スキンケアの実際                               2023.8.1最終更新

この稿では、実際のスキンケアについて、当クリニックの看護師が行っている指導について、ご説明をいたします。
スキンケアの目的は、皮膚の清潔を保ち、皮膚のバリア機能を維持し、痒みのない、皮膚の状態を保つことです。

当クリニックで、スタッフと実際の塗り方の体験しましょう。



1.洗い方

①まず、石鹸を選びます。
なるべく添加物(防腐剤、着色料、香料など)が入っていない石鹸を選びましょう。
普通に売られている市販の石鹸で十分です。

添加物の存在は、皮膚に刺激を与えて、敏感肌の人に炎症を起こさせたり、アトピー性皮膚炎の症状を悪化させたりするリスクがあるため、好ましくありません。保湿剤などの添加も、不必要です。

石鹸の剤形は、固形でも液体でもポンプ式でも、よく泡が立つものならどれでも構いません。


                                       マルホ発行;スキンケアボードー健康な皮膚を保つためにー(末廣豊総監修)

②石鹸はよく泡立てて、その泡でお子さまの体を洗います。
泡タイプの石鹸の使用もよいと思います。

石鹸の泡立て方は、泡立てネットを使ったり、洗面器に少量のお湯を入れて石鹸で泡立てたり、液体石鹸とお湯をペットボトルの中で振って泡立てても良いでしょう。(写真参照)

汗を洗い流すには石鹸を使わず、シャワーだけでも十分ですが、皮膚の表面に付いた油汚れや細菌を落とすにはやはり石鹸を使用したほうがよいでしょう。

③泡立てた石鹸を手に取って、素手でやさしく洗っていきます。手で洗うと、お子さまの皮膚の状態もチェックできます。
泡立てた石鹸を手に取って、爪を立てずに、素手で指の腹の部分を使って洗います。
お子さまのからだのしわの部分を伸ばして、ていねいに洗いましょう。

ナイロンタオルやスポンジや目の粗いタオルは、お子さまの肌に細かい傷をつけ、皮膚を刺激し、バリア機能を低下させるため、好ましくありません。
お母さまが手でやさしく洗うことが、お子さまの肌にとって一番です。母と子のスキンシップにもなりますよね。

逆に、石鹸を泡立てずにお子さまの肌に塗り込むと、石鹸のかすが残り、そのかすが肌を刺激し、炎症を起すことになるため、必ず泡で洗うように心がけましょう。


                                      マルホ発行;スキンケアボードー健康な皮膚を保つためにー(末廣豊総監修)

頭と顔は、38~39℃のぬるめのお湯で頭を濡らした後、泡立てた石鹸を手に取って、指のはらの部分で洗います。洗髪の時のシャンプー、リンスの使用は、かゆみ、刺激が起こるようなら、必要はありません。

顔も泡立てた石鹸をつけた手の指で、撫でながら洗います。目の周りも目を閉じさせた上で、目の上から下に向かって円を描くように洗いましょう。(上写真)

④石鹸で身体を洗い終わったら、38~39℃のぬるめのお湯で、手を使ってよく洗い流しましょう。


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⑤清潔で、皮膚にやさしい乾いたタオルで、軽く皮膚を押さえながら、水分を吸い取りましょう。擦ると肌の刺激になるため、強く擦るのはやめましょう。

環境再生機構が作成した、実際のスキンケアの動画です。(→乳幼児スキンケア )



2.塗り方

①石鹸で洗った後
は、皮膚の保湿成分も洗い流されてしまうため、皮膚が乾燥しやすくなり、バリア機能も低下します。

そのため、からだを拭いたら、すぐに保湿剤を塗りましょう。(保湿剤の解説は、こちら

保湿成分が洗い流されるから、石鹸を使わない方がよいという意見もありますが、皮膚についた汚れ、汗、アレルゲン、黄色ブドウ球菌などの雑菌を洗い落とすには、石鹸の使用はより大きなメリットがあると当クリニックは考えます。

②保湿剤の種類

A.皮膚に浸透して、水分を皮膚に蓄える働きのある保湿剤。

 保湿剤は皮膚に染み込み、水分を皮膚の中に保持します。ヘパリン類似物質(ヒルドイド)や尿素製剤が代表です。

 一般名  製品名
ヘパリン類似物質含有製剤        ヒルロイドソフト軟膏
 ヒルドイドクリーム
 ヒルドイドローション
 ヒルドイドフォーム
 ヘパリン類似物質クリーム
 ヘパリン類似物質油性クリーム
 ヘパリン類似物質外用泡状スプレー
 ヘパリン類似物質外用スプレー
 尿素含有製剤      ケラチナミンコーワクリーム
 パスタロンソフト軟膏
 パスタロンクリーム
 パスタロンローション
 ウレパールクリーム
 ウレパールローション


B.皮膚の水分が逃げないように、皮膚にふたをする働きのある保湿剤。

 保湿剤自身は、皮膚に染み込みません。白色ワセリンが代表です。

 一般名  製品名
 ワセリン  局方白色ワセリン
 プロペト(精製ワセリン)
 亜鉛華軟膏    サトウザルベ
 亜鉛華軟膏
 ボチシート(リント布に亜鉛華軟膏塗布)
 その他  アズノール軟膏

③保湿剤の選び方


保湿剤もまた、できるだけ着色料や香料など、皮膚への刺激になる可能性のある添加物が入っていないものを選びましょう。

特にピーナッツオイルやアーモンドオイルなどが含有されている保湿剤は、皮膚からアレルゲンが侵入し、皮膚を通して食物アレルギーが成立する可能性があるので、好ましくありません。

2歳未満の乳幼児には、プロピレングリコール(PG)が含まれる保湿剤は、刺激が強いため避けましょう。

またラノリン、ウールワックスアルコール、メチルイソチアズリノンが含まれる保湿剤は、接触性皮膚炎を起しやすいため、使用しない方がよいでしょう。

④保湿剤の塗り方


                                      マルホ発行;スキンケアボードー健康な皮膚を保つためにー(末廣豊総監修)

軟膏の塗布量

軟膏を塗布するときは、FTU=Finger Tip Unitを、1ゆび単位として、考えます。

  

1FTU(ゆび)は、大人の人差し指1節分の軟膏量を意味し、
0.5gです。
0.5gは、大人の両手の手掌面積と等しく、1本の5gチューブの1/10に相当します。

ただし、正確には軟膏のチューブ口径が、5gチューブと10gチューブで、出てくる軟膏量が若干異なります。
1)5g軟膏チューブ(チューブの口径が4mm)では、大人の人差し指
1節半で、軟膏0.5gに相当します。
2)10g軟膏チューブ(チューブの口径が5mm)では、大人の人差し指
1節で軟膏0.5gに相当します。

大きな容器に軟膏(プロペトや亜鉛華軟膏など)が入っているときは、専用スプーンを用いて、軟膏量を調整します。
小さじ 5ccだと、軟膏4gに相当します。これは、5gチューブの4/5に相当します。

 大きな容器の軟膏は、専用
 スプーンで計量して、塗布します。

 実際の塗り方は、医師、看護師
 がご一緒に練習します。

 5cc計量スプーンの入手法もこの時に
 ご案内いたします。

保湿剤などは、大きな容器に入っているため、ゆび法ではなく、計量スプーンを用います。 小さじ5ccは軟膏4g(8ゆび)に相当。 (5g軟膏チューブなら、4/5本となり、8ゆびに相当します。)

計量スプーンを利用した場合の、実際の軟膏の使用量の目安は、以下の表のようになります。(*は両手、両足分です)

   顔全体  片腕  片足  胸腹部  背中  全体
 3-6ヶ月児  0.5g  0.5g  0.75g  0.5g  0.75g  4.25g
 目安  1/8  1/4*  1/3*  1/8  1/6  1カップ
 1-2歳児  0.75g  0.75g  1g  1g  1.5g  6.7g
 目安  1/8  1/4*  1/3*  1/7  1/4  1.5カップ
 3-5歳児  0.75g  1g  1.5g  1.5g  1.75g  9g
 目安  1/12  1/4*  1/3*  1/6  1/5  2カップ
 6-10歳児  1g  1.25g  2.25g  1.75g  2.5g  12.25g
 目安  1/12  1/5*  1/3*  1/8  1/5  3カップ

乳児は、全身1回に小さじ 5cc4g)1カップ (8ゆび相当) 塗ります。 
幼児は、全身1回に小さじ 5cc4g)1.5カップ  (6g=12ゆび相当)
学童は、全身1回に小さじ5cc4g) 2カップ (10g=20ゆび相当)
が大体の目安になります。
  
環境再生機構が作成した、実際のスキンケアの動画です。乳幼児スキンケア;保湿剤の塗り方



謝辞:
マルホ発行;スキンケアボードー健康な皮膚を保つためにー(末廣豊総監修)
荏原病院小児科医療連携の会2018.5.17講演 アトピー性皮膚炎の治療ー明日から役に立つスキンケアー
を参考にさせていただきました。また、ボード写真を使用させていただきました。
著者の先生方には、厚く御礼申し上げます。



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