シナジス注射について 2025.3.1更新
Ⅰ.シナジスとは
シナジスは一般名を「パリビズマブ」といい、RSウイルスに対するモノクローナル抗体(RSウイルスのみを標的に、これに接着し、このウイルスの増殖を防ぐ免疫物質)です。(RSウィルス感染症についてはこちら)
RSウイルスにはサブタイプA、サブタイプBの2種類があり、いずれもウイルス表面に、F蛋白とG蛋白というトゲを持っています。G蛋白は標的細胞の膜のリセプターと結合し、RSウイルスを細胞にくっつけます。
次の段階で、F蛋白は形を変えて細胞の膜と癒合し、RSウイルスの本体(ゲノム)が標的細胞内に放出され、細胞内で新しいウイルスが複製され、出芽、拡散していくのですね。
シナジスはF蛋白のA領域に結合し、F蛋白が細胞膜に癒合しやすい形に変化するのを妨げます。そのため、 RSウイルスは細胞内に侵入できなくなります。
シナジスを注射することによって、RSウイルスの増殖は抑えられ、RSウィルス感染症の重症化を防ぐことができます。
アッヴィ合同会社「シナジス筋注液」パンフレットより転載
Ⅱ.シナジスの適応
RSウィルス感染症にかかると、特に重症になる危険性がある、次の①~⑥の赤ちゃんが接種の対象となります。(シナジスは高価な薬剤のため①~⑥のお子さまのみ、保険診療として負担なく注射することが認められています。)
①在胎週数28週以下で生まれ、RSウィルス流行時に生後12ヵ月以下(1歳以下)の赤ちゃん
②在胎週数29~35週で生まれ、RSウィルス流行時に生後6ヵ月以下の赤ちゃん
③過去6ヵ月以内に、慢性肺疾患など呼吸障害の治療を受けたことがあり、RSウィルス流行時に生後24ヵ月以下(2歳以下)のお子さま
④重い心臓病を持った、RSウィルス流行時に生後24ヵ月以下(2歳以下)のお子さま
⑤免疫不全を伴った、RSウィルス流行時に生後24ヵ月以下(2歳以下)のお子さま
⑥ダウン症の、RSウィルス流行時に生後24ヵ月以下(2歳以下)のお子さま
⑦2024年3月に、シナジスの注射の対象に肺低形成、気道狭窄、先天性食道閉鎖症、先天代謝異常症、神経筋疾患の5疾患が追加されました。
1回投与するだけでよい、同じ抗RS ウイルスヒトモノクローナル抗体製剤である「ベイフォータス」が2024年3月に投与できることになったため、今後シナジスは使用の頻度が減っていくものと思われます。
ただし、上記5疾患、および早産児の2シーズン目、慢性肺疾患、心臓病、免疫不全、ダウン症の3シーズン目は、抗体製剤はシナジスのみが使用できることになりました。
Ⅲ.シナジスの投与スケジュール
従来シナジスは、RSウイルス感染症の流行の始まる9月*から、流行が終わる4月まで、月1回、投与が行われていました。
しかし、現在RSウイルス感染症は年によってバラバラになっており、シナジス投与のスケジュールは流行状況を見ながら、年度毎に設定されるようになりました。
*東京では、東京都新生児医療協議会が流行状況をみて、開始する月を決めています。投与は最大7回までです。2025-26年は、3月からが流行シーズンとされました。
アッヴィ合同会社「シナジス筋注液」パンフレットより転載
Ⅳ.対象となる方へ
在胎34週から36週で生まれたお子さまで、シナジス注射を受けられていない方がいらっしゃいます。 おそらく、流行シーズンではないため、シナジス投与が行われなかったものと思われます。
この34~36週で少し早く生まれた赤ちゃんをLate Preterm baby(後期早期産児と呼び、出生体重がたとえ2500g以上あったとしても、 様々な未熟性が残ったまま生まれてきたため、RSウイルス感染症にかかってしまうと重症化しやすいといわれています。
出産された病院でシナジス注射を受けられなかったお子さまでも、在胎週数29~35週で生まれ、RSウィルス流行時に6ヵ月以下の赤ちゃんは、当クリニックでシナジス注射を受けられます(流行シーズンに入れば)。
当クリニックはさまざまな条件を考慮し、特にご家族からの希望がなければ、ベイフォータスではなく、シナジスの注射を行います。
シナジス注射の経験豊かな当クリニックで、シナジス投与を続けることができますので、ご希望のご家族は鈴木院長までご相談ください。