種類 | 不活化スプリットワクチン | 弱毒生ワクチン |
投与方法 | 筋肉内注射(アメリカ) 皮下注射(日本) |
鼻の中に噴霧 |
ワクチンのウイルスの状態 | 死んだウイルス(の一部) | 病原性の弱い、生きたウイルス |
接種対象年齢 | 生後6ヵ月以上 | 2~49歳(アメリカ) 2~18歳(日本) |
インフルエンザ関連の合併症を起こす可能性 の高い人への接種ができるか |
できる | できない |
喘息のこどもや、過去12カ月間に喘鳴が見 られた2~4歳のこどもへの接種ができるか |
できる | できない |
妊婦への接種ができるか | できる | できない |
強度の免疫不全状態の人の家族・濃厚接触 者への接種ができるか |
できる | できない |
接種後の鼻咽頭部からのインフルエンザ ウイルスの検出 |
検出されない | 接種後7日ぐらいまで、検出される |
Public Health England (PHE), the Department of Health and NHS England remain confident that the children’s nasal spray flu vaccine plays an important role in protecting children, their families and others in the community from flu during the winter.
Provisional figures released by PHE show that the childhood nasal spray flu vaccine has been effective in the
UK, both in protecting the children themselves and their communities from
flu. Reports from the US have suggested a possible lower vaccine effectiveness,
unlike the findings in the UK.
しかし、アメリカのCDC(疾病管理予防センター)は、2017年-2018年のシーズンも、フルミストの使用を推奨しませんでした。2016-2017年の結果を加えても、不活化65%、フルミスト46%でフルミストの有効性を確認できなかったという理由からでした。
フルミストの有効性が低下した理由について、いくつかの仮説が唱えられました。
①2013-2014年、3価だったワクチンが4価となり、生ワクチン中のそれぞれのインフルエンザウイルスがお互い干渉しあって、接種しても抗体が上がらなくなったのではないか、という説。
②特にH1N1インフルエンザに効果が認められなかったのは、すでにH1N1インフルエンザに自然感染していた人が多かったため、生ワクチンのウイルスを接種してもワクチンのウイルスが効果を発揮できなかったのではないか、という説。
その他、ワクチンの温度管理の問題など、しかしいずれも仮説の域を脱することはありませんでした。
③アメリカCDCは2018年、再びフルミストを推奨
ところが、アメリカCDCは、2018-2019年のシーズンでは再びフルミストの接種を勧奨する、と声明しました。フルミストの効果を再度検証したところ、有効性が確認されたから、という理由でした。
During the Feb. 21-22 meeting of the CDC's Advisory Committee on Immunization
Practices (ACIP), the group voted 12-2 to recommend the inclusion of live
attenuated influenza vaccine for the upcoming flu season.(原文はこちら)
現在では、フルミストは世界36の国、地域で承認されたワクチンとなっています。
フルミストの効果
我が国のコロナ前の2016-2017年のシーズンの、フルミストのインフルエンザ感染症に対する発病阻止の有効性 (vaccine efficacy)
は28.8%でした。
ただし、インフルエンザ分離株の83%がA/H3N2型で、A/H1N1型やB型に対する有効性は確認できませんでした。
(その後、A/H1N1型やB型に対しても有効という報告もありました)
また、フィンランド、ドイツ、カナダの臨床検討では、フルミストとインフルエンザHAワクチンの有効性に差はなかった、と報告されています。
フルミストの副反応
鼻水、鼻つまりなど鼻炎の症状が約半数(40~50%)にみられるようです。
発熱と咽頭痛が10%ぐらいにみられるようですが、数日で改善します。
また、アメリカの報告だと2歳未満への投与では入院と喘鳴の増加が認められました。そのため2歳児未満のこども、および喘息児は投与されておりません。
当クリニックでは、2015年にフルミストを当クリニックで接種した患者さんへのアンケート調査を行い、アンケート回答者の75%の方がインフルエンザに罹患せずにすみ、81%が副反応を認めず、87.5%の方が次のシーズンもフルミスト接種を希望するという回答を得ました。
アンケートの結果、副反応で多かったのは、やはり鼻汁・鼻閉でした。
今シーズンの当クリニックのフルミスト接種のご案内
フルミストが正式に承認されたため、今シーズンから当クリニックは任意接種として、10月15日(火)からフルミストの接種を始めます。
接種ご希望の方は、下記の説明をお読みの上、クリニック受付に電話でご予約ください。入荷に限りがありますので、在庫がなくなり次第、終了とさせていただきます。
また、ご質問がある方は鈴木院長の診察時に、直接ご相談ください。
電話でのご相談は患者さんとの電話対応業務に支障が出るため、申し訳ございませんが対応できません。また、メールでの個別のご相談にも対応しておりませんので、ご了解をお願いいたします。
接種年齢:2歳~18歳 ただし、喘息発作を頻回に繰り返す方、ゼラチンでアナフィラクシーを起こしたことがある、医療機関での処置に激しく抵抗するお子さまは、接種はできません。
接種費用:8000円(品川区からフルミスト接種に2000円補助がでることが発表されましたので、受付窓口では6000円のお支払いとなります)
当クリニックがフルミストを推奨する人:
当初いわれていたような、不活化ワクチンに対する圧倒的な優位性は、フルミストにはありません。インフルエンザに対する有効性は、不活化ワクチン、フルミストでほぼ同等と評価されています。
接種費用は1回2000円助成がありますが、フルミストの方が当然不活化ワクチンより高額になります。
当クリニックは数シーズンにわたるフルミストの実際の接種経験から、下記に該当する方にフルミストの接種をお勧めします。
1.2~18歳のお子さまが対象ですが、鼻に点鼻するので、特に4~5歳以降で、処置などに協力的なお子さま(接種は全く痛くはありませんが、恐怖で暴れるお子さまにはうまく点鼻できない例がありました)
2.ワクチンをしているのに、毎年インフルエンザにかかってしまう人
3.注射に病的な恐怖感を持っているお子さま(小学生でも結構います)
4.注射をすると血管迷走神経反射を起こして倒れる人
5.インフルエンザワクチンの接種部位が異常に赤く腫れあがる人
通常のインフルエンザHAワクチンも例年通り、10月3日から接種を行います。9月9日(月)から、予約の受付を始めています。当クリニックは、インフルエンザ不活化ワクチンの接種を、変わらずお勧めいたします。(→インフルエンザワクチン詳細)
2024年9月26日が発売予定だったフルミストの発売(供給)は延期されましたが、10月4日(金)に発売となりました。ご希望の方は、本文記載の通り、クリニック受付に電話でご予約をお願いいたします。
参考文献資料:
厚労省:小児に対するインフルエンザワクチンについて
PMDA:経鼻弱毒生インフルエンザワクチン2.5臨床に関する概括評価
日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会:経鼻弱毒生インフルエンザワクチンの使用に関する考え方