シナジス注射について 2024.3.24更新
Ⅰ.シナジスとは
シナジスは一般名を「パリビズマブ」といい、RSウイルスに対するモノクローナル抗体(RSウイルスのみを標的に、これに接着し、このウイルスの増殖を防ぐ免疫物質)です。(RSウィルス感染症についてはこちら)
シナジスを注射することによって、体内に侵入したRSウイルスの増殖は抑えられ、RSウィルス感染症の重症化を防ぎます。
アッヴィ合同会社「シナジス筋注液」パンフレットより転載
Ⅱ.シナジスの適応
RSウィルス感染症にかかると、特に重症になる危険性がある、次の①~⑥の赤ちゃんが接種の対象となります。(シナジスは高価な薬剤のため①~⑥のお子さまのみ、保険診療として負担なく注射することが認められています。)
①在胎週数28週以下で生まれ、RSウィルス流行時に生後12ヵ月以下(1歳以下)の赤ちゃん
②在胎週数29~35週で生まれ、RSウィルス流行時に生後6ヵ月以下の赤ちゃん
③過去6ヵ月以内に、気管支肺異形成症(BPD)など呼吸障害の治療を受けたことがあり、RSウィルス流行時に生後24ヵ月以下(2歳以下)のお子さま
④重い心臓病を持った、RSウィルス流行時に生後24ヵ月以下(2歳以下)のお子さま
⑤免疫不全を伴った、RSウィルス流行時に生後24ヵ月以下(2歳以下)のお子さま
⑥ダウン症候群の、RSウィルス流行時に生後24ヵ月以下(2歳以下)のお子さま
Ⅲ.シナジスの投与スケジュール
従来シナジス投与は、RSウイルス感染症の流行の始まる9月*から、流行が終わる4月まで、月1回、大腿前外側部に筋肉注射が行われていました。
しかし、現在RSウイルス感染症は年間を通してみられるようになり、投与スケジュールは流行状況を見ながら、設定されるようになりました。
*現在は流行状況によって、開始する月が変更されています。東京では最大7回投与が可能です。
アッヴィ合同会社「シナジス筋注液」パンフレットより転載
Ⅳ.対象となる方へ
RSウィルス感染症にかかると、かなりの確率で細気管支炎という肺炎になり、入院することになります。また、入院まで至らなくても、高熱が続き、ぜいぜいがひどく、お子さまは大変苦しみます。
在胎34週から36週で生まれたお子さまで、シナジス注射を受けられていない方が、ときどきいらっしゃいます。 おそらく、出産した病院でシナジス注射のことをお聞きになる機会の無いまま、退院されたものと思われます。
この34~36週で少し早く生まれた赤ちゃんをLate Preterm baby(後期早期産児と呼び、出生体重がたとえ2500g以上あったとしても、 様々な未熟性が残ったまま生まれてきたため、RSウイルス感染症にかかってしまうと重症化しやすいといわれています。
出産された病院でシナジス注射を特に勧められなかったお子さまでも、在胎週数29~35週で生まれ、RSウィルス流行時に6ヵ月以下の赤ちゃんには、当クリニックはシナジス接種を強くお勧めいたします。シナジスを受けていれば、重いRSウィルス感染症(肺炎)を防げるからです。
特に、兄弟の多い方や、保育園に入園されているお子さまには、シナジス注射は必須と考えます。
また、シナジス注射を受けているが、接種を行っている大学病院が遠く1日がかりになってしまうため、毎月通うことに大変ご苦労されている方もいらっしゃいます。
シナジス注射の経験豊かな当クリニックでも、少ないご負担でシナジスを続けることができますので、ご検討ください。