アトピー性皮膚炎について

2024年2月11日更新


アトピー性皮膚炎の治療は、「軽い症状があっても、急激な悪化が起こらない状態を維持する」ことによって、「症状がないか、あっても軽く、 お薬の治療をあまり必要としない状態となり、その状態を保つこと」が目標とされています。

新しい治療法や薬剤のご紹介、軟膏塗布の実習も含めて、鈴の木こどもクリニックの最新のアトピー性皮膚炎の治療について、2024年2月の現況をご説明いたします。

病気の解説で大切なことは、本の丸写しではなく、自分のクリニックではどのような治療を行うか、患者さんに具体的に説明することだと当クリニックは考えます。

アトピー性皮膚炎に悩むお子さま、お母さまは、ぜひご相談にいらして下さい。ご一緒にゴール目指して、頑張りましょう。

アトピー性皮膚炎のような慢性に経過する病気の治療は、ご本人、お母さま、先生、看護師さんのお互いの信頼の上で、より良いゴール目指して、ご一緒に頑張っていくものと当クリニックは考えています。

標準的治療を拒否されたり、お互いの信頼関係構築を必要としないとお考えの方は、自らの思いを受け入れてくれる医療機関に受診されることをお勧めします。

信頼関係が構築できなければ、いくら素晴らしい治療を行っても効果を上げることはありませんし、お子さまを幸せにすることもできません。




1.アトピー性皮膚炎とは

2.アトピー性皮膚炎の症状

3.アトピー性皮膚炎の治療



Ⅰ.アトピー性皮膚炎とは

①アトピー性皮膚炎の定義

まず、アトピー性皮膚炎の定義から始めたいと思います。

アトピー性皮膚炎とは、
「増悪と寛解を繰り返す、かゆみのある湿疹を主病変とする病気であり、患者の多くはアトピー素因を持つ」と定義されています。

これは、
①年齢によって、身体のいろいろな場所に、かゆみが強い発疹が出たり、ひっこんだりする(具体的な年齢別の症状はⅡ章で述べます)。
②本人や家族に、アレルギーの体質を持った人がいる。


という内容です。
このような症状が、
1歳未満なら2ヶ月、1歳以上なら6ヶ月以上続くものを、アトピー性皮膚炎と定義しています。

アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021

ここでいうアトピー素因とは、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎などのアレルギーの病気を本人か家族が持っていることをいい、アレルギーの症状が起こりやすい遺伝的な体質をいいます。



②アトピー性皮膚炎のメカニズム 

アトピー性皮膚炎とは、皮膚の抵抗力(皮膚を、さまざまな刺激から守る働きを、 バリア機能とよびます)の低下した状態に、 アトピーを発症しやすい体質がからみ、さまざまな皮膚の状態を悪化させる因子(悪化因子)がさらに加わり、発病していくもの、と考えられています。

1)皮膚の異常(バリア機能の低下。
かさかさ肌)


①角質層の異常

皮膚の最も外側にある角質層は、わずか0.01~0.02mmの薄い膜です。

角質層は、体をラップのように覆い、外部からの刺激や異物の侵入を防いだり、水分の喪失を防ぐ、大切な働きを行っています。



アトピー性皮膚炎の患者さんは、角質細胞間脂質であるセラミドという脂肪が異常に少ないため、皮膚をみずみずしく保つ、水分保持能力が大幅に低下していることがわかっています。

また、角質細胞とは、厚さ1mm位の平べったい細胞で、この細胞の内部には、主な成分であるケラチンとフィラグリンがからみあって充満し、外界のさまざまな刺激から皮膚内部を守っています。

しかし、アトピー性皮膚炎の患者さんの中には、遺伝的にこのフィラグリンが少ない人がいて、(また、ある種のサイトカインはフィラグリンを減らします)このような人の肌は角質細胞が非常に薄く、皮膚のバリア機能が著しく低下してします。

②顆粒層の異常

角質層のもう一つ内側には顆粒層という帯があり、この層には「タイト・ジャンクション」と呼ばれる、細胞と細胞をくっつけているつなぎ目の部分があり、皮膚のバリア機能を担っています。


化粧品成分オンライン バリア機能修復成分の解説と成分一覧
より

アトピー性皮膚炎の患者の中には、このタイト・ジャンクションの形成に係わるクラウディン-1という成分が少なく、この部分のバリア機能が低下している人もいます。



2)皮膚の炎症のメカニズム(皮膚が赤く腫れる。じくじくする)

正常な皮膚は保湿因子によって、皮膚バリア機能が働き、体の外から刺激、アレルゲンが入ってくることを防いでいます。

しかし皮膚バリア機能が低下すると、 体の外からの刺激やアレルゲン(アレルギーを引き起こす蛋白質。ダニ、ハウスダスト、花粉など。)が、皮膚から容易に侵入しやすくなります。その結果、皮膚の中で炎症が起きて、 さまざまなアトピー性皮膚炎の症状が起こってきます。

皮膚の中に侵入してきたアレルゲンは、まず皮膚のパトロール部隊である「抗原提示細胞」に見つかります。

この「抗原提示細胞」とは、つねに皮膚の表面近くをパトロールし、敵の侵入を見張っている、セコムのような細胞です。樹状細胞やランゲルハンス細胞と呼ばれている細胞です。

ひとたび、敵を発見(=アレルゲンを捕捉)すると、敵(抗原)侵入の警報を、上部司令官のTリンパ球(ヘルパーT細胞)に伝えます(抗原提示といいます)。

(出典;「佐伯秀久監修:アトピー性皮膚炎の治療目標と主な治療薬」マルホ)

抗原提示細胞から敵侵入の情報を伝えられた上級司令部のTリンパ球には、いくつかのサブグループがあり、そのうちのTh1細胞司令官はインターロイキン-2(IL-2)とインターフェロンーガンマ(IFN-γ)というサイトカインを分泌します。

また、別の司令官Th2細胞は、インターロイキン-4(IL-4)、インターロイキン-13(IL-13)、インターロイキン-31(IL-31)というサイトカインを分泌します。

サイトカインは司令部T細胞から、それぞれの部下の細胞への命令文書のような伝達物質=蛋白質です。

このTh2細胞が分泌するサイトカインであるIL-4、IL-13、IL-31が優勢になってくると、アレルギー炎症がひどくなり、組織は赤く腫れ上がり、知覚神経が刺激され、 ピリピリした痒みが発生する状態になっていきます。(嫌ですね)

図一番右にあるILC2というのは、Innate lymphoid cells(自然リンパ球)という細胞で、Th1細胞とTh2細胞の兄弟リンパ球とは出自の異なる、別家系のおじさんリンパ球です。

T細胞のような複雑な手続きを経ることなく、サイトカインであるIL-5、IL-13を分泌でき、皮膚の炎症を悪化させます。



3)痒みの増強(皮膚のひっかき傷の痕)

アトピー性皮膚炎は、強いかゆみを伴います。アトピー性皮膚炎の患者さんが最も強く悩むのは、この痒みです。

サイトカインのIL-31は、アトピー性皮膚炎の激しい痒みを引き起こすことが最近わかってきました。IL-31は、痒みを感じる知覚神経に働いて、神経を過敏にしたり、 皮膚の表面まで神経末端を延ばし、痒みを感じやすくしています。(上図参照)

それ以外にも、 アトピー性皮膚炎の痒みを引き起こす物質は多数見つかっています。

また、IL-4、13はBリンパ球(Tリンパ球と別種のリンパ球)に働き、IgEを放出させます。IgEは肥満細胞にくっつき、ヒスタミンを遊離させます(上図参照)。このヒスタミンも痒みを引き起こします。

ヒスタミンは長らくアトピー性皮膚炎患者の痒みの主犯として、目の敵にされてきました。

ヒスタミンの働きを抑えるため、ザジテンやアレロック、アレグラなどのヒスタミンの働きを抑える、 抗ヒスタミン薬が治療に使用されてきました。(もちろん、現在も使われています)

しかし、アトピー性皮膚炎の痒みに対しては、ヒスタミンは脇役だったようです。抗ヒスタミン薬は、アトピー性皮膚炎の患者さんの激しい痒みを和らげましたが、顕著な効果は示せませんでした。

アトピー性皮膚炎の病態は、
皮膚バリアが低下し、アレルギー炎症が悪化する。→炎症が激しくなり、痒みが強くなる。→痒みがひどいため、掻きむしり、ますます肌荒れがひどくなる。という「itch-scratch-cycle」と呼ばれる痒み、ひっかくことの悪循環が起こります。

これを抑え込み、鎮めることが、アトピー性皮膚炎の治療となります。



(出典;「佐伯秀久監修:アトピー性皮膚炎の治療目標と主な治療薬」マルホ)




Ⅱ.アトピー性皮膚炎の症状  

次にアトピー性皮膚炎の症状をみてきましょう。

①アトピー性皮膚炎の症状は、年齢によって変化します


アトピー性皮膚炎の皮膚症状は、年齢とともに変化していくことが特徴です。 赤ちゃんの湿疹がひどくて、お悩みのおかあさまにも、この湿疹がずっと続くわけではない、といつもお話ししています。

赤ちゃん期(2歳まで)

乳児期には顔の口の周りや頬に、赤いポツポツ、ジュクジュクした発疹が出ます。
また頚や頭、ひどくなると、胸や背中、膝のうら、手足などの汗のたまりやすい部分にも赤みが広がっていきます。


幼児期(2~12歳)

赤ちゃんの時期を過ぎるころになると、ひどい湿疹のあった赤ちゃんも、自然と改善していきます。
幼児期のアトピー性皮膚炎の症状は、顔や体の発疹が減りますが、首の回りや手足の関節周囲、お尻に発疹が目立つようになります。
また、皮膚が乾燥してざらざらになります。


学童期・思春期(13歳以上)

思春期・成年期は、アトピー性皮膚炎が悪化しやすい時期です。いったん治った皮膚の症状が、思春期になってぶり返す例も少なくありません。また、さまざまな因子が悪化するきっかけ、原因となります。

この時期の発疹は、顔や首、胸、背中、肘のあたりなど上半身に、皮膚の変化が強くみられます。特に顔は、いわゆる「アトピーの赤ら顔」などと呼ばれる、独特の顔つきになる人がいます。

また、この時期は精神的に不安定になり、さまざまな背景で治療がうまく行えない人も出てきます。


田辺三菱製薬サイト:ヒフノコトサイトより転載



②かゆみが最大の症状


アトピー性皮膚炎のお子さまは、皮膚の変調(湿疹、赤く腫れる、かさかさ、ごわごわ)が目立つことも辛い症状ですが、何よりもかゆみが最大の症状です。

お子さまは我慢することができず、掻きむしり、血まみれになってしまうこともあるほどです。
自分で掻くことのできない赤ちゃんが、抱っこしているママの服に顔をこすりつけて、一日で顔が真っ赤に腫れあがることもよく経験します。


お風呂に入ったり、夜ふとんに入って体があたたまると、かゆみが増すことはよく経験されます。これは、皮膚があたたまると、かゆみを感じる神経がかゆみに敏感に反応するためと、昼間は遊びに夢中になっているため、あまりかゆみを感じず、夜眠り始めるとかゆみが気になるためと考えられます。

ストレスもまた、かゆみを悪化させる原因と考えられています。

最近、この痒みはIL-31が大きく関係しており、このサイトカインの働きを妨げる新薬も登場してきました。 (詳細は後記)



③アトピー性皮膚炎の重症度について


アトピー性皮膚炎の重症度は、医学的には、皮疹(皮膚の湿疹)の面積と炎症の強さで分類します。(厚生労働科学研究班)

軽症 面積にかかわらず、皮膚に軽度の赤みや乾燥だけが認められる状態
中等症 強い炎症を伴う皮疹が、体表面積のおよそ10%未満に認められる状態
重症 強い炎症を伴う皮疹が、体表面積のおよそ10%以上で30%未満に認められる状態
最重症 強い炎症を伴う皮疹が、体表面積の30%以上に及ぶ状態

皮疹は面積よりも、個々の皮疹の重症度が重視されます。

診療の現場では、重症度分類にはEASIスコア
IGA、痒みの評価については掻痒NRS、掻痒VAS、POEMなどを用いて評価します。

鈴の木こどもクリニックの実際のアトピー診療では、チェックシートをお渡ししますので、痒みの強さをご自分で記載していただきます。
その結果を基に、治療法をご相談したいと思います。

中等症以上のアトピー性皮膚炎の治療には、JAK阻害内服薬や抗体治療薬の使用も検討いたします。



Ⅲ.アトピー性皮膚炎の治療

①治療の考え方

アトピー性皮膚炎は、適切な治療により、症状がコントロールされると、「寛解(かんかい)」といわれる状態になります。
アトピー性皮膚炎は皮膚のバリア機能の低下と免疫異常を基盤にさまざまな因子が関係して発症してくる病気のため、残念ながら完治は難しく、生活環境や生活習慣などによって、再び症状がぶり返すことがあります。

そのため、アトピー性皮膚炎の治療は、
「症状がないかあっても軽く、日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としない状態に到達して維持すること」
「軽い症状は続くけれども急激に悪化することはまれで、悪化しても症状が持続しないこと」

を目標に行われます。

アトピー性皮膚炎の治療は、「薬物療法」、「スキンケア」、「悪化因子の検索と対策」を三本柱として、進めていきます。
炎症に対しては、ステロイド外用薬や非ステロイド系のタクロリムス外用薬、コレクチム外用薬、モイゼルト外用薬を個々に、あるいは組み合わせて用い、これに保湿薬などによるスキンケアをしっかりと行います。

しかし、治療により皮膚が一見きれいになったように見えても、実は皮膚の深い層に炎症が残っている場合があり、そのような例では治療を途中で止めると、すぐに元も木阿弥になってしまいます。

そのため、現在では確実に炎症を鎮める、「プロアクティブ療法」と呼ばれる治療方法が確立してきているのです。(「プロアクティブ療法」は後述)



②治療の三本柱


アトピー性皮膚炎の治療は前項で述べたように、「薬物療法」、「(皮膚の生理学的異常に対する)外用療法やスキンケア」、 「原因・悪化因子の検索と対策」の三本柱で進めます。

① アトピー性皮膚炎の、皮膚の炎症と痒みを抑える、薬物療法
② アトピー性皮膚炎の、皮膚の炎症を予防する、スキンケア
③ アトピー性皮膚炎の原因・悪化因子をさがして、可能なら除去


以下、それぞれの治療について、具体的に述べていきます。



1.炎症やかゆみを抑える薬物療法(外用薬=軟膏)


ステロイド外用薬は、その有効性と安全性が医学的に山ほど検証されており、現在多くのアトピー性皮膚炎のお子さまが痒みの無い、快適な日常生活を過ごすことに、大きく貢献しています。

アトピー性皮膚炎の皮膚の炎症は速やかに、そして確実に鎮火させることが重要です。そのため、ステロイド外用薬を中心に、タクロリムス外用薬(プロトピック軟膏)、新たに登場したコレクチム軟膏、 モイゼルト軟膏を組み合わせて、治療を進めます。



ステロイド外用薬(軟膏)

●効果
ステロイド外用薬は、炎症を抑え、皮膚の状態を改善します。アトピー性皮膚炎の標準的治療の中心となる薬です。

ステロイド軟膏は、炎症を抑える強さによって、
①1群 ストロンゲスト(極めて強い)
②2群 ベリーストロング(かなり強い)
③3群 ストロング(少し強い)
④4群 ミディアム(少し弱い)
⑤5群 ウィーク(弱い)
と、5つのランクに分類されます。

実際の外用薬を、示します。(下図)

  強さ 一般名 製品名
Ⅰ群 ストロンゲスト (きわめて強い)   
プロピオン酸クロベタゾール
デルモベート
    酢酸ジフロラゾン  ジフラール、ダイアコート 
Ⅱ群  ベリーストロング(かなり強い)  
フランカルボン酸モメタゾン
フルメタ
    酪酸プロピオン酸ベタメタゾン アンテベート 
    フルオシノニド  トプシム、シマロン 
    ジプロピオン酸ベタメタゾン  リンデロンDP 
    ジフルプレドナート  マイザー 
    アムシノニド  ビスダーム
    吉草酸ジフルコルトロン  ネリゾナ、テクスメテン 
    酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン  パンデル 
Ⅲ群 ストロング(少し強い)
    プロピオン酸デプロドン エクラー
プロピオン酸デキサメタゾン
メサデルム
    吉草酸デキサメタゾン ボアラ、ザルックス
    吉草酸ベタメタゾン リンデロンV、ベトネベート
    プロピオン酸ベクロメタゾン プロパデルム
    フルオシノロンアセトニド フルコート
Ⅳ群  マイルド(穏やか)
    吉草酸酢酸プレドニゾロン リドメックス
    トリアムシノロンアセトニド レダコート、ケナコルトA
    プロピオン酸アルクロメタゾン アルメタ
    酪酸クロベタゾン キンダベート
酪酸ヒドロコルチゾン ロコイド
    デキサメタゾン グリメサゾン、オイラゾン
Ⅴ群 ウィーク(弱い)
    プレドニゾロン プレドニゾロン
酢酸ヒドロコルチゾン コルテス

当クリニックでは、下記のようなステロイド軟膏の写真で示し、患者さんとステロイド軟膏のランクを確認しながら、ちりょうを進めています。 (写真は、マルホ:ステロイド外用薬の使い方パネル)

当クリニックが良く処方するのは、ネリゾナ軟膏(Ⅱ群)、リンデロンVG軟膏(Ⅲ群)、リドメックス軟膏、 キンダベート軟膏、ロコイド軟膏(Ⅳ群)です。

ステロイド軟膏の処方の目安は、下表の通りです。

   皮膚の状態  外用薬の種類
 重症 高度の腫れ、浮腫、ジュクジュクした赤み、ないしはゴワゴワの皮膚、プツプツの多発、 ひどいフケ状やかさぶたの付着、小さな水ぶくれ、びらん、多数のひっかき傷、痒みのしこりがみられる状態  Ⅱ群のステロイド剤(必要ならⅠ群)
 中等症  中等度の赤み、カサカサむける、小さいプツプツ、ひっかき傷  Ⅲ群~Ⅳ群のステロイド剤
 軽症  乾燥、および軽度の赤み、カサカサむける皮膚   Ⅳ群のステロイド剤
 軽症  赤かったり、痒みなど無く、乾燥のみの皮膚  保湿剤


ステロイド外用薬の剤形としては、軟膏、クリーム、ローション、テープがあります。

髪の毛のある頭髪部はローションが塗りやすく、外用薬のべとべとが嫌いな人にはクリームを処方しています。
ローションは、顔や体に塗っても構いません。
テープ剤は、ひび割れや皮膚表面が固くなった部位に使われることがあります。(当クリニックは、あまり処方していません)

●副作用

①全身への副作用
 

内服薬(リンデロンシロップ、デカドロンエレキセル、プレドニン散剤など)や注射薬(サクシゾン、ソルコーテフなど)は全身投与になるため、 副作用が出現するリスクがあります。

副作用としては、成長抑制、免疫抑制、満月様顔貌、白内障などが起こります。

しかし外用薬(軟膏)では皮膚から吸収されるステロイドの量は微量のため、全身性の副作用が起こる可能性はほとんどありません。
長期投与で、毛嚢炎、にきびや皮膚が薄くなるなどの副作用がみられること程度です。(詳しくは、②で詳述します)


②皮膚におこる副作用

外用薬のため、不適切な強さのステロイド外用薬を長期間にわたって塗り続けた場合にのみ、塗られた皮膚に副作用が起る可能性があります。

また、当クリニックはステロイド軟膏を適正に処方するため、(副作用を怖れて、弱いⅣ群ステロイド剤をだらだら処方するようなことはいたしません)副作用には常に細心に注意を払っています。

また、当クリニックはプロアクティブ療法を積極的に推進しています。そのため、もしもステロイド剤を使用中に、ご心配なことがありましたら、お気軽にいつでも何でもご相談下さい。


ⅰ)ホルモンとして直接皮膚に影響する副作用
   毛細血管が拡張して皮膚が赤くなる
   皮膚が萎縮して薄くなる、皮膚に割れ目ができる(皮膚線条)
   にきび(顔・胸に使用している場合)ができる
   背中の毛は多くなる(多毛)
   毛穴が赤く腫れる(毛包炎)


ⅱ)ステロイドが局所の抵抗力を抑えるために起こる感染症による副作用
   カンジダ皮膚炎(おむつかぶれ)や皮膚の化膿疹が悪化する
   ヘルペスウイルス感染症が悪化する(カポジの水痘様発疹)
   みずいぼが増える

●使用方法(塗り方)

ステロイド軟膏は塗り方がきわめて重要で、適切に塗らなければ十分な効果が得られません。
また、不十分な塗り方では効果が得られないため何時までも中止できず、いたずらに長期間塗ることは、副作用が出現しやすくなります。

当クリニックでは、赤ちゃんに初回ステロイド剤を処方するときや、なかなか改善しないアトピー性皮膚炎のお子さまに対しては、 改めて、看護師、医師からステロイド外用薬の塗り方のご説明と、ご一緒に軟膏の塗り方の実習を行います。

正しい軟膏の塗り方をマスターし、お子さまの肌を守りましょう。


<ステロイド軟膏の正しい塗り方>

➊塗る人の手をまず、きれいに洗う。
➋入浴後、水分を拭き取ったら、すぐに塗る。(時間が経つと肌が乾燥してしまいます。5分以内が推奨されています)
➌たっぷり、皮膚にのせるように塗る。数カ所に乗せて、手のひらでうすく広げるように塗る。
➍頭皮に塗る場合は、地肌に到達するようにローションを垂らし、指で抑えるように延ばす。(ローションの場合)


人差し指の先端から第1関節部まで、外用薬チューブから押し出された量(約0.5g)が、成人の手のひら2枚分にあたります。この量を、
1Finger-tip-unit(FTU)といいます。

軟膏を塗るときは、このFTUを目安とします。(当クリニックでは、「ゆび単位」と呼んでいます)


ローションの場合は、1円玉の大きさが1FTU(0.5g)となります。


   顔全体FTU  片腕FTU  片足FTU  胸腹部FTU  背中FTU  全体FTU
3ー6ヶ月児  1  1  1.5  1
 1.5  8.5
 1-2歳  1.5  1.5  2  2  3  13.5
 3-5歳  1.5  2  3  3  3.5  18
 6-10歳児  2  2.5  4.5  3.5  5  24.5



たとえば、赤ちゃんの顔(1FTU=0.5g)に軟膏を塗るとすると、1回0.5g塗ることになります。1日に2回塗れば(=1g=2FTU)、5gのチューブ1本なら、5日でなくなることになります。 (0.5g×2×5=5gとなります)

赤ちゃんの全身に軟膏を塗るとすると、8.5FTUとなりますから、1日必要量はFTU8.5×2で17FTU=8.5gです。したがって、5gのチューブ1本では足りないことになります。

保湿剤は全身に塗布しますが、ステロイド剤は塗布する赤い炎症部分のみを大人の手の大きさ(手掌2枚分が1FTUとなります)から換算し、塗る量を算出します。

保湿剤などは、大きな容器に入っているため、人差し指を使うFinger-tip-unitではなく、計量スプーンを用います。

大きな容器に軟膏(プロペトや亜鉛華軟膏など)が入っているときは、専用スプーンを用いて、塗る軟膏量を計ります。
小さじ5ccは軟膏4gに相当します。(これは、5g軟膏チューブなら、4/5本となり、8FTUに相当します。)

 大きな容器の軟膏は、専用
 スプーンで計量して、塗布します。

 実際の塗り方は、医師、看護師
 がご一緒に練習します。

 5cc計量スプーンの入手法もこの時に
 ご案内いたします。


計量スプーンを利用した場合の、実際の軟膏の使用量の目安は、以下の通りとなります。

  顔全体  片腕  片足  胸腹部  背中 全体 g
3ー6ヶ月児  0.5  0.5  0.75  0.5
0.75  4.25
 1-2歳  0.75  0.75  1  1  1.5  6.75
 3-5歳  0.75  1  1.5  1.5  1.75  9
 6-10歳児  1  1.25  2.25  1.75  2.5  12.25

乳児は、小さじ 5cc(4g)1杯  (8FTU相当)  
幼児は、小さじ 5cc(4g)1.5杯  (6g=12FTU相当)
学童は、小さじ5cc(4g) 2杯 (10g=20FTU相当)
中学生は、小さじ5cc (4g)3~4杯   (12~15g=24~30FTU相当)
       または、大さじ 15cc(12g)1杯でも可 

上肢片側2g×2、下肢片側2.5g強×2、からだ半分3g×2(全身で12~15g)

軟膏は必要量を十分塗ることが大切です。計量すると、塗る量が少なくなってしまいます。

軟膏の実際の塗り方は、こちらにくわしくご説明します。(→軟膏の塗り方



プロアクティブ療法について

アトピー性皮膚炎は、良くなったり悪くなったり、皮膚の増悪を繰り返す慢性疾患です。

湿疹がひどいときにステロイド軟膏を塗り、よくなればステロイド軟膏をやめる方式を、
リアクティブ療法といいます。
今まではステロイドの副作用を危惧して、この方式は普通に行われてきました。

しかし、この方法だとステロイド軟膏を止めると、またすぐ皮膚が赤く、湿疹がぶり返すことが多いです。

その理由は、見た目は皮膚がきれいになっても、実は皮膚の内部には炎症が残っていて、中途半端に治療をやめると、炎症がぶり返してしまうからだとわかってきました。 したがって、結局ステロイド軟膏を長期使用することになります。

そのために、現在は十分なステロイド外用薬の治療で症状を抑えた後も、ステロイド外用薬やタクロリムス外用薬を、定期的(週1~3回)に塗って、症状の再発を抑える 「
プロアクティブ療法」が、推奨されるようになりました。

プロアクティブ療法によって、皮膚に炎症がない状態を維持することができます。また、ステロイド外用薬の使用量も、結局は少なくなるために、ステロイドの副作用もはるかに軽くすむことになります。

現在当クリニックはプロアクティブ療法を、ステロイド剤を中心に、プロトピック軟膏、コレクチム軟膏、モイゼルト軟膏なども使用しながら、患者さんごとにオーダーメイドに計画立てて、行っています。





タクロリムス軟膏(プロトピック水和物軟膏;カルシニューリン阻害薬)



タクロリムス軟膏は1999年に成人用0.1%軟膏が、2003年には小児用0.3%は認可されており、比較的歴史のある外用薬です。

ステロイド軟膏と同じ感覚で使用できる、抗炎症外用薬です。ステロイド軟膏のランクでいうと、Ⅲ群~Ⅳ群の強さに相当すると評価されています。

●効果

タクロリムスは、Tリンパ球(免疫をつかさどる白血球)内でタクロリムス結合蛋白である、FKBP(FK506-binding-protein)に結合します。

FKBPは、脱リン酸化酵素であるカルシニューリンの作用を妨害し、Tリンパ球の活性化因子の働きを抑制します。

そのため、Tリンパ球のIL2、IL5、IL6などのサイトカインの合成・分泌を抑えます。 その結果、過剰なの免疫反応が抑えられることになります。

ステロイド軟膏を長く使った時に報告される、皮膚萎縮や毛細血管の拡張は、プロトピック軟膏はステロイド剤ではないため、生じません。

●副作用

熱感、痛み、かゆみ、毛嚢炎(細菌による感染症)などが確認されていますが、多くは皮膚の状態が良くなると、軽減、消失します。特に塗り始めのひりひりした痛みが、プロトピック軟膏の最大の副作用のようです。

当初心配された皮膚がん・リンパ腫の発生は、現在では問題が無いことが明らかにされています。

●使用方法(塗り方)

小児では、0.03%小児用軟膏を1日1~2回、1回最大5g(チューブ1本)まで(プロトピック軟膏は、年齢別の塗る量が決められています。下表)を病変部に塗布します。

2回塗るときは、大体12時間あけて塗布することが推奨されています。

 年齢  体重  1回に塗る量の上限
2歳~5歳   20kg未満  1g(=2FTU)
 6歳~12歳  20kg~50kg  2g~4g(=4~8FTU)
 13歳以上  50kg以上  5g(=10FTU)


プロトピック軟膏は、塗るとかゆみやヒリヒリするなどの刺激が生じますが、 皮膚の状態がよくなると次第におさまります。皮膚がジュクジュクしている箇所や口・鼻の中の粘膜部分や外陰部には、使用できません。目に入らないよう、注意が必要です。

動物実験で紫外線と皮膚がんの関連が認められたため、念のため、プロトピックを塗ったところには強い日光を長時間当てないよう、注意が喚起されています。


●当クリニックの使用方針

プロトピック軟膏は、ステロイド剤の副作用が出やすい、顔や首(頸部)の塗布が推奨されています。また、プロアクティブ療法のさい、ステロイド剤の休薬時にも使用できます。

しかし、使い始めの皮膚のひりひり感、ほてり、かゆみなどの副作用が多いこと、ほぼ12時間は空けて塗らなければならないこと、日焼けを避けなければならないことなど、使用にいろいろと制約があります。

そのため、 最近ではモイゼルト軟膏など効き目が同程度で、ほとんど副作用を気にしなくて良い、新しい非ステロイド外用薬が登場したことなどより、現在ではほとんどプロトピックは処方しておりません。



コレクチム軟膏(デルゴシチニブ軟膏)



2020年6月にアトピー性皮膚炎治療薬の新しい外用薬として、デルゴシチニブ軟膏(コレクチム軟膏)が登場しました。 小児用は2021年6月に発売となっています。

コレクチム軟膏は、JAK(ヤヌスキナーゼ)阻害薬とよばれる外用薬で、ステロイド外用薬やタクロリムス外用薬とは異なるメカニズムで、アトピー性皮膚炎の患者の痒みを抑えます。

ヤヌスキナーゼ(JAK、ジャックと呼ばれます)とは、チロシンキナーゼという酵素の一つで、細胞の表面にあるいろいろな伝達を受けるレセプター(受容体)にくっついています。

伝達物質であるサイトカインが細胞のレセプター(受容体)に結合すると、JAKはリン酸化されて活性化します。

そして細胞内にあるSTAT(Signal transducer and Activator of Transcription)と呼ばれる転写因子を、リン酸化し活性化させます。

この活性化したSTATは、二量体という二つ結合した状態で核内に移動します。そして、サイトカインからの命令(シグナル)を核に伝達し、その命令を元にさまざまな物質が作られ、分泌されていきます。

このヤヌスキナーゼ(JAK)は、全部で4種類あり(JAK1、JAK2、JAK3、Tyk2)、それぞれ異なるシグナルをSTATを通じて核に伝達します。

このJAKを通じて届けられた命令(シグナル)をもとに、細胞核はさまざまな物質を分泌します。炎症性サイトカインが大量に放出されると、皮膚に炎症がひどくなり、痒みが強くなり、アトピー性皮膚炎が悪化していきます。

コレクチム(デルゴシチニブ)は、この4つのJAKファミリーのリン酸化(活性化)を全て阻害し、STATを活性化させず、シグナル伝達を全てブロックしてしまいます。そのため、組織を腫れさせる、炎症性サイトカインの分泌が抑えられます。

その結果、皮膚の炎症を抑えられ、痒みも抑制されていくのです。

JAK(ヤヌスキナーゼ)阻害剤は、外用薬以外にも内服薬もあります。JAK阻害薬全般についての詳しい説明は、別稿をお読みください。

●効果

コレクチム軟膏の炎症を抑える働きは、ステロイド剤のランクでいうと、Ⅲ群~Ⅳ群レベルのようです。(タクロリムスと同程度)
しかも効果が出るのに多少時間がかかり、塗ってもすぐに皮膚の赤みがひくことはないようです。一方、痒みは速やかに抑えます。

また、皮膚の水分量を保持する働き(保湿効果)も認められています。

●副作用

特に目立った副作用はありませんが、毛のう炎、皮膚の赤み、にきび、刺激感の報告があります。また、ヘルペス感染症であるカポジ水痘様発疹、単純ヘルペスの発生に注意します。

●使用方法(塗り方)

2歳以上が使用の対象になります。0.25%、0.5%の2種類の製剤があります。

1日2回、病変部位に塗ります。1回の使用量(塗布量)はチューブ5g1本(=10FTU)以内で、身体の表面積の30%までとされています(手のひら1枚分の面積が、おおよそ体表面積の1%相当と評価します)。

使用の目安は、FTUの表に皮疹部位を当てはめて、塗布量を決めます。ティッシュが皮膚に着く、または皮膚がテカる程度に塗りましょう。しかし、強く塗り込む必要はありません。

小児はまず、0.25%製剤で開始します。1週間ぐらいから効果が認められ、1ヶ月ぐらいで痒みが治まってくるようです。効き目はマイルドのようです。子どもでも症状によっては、0.5%製剤の使用も可能です。


目や口、鼻の中など粘膜面には使用できません。皮膚のただれ、感染を起こしている所(とびひなど)には使用できません。
薬を塗った所に、赤や白の吹き出物やにきび、水疱などが出現したら、受診していただき、確認が必要です。


●当クリニックの使用方針

ステロイド剤の副作用はなく、効き目は穏やかで、使いやすい軟膏です。 ただし、2歳以上という年齢制限と投与量の制限があります。

顔や頸部のステロイド剤の副作用の出やすいところ、またプロアクティブ療法のステロイド剤の休薬時、軽症のアトピー性皮膚炎で痒みが強いお子さまに、幅広く処方しています。



モイゼルト軟膏(ジファミラスト軟膏)



ジファミラスト軟膏(モイゼルト軟膏)は、2022年6月1日に発売された、新しいホスホジエステラーゼ4阻害薬という外用薬です。

このホスホジエステラーゼ4(PDE4)という酵素は、細胞内のサイクリックAMP(cAMP)という物質を、分解する働きがあります。

このホスホジエステラーゼ4(PDE4)が働き過ぎると、免疫細胞からサイクリックAMP(cAMP)が減少し、その結果免疫細胞は興奮し、炎症を引き起こすサイトカインなどを大量に放出してしまいます。その結果、組織の炎症が悪化します。

(つまり、cAMPは細胞を静かにしておく、宥め役なのかもしれませんね)

モイゼルトはこのPDE4の作用を阻害し、細胞内のcAMPの濃度を高めて、細胞を落ち着かせ、炎症を鎮めます。
(図は大塚製薬モイゼルト軟膏説明パンフより)



●効果

モイゼルト軟膏の炎症を抑える働きは、動物実験の検討ではⅢ群ステロイドより弱く、プロトピック軟膏よりは強いと報告されています。

●副作用

特に目立った副作用は無く、色素沈着や痒み、毛のう炎、にきびの報告があるくらいです。

●使用方法(塗り方)

2歳以上が使用の対象になります。0.3%、1%の2種類があります。1日2回、病変部位に塗ります。
モイゼルト軟膏は、プロトピック軟膏、コレクチム軟膏と異なり、使用量に制限はありません。

使用の目安は、FTUの表に皮疹部位を当てはめて、塗布量を決めます。

小児はまず、0.3%製剤で開始します。1週間ぐらいから効果が認められ、1ヶ月ぐらいで痒みが治まってくるようです。
子どもでも効果によっては、1%製剤に増量可能です。

●当クリニックの使用方針

ステロイド剤の副作用はなく、効き目は穏やかですが、特に投与量の制限もなく、使いやすい軟膏です。

顔や頸部のステロイド剤の副作用の出やすいところ、またプロアクティブ療法のステロイド剤の休薬時、軽症のアトピー性皮膚炎に幅広く投与しています。



2.炎症やかゆみを抑える薬物療法(内服薬)

近年、中等症から重症のアトピー性皮膚炎にきわめて有効な治療薬として、JAK阻害薬や生物学的製剤(抗体治療薬)といわれる薬が登場してきました。

これらの薬は重症のアトピー性皮膚炎の患者さんに著効を示し、アトピー性皮膚炎の耐えがたい痒みやごわごわ、赤ら顔のアトピーの皮膚症状が劇的に改善するという効果が報告されています。

主に成人の重症アトピー性皮膚炎患者に使用されてきましたが、JAK阻害内服薬は12歳から、抗体治療薬も1歳前から使用できるよう適応が広げられた薬もあり、当クリニックも中学生、高校生の中等症~重症アトピー性皮膚炎の患者さんに、投与をご相談いたします。

まず、新しく登場した、内服薬(飲み薬)をご説明いたします。3剤ともJAK阻害薬です。

JAK(ヤヌスキナーゼ)阻害剤の作用、詳細は、別項で詳しく説明いたします。



サイバインコ(アブロシチニブ)

2021年12月に、アトピー性皮膚炎の内服薬として、発売されました。アトピー性皮膚炎のみが対象となる、JAK阻害剤です。

●効果

JAK1の働きを抑えます。
その効果は素晴らしく、1週間で頑固なかゆみはほぼ治まり、皮膚病変も12週で略知といえるほど、改善した状態になると報告されています。

●副作用

毛のう炎、皮膚の赤み、にきび、帯状疱疹、単純ヘルペスに注意します。服用開始後、腹痛、悪心の症状が現われることがあります。

●投与方法

12歳以上が対象です。したがって、中学生から投与できます。

1日1回、100mgを服用します。症状に応じて、200mgまで増量可能です。最近では、当初から200mgの服用を勧める報告もあります。

●投与できない人

結核、B型肝炎、貧血、白血球減少、血小板減少、重い肝障害、重い腎機能障害、妊娠している人は投与できないか、要注意とされています。

JAK阻害薬については、さまざまなヤヌスキナーゼの働きに影響するため、病気の重さ、今までの治療の経過、患者の背景などを十分に検討し、投与を患者さんと相談することが勧められています。

そのために本剤投与前、投与中も、血液検査、胸部X線検査を行い、緻密な経過観察が必要とされています。


●当クリニックの方針

12歳から投与できるので、投与基準を満たした中等症以上のアトピー性皮膚炎の中学生、高校生に投与します。



リンヴォック(ウパダシチニブ)

アトピー性皮膚炎以外にも、関節リウマチ、乾癬、強直性脊椎炎、潰瘍性大腸炎、クローン病など免疫異常の病気に投与される、JAK阻害剤です。

●効果

JAK1の働きを抑えます。
Ⅰか月でかゆみ、皮膚病変は急激に改善します。

●副作用

重い感染症(肺炎、帯状疱疹、結核)、消化管穿孔、好中球減少、リンパ球減少、貧血、肝障害、静脈血栓塞栓症。
その他、かぜ、副鼻腔炎、嘔気、発熱。


●投与方法

12歳以上、体重が30kg以上の小児に、リンヴォック錠15mgを1日1回投与します。

●投与できない人

結核、B型肝炎、貧血、白血球減少、血小板減少、重い肝障害、妊娠している人は投与できないか、要注意とされています。

JAK阻害薬については、さまざまなヤヌスキナーゼの働きに影響するため、病気の重さ、今までの治療の経過、患者の背景などを十分に検討し、投与を患者さんと相談することが勧められています。

そのために本剤投与前、投与中も、血液検査、胸部X線検査を行い、緻密な経過観察が必要とされています。


●当クリニックの方針

サイバインコと使用対象が重なるため、当クリニックではサイバインコを優先して投与しています。




オルミエント(バルシチニブ)

2017年9月に発売になり、アトピー性皮膚炎は2020年12月に加えられました。アトピー性皮膚炎のほか、円形脱毛症、関節リウマチ、新型コロナウイルス感染による肺炎にも使用される、JAK阻害剤です。

●効果

JAK1/JAK2の働きを抑えます。
アトピー性皮膚炎のかゆみ、皮膚炎症を軽快させます。

●副作用

重い感染症(肺炎、帯状疱疹、結核)、消化管穿孔、好中球減少、リンパ球減少、貧血、肝障害、静脈血栓塞栓症。

●投与方法

15歳以上に投与できます。1日1回、4mgを服用します。

●投与できない人

結核、妊婦、好中球減少、貧血、リンパ球減少、重度の腎機能障害を持つ人は投与できません。
そのために投与前に、血液検査、胸部X線検査を行い、投与できるか判定します。

●当クリニックの方針

15歳以上が対象のため、またJAK1のほかにJAK2にも抑制効果があるため、処方しておりません。。




3.炎症やかゆみを抑える薬物療法(注射薬)

アトピー性皮膚炎の患者さんの最大の悩みは、がまんできない痒みのようです。当クリニックにも小学生のころから通院されている、軽くないアトピー性皮膚炎の患者さんにお聞きすると、 みな痒みが最も辛い症状だとお話しされます。

アレロック(オロパタジン)やザイザル(レボセチチジン)などの抗ヒスタミン薬の痒みを抑える効果は、残念ながら限られたものでした。

しかしこの度ミチーガ(ネモリズマブ)が登場して、状況が変わりました。アトピー性皮膚炎の痒みに対し、きわめて有効で、中等症以上のアトピー性皮膚炎の患者さんにとって、福音のような薬です。

ミチーガについて、ご説明いたします。



ミチーガ(ネモリズマブ;ヒト化抗ヒトIL-31受容体モノクローナル抗体)

ミチーガは、2022年3月に認可された、生物学的製剤(抗体注射薬)です。

2章で述べたJAK阻害薬が、低分子で、細胞の受容体に結合しているヤヌスキナーゼ(JAK)の働きを阻害するのに対し、ミチーガは高分子であり、 神経細胞の末端のIL-31の受容体に先にくっついて、IL-31の働きを妨害します。(下図)

IL-31の持つ、神経細胞から痒みを脳に伝えたり、神経を皮膚までのばし知覚過敏を引き起こしたりする働きを押さえ込み、アトピー性皮膚炎の患者さんの痒みを劇的に改善します。


マルホミチーガ皮下注用60mgシリンジ適正使用ガイド:7

●効果

劇的に痒みを抑えます。数日で効果が出てくる患者さんが多いようです。

●副作用

ミチーガは痒みには著効を示しますが、炎症を抑える働きはありません。
したがって、痒みは治まりますが、アトピー性皮膚炎の症状は続きます。皮膚の赤みの拡大、じんましん、湿疹などは良くなりません。 痒みが治まっても、ステロイド軟膏、保湿剤のケアは確実に続ける必要があります。

胃腸炎、皮膚感染症の報告もあります。

また、痒みを伴わない赤い斑点状の皮膚変化(浮腫性紅斑)が現われることがあるようですが、軟膏塗布で軽快することが多いようです。(モデルナアームを思い出しますね)

ただし、痒みが治まって掻かなくなると、アトピー性皮膚炎の症状も改善する例も多いようです。

●投与方法

従来のアトピー性皮膚炎の治療薬による軟膏治療、抗アレルギー薬服用を一定期間行っても、痒みの改善しない、13歳以上のアトピー性皮膚炎の患者さんが対象です。

4週間に1回、60mgを皮下注射します。

●当クリニックの方針

症状の確認、今までの治療歴を確認して、ミチーガ投与の対象になるか、ご相談いたします。
投与の対象と確認できた場合は、ミチーガ注射を始めます。


ディピクセント(ディプロマブ;ヒト型抗ヒトIL-4/13モノクローナル抗体)

ディピクセント(ディプロマブ)は、高い治療効果と長期の安全性が確かめられている、すぐれた抗体治療薬(生物学的製剤)です。

アトピー性皮膚炎については、2018年4月から使用が始まりました。当初は15歳以上が投与対象でしたが、2023年9月より、生後6ヶ月以上の小児に対象が引き下げられました。

したがって、今後中等症以上の小児アトピー性皮膚炎の治療の中心として使用されていくものと期待されています。

欠点は注射薬であることと結膜炎の合併が多いこと、顔の皮疹が消えにくいことです。

●効果

免疫司令官であるヘルパーT細胞やグループ2自然リンパ球(ILC2)が分泌するIL4、IL-13の働きを抑え、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、慢性副鼻腔炎などの重症の患者の症状を軽快します。

免疫細胞のTh2リンパ球からのIL-4、IL-13の分泌を抑制し、炎症を抑えます。かゆみ、皮膚の症状が短期間で改善する患者さんが多いようです。

●副作用

結膜炎を比較的合併しやすいと報告されています。

アトピー性皮膚炎の症状は続きます。痒みが治まっても、ステロイド軟膏、保湿剤のケアは確実に続ける必要があります。

また、胃腸炎、皮膚感染症の報告もあります。

●投与方法

年齢と体重で接種量、シリンジが異なります。


●当クリニックの方針

デュピクセントは、中等度以上のアトピー性皮膚炎患者に積極的に投与しています。




4.炎症を予防するスキンケア
(→スキンケアについての、実践的な詳しい説明はこちら


皮膚を清潔に保ち、水分と油分(皮脂)を補給することは、 皮膚を良い状態に保ち、アトピー性皮膚炎の症状の悪化を抑えることができます。そのために、しっかりスキンケアを行いましょう。

スキンケアの意義は、

①皮膚の清潔を保持…感染(黄色ブドウ球菌など)から赤ちゃんの肌を守り、汗、皮脂、汚れなどを取り除くため
 →①
洗う

②バリア機能の保持…皮膚を乾燥から守り、痒くて掻き壊すことを予防するため
 →②
塗る



①洗うこと


皮膚の清潔を保つには、毎日の入浴・シャワーが大切です。石鹸を使って、洗うことが必要です。

ⅰ)石鹸

石鹸は、剤形(固形、液体、ポンプ式)はどれでもよいと思います。
石鹸・シャンプーを使用する時は、洗浄力の強いシャンプー、リンスは使用しないようにします。
石鹸に含まれる添加物は、皮膚の刺激物になり、アレルギーの原因にもなるので、添加物の無い石鹸を選びましょう。
高い温度の湯は避けましょう。

ⅱ)洗い方

洗う順番を決めて、洗っていきます。
肘の内側、外側は曲げ伸ばしして、しわは伸ばして良く洗います。

ⅲ)すすぎ方

石鹸・シャンプーは残らないよう、十分すすぎます。石鹸のかすが皮膚に残ると、刺激物となります。
シャワーヘッドを持っている手や耳の後ろはすすぎ残しが起こりやすいので、シャワーヘッドを持ち替えてよくすすぎましょう。
最後のすすぎの時に、髪もよくすすぎましょう。脇の下や股の間もお湯をかけてよく流します。



②塗ること


皮膚の保湿を保つため、保湿剤を効果的に使用しましょう。


洗ったら、5分以内に保湿剤を塗ります。
ごしごし擦り込むのは止めましょう。

保湿剤は、肌の乾燥を防ぐために塗ります。こまめに塗ることが、大切です。
入浴やシャワーの後は、保湿剤を使用する習慣をつけましょう。
お子さまがいやがらない保湿剤を使いましょう。



保湿剤(
皮膚の乾燥を防いで、皮膚バリア機能を補う薬)一覧
皮膚の保湿を主としたもの(皮膚に潤いを与える)

 一般名  製品名
ヘパリン類似物質含有製剤        ヒルロイドクリーム
 ヒルドイドソフト軟膏
 ヒルドイドローション
 ヒルドイドフォーム
 ヘパリン類似物質クリーム
 ヘパリン類似物質油性クリーム
 ヘパリン類似物質外用泡状スプレー
 ヘパリン類似物質外用スプレー
 尿素含有製剤      ケラチナミンコーワクリーム
 パスタロンソフト軟膏
 パスタロンクリーム
 パスタロンローション
 ウレパールクリーム
 ウレパールローション


皮膚の保護を主としたもの(皮膚にふたをして、水分が体の外に逃げるのを防ぐ)

 一般名  製品名
 ワセリン  局方白色ワセリン
 プロペト(精製ワセリン)
 亜鉛華軟膏    サトウザルベ
 亜鉛華軟膏
 ボチシート(リント布に亜鉛華軟膏塗布)
 その他  アズノール軟膏



③原因・悪化因子の検討と除去


患者によって原因・悪化因子は異なるので、個々の患者においてそれらを十分確認してから除去対策を行います。

気候、発汗、精神的なストレス、体調過労、日光、食物(卵、ミルクなど)、 環境因子(ダニ、ハウスダストなど)、接触抗原(布、親の衣服など)が悪化因子としてあげられます。

とりわけ、乳幼児では肌は抵抗力が弱いため、細菌感染やウイルス感染がアトピー性皮膚炎を悪化させます



●生活環境の改善


乳児期は食べ物がアトピー性皮膚炎の悪化因子になります。

乳幼児期を過ぎると、ダニ、ハウスダスト、カビなどの環境的な要素がアトピー性皮膚炎の悪化因子になります。この環境的な要素は、生活の中の工夫や努力によってかなり減らすことができます。

とりわけ、ダニはアトピー性皮膚炎に深く関係する悪化因子のため、十分な対策が必要です。


1.皮膚の清潔

毎日の入浴したりシャワーを使いましょう。このとき、石鹸やシャンプーは洗浄力の強いものは避け、皮膚を強くこすらないようにします。また、石鹸やシャンプーは皮膚に残らないよう、十分にすすいでください。

水温は肌にかゆみを生じるような、熱い温度はさけます。
そして、入浴後には、必ず適切な保湿剤を塗布するようにします。保湿剤は、肌のうるおいを保ち、皮膚の乾燥防止に有用です。使用感のよい、お子さまが喜ぶ保湿剤を使いましょう(炎症を予防するスキンケア参照)。


2.生活上の注意

爪を短く切り、なるべくかかせないことが大切です。(手袋や包帯などによる保護が有用なことがあります。お子さまの状態に応じて適切な処置を行うことが大切だと思います)。

新しい肌着は使用前に水洗いしてから使用します。

患者によって原因・悪化因子は異なるので、個々の患者においてそれらを十分確認してから除去対策を行います。

気候、発汗、精神的なストレス、体調過労、日光、食物(卵、ミルクなど)、 環境因子(ダニ、ハウスダストなど)、接触抗原(布、親の衣服など)が悪化因子としてあげられます。

とりわけ、 乳幼児では肌は抵抗力が弱いため、細菌感染やウイルス感染がアトピー性皮膚炎を悪化させます。




小児アトピー性皮膚炎の治療には、小児科と皮膚科の密な連携が必要です。

そのため、当クリニックではアトピー性皮膚炎の治療の当たっては、諏訪皮膚科クリニック 鈴木正院長(元埼玉医科大学皮膚科助教授。右写真)と綿密に連携し、症例ごとに適時皮膚科専門医のご意見も伺いながら、診療に当たっています。
(2023.8.1)


謝辞:
本論文で引用した図、表、シェーマは以下の資料から転載させていただきました。著者の方々には厚く御礼申し上げます。
アトピー性皮膚炎のおはなし マルホ
Pediatric Community 子どもの皮膚疾患のために Vol.2 マルホ
アトピー性皮膚炎の治療目標と主な治療薬 マルホ
アトピー性皮膚炎治療に用いる主な治療薬 マルホ
アトピー性皮膚炎の重症度評価の補助に TARC シオノギ製薬
アトピー性皮膚炎とは 鳥居薬品
スキンケアボード ー健康な皮膚を保つためにー マルホ


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