Ⅰ.うんち・おしっこ編
うんちの悩み
①うんちが緑色になった
赤ちゃんや子どもも大人と同様、健康なうんちは黄褐色や茶色です。
血(赤血球)は古くなると肝臓で処分され、赤血球内の赤い色素ヘモグロビンは肝臓でビリルビンという黄色い色素に変えられます。このビリルビンが胆汁に含まれ、十二指腸で便に降りかけられ、便は黄色~茶色に染まります。
また、腸の中を移動しているとき、このビリルビンという黄色い色素はビリベルジンという緑の色素に酸化され、変化することがあります。そのため、茶色のうんちは緑色に変わります。
したがって、茶色のうんちも緑色のうんちも、便に降りかけられた色素の色が変わっただけなので、どちらも健康なうんちです。緑色のうんちは正常なうんちです。
②うんちに粘液が混じっている
大腸粘膜は、便の通りをよくするために粘液を分泌しています。この粘液は腸の中をうんちが通りやすくするための潤滑油の働きをしています。
この粘液は量が多くなると、うんちに混じって排便されます。したがって、うんちに粘液が混じって見えても、赤ちゃんが元気で食欲もあるようなら、心配はいりません。
③食べた物がうんちに混じっている
離乳食が進むと、食べた物が十分に消化されずに、うんちの中に混じって出てくることがあります。にんじんやほうれんそうなど食物繊維の多い離乳食でよく見られます。
赤ちゃんは消化吸収の働きがまだ十分でないため、消化しきれないのです。赤ちゃんが元気で食欲もあるようなら、これも心配はありません。
④うんちが出ない。便秘?
生後2~3ヶ月の母乳栄養の赤ちゃんは、数日うんちが出ないことはよくみられます。3~4日便が出なかったとしても、機嫌がよく、排便するときに痛がったり、便に血がついていなければ、様子をみても大丈夫です。
4日以上排便が無い時は、綿棒浣腸を行なってもよいでしょう。(綿棒浣腸は後で詳しく説明いたします)
さらに、7日以上排便がなかったり、排便のときに痛がったり、あるいは便に血がついているときは、浣腸を行なったほうがよいでしょう。
ふだんの排便リズムより間隔があいた上に、うんちが硬く、排便時に肛門を痛がるようなら、便秘です。
また、毎日便が出ていたとしても、硬いコロコロのうんちが、ほんの少量しか出ない時も便秘と考えましょう。
離乳食が始まった後で、便秘になる赤ちゃんもいます。母乳・ミルクだけの時期でも、ごくまれにヒルシュスプルング病といって、腸の一部に神経がないために、高度の便秘と腸閉塞を起す先天的な病気もあります。
がんこな便秘が続く場合は、当クリニックを受診してください。診察の結果、必要な場合は、大学病院小児外科を紹介いたします。
4日以上排便がなく、お腹が張って苦しそうだったり、排便を嫌がって大泣きする時や、肛門が切れて出血する時も、当クリニックを受診しましょう。必要な投薬や浣腸などの処置を行います。便秘の「名医」に通っている患者さんが時々いますが、ほとんどはモビコールが処方されているだけのようです。
うんちが出にくい時は、綿棒浣腸を試してみましょう。これは、綿棒で排便を促す方法です。
赤ちゃんを仰向きに寝かせ、両脚を持ち上げます。そして、綿棒の先端の綿球部分を、ペビーオイルやワセリンで湿らせて、その部分だけ肛門に入れて刺激してみます。綿棒浣腸がくせになることはありません。
また、お父さまやお母さまの手で、おへそを中心に時計回りに円を描くようにマッサージするのも、腸を刺激して排便を促す効果が期待できます。試してみると良いでしょう。
便秘の予防に効果があるのは、おいもやカボチャ、わかめなど繊維質の豊富な食品やヨーグルトなどです。みかんなど、柑橘系の果汁もいいでしょう。
こうした食品を毎日の離乳食に取り入れるようにすると、便秘に効果が期待できるでしょう。
⑤うんちが赤い
真っ赤な鮮血のうんちや、大量の血液が混じっているうんちが出た時は、当クリニックを至急受診してください。赤ちゃんの腸内で出血している可能性があり、危険は場合があります。
また、うんちに少量の血液がにじんでいる時は、うんちが硬いため、排泄の際に肛門が切れて出血した可能性があります。
一度、当クリニックを受診し、出血部位や血便の原因を確認した方が安心です。自分で勝手に判断するのはやめましょう。
受診の際は、うんちの付いたおむつをビニール袋に入れて持参したり、スマホで血便を撮影して呈示されると、診断の参考になります。
⑥うんちが黒い
赤黒く、タールのような粘り気のあるうんちが出た時は、注意が必要です。
胃や十二指腸など上部の消化管で出血している可能性があるからです。排便されるまでの間に、血液が酸化して赤黒い色に変化している可能性があります。
当クリニックを至急受診して下さい。受診の際は、うんちの付いたおむつをビニール袋に入れて持参したり、スマホで血便を撮影して呈示されると、診断の参考になります。
⑦うんちが白い
白っぽい水のような下痢便が出る時は、ノロウイルスやロタウイルスによる、少し重い急性の嘔吐下痢症の可能性があります。下痢に先立って嘔吐が見られることも多いです。(ロタウイルスの白色便は有名ですが、ロタウイルスワクチンの定期接種化によって、ロタウィルス胃腸炎はほとんどみられなくなりました。ノロウイルス胃腸炎でも白色便はみられます)
ノロウイルス胃腸炎の場合は、激しい嘔吐と下痢のために脱水症を起こす心配もあるので、当クリニックを受診しましょう。このとき、うんちの付いたおむつをビニール袋に入れて持参すると、診断の参考になります。
また、頻度は低くきわめて珍しい病気ですが、先天性胆道閉鎖症では白色便になります。このとき、便の色は母子健康手帳の便色カードを参考にして、判断しましょう。
⑧うんちにつぶつぶが混じっている
うんちに白いつぶつぶが混じって見えることがあります。少し心配になりますね。
これは腸の中で、母乳や粉ミルクに含まれている脂肪やカルシウムが凝集したもので特に問題はありません。消化吸収機能の発達に伴い、徐々に見られなくなっていきます。
おしっこの悩み
①おしっこの回数が多い
おしっこは、腎臓でもとのおしっこ(原尿)が濃縮され、膀胱に貯められて排泄されます。しかし、赤ちゃんの腎臓の機能はまだ未熟なため、大人ほどおしっこを濃縮することができません。そのため、おしっこの量が多いため、排尿回数も多くなります。成長に従って、自然に尿の回数は減っていきます。
尿路感染症(膀胱炎)のようにおしっこの回数が多くなる病気もあります。尿路感染症は、一般的に1回の尿量が少ないこと、血尿になること、発熱や排尿痛などの症状を合併することが多いですが、赤ちゃんの尿路感染症では発熱のみの場合もあります。
②おしっこの色が変
健康なおしっこは透明な黄色ですが、季節によって多少の違いがあります。夏はよく汗をかくのでおしっこの量が少なくなり、また麦茶のように濃縮された濃い色のおしっこになることもあります。
また、夏は鮮やかなピンク色やオレンジ色のおしっこが、おむつに付いていることもあります。このほとんどは「結晶尿」で、おしっこに含まれる成分が析出したものです。血尿ではないので、心配はありません。(結晶尿は次項で詳しくご説明いたします)
逆に心配すべきは、赤ワインのような色やコーラのような色のおしっこの時です。これらは血尿の可能性があります。おしっこの中に溶け出した血液が、時間の経過と共に酸化して変色した可能性があるからです。血尿は、腎臓や膀胱の病気の可能性を示唆します。
また、おしっこが白く濁っている時は尿路感染症の場合もあります。
おむつについたおしっこの色が心配の場合は、そのおむつをビニール袋に入れてクリニックに持参して、見せて下さい。
③結晶尿
赤ちゃんのおむつを替えていると、赤やピンクの色のおしっこがおむつに着いていて、ビックリされたことはありませんか。「おしっこの色が変!」「血尿かしら?」と心配になりますね。
この変な色のおしっこは、ほとんどは「結晶尿」といわれるものです(写真右)。
●結晶尿になるわけ
このおしっこの色は、尿中の結晶成分の色です。
結晶成分とは、おしっこに含まれる尿酸とかシュウ酸という成分が、固まって析出して小さな粒になったものです。特に尿酸は小さな赤ちゃんの場合、急激に身体が発育しているため、新陳代謝の結果大量に尿中に捨てられます。
これが、暑くて沢山汗をかいたり、飲んだおっぱいの量が少なかったりして、尿がかなり濃縮が強くなると溶けていることができず、析出してくるのです。
これがオレンジ色やピンクの色に見えるのですね。したがって、これは血尿でないので、心配はいりません。一般にあざやかなピンクやオレンジ色のおしっこは結晶尿のことがほとんどです。
④おしっこの量・回数が少ない
夏は汗をたくさんかくため、おしっこの量や回数は少なくなります。元気で食欲があれば、心配はありません。水分を十分に与えてあげましょう。
おしっこの量・回数が少ない時に注意が必要なのは、嘔吐や下痢を伴う病気が原因の場合です。嘔吐や下痢によって体内から大量の水分が失われ、体が必要とする水分量を下回り、脱水症を起こす危険があります。ひどい脱水症は命にも関わります。
嘔吐や下痢を伴う病気の時は、OS1や乳児用イオン飲料、リンゴジュース、麦茶などの水分を少量ずつこまめに与えます。おしっこの量・回数の減少に加えて、唇が乾いている、ぐったりしている、などの症状が見られる時は当クリニックへ受診が必要です。
⑤おちんちんに黄色いものが付いている
ときどき赤ちゃんのおちんちんの皮の中に、チーズのようなものがあると相談されることがあります。(写真右)
赤ちゃんのおちんちんの先端の亀頭は、包皮という皮に覆われています。その包皮と亀頭の間にチーズのような黄色いものが付着することがあります。これは恥垢(ちこう)と呼ばれ、組織のかすや分泌物が固まったものです。特に害はないので、そのまま様子を見ていて構いません。
⑥おちんちんの皮は剥く?
赤ちゃんのおちんちんの皮を剥いたほうがよいか、これはよく聞かれる質問です。
大雑把にいうと、新生児では10割、乳児では8割、幼児では6割の男の子のおちんちんの皮は剥けません(真性包茎)。したがって、赤ちゃんのおちんちんは、皮を被っているのが普通なのです。
皮を一生懸命剥く必要はありません。お風呂に入ったとき、おちんちんをよく洗ってあげれば十分だと思います。
ただし、亀頭包皮炎といっておちんちんが赤くはれ上がり、膿が出るような病気を繰り返す場合は、皮の内部の感染を防ぐため、皮を剥いてよく洗う必要があります。
皮を剥いて洗う方法は、おちんちんの茎を二本の指ではさみこみ、根元に向けて少しずつ均等にひっぱっります。皮の先が朝顔みたいに丸く盛り上がるぐらいがよいでしょう。
赤ちゃんがいやがるようなら、力を弱めます。あまり強く、皮を引っ張りすぎると皮が血だらけになったり(おちんちんの皮は出血しやすい)、茎の部分を締め上げて嵌頓包茎という危険な状態になったりすることがあるので、注意してください。
少し皮を剥いたら、石鹸で泡立てて洗います。これを毎日繰り返すとよいでしょう。
それでは1歳以上のお子さまについてはどうでしょうか。鈴の木こどもクリニックの外来で、1歳以上のお子さまのおちんちんをむいてみると、少しはむける(おちんちんの皮が後退し、中の亀頭がみえる)人がだんだん増えてきます。
少しでもおちんちんの皮がむければ、将来自然に皮がむけてくることが期待できるので、そのまま様子を見てよいでしょう。
1歳以上のお子さまで、皮の先端(包皮口)が引っ張っても全く開かず、おしっこをするときに、皮の中がおしっこでぷぅーと風船のようにふくれる(バルーニングといいます)様なら、軟膏を塗るなどの治療を考えたほうがよいでしょう。一度、来院してご相談下さい。