化血研の組織的隠ぺい報道とワクチン出荷停止問題について
現在、マスコミによる化血研の「組織的隠ぺい」事件の報道が過熱しています。「ページをごまかし、特別に2.5頁をつくっていた」、「製造記録を2部作って、裏記録はゴシック体にしていた」、「紫外線を当てて紙を古く見せかけていた」、などワイドショウなどで面白おかしくセンセーショナルに取り上げられ、動揺した当クリニックの患者さんからも「化血研のワクチンは大丈夫なのでしょうか」などと問い合わせが増えてきています。
「厚労省に承認された製造方法と異なる方法で血液製剤をつくっていた。」、「薬害エイズで謝ったのに、また組織ぐるみの隠ぺい工作を行っていた。」と大々的に報道されていますが、具体的にどのように化血研が厚労省の承認内容と違う製造方法を行ったのか、またその「不正」によって、患者がどのような実害を被ったのかについてはほとんど触れられず、ただ「違う方法」、「隠ぺい」の連呼による、化血研への正義の糾弾調の報道ばかりが目につきます。
この稿では、膨大な120ページに及ぶ「一般財団法人化学及血清療法研究所第三者委員会報告」をもとに、今回の化血研の具体的な不正行為の内容と、化血研のワクチンの安全性について、検証していきたいと思います。
1.化血研(かけつけん)という会社
まず、今回の騒動の主役=化血研(かけつけん)という会社について、見ていきます。化血研は正式名称を「化学及血清療法研究所」といい、1945年12月26日、まだ戦火の余燼燻ぶる九州熊本市に熊本医科大学太田原豊一教授によって、ワクチン、抗血清などを扱っていた「実験医学研究所」を母体に設立されました。
1950年に動物用医薬品の製造を開始し、業務を拡大しました。さらに1953年には血液センターを開設して、血液銀行を運営し、輸血などの分野で救急医療に貢献しています。そして1966年には、血漿分画製剤の製造を開始しました。この「血漿分画製剤」とは、ヒトの血液を赤血球、白血球、血小板、血漿(血球を浮かべている液体の部分)に分けて、この血漿の中に含まれている、さまざまなたんぱく質を集めて、液体の薬にしたものです。
1988年には純国産技術で製造された、現在も広く使用されているB型肝炎ワクチン「ビームゲン」を世に出しました。インフルエンザや日本脳炎など、さまざまなワクチンも作っています。
2010年に一般財団法人に移行しました。化血研の組織は、ヒトの血液の血漿成分を材料に、いろいろな栄養、免疫、止血などの働きを持った血液製剤を作る血漿分画部門と、インフルエンザワクチン、四種混合ワクチン、日本脳炎ワクチン、B型肝炎ワクチンなどを製造するワクチン製造部門の2つの部門に、大きく分かれているようです。
第三者委員会の報告によれば、化血研の2つの部門のうち、血漿分画部門に属するグループは化血研の売り上げの大半を占めることで発言力を増し、代々理事長職などを独占してきました。また、この部門の人達は閉鎖的で、ほとんど他の部門との交流はなく、全社的な品質改善プロジェクトへの参加も自分たちでやると拒否したそうです。
また、この部門の人たちは、厚労省に対しても、血漿分画製剤という高度に専門的な薬剤を製造しているという自負から、薬事法や製品標準書、製造指図書等(GMP文書)を軽視する言動がたびたび見られたということです。
第三者委員会報告を一部引用します。
●1980年以降、化血研において、血漿分画製剤の売り上げが拡大し、化血研全体の売り上げの大半を占めるに至ったことで、血漿分画部門が他の部門より力を持ち、1975年頃から2000年頃には、血漿分画部門に人材を集中させていた上、発言力のあったA前理事長の意向により、血漿分画部門に大量の新人を配置して育てる方針のもと、血漿分画部門に新人を配属し、血漿分画部門から他部門に移動する例は見られるものの、逆に他部門から血漿分画部門に移動する者はほとんどいなかった。
また血漿分画部門出身のA前理事長は、血漿分画部門の実績をもとに、1992年から約20年間にわたり理事(内約4年間は副所長、約8年間は理事長)を務めており、経営層の中でも圧倒的な発言力を有し、人事権も掌握していたため、化血研の経営層を含む役職員は、A前理事長の意向に反することはできなかった。
そのため、血漿分画部門は、化血研において特別な閉鎖性を有する部門になり、1996年2月にDPT(三種混合)ワクチンの回収を契機として、ワクチン製剤を含めた不整合や異物対策の必要があるとの認識から、不整合等を解消する品質向上プロジェクトが立ち上がった時も、当時の(血漿分画部門の中の)第三製造部第一課長であったC元理事は、血漿分画部門は、自部門で品質向上に対応すると判断し、この取組に参加せず、その結果、理事会等での報告等を除き血漿分画製剤製造における不整合が血漿分画部門外に認識されることはなかった。(調査結果報告書P.28)
●また、経営層のうち血漿分画部門出身のB元副所長及びA前理事長は、生産性重視、上市重視の余り、薬事法やGMPを軽視し、本件不整合の作出に積極的に関与してきた。実際、B元副所長は、GMPに批判的な発言を部下にするなど、GMPを軽視する傾向が強かった。(調査結果報告書P.47)
●化血研は戦前熊本医科大学に設置されていた実験医学研究所を母体にしているという出自や国内における血漿分画製剤開発のパイオニアの一社であるという歴史等から、その名のとおり研究所としての性格を色濃く持ち、製造工程にも研究者としての気質が反映されていた。
化血研のそうした企業カラーは悪い面ばかりではないが、「自分たちは血漿分画製剤の専門家であり、当局よりも血漿分画製剤のことをよく知っている。」、「製造方法を改善しているのだから、当局を少々ごまかしても、大きな問題はない。」という「研究者としてのおごり」が本件不整合や隠ぺいの原因となったことを忘れてはならない。(調査結果報告書P.82)
2.化血研はどんな隠ぺいを行ったのか
第三者委員会の調査結果では、化血研が製造販売する血漿分画製剤において、31個の不整合が見つかりました。この不整合とは、承認書記載の製造方法と製品標準書、製造指図書等(GMP文書といいます)記載の製造方法に不一致はないが、実際の製造の方法とが異なるもの、と第三者委員会は定義しています。
これらの不整合は、早いもので1974年頃から行われ、多くは1980年代から1990年代前半に発生していました。その背景には、このころ薬害エイズ問題が起こり、国内の非加熱製剤が加熱製剤に切り替わる中で、厚生省も国内で完全に需要を賄う方針を打ち出し、血漿分画製剤の加熱製剤への生産増強が社会的にも強く要請されていたことがありました。
化血研もこの流れの中で、血漿分画部門出身の責任者の強いトップダウンの下、血漿分画製剤の早期製品化、安定供給を最優先にした開発、製造を急ぎ、薬事法の規制が現在に比べて厳格でなかったこともあり、関係機関に届け、承認を得ることなく、製法改善や変更等を頻回に行ったようです。
その後、だんだんと国の審査も厳しくなり、化血研としては製造方法の変更を関係機関と相談して新たに申請するか、書類を偽造してごまかすか、決断を迫られることになりました。その結果、1995年ごろまでには、化血研の血漿分画部門の一部で虚偽の製造記録が作成されるようになり、1998年ごろまでには、厚労省の査察で不整合が発覚しないよう、承認書に沿って製造しているように見せかける製造記録を組織的に作成するなど、各種の隠ぺい工作が行われるようになったのです。
第三者委員会もこの経過を、きびしく指摘しています。
●化血研において、製造方法の変更に当たって監督機関に報告、相談し、変更内容に応じて一変承認申請をしていれば、今回の不整合の問題が発生することなく、ましてや隠ぺいにまで至ることはなかったものと推認される。(調査結果報告書P.48)
第三者委員会によって「化血研の重大な不整合」とされた事例を示します。(不整合31個のうち、主なもの)
薬品 | 承認書 | 不整合(承認申請をしないまま、変更した方法) |
アルブミン | 小分けした後60℃/10時間加温 | 小分け前に60℃/10時間加温し、小分けした後57.4℃/1時間加温 |
ノバクトM | ヘパリンを添加しない | ヘパリン添加(変更した理由=ヘパリンを添加しないと、凝固因子が活性化してしまい、止血効果がなくなることがわかったため) |
コンファクトF | 陽イオン交換クロマトグラフィーのみ | 陽イオン交換クロマトグラフィー+グリシン、ヒスチジン、PEG、P-80添加(変更した理由=陽イオン交換クロマトグラフィーの作用だけだと、浮遊物が浮かんでしまうため) |
ボルヒール | 45℃/10時間 | 加温せず (変更した理由=不明) |
アンスロビンP | 3回目の硫酸アンモニウム分画工程 | 3回目の硫酸アンモニウム分画工程を行わず(変更した理由=深夜の作業にならないため。また、海外メーカの技術継承品のため、ライセンス契約があったので、承認書の方法に変更できなかった) |
今回問題になった31個の不整合は、薬品製造の過程で、製法の改良、変更などを行ったもので、このこと自体は必要なことであり、悪いことではありません。
製造方法を変更し、隠ぺい工作が行われた血漿分画製剤の安全性に関しては、
●本件不整合に係る血漿分画製剤についても、販売前に適正な手続を経て国家検定を受け、合格していることから、一定程度の安全性を有するものと認めることができる。(調査結果報告書P.61)
●化血研が、副作用を原因とする致命的な安全上の問題を生じさせたと明確にいえるまでの事例は見受けられなかった。また、PMDA(医薬品医療機器総合機構)から化血研の血漿分画製剤について重篤な副作用の報告がなされたという事実は確認できなかった。(調査結果報告書P.61)
●化血研の血漿分画部門が、薬機法の趣旨に反し、医薬品等の安全性を軽視していたことは事実であるが、他方で、本件不整合に係る血漿分画製剤が人体に対して危険を及ぼすことを示す証拠が見当たらないことも指摘しておきたい。(調査結果報告書P.62)
と、製剤の安全性については問題なかったと第三者委員会報告は結論付けています。
そして、今回の化血研の不正問題の核心は、
●血漿分画部門は、本来、製造方法の変更に当たり、監督機関等と緊密にコミュニケーションをとって不整合を回避すべきであったにもかかわらず、長年にわたって、監督関機関等と相談を行うことも、一変承認申請等の必要な対応をすることもほとんどなく、製造方法を変更して不整合を生じさせ、ついには隠ぺい行為という極めて悪質な違法行為に及んでいる。
本件不整合や隠ぺい行為はいずれも個人的利益を得るために行われたものではないと思われるものの、多数の血漿分画部門の役職員が、20年以上にわたり、不正に関与し続けたことに鑑みれば、血漿分画部門においては、そこで働く役職員のコンプライアンス意識を麻痺させ、組織的に不正に巻き込んでいく体制が存在したことがうかがわれる。(調査結果報告書P.47)
と、化血研の血漿分画部門の閉鎖性、独善性、順法精神の弛緩が大きな問題であったと厳しく指弾しているのです。
3.化血研のワクチンは危険か
現在化血研のワクチンに対しても、その信頼性は大きく揺るぎ、患者さんの中でも「化血研のワクチンは安全なのか」という不安が広がっています。また、化血研のワクチン出荷停止が続いているワクチン(日本脳炎ワクチン、B型肝炎ワクチン)もあります。そのあおりを食って、四種混合ワクチン、B型肝炎ワクチンが供給されない地域が広がってきています。
まず、化血研のワクチンが、血漿分画製剤と同じように何か問題があるのか、検討してみます。前章でみたとおり、化血研で今回隠ぺい工作を行ったのは、血漿分画部門の人たちであり、彼らは化血研という会社内部でも孤立し、独善的な閉鎖集団を作り、隠ぺい工作に走りました。
厚生労働省は、化血研の血漿分画製剤の不整合や隠ぺいの問題が生じている中、ワクチン製剤については問題がないことを確認するため、2015年8月の時点で、製造販売承認と実際の製造に違いが生じていないか、化血研に報告書、資料の提出を求めました。
これに対し、化血研側は、2014年12月に日本製薬工業協会(製薬協)による調査が行われ、厚生労働省に報告書をすでに提出していたこと、さらに2015年5月28、29日にもPMDA(医薬品医療機器総合機構=Pharmaceuticals and Medical Devices Agencyの略。厚生労働省の独立行政法人で、医薬品・医療機器などの審査関連業務などを行っている組織)の立ち入り調査が行われ、指摘された調査結果の報告書を7月31日に厚生労働省に提出していたため、提出してから1か月しかたっていないので新たな調査を行わずに、厚労省に確認しないまま、製薬協調査及び7月の調査結果をそのまま提出したのです。
この化血研の対応に対し厚労省は、2015年8月時点での報告を求めたのに対し、化血研が7月31日付け報告書送付以降の問題について追加調査を実施しなかったことは報告命令に対する不備だと怒りました。そして、新たな書類の提出があるまで、ワクチンの出荷停止(出荷自粛要請をいう名の)を命じたのです。
この経過について、第三者委員会は次のように述べています。
●本件報告命令は7 月31 日付け報告書送付の約1 か月後である2015年9月1日に同月14日を報告期限として発せられたものであることや、化血研は追加調査を依頼していた第三者評価機関から重大な問題があるとの報告は受けていなかったことなどから、化血研が自ら追加調査をする必要はないと判断したことは、必ずしも不合理であるとは言い切れない。
また、化血研は本件報告命令に対する提出資料の中で、新たにタンパク質含量試験の項目を追加していること、第三者評価機関による追加調査を行っていたことからすれば、化血研が追加調査を実施しないことで当該報告書以外の齟齬を隠ぺいする意図を有していたとまでは認められない。
したがって、化血研が追加調査をしなかったからといって、直ちに厚生労働省に対する隠ぺい行為を行ったと評価することはできない。
以上の事情からすれば、化血研のこれらの行為をもって、厚生労働省に対し、製造販売承認と実製造の齟齬を隠ぺいしようとしたとまでは認定することはできない。(調査結果報告書P.55、56)
この間の経過を見てみると、厚労省と化血研の間には意思の疎通に齟齬をきたしており、事態は悪い方、悪い方に流れて行ったようです。その結果、ワクチンの出荷停止という最悪の事態を招いてしまいました。
しかし、流行を目前にして、インフルエンザワクチンの供給が止まるということは、接種できない希望者が多数出てしまうこと(化血研のシェアは29%)、また四種混合ワクチンは定期接種であり、接種できない希望者が多数出ることは(化血研のシェアは64%)厚労省の役人の責任が追及される可能性があるため、この2種のワクチンに関しては2015年10月21日の厚生科学審議会感染症部会の「一般財団法人化学及血清療法研究所の製造するワクチン製剤等に関する意見」を受けて、厚労省は素早く10月21日インフルエンザワクチンを、さらに11月26日には四種混合ワクチンの集荷自粛を解除しました。
しかし、12月13日現在、四種混合ワクチンは医療機関に通常通り供給されてはいません。「四種混合は手に入らないから、それだけはよそで受けてくれ。」とかかりつけ医でいわれたといって、四種混合ワクチンのみの接種希望の親子が当クリニックを訪れたのは、つい先週の話です。
さらに問題なのは、厚労省役人が出荷自粛解除の根拠とした、10月21日の厚生科学審議会感染症部会の意見書では、
B型肝炎は、感染症法において五類感染症に規定されており、発生・拡大を防止すべき感染症のひとつである。B型肝炎ワクチンについては、母親がB型肝炎の場合の垂直感染(母子感染)予防のため、出産直後に新生児に対して広く接種されている。現在、国内に流通しているB型肝炎ワクチンは、化血研を含む2社が供給しており、昨年は0.25mL規格で約61万本、0.5mL規格で約150万本が出荷されている。このうち、化血研の「ビームゲン注」は約80%を占めており、他社製品で代替することは非常に困難な状況である。
日本脳炎ワクチンについては、予防接種法において定期接種の対象としており、我が国において広く接種が行われている。現在、国内に流通している日本脳炎ワクチンは、化血研を含む2社が供給しており、昨年は約400万本が出荷されている。このうち、化血研の「エンセバック皮下注用」は約36%を占めており、他社製品で代替することは非常に困難な状況である。
以上4つの化血研が製造するワクチン製剤(四種混合ワクチン、B型肝炎ワクチン、日本脳炎ワクチン、A型肝炎ワクチン=当クリニック注)については、公衆衛生対策上の必要性が高いと考えられるが、他社製品での代替が困難であることから、今後、供給が著しく不足することが見込まれる。このため、「インフルエンザHA ワクチン“化血研”」と同様、厚生労働省は、以上4つのワクチン製剤について、品質及び安全性等への重大な影響について、できる限り速やかに確認調査を行うべきと考えられる。また、その結果を踏まえた対応については、本部会において速やかに検討すべきである。
と四種混合ワクチン以外にも、日本脳炎ワクチン、B型肝炎ワクチン、A型肝炎ワクチンの出荷自粛の解除を要請しているのに、11月26日実際に自粛解除になったのは、四種混合ワクチンのみでした(それでも供給が止まっているのは、上記のとおりです)。
その結果、現在B型肝炎ワクチンの供給も止まっており、B型肝炎ワクチンが接種できない医療機関が全国、東京で続出しています。当クリニックでも、B型肝炎ワクチンに関しては、当クリニックで接種を始めているかかりつけのお子さま、これから同時接種を始める2ヵ月児に、接種予約を限定せざるを得ない状況です。
厚労省がB型肝炎ワクチン、日本脳炎ワクチンの出荷自粛を解除しないのは、B型肝炎ワクチンが任意接種、日脳ワクチンが季節外れで接種希望者が少ないだろうと、たかをくくっているからなのでしょうか。
せっかく、B型肝炎ワクチンに対する理解も深まり、接種希望者も増えてきているのに、化血研のB型肝炎ワクチンへの品質及び安全性等の確認調査を早急に行うことなく、ただ自粛解除命令を引き延ばすことは、日本の赤ちゃんをB型肝炎の脅威にさらす、厚労省役人の許し難い職務怠慢だと考えます。
また、化血研のワクチンの安全性については問題ないと、第三者委員会も述べているのです。
ア ワクチン製剤について、血漿分画製剤同様、国家検定を受けた医薬品のみを販売等してきたものと考えられる。
イ また、ワクチン製剤について、血漿分画製剤同様、化血研が、副作用を原因とする致命的な安全上の問題を生じさせたと明確にいえるまでの事例は見受けられず、またPMDA (医薬品医療機器総合機構)から化血研のワクチン製剤について重篤な副作用の報告がなされたという事実は確認できなかった。(調査結果報告書P.62)
また、厚労省も化血研のインフルエンザワクチンの出荷自粛解除の資料「化血研のインフルエンザHAワクチンに係る品質及び安全性等の確認について-厚生労働省医薬・生活衛生局」で、化血研のインフルエンザワクチンについて、
以上より、これまでに化血研から報告された全ての内容を確認したが、報告された齟齬や情報が製品の品質及び安全性等に重大な影響を及ぼす可能性は低いと判断している。
と述べています。日本脳炎ワクチン、B型肝炎ワクチン、A型肝炎ワクチンの製品、安全性の確認調査を可及的速やかに行い、一時も早く出荷自粛が解除されることが切に望まれているのです。
当クリニックは、かかりつけの患者さんに、化血研のワクチンも安全であり、化血研製造のワクチンだからといって過度にご心配される必要はないことを明言いたします。
4.当クリニックの使用しているワクチン
前章で見てきたように、化血研のワクチンも国家検定を通過しているため、安全性に問題はありません。
現在当クリニックで使用しているワクチン一覧は、以下の通りです。当クリニックは全てのワクチンについて、複数製造メーカがある場合はそれぞれの製品の長短を十分検討して、患者さんに最善のワクチンを選んで使用しています。当クリニックで、化血研のワクチンを採用しているのは、B型肝炎ワクチン(ビームゲン)とA型肝炎ワクチン(エイムゲン)の2種類です。
うち、B型肝炎ワクチンはビームゲン(化血研)とヘプタバックスⅡ(MSD)の2種類ありますが、ビームゲンは日本人に多いC型遺伝子(genotypeC)のB型肝炎ウイルス、ヘプタバックスⅡは欧米人に多いA型遺伝子(genotypeA)のB型肝炎ウイルス株を用いて、ワクチンを製造しています。B型肝炎に対する免疫はA型、C型のB型肝炎ウイルスの同じ部分(共通抗原a)から誘導されるので、どちらのワクチンを用いても同じです。また、両者を交互に使用しても問題ないことも明らかにされています。ただし、ヘプタバックスⅡは天然ゴムを使用しているため、ラテックスアレルギーのある方には使用に注意が必要と言われています。
当クリニックは0.25mlのバイアルのあるビームゲンを優先して使用してきました。今後も製品が供給されれば、ビームゲンを優先して使用していくつもりです。
鈴の木こどもクリニックで使用しているワクチン一覧(当クリニックは全てのワクチンについて、最善と考えた製品を十分検討した上で、採用しています)
ワクチンの種類 | ワクチンの名称と製造メーカ | 化血研のワクチンを採用している理由 |
四種混合ワクチン | テトラビック(阪大微研) | 採用していない |
不活化ポリオワクチン | イモバックス(サノフィパスツール) | 採用していない |
ヒブワクチン | アクトヒブ(サノフィパスツール) | 採用していない |
小児用肺炎球菌ワクチン | プレベナー13(ファイザー) | 採用していない |
BCG | BCG(日本BCG) | 採用していない |
MRワクチン | ミールビック(阪大微研) | 採用していない |
水痘ワクチン | 水痘ワクチン(阪大微研) | 採用していない |
おたふくワクチン | オタフクカゼ(北里) | 採用していない |
日本脳炎ワクチン | ジェービック(阪大微研) | 採用していない |
A型肝炎ワクチン | エイムゲン(化血研) | 化血研しか、製造していないから |
B型肝炎ワクチン | ビームゲン(化血研) | ヘプタバックスⅡ(MSD)は1バイアルが0.5ml製剤しかなく、10歳未満は0.25mlしか使用しないため、半分は廃棄することになり、資源の浪費になるから。(ビームゲンは0.25ml製剤のバイアルもある。) |
インフルエンザワクチン | インフルエンザワクチン(阪大微研、デンカ生研) | 採用していない |
ロタウイルスワクチン | ロタリックス(GSK) | 採用していない |
ロタウイルスワクチン | ロタテック(MSD) | 採用していない |
HPVワクチン | ガーダシル(MSD) | 採用していない |
5.終章
今回の化血研の不正問題は、つい最近やはり世間を騒がせた、フォルクスワーゲンの不正問題とは、悪質さと反倫理性のレベルが明らかに異なっています。
化血研の不正は、製造方法の変更に当たって監督機関に報告、相談せず、一変承認申請を行わず、隠ぺいに走ったことでした。変更した製剤は健康被害を起こすことなく、安全性も確認されています。また、会社の理事は全員辞職し、再発防止策をHPで公開しています(→詳しくはこちら)。 今回の不正は許されることではありませんが、それなりの責任は取っていると思われます。
これに対し、フォルクスワーゲン(VW)は、米環境保護局(EPA)のディーゼルエンジン車の排気ガスの排出試験の時に排気ガス中に含まれる環境汚染物質の量を少なく見せかけるという不正を全社レベルで行い、しかも米環境保護局の追求に対し、最後まで組織的な不正を認めることに抵抗したといわれています。
フォルクスワーゲンによって「クリーン・ディーゼル車」と名付けられた、不正ソフトが組み込まれた1100万台にも上るディーゼルエンジン車は、 米環境保護局の実験環境の40倍の環境汚染物質を含む、恐ろしく「汚い」排気ガスをまき散らしながら、今日も世界中を走行し続けているのです。
また、この会社のCMからは、VWユーザー、そして全ての世界の人々に対する、 心からの真摯な謝罪と自らが汚した環境への配慮を全く感じとることはできません。化血研を日夜糾弾している正義の味方の民放TV局は、 謝罪もお詫びもいっさい無い、この信じられない居直りCMを、きょうも平常運転でたれ流し続けているのです。(2015.12.14)
参考文献:化血研HP
一般財団法人化学及血清療法研究所第三者委員会調査結果報告書(要約版)
一般財団法人化学及血清療法研究所の製造するワクチン製剤等に関する意見