スキンケアの実際

この稿では、実際のスキンケアについて、実践的な解説をしていきます。
スキンケアの目的は、皮膚の清潔を保持すること、皮膚のバリア機能を維持し、痒みの無い、快適な皮膚の状態を維持する事です。



1.洗い方

①まず、石鹸を選びます。
なるべく添加物(防腐剤、着色料、香料など)が入っていない石鹸を選びましょう。特別なお題目を並べた石鹸では無く、普通に売られている市販の石鹸で十分です。

添加物の存在は、皮膚に刺激を与えて、敏感肌の人に炎症を起したり、アトピー性皮膚炎の症状を悪化させたりするリスクがあるため、好ましくありません。保湿剤などの添加も必要もありません。

石鹸の剤形は固形でも液体でもポンプ式でも、よく泡が立つものならどれでも構いません。


                                       マルホ発行;スキンケアボードー健康な皮膚を保つためにー(末廣豊総監修)

②石鹸はよく泡立てて、その泡でお子さまの体を洗います。
泡タイプの石鹸の使用もよいと思います。

石鹸の泡立て方は、泡立てネットを使ったり、洗面器に少量のお湯を入れて石鹸で泡立てたり、液体石鹸とお湯をペットボトルの中で振って泡立てても良いでしょう。(写真参照)

汗を洗い流すには石鹸を使わず、シャワーだけでも十分ですが、皮膚の表面に付いた油汚れや細菌を落とすにはやはり石鹸の使用は必要だと思います。

③泡立てた石鹸を手に取って、素手でやさしく洗っていきます。手で洗うことにより、お子さまの皮膚の状態のチェックもできます。
泡立てた石鹸を手に取って、爪を立てずに、素手で指の腹の部分を使って洗います。お子さまのからだのしわの部分を伸ばして、ていねいに洗いましょう。

ナイロンタオルやスポンジや目の粗いタオルは、お子さまの肌に細かい傷をつけ、皮膚を刺激し、バリア機能を低下させるため、好ましくありません。
お母さまが手でやさしく洗うことが、お子さまの肌にとって一番です。母と子のスキンシップにもなりますよね。

逆に、石鹸を泡立てずにお子さまの肌に塗り込むと、石鹸のかすが残り、そのかすが肌を刺激し、炎症を起すため、必ず泡で洗うように心がけましょう。


                                      マルホ発行;スキンケアボードー健康な皮膚を保つためにー(末廣豊総監修)

頭と顔は、38~39℃のぬるめのお湯で頭を濡らした後、泡立てた石鹸を手に取って、指のはらの部分で洗います。洗髪の時のシャンプー、リンスの使用は、かゆみ、刺激が起こるようなら、必要はありません。

顔も泡立てた石鹸をつけた手の指で、撫でながら洗います。目の周りも目を閉じさせた上で、目の上から下に向かって円を描くように洗いましょう。(写真)

④石鹸で身体を洗い終わったら、38~39℃のぬるめのお湯で、手を使ってよく洗い流しましょう。


                                     マルホ発行;スキンケアボードー健康な皮膚を保つためにー(末廣豊総監修)

⑤清潔で、皮膚にやさしい乾いたタオルで、軽く皮膚を押さえながら、水分を吸い取りましょう。擦ると肌の刺激になるため、強く擦るのはやめましょう。



2.塗り方

①石鹸で洗った後は、皮膚の保湿成分も洗い流されてしまうため、皮膚が乾燥しやすくなり、バリア機能も低下してしまいます。

そのため、からだを拭いたら、すぐに保湿剤を塗りましょう。(保湿剤の解説はこちら。)

保湿成分が洗い流されるから、石鹸を使わないという考えもありますが、皮膚についた汚れ、汗、アレルゲン、黄色ブドウ球菌などの雑菌を洗い落とすには、石鹸の使用はより大きなメリットがあると当クリニックは考えます。

②保湿剤の種類

A.皮膚に浸透して、水分を皮膚に蓄える働きのある保湿剤。

 保湿剤は皮膚に染み込み、水分を皮膚の中に保持します。ヘパリン類似物質(ヒルドイド)や尿素製剤が代表です。

 一般名  製品名
ヘパリン類似物質含有製剤   ヒルロイドクリーム
 ヒルドイドソフト軟膏
 ヒルドイドローション
 尿素含有製剤      ケラチナミンコーワクリーム
 パスタロンソフト軟膏
 パスタロンクリーム
 パスタロンローション
 ウレパールクリーム
 ウレパールローション


B.皮膚の水分が逃げないように、皮膚にふたをする働きのある保湿剤。

 保湿剤自身は、皮膚に染み込みません。白色ワセリンが代表です。

 一般名  製品名
 ワセリン  局方白色ワセリン
 プロペト(精製ワセリン)
 亜鉛華軟膏    サトウザルベ
 亜鉛華軟膏
 ボチシート(リント布に亜鉛華軟膏塗布)
 その他  アズノール軟膏

③保湿剤の選び方

保湿剤もまた、できるだけ着色料や香料など、皮膚への刺激になる可能性のある添加物が入っていないものを選びましょう。

特にピーナッツオイルやアーモンドオイルなどが含有されている保湿剤は、皮膚からアレルゲンが侵入し、皮膚を通して食物アレルギーが成立する可能性があるので好ましくありません。

2歳未満の乳幼児には、プロピレングリコール(PG)が含まれる保湿剤は刺激が強いため避けましょう。

またラノリン、ウールワックスアルコール、メチルイソチアズリノンが含まれる保湿剤は、接触性皮膚炎を起しやすいため、使用しない方がよいでしょう。

④保湿剤の塗り方


                                      マルホ発行;スキンケアボードー健康な皮膚を保つためにー(末廣豊総監修)

軟膏の塗布量(FTU=Finger Tip Unit)の目安

 0.5g相当=大人の両手の手掌面積分=1本の5gチューブの1/10

1)5gチューブ(チューブの口径4mm) 大人の人差し指1節半で0.5g(両手のひらの面積)
2)10gチューブ(チューブの口径5mm) 大人の人差し指1節で0.5g(両手のひらの面積)
3)大きな容器に軟膏が入っているときは、専用スプーンを用います。
 小さじ 5ccだと、軟膏4g(5gチューブの4/5)に相当します。

 大きな容器の軟膏は、専用
 スプーンで計量して、塗布します。

 実際の塗り方は、医師、看護師
 がご一緒について、練習します。

 5cc計量スプーンの入手法もご案内
 いたします。

軟膏の実際の使用量の目安

乳児 小さじ5cc 1杯(4~5g相当)
上肢片側0.5g、下肢片側1g、からだ半分1g(全身で5g)
幼児3-5歳 小さじ5cc1杯+小さじ2.5cc1杯、または(6g相当)
上肢片側1g、下肢片側1g強、からだ半分1g強(全身で6~7g)
学童10歳 小さじ2杯(8~10g相当)
上肢片側1.5g、下肢片側1.5g、からだ半分2g(全身で9~10g)



謝辞:マルホ発行;スキンケアボードー健康な皮膚を保つためにー(末廣豊総監修)
    荏原病院小児科医療連携の会2018.5.17講演 アトピー性皮膚炎の治療ー明日から役に立つスキンケアー
 を参考にさせていただきました。また、ボード写真を使用させていただきました。
 著者の先生方には、厚く御礼申し上げます。

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