当クリニックは年間300例以上の乳児健診を行っていますが、そのなかでお母さまの特に質問の多かった項目について解説します。また、育児雑誌の質問コーナーなどでお答えしたことも掲載しました(病気については病気のセッションをお読みください)。
漸次、項目を増やしていくつもりですが、ご心配事があるときは、気軽に直接クリニックに相談にいらしてくださいね。
①うんちにつぶつぶがまじる
②うんちが緑色になった
③うんちが出ない。便秘?
④おちんちんの皮は剥く?
⑤恥垢
⑥おしっこの色が変
①離乳食の進め方
①歯がはえてこない
①夜中なかなか寝つかない
②夜泣きがひどい
Ⅰ.うんち・おしっこ編
①うんちにつぶつぶが混じっている
うんちに白いつぶつぶが混じって見えることがあります。少し心配になりますね。でもこれは腸の中で化学反応が起きて、一種の石鹸のような物が作られた結果なのです。無害なものですから、心配はいりません。
②うんちが緑色
うんちが濃い緑色になったと心配されるお母さまがいます。緑のうんちは、便に含まれる黄色い色素(ビリルビン)が化学変化で緑色の色素に変わっただけです。心配はいりません。
③うんちが出ない。便秘?
2~3ヶ月の母乳栄養の赤ちゃんは数日うんちが出ないことが普通です。3~4日便が出なくとも、機嫌がよく、排便するときに痛がったり便に血がついていなければ、様子をみましょう。4日便が出なければ、綿棒浣腸を行なっても。排便のときに痛がったり、便に血がついているときは浣腸を行なったほうがよいでしょう。浣腸がくせになることがありません。
④おちんちんの皮は剥く?
赤ちゃんのおちんちんの皮を剥いたほうがよいか、これはよく聞かれる質問です。
大雑把にいうと、新生児では10割、乳児では8割、幼児では6割の男の子のおちんちんの皮は剥けません(真性包茎)。したがって、赤ちゃんのおちんちんは、皮を被っているのが普通なのです。皮を一生懸命剥く必要はありません。お風呂に入ったとき、おちんちんをよく洗ってあげれば十分だと思います。
ただし、亀頭包皮炎といっておちんちんが赤くはれ上がり、膿が出るような病気を繰り返す場合は、皮の内部の感染を防ぐため、皮を剥いてよく洗う必要があります。
皮を剥いて洗う方法は、おちんちんの茎を二本の指ではさみこみ、根元に向けて少しずつ均等にひっぱっります。皮の先が朝顔みたいに丸く盛り上がるぐらいがよいでしょう。赤ちゃんがいやがるようなら、力を弱めます。あまり強く、皮を引っ張りすぎると皮が血だらけになったり(おちんちんの皮は出血しやすい)、茎の部分を締め上げて嵌頓包茎という危険な状態になっったりすることがあるので、注意してください。
少し皮を剥いたら、石鹸で泡立てて洗います。これを毎日繰り返すとよいでしょう。
それでは1歳以上のお子さまについてはどうでしょうか。鈴の木こどもクリニックの外来で、1歳以上のお子さまのおちんちんをむいてみると、少しはむける(おちんちんの皮が後退し、中の亀頭がみえる)人がだんだん増えてきます。少しでもおちんちんの皮がむければ、将来自然に皮がむけてくることが期待できるので、そのまま様子を見てよいでしょう。
1歳以上のお子さまで、皮の先端(包皮口)が引っ張っても全く開かず、おしっこをするときに、皮の中がおしっこでぷぅーと風船のようにふくれる(バルーニングといいます)様なら、治療を考えたほうがよいでしょう。
⑤恥垢
ときどき赤ちゃんのおちんちんの皮の中に、チーズのようなものがあると相談されることがあります。(写真右)
これは恥垢です。これは組織のかすや分泌物が皮の中にたまり、固まったものです。無害なので、このまま様子をみてかまいません。
⑥おしっこの色が変(結晶尿)
●結晶尿
赤ちゃんのおむつを替えていると、赤やピンクの色のおしっこがおむつについていて、ビックリされたことはありませんか。「おしっこの色が変!」「血尿かしら?」お母さまもあわててしまいますね。実際、小児科に受診された方もいらっしゃるでしょう。
このおむつに着いた変な色のおしっこは、ほとんどは「結晶尿」といわれるものです(写真右)。
●結晶尿になるわけ
このおしっこの色は、尿中の結晶成分の色です。結晶成分とは、おしっこに含まれる尿酸とかシュウ酸という成分が、固まって析出して小さな粒になったものです。特に尿酸は小さな赤ちゃんの場合、急激に身体が発育しているため、新陳代謝の結果大量に尿中に捨てられているのです。これが、暑くて沢山汗をかいたり、飲んだおっぱいの量が少なかったりすると、尿が濃縮し析出してくるのです。
これがオレンジ色やピンクの色に見えるのですね。したがって、これは血尿でないので、心配はいりません。一般にあざやかなピンクやオレンジ色のおしっこは結晶尿のことがほとんどです。
●注意しなければならない、変な色のおしっこ
本当の心配な血尿の色は、どす黒い赤からさらに黒い色です。へモグロビンは時間がたつと酸化されて黒く変色していきます。赤黒い色から、赤ワインの色、コーラ色などは本当の血尿の可能性があります。この場合は、腎臓や膀胱、その他の重い病気の症状の可能性があるため、すぐおしめを持って、小児科を受診した方がよいでしょう。
離乳食については、別稿でくわしく解説しました。(鈴の木版-離乳食の全て)
①歯が生えてこない
赤ちゃんの歯は6~7ヶ月ごろに下の前歯2本、次に上の前歯2本が生えてくるのが普通です。でも、歯の生え方には個人差が大きく、1歳になっても歯が生えてこない赤ちゃんもみられます。でも歯の無い人はいないですよね。大丈夫です。今は歯が生えていなくても、歯ぐきの中にはちゃんと立派な歯が埋まっているのです。何時歯が顔を出すか、タイミングだけの問題なのです。気長に待ちましょう。
①夜中なかなか寝つかない
赤ちゃんは4ヶ月ぐらいになると、昼は起きて夜は寝るというリズムが作られ始めます。なるべく昼間はお散歩したり、遊ばせたりして適度に精神的にも肉体的にも疲れさせると、夜中寝るようになるかもしれません。逆に夜はなるべく刺激せず、暗くした部屋で静かに添い寝したりするとよいのでは。
②夜泣きがひどい
夜泣きは9ヶ月過ぎの赤ちゃんが特に原因もないのに、夜中に大声で泣き出すことをいいます。泣く時間は大体決まった時間が多いようです。すぐに泣き止んで寝てしまう赤ちゃんから、何時間も泣き続けて、お母さまが睡眠不足になってしまう深刻な場合もあるようです。
夜泣きは赤ちゃんの心の発達のひとつの過程と考えられます。睡眠は浅い眠りと深い眠りの繰り返しですが、浅い眠りのときに半ば朦朧として赤ちゃんが泣くのだと考えられています。また、1歳半から2歳までに自然におさまります。したがって、あやして寝つくようなら、特に何もすることはありません。時期を待ちましょう。また、なるべく昼間お散歩したりして赤ちゃんの気を紛らわすのも良い方法です。しかし、お母さまや家中の人が寝られないようなひどい夜泣きが続く場合には、漢方の薬(甘麦大棗湯)をお出しすることもあります。