武漢を視察しましたが、武漢政府が用意したカルテを見せられて、すっかり信用してしまい、事態の深刻さに気づかなかったのです。

 しかし、1月17日浙江省で新たな患者発生を見て、中国の感染症の権威である、鐘南山国家衛生健康委員会専門家グループ長が動きだしました。
 鐘南山中国工程院院士(博士の上の称号)は、SARS大流行の時に、感染拡大を隠蔽しようとする中央政府と戦い、またSARSの患者を自分が所長を務める医療施設に広く受け入れ、献身的に治療を行い、世界から賞賛された医師です。
(写真は、「SARS克服の英雄」再び、83歳医師が政府の対策チームのリーダーに。鍾南山医師(2020年1月21日撮影、資料写真)。(c)CNS/蘇丹
から)

 鐘南山院士をトップとする、最高レベル感染症専門家チームが中国国家衛生健康委員会内に結成され、1月18日、航空便の切符がとれないため、陸路鉄道で武漢市に向かいました。1月19日、武漢市に到着した、最高レベル専門家チームは、武漢政府ではなく、実際患者の発生している武漢協和病院を視察し、ヒトーヒト感染を起こしている武漢市の肺炎の実態を北京の党中央に報告したのでした。

 国家衛生健康委員会から孫春蘭国務院副総理、李克強国務院総理に報告が上がり、1月20日、習近平の「重要指示」が出され、武漢市は全面的に閉鎖されることになりました。

 北京からの命令で武漢市政府は、1月23日午前2時5分に、「市新型コロナウイルス感染による肺炎流行予防制御指導部(第1号)」を公表し、1月23日午前10時から、全市の公共交通を暫定的に停止し、飛行場や駅も漸次封鎖する。と通告しました。

 閉鎖の通告から実際の閉鎖まで、8時間のタイムラグがありました。この8時間の間に、数十万人の武漢市民が武漢市を脱出し、これらの人々が結果的に中国全土に新型コロナウイルスを拡散させる結果となりました。うち、1万人は日本に入国したと言われています。(彼らによって、新型コロナウイルスは日本に持ち込まれ、1月下旬からの日本国内の新型コロナウイルス感染症発生の感染源になった可能性が強いと思われます。)

 何故、武漢市政府はこのような午前2時などと真夜中の時間に封鎖の通告を行ったのでしょうか。遠藤誉筑波大学名誉教授は、この1月23日午前2時という真夜中にわざわざ武漢政府が通告を出したのは、1月22日午後8時から開催されていたWHOの緊急委員会にぶつけることで、WHOによる中国に対する「緊急事態宣言」発表を回避するためだったのではないか、と推論しています。

 習近平指導部は全中国に新型コロナウイルスが蔓延し、多くの中国人の生命が危険にさらされる事態よりも、WHOによる「緊急事態宣言」を回避するという、習近平と中国共産党の面子を守ることを優先した、といわれているのです。

②新型コロナウイルス感染症の中国での広がり

 1月23日、武漢市が封鎖されると、武漢の紅十字会(赤十字)には中国全土からマスク、医療物資や献金が集まってきました。ところが、肺炎患者治療病院に指定された700床ベッドがあり、8000人の医療スタッフを擁する協和病院には普通マスクが3000個、資金が1万2千元しか配給されませんでした。そのため、協和病院は押し寄せる患者にまともな医療ができなかったようです。

 しかも、後の調査によれば、武漢紅十字会幹部と個人的に繋がっていた美容整形や不妊治療、性病専門の小さな2つの私立病院(当然肺炎の治療などできない)には、優先的にN95マスクが16000個、基金も36万元が配給されていた、というのです。

 協和病院は鐘南山院士をトップとする、最高レベル感染症専門家チームが視察に訪れた病院で、武漢政府が隠蔽していた新型肺炎の情報を専門家チームに告げ口したと武漢政府から逆恨みされ、さまざまな嫌がらせを受けたという信じられない見方もあるのです。

 1月26日、周先旺武漢市長、王暁東湖北省長、別必雄湖北省中共委員会秘書長が肺炎発生以来、初めての公的な記者会見を行いました。ところが、会場に現れた王省長はマスクをつけておらず、周市長はマスクを上下逆さま、表裏逆につけ、別秘書長は鼻を出してマスクをつけるなど、誰一人正しくマスクをつけておらず、非難が殺到したようです。

 しかも王省長は、湖北省のマスクの生産量108万個を、180億個、18億個と2回も言い間違え、彼が「マスクや医療用防護服が足りない」と発言すると、周武漢市長が「湖北省は防護物資は十分ある」と全く逆の内容の発言するなど、あきれ果てたお粗末な対応に終始したそうです。

 記者会見が終わった後で、周武漢市長は「武漢市がすぐ発信できなかったのは、上層部が私に発表する権限を与えてくれなかったからだよ。」などと開き直り、「でも武漢市の封鎖は私がやった。」などと自慢し、最後には「どう俺の回答、80点ぐらいだったかい?」などと軽口をたたきながら、会場を後にしました。(その一部始終が中国のTVで放映されたようです。YouTube上の台湾TV局による編集番組はこちら

 さらに、武漢市長は肺炎騒動後に武漢市民500万人が武漢市から逃げた、と発言したのです。武漢市を閉鎖したものの、それ以前に武漢を逃げ出した500万人の武漢市民によって、新型コロナウイルス感染症は中国全土にヒト-ヒト感染によって、燎原の火のごとく、凄まじい勢いで広がっていったのでした。

 一日一日と感染者数、死亡者数が激増していき、2020年2月11日現在、中国国家衛生健康委員会の発表では、中国本土の死者は1016人、感染者は42638人に達したそうです(おそらく実数はこの数字の数倍~数十倍とも言われています)。また、中国外では、27カ国・地域に感染は波及し、感染者339人、死亡者は2人になりました。

 この流行の広がりに、もはや中国政府は有効な対策を打つことが出来ません。封じ込めもできないでしょう。おそらく、新型コロナウイルス感染症はこれからも数ヶ月間、中国国内でも日本を含めた中国外でも、たくさんの人々の生命を奪いながら、爆発的に拡大していくものと思われます。全ては愚かな初動対応のミスが、この大惨禍をもたらした最大の原因だと思われます。

 何故、中国でたびたび動物由来の新興感染症が発生するのか。中国の衛生環境の実情が、具体的にレポートされています。(西村金一:コロナウイルスを発生・拡大させる中国の衛生環境)。これを読むと、これからも中国で新しい感染症が次々と発生しそうで、背筋が寒くなりますね。

③WHOの権威の失墜 

 今回の新型コロナウイルス感染症の突き出したもう一つの深刻な問題は、世界的な公衆衛生的課題に対し、世界保健機関WHOの権威の完全な失墜です。

 世界保健機関としての中立性を放擲し、徹頭徹尾、中国の国家利益の代弁者として振る舞う、WHO史上最悪最低の事務局長、エチオピア人テドロスに対して、世界中の人々からきびしい批判が浴びせられています。

 WHO は2020年1月22日と23日に緊急会議を開きました。しかし、委員の間で激論になり、結局結論は持ち越しになりました。テドロスは声明で、「緊急委では素晴らしい議論が行われたが、(緊急事態宣言を)進めるにはより多くの情報が必要であることが明らかだった」と協議継続の理由を説明したそうです。

 テドロスは早速1月27日に中国に報告に飛び、問題の武漢市には近寄りもせず、1月28日に北京の宮殿で習近平に拝謁し、緊急会議のご報告を行ったのでした。(右はその会見を伝える、人民日報の記事)

 しかもテドロスはその日、中国外相である王毅とも会談し、日本や米国などを念頭に、「住民の引き揚げを望む国があるが、WHOはそれを主張しない」などと中国の肩を持ち、感染拡大を容認する発言をしたのです。

 日本政府は28日、WHOの緊急事態宣言を待たず、新型肺炎を感染症法上の「指定感染症」に指定しました。(「指定感染症」については、Ⅳ章で詳述)

 テドロス事務局長による、このWHOの緊急事態宣言の見送りが、結果的に世界各国の対応遅れにつながり、さらに流行が拡大する一因になったのことは明らかです。


 しかし、その後も爆発的に広がる新型コロナウイルス感染症の大流行に、1月30日、再度開かれたWHOの緊急会議で、さすがのテドロスも緊急非常事態宣言、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を出さざるを得なくなりました。

 しかし、テドロスは記者会見で、「感染が中国以外にほかの国でも拡大する恐れがあると判断したので、宣言を出した。」と語り、中国を露骨に庇い、次の5点を強調したのです。

 (1)貿易や人の移動の制限は勧告しない(中国との交通遮断に反対する)
 (2)医療体制が不十分な国々を支援する
 (3)ワクチンや治療法、診断方法の開発を促進する
 (4)風評や誤った情報の拡散に対策を採る(中国を非難することは許さない)
 (5)患者感染者の病理データを共有する

 WHOテドロスの緊急非常事態宣言は、2009年の新型インフルエンザ、2014年のポリオ流行、昨年7月のエボラ出血熱のアウトブレイクなど、これまでに計5回発出されています。

 しかも、テドロスはこの記者会見で、
1.WHOは新型肺炎の発生を制御する中国の能力に自信を持っている。
2.中国への渡航や交易を制限する理由は見当たらない。(中国への渡航を制限する必要はない)
3.この宣言は中国に対してではなく、医療体制の遅れている国への警告だ。
4.中国が感染予防のために行っている努力とその措置は前代未聞なほど、素晴らしいもので、新しい世界のスタンダードとなるものだ。
とあの朝日新聞ですらおそらく赤面するほどの(しないかな?)、歯の浮くような中国へのおべんちゃらとお追従の発言に終始したのです。

 そもそも、この中国の代理人、テドロスとは、どのような人物なのでしょうか。
 彼はエチオピアの保健大臣や外務大臣を務めた、エチオピアの医師兼政治家です。エチオピアという国は、中国マネーに頭にてっぺんからつま先までがんじがらめに縛られた、カンボジアなどと並ぶ代表的なチャイナの従属国家です。
 
 エチオピア外相として、中国政治家とも昵懇で、2017年にWHO事務局長に前任者のやはり中国の傀儡だった香港出身のマーガレット・チャンの後釜として、中国の強力な後押しで就任した人物です。そして、WHOで中国の利益の代理人として、行動してきたのです。

 日本人は国連とかWHOとかユネスコとかいうと敗戦国の悲しさで、上納金だけ献上させられ、発言は許されず、その天の声は絶対だと思い込まされてきました。日本のマスコミも、日本人をそう洗脳し、教育してきました。

 逆に、特定アジアの中国や韓国などは、これらの国際機関は金とヒトを出して自分の主張や利益を強引に押し通す国家的利益の道具と割り切って強力に工作し、そのメンバーは鼻持ちならない強烈な自己主張を行い、たびたび成功してきた歴史があります。

 今回も、中国は自国の民衆の死者1016人、感染者42638人(公式の数字)を数え、今なお流行を食い止めることができず、さらに世界中の人々が中国発のこの感染症で苦しんでいるにもかかわらず、テドロス事務局長は、「中国が疾病の感染予防に対して行っている、努力とその措置は前代未聞なほど、素晴らしい。」とか、「歴史上、ここまで立派にやった例はない。」などと絶賛、感謝しているのです。

 2月5日、テドロス事務局長はジュネーブで記者会見し、肺炎を引き起こす新型コロナウイルスについて、各国のワクチン開発や感染防止策の支援に6億7500万ドル(約740億円)が必要だと述べ、国際社会に資金援助を求めました。しかも、「今投資するか、後でより多くの代償を支払うかだ」と各国を恫喝したのです。

 テレビ東京が日本のテレビ局としては、珍しくまともな番組を制作、放映していました。ご覧ください。(“中国寄り”って本当?…実はこんな「事実」も 世界からWHOトップ辞任要求 どう考える?

 また、WHOは中国の意を受けて、台湾を徹底的に閉め出してきました。台湾は、WHOの会議に出席できませんでした。また、中国は今回の新型コロナウイルス騒動でも、台湾人の中国からの帰国要請もいっさい無視してきたのです。

 しかし、2020年2月6日のWHO執行理事会で、新型コロナウイルス感染症への対応が話し合われた際、台湾がWHOに参加できないことが問題になりました。米国のアンドリュー・ブレンバーグ大使は、「WHOは、感染地域である台湾の公衆衛生データをはっきり目に見える形で公開し、台湾の公衆衛生当局と直接連携して対応にあたることが急務だ」と述べて、WHOに対して台湾との連携を促しました。

 また、日本の岡庭健大使も、「特定の地域が、オブザーバーとしてでさえも、WHOに参加できない状況を作り出すべきではない」として、台湾のWHO会議への参加を求めたのです。その他、カナダ、ドイツ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、ベルギーなども台湾のWHO参加に支持を表明しましたが、中国側は「大いに不満」だとして激しく反発して、台湾の参加妨害し続けたのです。

 しかし、ついに2月11日からジュネーブで開かれる緊急会合に、台湾からの専門家も参加が認められることになりました。無法の横車に対して、良識が勝ったのです。

 しかし、このテドロス事務局長のWHOの中立性をかなぐり捨てた、あまりにも露骨な中国への阿諛追従と、台湾に対する冷酷な処遇に対して、世界中の良識のある人々が立ち上がりました。テドロスの辞任を求める署名活動がアメリカ発のインターネットChange.orgで開始され、すでに全世界から37万人超の人々が署名を行っているのです。(報道はこちら。署名サイトはこちら。)

 このような醜悪な俗物を追放し、真の気骨ある公衆衛生専門家が事務局長に就任し、新型コロナウイルス感染症制圧の先頭に立つ日が1日も早く来ることを願わずにはいられません。

 合わせて、WHOの公用語に何故日本語が入っていないのでしょうか。日本の貢献と地位、拠出金からいって、中国語とともに日本語も加えることは当然の処遇です。ぜひ日本人の関係者に努力してもらいたいものですね。

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Ⅲ.ヒトコロナウイルス感染症のまとめ

 2020年2月13日現在、新型コロナウイルス感染症についての情報の集積が進み、この疾患の全体像が次第に明らかになってきました。2月13日現在の新型コロナウイルス感染症をまとめてみます。



①病原体
 病原体は、新型コロナウイルスCOVID-19です。(この新型コロナウイルスは昨年来、暫定的な名称として、2019-nCoVと呼ばれてきました。2020年2月11日、正式な名称として、WHO事務局はCOVID-19と名づけました。

 また、同じ2月11日、International Committee on Taxonomy of Viruses(ウイルスの正式名称を決定する権限を持つ、国際委員会)は、このコロナウイルスを、SARS-CoV-2と命名しています。(写真は国立感染症研究所HPから)

 
*したがって、2019-nCoVは、感染症の名前としてCOVID-19、ウイルスの名前としてSARS-CoV-2という、正式名称を持つことになりました。

 「武漢」を入れなかったのは、テドロスWHO事務局長によれば、差別に対する配慮なのだそうです。
「地名や動物とは関係ない名称にする必要があった。これ以外の呼ばれ方によって、負のらく印が押されることを防ぐことは重要だ。」と述べ、中国への配慮をにじませています。

 ただ、
それなら、「日本脳炎」の名称も変更してほしいものです。

 COVID-19は2019年12月に中国湖北省武漢市で発生し、現在世界中で大流行しています。2020年2月12日時点の感染者数は全世界で約4万4千人、死亡者数は約1100人となっています(中国の発表する数値の信憑性には大いに疑問がありますが)。
 その大多数は、中国における感染者で、中国以外では世界20カ国以上で感染者が報告されています。

 我が国では、2020年1月3日に最初の国内感染例が報告され、2020年2月12日の時点では、感染者数は203人、死亡者は0人*で、その多くはクルーズ船内の乗客と乗員感染例174例でした。さらに検疫官1人、武漢からチャーター便の帰国者12人、それ以外の観光客などが16人となっています。軽症例や症状のない感染者が大部分を占めていました。
(それ以降の経過については、第2部以降で、述べていきたいと思います。)

  
*2020年2月14日には、日本初の死亡者が出てしまいました。



②潜伏期間
 WHOは、暫定的に1-12.5日と推定していました。鐘南山中国専門家グループは潜伏期は0-28日、中央値は5日と発表したと報道されています。
 実際新型コロナウイルス感染症を診療した、沖縄中部病院の高山義浩感染症内科医長は、感染してから発症するまでの潜伏期間は約5日(1~11日)で、入院を要するほどに重症化するのは、さらに10日(9.1~12.5日)経過した後だと記載しています。



③感染経路
 宿主動物は不明ですが(コウモリコロナウイルスと、遺伝子がかなりの部分、同一だと報告されています)、最初は宿主動物の体液からヒトが感染したと推定されています。

 現在では、ヒトーヒト感染(ヒトからヒトへの感染)が主で、感染経路は感染したヒトの咳やくしゃみ、痰の飛沫(しぶき)や唾液(つば)を吸い込んで移る飛沫感染と、ウイルスが着いている、汚染した手で、目、口、鼻などを触って移る接触感染の二つのルートが考えられています。
 SARSと同じような糞口感染(経口)や空気中から感染するエアゾル感染の報告もありますが、中国の極めて特殊な環境下で起きた事例と考えらえ、飛沫、接触の二つの感染経路の予防を考えれば良いと思います。

 感染の強さ、すなわち基本再生産指数Ro(患者1人が何人に移すか)は、WHOの試算によれば、1人から大体1.4-2.5人ぐらいと推定されています。この間の報告を見ていると、Roは2人ぐらいで、免疫を持った人がいないせいか、かなり感染力は強そうです。すでに日本中に蔓延している可能性を示す、報告も少しずつ出始めています。

 すなわち、道ですれ違ったぐらいでは感染せず、長時間密室でマスクをしない状態で、直近から咳や唾液を直接浴びたり、汚染されたドア・ノブをさわった手で目や口に触れる、同じ食器で食べる、などの濃厚な接触によって、感染が成立すると考えられています。(まさしく、感染者が多数見つかった、ダイヤモンド・プリンセス号の状況と思われます。)

 濃厚接触とは、厚労省は「新型コロナウイルス感染症が疑われるものと、同居あるいは長時間の接触(車内、航空機内、等を含む)があったもの」と定義しています。



④症状
 今まで、報告のあった新型コロナウイルス感染症の症状を列記してみます。

ⅰ)武漢市の病院に入院した41症例。(2020.1.24)
 症状として、発熱(98%)、咳(75%)、呼吸困難(55%)、筋肉痛・倦怠感(44%)。患者背景として、32%が持病あり(糖尿病20%、高血圧15%、心血管疾患15%)。患者の性は73%が男性、年齢分布は中央値は49.0歳で、うち25歳以上が98%、50歳以上が46%でした。
 感染経路として、華南海鮮卸売市場への何らかの接触があった人が66%、患者の32%が集中治療室へ入院し、15%が死亡した。

 →この報告は入院して治療された重症患者の特徴をレポートしたもので、日本に多い軽症患者には当てはまらないと現在では考えられています。

 ⅱ)国立国際医療センターに入院した3症例。(2020.2.5)
 症状として、発熱(3人)、咳(3人)。肺炎2名、上気道炎1名。中国人女性1人、日本人男性2名。

 →全員、武漢滞在歴あり。発熱と咳は全例に見られたが、初期は喉の痛みや微熱などかぜの症状だけしかみられず、新型コロナウイルス感染症と症状から診断するのは難しいようです。


 ⅲ)国立感染症研究所の12症例の症状(2020.2.3)
 2020年1月15日~1月31日に新型コロナウイルスの遺伝子が検出された確定例。20代2人、30代3人、40代5人、50代1人、60代1人。患者の性は、男性が6例、女性が6例です。
 症状は、発熱11例(92%)、肺炎12例(100%)、咳8例(67%)、関節痛2例(17%)、咽頭痛2例(17%)。全員が症状軽快、安定。

 →日本人と中国人が混じっています。症状があった人達のまとめです。



 その後、世界中に感染が広がり、特に我が国では中国に次いで軽症も含めた新型コロナウイルス感染症患者の症例の蓄積が進み、新型コロナウイルス感染症の症状が次第に明らかになってきました。

 新型コロナウイルス感染者の症状は、微熱~高熱、咳、筋肉痛、倦怠感、呼吸困難などが比較的よく見られるほか、頭痛、痰(血痰のことも)、下痢などを起こす人もいるようです。
 特に、新型コロナウイルス感染症に特徴的な症状は、長く続く発熱と強い倦怠感(と咳)だといわれています。

 ただし、高齢者や糖尿病などの慢性の持病を持っている患者さんは、軽いかぜの症状から5-14日して、急に高熱が出たり、呼吸困難になって重症肺炎に進行する例もあるようで、経過を慎重に見ることは大切な点です。この場合は胸部X線やCT検査を行います。アメリカの報告でも1週間ぐらいして、急に悪化した人がいたようです。

 上記高山義浩医師によれば、新型コロナウイルス感染者の症状は、2つのパターンに分けられるようです。

 第1群は、かぜ症状が1週間ぐらい続いて、そのまま軽快するグループです。新型コロナウイルス感染症にかかった大多数の人はこの経過をとり、新型コロナウイルスといっても、別に重症になることもなく、かぜ症状のまま終わってしまうそうです。

 ただし、普通のかぜ(ふつうの4種のコロナウイルス感染症も含む)は2、3日で治りますが、この新型コロナウイルスだとかぜ症状が長びくこともあるようです。

 第2群は、かぜ症状が1週間ぐらい続いて、倦怠感と息苦しさが出て、急に悪化するグループです。体がむくんだり、下痢になる人もいるようです。高齢者や糖尿病など基礎疾患のある方が、この経過をとる場合が多いようです。まれに、健康な壮年でも見られることがあるようです。
 ただ、幸いなことに、子どもはこの重症化の経過をとることはほとんどないようです。少し安心ですね。

 感染してから発症するまでの潜伏期間は5日(1~11日)ぐらいで、入院を要するほどに重症化する場合は、さらに10日(9.1~12.5日)たった頃だと、高山医師は述べています。



⑤診断
 新型コロナウイルスの検査は、当クリニックを含む一般のクリニックでは行うことは出来ません。

 新型コロナウイルスの検査は、現在はPCR法で行います。このPCR法(PCR:Polymerase Chain Reaction 、ポリメラーゼ連鎖反応)は核酸増幅法という検査です。このPCR検査は現在麻疹や風疹の検査でも行われている、非常に正確な検査方法で、半日から1日で結果が得られます。

 厚労省はPCR検査の対象を、次の①~④に該当し、新型コロナウイルス感染症を疑う場合に施行するよう、通達を出しています。

 ①37.5℃以上の熱があり、咳鼻痰など呼吸器症状があり、新型コロナウイルス感染症と確定した人と濃厚な接触のあった人、
 ②37.5℃以上の熱があり、咳鼻痰など呼吸器症状があり、発症前14日以内に、中国湖北省、浙江省に渡航または住んでいた人、
 ③37.5℃以上の熱があり、咳鼻痰など呼吸器症状があり、発症前14日以内に、中国湖北省、浙江省に渡航または住んでいた人と濃厚な接触があった人、
 ④発熱、呼吸器症状などがあり、医師が集中治療が必要と判断し、新型コロナウイルス感染症の鑑別が必要と考えられる人、

 検査を行う時は、まず病院から疑似症として保健所に届け出をした後、地方衛生研究所や国立感染症研究所で検査を行うことになります。しかし、発熱や呼吸器症状があっても、指定地域以外の中国やその他の地域への渡航歴がある人では、検査の対象になりません。

 すでに新型コロナウイルス感染症が武漢市、湖北省、浙江省から全中国に爆発的に拡大し、多くの中国人が日本に入国してきているのに、湖北省、浙江省しか検査を認めないということは、他の地域の中国人感染者や日本人感染者を見て見ぬふりをすることであり、厚労省のこの姿勢からは感染者全てを見つけ出すという、熱意も決意も認められません。

 流行初期だからこそ、疑わしい例を全例調べて、二次感染、三次感染を追跡しなければならないのに、検査を行う前から逃げ腰になり、その追跡を諦めて流行が広がる事態をただただ傍観、座視している姿は、麻疹流行でも風疹流行でも見られた、デジャブのような厚労省のいつもの情けない姿の再現です。(詳細は後述)



⑥治療と予防接種

 新型コロナウイルス感染症は、通常は熱、咳鼻痰などのかぜ症状で経過するようです。したがって、特別な治療法はありませんし、必要としません。ただし、症状が軽くても肺への親和性は強いようで、X線で影が見られる例も多いようです。(ヒトメタニューモウイルスと似た性格を持つ?)

 1週間ぐらいして急に悪化する人(特に年長者や慢性の病気持ちの人)がいるので、病気の症状はよく観察します。子どもは軽症で経過することがほとんどのようです。なぜ、子どもが感染しにくいのか、重症にならないのか、現在の所、不明です。

 重症肺炎になって、呼吸困難になった患者には、エイズの治療薬カレトラ(ロピナビル+リトナビル配合剤)やインフルエンザ治療薬のアビガンなどが試みられたという報道がありますが、一般の病院では行う治療ではありません。

 また、コロナウイルスに対するワクチンはありません。ただ、日本でも新型コロナウイルスの分離に成功したので、今後ワクチンが開発される可能性はあります。また、このウイルスを用いて、病院で簡単にできる迅速診断キットが開発されるかもしれません。ただ、そのときには流行は終息しているかもしれません。

 十分な睡眠と適度の休養、運動で日頃から体調を整えてておくことは大切です。また、現在アメリカではインフルエンザBが大流行*しており、日本にも侵入してくる可能性があるので、インフルエンザなどをもらわないよう、人混みなどにはあまり立ち入らない配慮は必要だと思います。


 *実は、この中に新型コロナウイルス感染症が含まれているのではないかと、アメリカCDCは調査を始めたようです。本当にインフルエンザBなのか、新型コロナウイルス感染症だったのか、結果が待たれます。



⑦予防
 新型コロナウイルス感染症は、若年者は重症化率、致命率ともにほとんどないようです。したがって、若い世代は、通常の飛沫感染、接触感染に対する予防処置をしっかりと行うことが大切と考えられます。(高齢者、慢性疾患のある方は全く別です。)
 
接触感染予防には手洗いが重要です。

 コロナウイルスはアルコールが有効なため、アルコールで手洗いをしっかり行う、しかも左図に示したように、綿密にしっかり手洗いを行う事が一番大切です。小さい子でも、繰り返し繰り返し、正しい手洗いの仕方を教え込みましょう。

 手洗いの後は、できるだけ余計なものには触らせないことです。また、いろいろなものを触った後は、しっかりとその都度、手洗いを繰り返すことが必要です。

 手の清潔を保つことが、接触感染を防ぐことになるのです。「手を清潔にたもつ」という意識をお子さまにも教えましょう。もちろん、親から実行して子どもにまねをさせる、というパターンが良いと思います。

 アルコールがなければ、流水でも代用できます。

 飛沫感染予防にマスクは有効です。

 マスクはウイルスが素通りする。とか、マスクに感染予防のエビデンスはない。とか、したり顔で話す人もいますが、飛沫を防ぐこと、感染予防の意識を高めること、など当クリニックはマスクの着用を推奨いたします。

 マスクは正しい付け方が大切です。鼻を出さない、横から空気が入らない、という点に特に気をつけて、付けてください。

 また、汚染された手でマスクをさわっては、マスクが不潔になります。マスクは使い捨てで使用しましょう。




⑧新型コロナウイルス感染症についての相談体制

 2020年2月7日から、東京都と品川区は共同して、新型コロナウイルス感染症に感染した疑いのある区民(都民)からの相談に対応するための相談窓口を開設しました。
 この相談窓口では、発熱や呼吸器症状があり、中国湖北省への渡航歴や患者との接触歴がある方からの電話相談を受け付けるそうです。

帰国者・接触者電話相談センター

受付時間 設置機関 電話番号
平日:9時~17時 品川区保健所 03-5742-9105
平日:17時~翌9時
土日祝日:終日
都・特別区・八王子市・町田市
合同電話相談センター
03-5320-4592

 相談の結果、『感染が疑われる患者の要件』(下記)に該当するとセンターが判断した場合は、指定医療機関の「帰国者・接触者外来」に受診ができるよう、調整するのだそうです。

 「疑い例」とは、
 ①発熱、または咳鼻痰など呼吸器症状があり、新型コロナウイルス感染症と確定した人と濃厚な接触のあった人、
 ②37.5℃以上の熱と咳鼻痰など呼吸器症状があり、発症前14日以内に、中国湖北省、浙江省に渡航または住んでいた人、
 ③37.5℃以上の熱があり、咳鼻痰など呼吸器症状があり、発症前14日以内に、中国湖北省、浙江省に渡航または住んでいた人と濃厚な接触があった人、
 が、該当するのだそうです。

また、指定医療機関は東京都区に約80医療機関が指定されていますが、混乱を避けるため、非公表とされています。

 
感染の予防に関することや、心配な症状が出た時の対応など、新型コロナウイルス感染症に関する一般的なご相談は、

     東京都一般相談窓口   03-5320-4509     9:00-21:00(土、日、休日を含む)
     品川区保健所        03-5742-9108    9:00-17:00(土、日 休み)

 
で、受け付けています。

 「帰国者・接触者電話相談センター」の相談事業が始まりましたが、成果が上がるとは思えません。

 なぜならば、武漢市はすでに海外渡航が中国政府によって禁止されています。日本政府は2月14日に浙江省も加えたようですが、浙江省より感染者の多い広東省や河南省が何故か入っていません。中国の他地域にも新型コロナウイルス感染症は拡散しており、2月26日現在、中国の感染者68566人中、湖北、浙江以外の感染者が11150人も報告されているのです(外務省HPより)。

 検査-診療の「疑い例」には、最低でも中国全土を対象にしないと全く不完全な、籠で水を汲むだけのシロモノになってしまいます。


 また日本国内にも新型コロナウイルスが広く浸透している可能性が強く、国内流行が何時始まってもおかしくありません。それならばなお、疑わしい症例に検査を行い、早めに流行状況を探知しなければなりません。まだ、今なら感染ルートがたどれるかもしれません。この大事なときに、なぜ厚労省役人はわざわざ湖北省に検査、治療を制限し、自らの手足を縛ろうとしているのでしょうか。

 実は、厚労省の役人にとって一番大事なことは、「〇○がなくなり、自分たちの責任が追及されること」を回避することなのです。今回も、PCR検査のキャパシティを超えて、検査ができなくなることを極端に怖れ、検査の検体数を制限するために、このような馬鹿げた縛りをかけたものと考えられます。これは今回に始まったことではありません。彼らは、2007年の麻疹流行でも、最近の風しん5期でも、同じような愚行を繰り返しています。

 またその結果、重要なことは全て他者(地方自治体や医療機関)へ丸投げで、決して自分たちでは責任ある決定を下そうとはしません。追い詰められて、どうしようもなくなるまで、とにかく現場に責任を丸投げして逃げ回るのが彼らのいつもの既視感溢れる、行動パターンです。


 
そして第二次世界大戦の日本軍のように、小出しに戦力を投入し、負け続けているのです。今回もこのまま推移していけば、国内の感染は広がり、「中国は感染を制圧したのに、日本は感染を蔓延させた」という非難を一身に浴びる、信じがたい馬鹿げた展開になっていくでしょう。

 繰り返しますが、ダイアモンド・プリンセスの件で、我が国は人道的に感謝されこそすれ、非難されるいわれは全くありません。ほかの国は寄港を拒否したではありませんか。日本と欧米の破廉恥マスコミと厚顔無恥な乗船客出身国の非難に対し、こそこそと縮こまる必要など全くありません。堂々と日本が負担した費用を明示して、反論すべきです。それが
日本国民の血税を湯水のように使って、イギリス船籍のアメリカの運行会社の豪華客船の富裕な船客を援助している、日本政府の日本国民に対する責務です。

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Ⅳ.指定感染症・感染症法について


 感染症法は、正式には「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」といい、第1条で、「この法律は感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関して、必要な措置を定めることによって、感染症の発生を予防し、及びそのまん延の防止を図り、公衆衛生の向上及び増進を図ることを目的とする」
と述べられています。

 すなわち、この法律の目的は、感染症の予防・医療のための各種の措置を法律で定めて、必要に応じて手続きや処置を行い、感染症の発生予防やその蔓延防止を実現すること、となるでしょう。

 我が国には、伝染病の発生予防・蔓延防止のための法律として「伝染病予防法」がありました。これが、 1999年4月1日から「感染症法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)」に替わり、伝染病が感染症と言い換えられ、感染症予防対策と患者の人権への配慮を調和させた法律となったのです。

 2002年に発生した「SARS(重症急性呼吸器症候群)」などの海外の感染症の流行や、 保健や医療の発展に対応するため、「感染症法」は2003年10月16日に改正され(11月5日に施行)、 さらに2007年4月1日に「結核予防法」もこの法律に統合されました。
 さらに、高病原性鳥インフルエンザ感染症(H5N1)やその他の新型インフルエンザ感染症が発生した場合に備え、 2008年5月2日に再度改正(5月12日施行)されています。その後も適時改訂されてきました。

 「感染症法」では、症状の重さや病原体の感染力の強さなどから、法律で定める感染症を一類~五類感染症と、指定感染症、新感染症の7種類に分類しています(下表)。さらに2008年5月の改正により、「新型インフルエンザ等感染症」が追加されました。

 COVID-19感染症は、2020年1月28日に「新型コロナウイルス感染症を指定感染症として定める等の政令」で指定感染症に指定され、法律上の名称は、「新型コロナウイルス感染症」となりました。2020年2月7日から施行される予定でしたが、2月1日に前倒しされることになりました

 指定感染症とは、一類~三類の感染症や新型インフルエンザ感染症以外のふつうにみられた感染症が、突然きわめて強毒性に変異して流行し始めた時、一定の期間を決めて、強力な措置ができるように決められた感染症です。

 コロナウイルス自体はよく知られた感染症(なにしろ、かぜの原因ですから)だったのに、そのグループから、突如重い肺炎を起こすウイルスが出現し、流行し始めたので、蔓延防止の措置を実施するために、新型コロナウイルス感染症を指定感染症に定めたということです。

 そして、2020年2月1日から指定感染症「新型コロナウイルス感染症」は、二類感染症と同じ措置当該感染症が疑われる患者に対して、健康診断を受けさせる、検体採取に応じさせる、入院させる、等の措置が行えることになりました。

 武漢から帰国チャーター便で帰国させてもらって検査を拒否して自宅に帰った馬鹿者にも、この法律さえあれば強制的に検査を受けさせることができたのです。(別に法律がなくても、本当は入国させなければ良かっただけなのですが)。

分類   定義  感染症名
 一類感染症 感染力や病気の重さが極めて危険な感染症  エボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、痘そう、南米出血熱、ペスト、マールブルグ病、ラッサ熱
 二類感染症 感染力や病気の重さが非常に危険な感染症(一類ほどではない)  急性灰白髄炎、結核、ジフテリア、重症急性呼吸器症候群(病原体がSARSコロナウイルスに限る。)、中東呼吸器症候群(病原体がMERSコロナウイルスに限る。)、鳥インフルエンザ(H5N1)、鳥インフルエンザ(H7N9)
 三類感染症 感染力や病気の重さはそれほど危険ではないが、特定の職業に就業することにより、集団発生の危険のある感染症(経口、糞口感染)  コレラ、細菌性赤痢、腸管出血性大腸菌感染症、腸チフス、パラチフス
 四類感染症 人から人への感染はほとんどないが、動物や飲食を介して人に感染するるおそれのある感染症(主に動物や虫が媒介する感染症)  E型肝炎、ウエストナイル熱(ウエストナイル脳炎を含む)、A型肝炎、エキノコックス症、黄熱、オウム病、オムスク出血熱、回帰熱、キャサヌル森林病、Q熱、狂犬病、コクシジオイデス症、サル痘、ジカウイルス感染症、重症熱性血小板減少症候群(病原体がフレボウイルス属SFTSウイルスに限る。)、腎症候性出血熱、西部ウマ脳炎、ダニ媒介脳炎、炭疽、チクングニア熱、つつが虫病、デング熱、東部ウマ脳炎、鳥インフルエンザ(H5N1、H7N9、H5N1を除く)、ニパウイルス感染症、日本紅斑熱、日本脳炎、ハンタウイルス肺症候群、Bウイルス病、鼻疽、ブルセラ病、ベネズエラウマ脳炎、ヘンドラウイルス感染症、発しんチフス、ボツリヌス症、マラリア、野兎病、ライム病、リッサウイルス、リフトバレー熱、類鼻疽、レジオネラ症、レプトスピラ症、ロッキー山紅斑熱
 五類感染症 国が感染症発生動向調査を行っている、よく見られる感染症  アメーバ赤痢、ウイルス性肝炎(E型及びA型肝炎を除く)、カルバペネム耐性腸内細菌科細菌感染症、急性脳炎(ウエストナイル脳炎、西部ウマ脳炎、ダニ媒介脳炎、東部ウマ脳炎、日本脳炎、ベネズエラウマ脳炎及びリフトバレー熱を除く)、クリプトスポリジウム症、クロイツフェルト・ヤコブ病、劇症型溶血性レンサ球菌感染症、後天性免疫不全症候群、ジアルジア症、侵襲性インフルエンザ菌感染症、侵襲性髄膜炎菌感染症、侵襲性肺炎球菌感染症、水痘(入院例に限る)、先天性風しん症候群、梅毒、播種性クリプトコックス症、破傷風、バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌感染症、バンコマイシン耐性腸球菌感染、百日咳、風しん、麻しん、薬剤耐性アシネトバクター感染症、RSウイルス感染症、咽頭結膜熱、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎、感染性胃腸炎、水痘、手足口病、伝染性紅斑、突発性発しん、ヘルパンギーナ、流行性耳下腺炎、インフルエンザ(鳥インフルエンザ及び新型インフルエンザ等感染症を除く)、急性出血性結膜炎、流行性角結膜炎、性器クラミジア感染症、性器ヘルペスウイルス感染症、尖圭コンジローマ、淋菌感染症、クラミジア肺炎(オウム病を除く)、細菌性髄膜炎(侵襲性インフルエンザ菌感染症、侵襲性髄膜炎菌感染症及び侵襲性肺炎球菌感染症を除く)、マイコプラズマ肺炎、無菌性髄膜炎、ペニシリン耐性肺炎球菌感染症、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症、薬剤耐性緑膿菌感染症
 新型インフルエンザ等感染症 新型インフルエンザ:新たに人から人に伝染する能力を獲得したインフルエンザウィルスを病原体とするインフルエンザ
再興型インフルエンザ:かつて世界的規模で流行したインフルエンザで、消滅していたが、ふたたび発生し、流行する危険のあるインフルエンザ
 指定感染症 一~三類および新型インフルエンザ等感染症に分類されない、元々みられた感染症の中で、急に危険度が高くなり、一~三類に準じた対応の必要が生じた感染症(政令で指定、1年限定)
 新感染症 人から人に伝播すると認められる感染症で、全く新しい病原体で、その伝播力および危険性が極めて高い感染症
〔当初〕
都道府県知事が、厚生労働大臣の技術的指導・助言を得て、個別に応急対応
〔政令指定後〕政令で症状などの要件を決めた後に、一類感染症に準じた対応を行う

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終わりに-今回の新型コロナウイルス感染症で突き出されたもの

 今回の新型コロナウイルス感染症を巡るさまざまな出来事にも多くのドラマがありました。2点、書いておきたいと思います。

 第一は、中国・武漢市などからチャーター機第1便で帰国した日本人のうち191人を受け入れた、千葉県勝浦市の「勝浦ホテル三日月」の対応です。同ホテルの広報担当者は、「ホテルの経営理念の1つに、『地域貢献』という言葉もある。困っているときに役に立たなければならない、という思いがあった。」と語ったそうですが、このホテルは、2019年9月の台風15号で千葉県内が大規模な被害を受けた際にも、自慢の大浴場を無料開放しています。このような素晴らしいホテルの存在は、日本の誇りだと思います。

 このホテルの対応に対して、安倍内閣が金銭的癒着をダシに無理矢理ホテルに帰国者を引き受けさせたのでは、などと国会で質問した議員がいましたが、未知の「感染者」がいるかもしれない集団を自分のホテルに宿泊させるということは、大きなリスクと勇気が必要なことは子どもでも分かることです。

 質問した大西某は、自分がその立場になったら、このような勇気のある献身的な対応ができるのでしょうか。「440円の週刊誌の記事を読み上げるだけの簡単なお仕事です。」を生業にしているような方には、聞いてみるだけ野暮かもしれませんね。

 
第二は、チャーター便で無事帰国されてもらいながら、検査を拒否して自宅に帰ってしまった、30歳代の関西弁の2人の男達です。デイリー新潮によれば、空港到着ロビーで関西弁の怒声が響き渡った。「(検査を受けるか否かは)自由意志やろ!」「帰れるやろが!」「なんでなん!」、男達は、こう叫んでいたそうです。【新型コロナ】チャーター便で帰国後、検査拒否の男は「自由意志やろ!」と叫んだ。)

 「周りのみんなが失笑していた。私自身も、同じ日本人として恥ずかしいと思いました」(近くにいたビジネスマン)。そして、拒否する理由は、「自分には症状がない」、「日本に帰国したのだから、家に帰りたい」。対応する職員が、「ご自身のためにも検査を受けるべき。」などと説得すると、怒りだして動画を撮影し始めるなど、考えられない行動に出たようです。

 そして、このあまりにも我儘放題な振る舞いが報道されると、多くの国民の怒りの爆発しました。ただちに、インターネット上でこの人物への身元特定作業が始まりました。すると、次の日には竦みあがって検査を希望してこそこそと出頭してくるという、情けないその道化ぶりが、全国民の物笑いの種になりました。

 しかし、この屑どもの感染症に対する無知は、犯罪のレベルです。

 2018年の沖縄の麻疹流行は、発熱しながら観光を行った1人の台湾人観光客から麻疹流行が広がり、患者数は総計99人、沖縄県の直接的な経済的損失はたった1人のために4億2千万円に上ったのでした。

 また、2015年の韓国のMERS流行も湾岸諸国からの帰国した1人の韓国人から感染が広がり、死者36人、感染者186人、16000人の隔離者、経済被害はGDPの0.2~0.4%という甚大な被害が出たのでした。

 感染症に対する無知が、笑い話の種では済まない深刻な事例が、いくつもころがっているのです。

 強制的な検査ができないなら、検査を拒否する人物の入国は拒否しなければなりません。感染症は対応を誤れば、甚大な被害が国民の上に降りかかってくるのです。感染症から国民を守るため、国家は強い態度で臨むべきです。

 この2人の屑だけではありません。2月1日には、武漢からのチャーター便第3便で帰国した98人の滞在していた埼玉県和光市の国立保健医療科学院で、37歳の内閣官房の男性職員が7階屋上から飛び降り、自殺しました。お世話をしていた帰国者の一部の、無理難題に疲れ果てた果ての自殺だったと言われています。(報道はこちら。 新型コロナ、自殺した職員らに帰国者から寄せられた苛烈怒号

 法がないから、強制できないから、などというのは、いつもの厚労省のお役人の責任逃れの常套手段です。多くの国民を守るため、外国人だろうと日本人だろうと、必要なときはルールを守ってもらうために、たとえマスコミに非難されようとも、断固として公権力を用いることをためらうべきではありません。

 それができないなら、今後我が国は中国と並ぶ、新型コロナウイルス感染症の大炎上地帯になっていくでしょう。

2020年2月10日 執筆。適時、更新していきます。
2020年2月14日 一部加筆修正
2020年2月20日 一部加筆修正
2020年2月22日 一部加筆修正

第2部に続く


 参考文献:

Ⅰ.コロナウイルスについて

コロナウイルス感染症に関するQ&A(一般の向け)
国立感染症研究所:コロナウイルスとは
忽那賢志:徐々に見えてきた新型コロナウイルス感染症の重症度と潜在的な感染者数

Ⅱ.中国における新型コロナウイルス感染爆発の経過

遠藤誉:新型コロナウイルス肺炎、習近平の指示は何故遅れたのか?
遠藤誉:「空白の8時間」は何を意味するのか?――習近平の保身が招くパンデミック
遠藤誉:一党支配揺るがすか?「武漢市長の会見」に中国庶民の怒り沸騰
遠藤誉:習近平とWHO事務局長の「仲」が人類に危機をもたらす
遠藤誉: 習近平緊急会議の背後に「武漢赤十字会の金銭癒着」
遠藤誉:習近平は「初動対応の反省をしていない」し、「異例でもない」
遠藤誉:新型肺炎以来、なぜ李克強が習近平より目立つのか?

Ⅲ.ヒトコロナウイルス感染症のまとめ

Huang et al:Clinical features of patients infected with 2019 novel coronavirus in Wuhan, China
感染症学会:当院における新型コロナウイルス(2019-nCoV)感染症患者3例の報告

新型コロナウイルス感染症 実際に診た医師の印象
新型コロナウイルス感染症に対する感染管理
国内で報告された新型コロナウイルス感染症確定例12例の記述疫学
岩永直子:新型コロナ治療、最前線のトップ「国内では一人も死なせたくない」

日本環境感染学会:医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド

型コロナウイルス感染症(COVID-19)の印象と対
新型コロナ治療、最前線のトップ「国内では一人も死なせたくない」
新型コロナ治療、最前線のトップ「国内では一人も死なせたくない」
新型コロナ治療、最前線のトップ「国内では一人も死なせたくない」

Ⅳ.指定感染症について

指定感染症及び検疫感染症について


終わりに-今回の新型コロナウイルス感染症で突き出されたもの

【新型コロナ】チャーター便で帰国後、検査拒否の男は「自由意志やろ!」と叫んだ。

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