HPVワクチンについて-第2編   シルガード9の登場       2020.12.6



目次

Ⅴ.HPVワクチン 更新

  ①ガーダシル
  ②サーバリックス
  ③シルガード9
  ④HPVワクチンの効果

Ⅵ.その後の情勢



Ⅴ.HPVワクチン 更新

 2020年12月現在、わが国では承認されたHPVワクチンは、ガーダシル、サーバリックス、シルガード9の3種類となりました。ガーダシル、サーバリックスは、現在、勧奨停止のままですが定期接種として無料で接種できます。

 しかし、アメリカなど全世界ではシルガード9が主に接種されています。シルガード9はほとんどの発がん性HPVの感染を阻止できる、すばらしいワクチンです。我が国でも2020年7月21日に薬事承認されたにもかかわらず、厚労省の仕事の出来ない無能な役人の不作為によって、未だに定期接種として接種できない、異常な状態が続いています。

 ワクチン反対派が跋扈し、医療者に対しさまざまな妨害と脅迫が繰り返され、日本の子どもたちが恐ろしい感染症の犠牲になっていた、かつての「ワクチン冬の時代」が残念ながら、今なお残存し、継続しています。

 子宮頸がん予防に関して、ワクチン反対派と従僕マスコミ左翼記者の妨害と脅迫のために、我が国だけが世界の趨勢から取り残され、日本の若い女性だけが悲惨な子宮頸がんで苦しみ、命を奪われていく、悲しむべき地獄絵図が未だに我が国では続いているのです。

ガーダシル(4価ワクチン=組換え沈降4価ヒトパピローマウイルス様粒子ワクチン)

●予防接種の内容
 

 子宮頸がんの主要な発がんウイルスである、ヒトパピローマウイルス(HPV)16型、18型に、 外性器にいぼができる「尖圭(せんけい)コンジローマ」などの原因となるHPV6型、11型の4つのHPVの感染を予防する、4価の不活化ワクチンです。

 ガーダシルにはアジュバンドとして、アルミニウム塩(アルミニウムヒドロキシホスフェイト)が使用されています。

 2013年4月より、定期接種になりましたが、現在も積極的な勧奨は停止されたまま放置されており、保健所から予診票は送付されてきません。

  *品川区では、2020年8月下旬からHPVワクチンのお知らせが配布されるようになりました。(詳細後述

 しかし、
HPVワクチンは定期接種です。法に基づく接種として、無料で受けることができます。お子さまを悲惨な「マザーキラー」子宮頸がんから守るため、ガーダシルをぜひ接種しましょう!

●予防する病気

 子宮頸がんを引き起こす、発がん性高リスク型ヒトパピローマウイルス(HPV)のうち、HPV16型、18型の感染を予防します。

 また、尖圭(せんけい)コンジローマは性交で感染し、外性器、肛門周囲に1~3mmぐらいの球形~カリフラワー状のいぼ(乳頭腫)が次々とできる性感染症です。性器いぼとも呼ばれます。命に別状はありませんが、難治性で再発を繰り返すやっかいな病気です。

 原因ウイルスは主にHPV6型、11型です。HPV6型、11型は尖圭コンジローマの原因にはなりますが、子宮頚がんを起こすことはなく、また尖圭コンジローマも生命に危険が及ぶことはありません。そのため、これらのウイルスは、低リスク型HPVと呼ばれます。

 ガーダシルは、尖圭コンジローマ(性器いぼ)を99%予防したと報告されています。したがって、アメリカなどでは肛門がんにも有効なため、男性にも接種が行われています。現在我が国でも、男性にもHPVワクチンの接種を拡大する承認手続きが進められています。(詳細後述

 また、ガーダシルは出生時に生まれてくる赤ちゃんが、産道でHPVに感染して、出生後に(赤ちゃんの)喉にいぼができて、重い呼吸困難を繰り返す「再発性呼吸器乳頭腫症」という、稀ですが非常に重い病気の発生も防ぎます。

●接種の方法

 9歳以上の女性が対象で、計3回、上腕三角筋に筋肉注射をします。1回目の注射の後、2ヶ月後に第2回めの注射、さらに4ヵ月後に第3回目の注射をします。

 日本小児科学会は、中学1年女子に定期接種として、接種を勧めています。

サーバリックス(2価ワクチン=組換え沈降2価ヒトパピローマウイルス様粒子ワクチン)

●予防接種の内容

 子宮頸がんの主要な発がんウイルスである、ヒトパピローマウイルス(HPV)16型、18型の感染を予防する、2価の不活化ワクチンです。

●予防する病気

 ヒトパピローマウイルス16型、18型(HPV)のヒトへの感染を防ぎます。

 サーバリックスにアジュバンドとして使用されている、AS04アジュバンド複合体には、水酸化アルミニウム塩とモノホスホリルリピッド(MPL)が含まれ、ワクチンを接種した場所に抗原を長く留めたり、抗原認識細胞を刺激し活性化を高めたりして、少ない抗原量で免疫を高める働きがあります。

●接種の方法

 10歳以上の女性が対象です。1回目の接種の後、1ヶ月後に第2回めの接種、さらに5ヵ月後に追加接種を、左右交互に上腕三角筋に筋肉注射します。(計3回接種します)

 *多くの小児科医、産科医の啓発活動と子宮頸がん予防に正しい理解を持つ保護者の増加によって、HPVワクチンの接種数が大幅に増えたことで、サーバリックスは2020年10月から出荷数の調整が行われることになりました。(→製造会社の医療関係者への連絡はこちら

シルガード9(9価ワクチン=組換え沈降9価ヒトパピローマウイルス様粒子ワクチン)

●予防接種の内容

 2020年7月21日に、薬事承認されました。(報道はこちら

 子宮頸がんの原因ウイルスの約90%をしめている、ヒトパピローマウイルス(HPV)16型、18型に、31型、33型、45型、52型、58型の7種類と尖圭コンジローマの原因ウイルスの90%を占めている低リスク型のHPV6型、11型の2種類、計9種類に対応した9価組み替え不活化ワクチンです。

 アジュバント(免疫賦活剤)を含んでいます。アメリカ産のワクチンで、現在世界のシェア第1位です。
 

 ガーダシルがHPV16型、18型の2種類の高リスク型HPVを含有し、子宮頸がんの60~70%の発病を防ぐのに対し、シルガード9は7種類の高リスク型HPV(16、18、31、33、45、52、58型)を含むため、子宮頸がんの90%以上の発病を予防できると報告されています。

 ちなみに我が国のがん研有明病院のホームページでは、「HPV52型、58型は欧米の報告ではがんから見つかることが少ないとされ、あまり注目されていません。しかし、日本ではHPV52型、58型ががん組織から高率に見つかる傾向があり、私たちはこれらHPV52型、58型を高危険型HPVと考えています。」と記載があります。シルガード9はこれらのHPV16型18型以外の発がんウイルスにも対応しており、ガーダシルを凌ぐ効果が期待されます。

 また、最近発表されたWHOのPosition Paper(声明書。後述)では、9~14歳の女児に対しては、2回接種(0ヶ月、6ヶ月の2回)で十分な効果が期待できるとされました(15歳以上は3回接種が勧められています)。

●予防する病気

  子宮頸がんを引き起こす発がん性高リスク型ヒトパピローマウイルス(HPV)のうち、HPV16型、18型、31型、33型、45型、52型、58型の感染を予防します。 ほぼ子宮頸がんの発病の100%近くを予防できることになります。

 すでにシルガード9(ガーダシル9)の接種を公的接種として行っているオーストラリアでは子宮頸がんの発病は激減しており、2028年までに子宮頸がんの診断を受ける女性が10万人あたりに4例未満(ちなみに我が国は16例)まで減り、2066年には10万人あたり1例未満と、先進国の中で最初に子宮頸がんという病気を制圧する国になると言われています(Lancetの論文はこちら。横浜市大産婦人科による日本語訳と解説はこちら)。



 The projected timeframe until cervical cancer elimination in Australia: a modelling study Hall MT et al. Lancet Public Health. 2018 Oct 1.   (Lancetの原著です。)

 また、シルガード9は低リスク型HPV6型、11型の感染を防ぎ、尖圭コンジローマの発病を予防します。


 HPV16、18、31、33、45、52、58型は子宮頸がんの他にも、外陰部がん、膣がん、肛門がんなどの原因になることが知られています。また、男性においては、中咽頭がんや頭頚部がんの予防にも有効とされています。

HPVワクチンの効果

 HPVワクチンがHPV感染を予防すること、前がん状態(高度異形成)への進展を予防することは、すでに多数の報告が行われています。(本編HPVワクチンの効果参照)

 しかし、HPVワクチンが子宮頸がん(浸潤がん)発症予防に有効だという、報告はありませんでした。そのために、HPVワクチン反対派は「危険な子宮頸がんワクチンが、子宮頸がんに効果があるという実証されたデータはありません!」と声を大にして、HPVワクチンを罵り、絶叫してきたのです。

 しかし、これは当たり前のことであって、まだHPVワクチンが登場して10年あまりしか経過していません。子宮頸がんは必ず前がん病変を経て浸潤がんへと進展していくことから、HPVワクチンを接種した女性が子宮頸がんを発症するか、ワクチンの効果があったかを検討するには10年以上の時間の経過が必要だったのです。


 そして、HPVワクチンが大規模に接種され始めて10年が経過し、HPV接種によって、前がん状態の減少だけでなく、浸潤がん(子宮頸がん)も減少するという報告が、HPV定期接種を行っている国から発表され始めたのです。

1)HPVワクチンの浸潤がんに対する効果(フィンランド)


フィンランドでは、3つの臨床試験のワクチン接種者と非接種者のその後の浸潤がんの発病率を、2007年~2015年の7年間で比べました。その結果は、HPVに関連のない浸潤がんの罹患率は、ワクチン接種の有無で差がありませんでした。

 それに対し、HPVに関連した浸潤がんの発生は、子宮頸がん、外陰部がん、口腔咽頭がんにおいては、HPV非接種群では発病者が出たのに対し、HPV接種群では認めなかったと報告されました。(論文はこちら

 Vaccination protects against invasive HPV‐associated cancers . T.Luostarinen et al:Int J Cancer.2017.


2)HPVワクチンの浸潤がんに対する効果(スウェーデン)

●スエーデンから150万人以上の大規模集団に対するHPVワクチンの効果を調べた、決定的な研究結果が報告されました。

 HPV Vaccination and the Risk of Invasive Cervical Cancer.J.Lei et al:N Engl J Med 2020;383:1340-8. 

 スエーデン・Karolinska Institutetの研究は、スエーデンの住民登録データやワクチン接種登録データなどを用いて、ワクチン接種を受けた女性と受けていない女性の子宮頸がん(浸潤がん)の発生率を調べたものです。

 2006年~2017年に10~30歳だった女性167万2983人(研究期間中に、4価HPVワクチンを少なくとも1回接種した女性は52万7871人、全く接種しなかった女性は、114万5112例。)が31歳になるまでに、子宮頸がんを発症した頻度を追跡調査しました。

 調査終了時に、4価HPVワクチンを接種した女性19人と、接種していなかった女性538人が、子宮頸がんと診断されていました。これは、ワクチン接種群の10万人、年あたりの累積発症者率が47例であったのに対し、ワクチン非接種群では94例でした。(下図。Medical Tribune2020.11.5より転載)

 この結果は、HPVワクチン接種によって、子宮頸がん発生率が63%減少した事を示しました。

 さらに詳細は検討では、子宮頸がん発生率は、17歳になる前にワクチンを接種した人々で最も低値でした。

 17歳未満でワクチン接種を受けた女性の子宮頸がんの劇的な減少は、学校でのHPV予防接種プログラムの有用性を明確に示している、と論文ではコメントされています。

 HPVワクチンがすべてのHPV株を予防できるわけではないので、ワクチンを接種している女性にとっても、子宮頸がん検診はいまだ重要な意味を持っている。とも論文では述べられています。(原著論文はこちら。日本語訳の解説はこちら。)

 日本婦人科腫瘍学会も2020年10月7日、 「HPVワクチンによる子宮頸癌の発生リスク減少を示す新たなエビデンスについて」という通達を発表し、
 本研究結果は、HPVワクチンによって子宮頸癌の発生リスクが劇的に減少することを科学的に証明したエビデンスと言えます。会員の皆様には、本論文をご高覧いただき、HPVワクチンの啓発にお役立ていただきたくお願い申し上げます。
と、HPVワクチン接種の啓発を進めるよう、学会会員に奮起を促しています。

        参考: 岩永直子:17歳未満でのHPVワクチン接種で子宮頸がんを88%減少 がん予防効果を示した論文は世界初

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Ⅵ.その後の情勢

①品川区の対応


 品川区は2020年8月から、定期接種の対象年齢の区民に「HPVワクチンについて」のお知らせの配布を始めました。(品川区保健所の区議会厚生委員会への報告
 
 この処置は定期接種であるにもかかわらず、HPVワクチンに対する情報が提供されず、定期接種の年齢が過ぎ、打ちそびれとなってしまう女性が発生することへの対応策として、始められたものです。HPVワクチンの周知の一歩として評価したいと思います。

  参考:厚労省のHPVワクチンに対する説明パンフレット

②ガーダシルの男性への接種の拡大
 
 2020年12月4日に開催された薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会は、 ヒトパピローマウイルス(HPV)への感染を予防する4価ワクチン「ガーダシル」を、9歳以上の男性にも適応拡大することを了承しました。早ければ、12月にも薬事承認される見通しだそうです。(詳しい報道はこちら

 意識の高い保護者の方から男児へのHPVワクチン接種の問い合わせが今までも時々ありましたが、残念ながら男性への接種は適応外としてお断りしてきました。しかし、来年からは接種が可能になるようです。

 特に肛門がんや中咽頭がんなど、HPV感染による男性のがんの報告も増えてきているため、男児に適応を広げるとともに、風疹ワクチンと同じように、HPVワクチンの定期接種を男女ともに拡大することは必要です。

 用法・用量は女性と同じです。男性への定期接種化については、「担当の厚生科学審議会で必要に応じて議論を進める可能性がある」などと厚労省役人は逃げを打っているようですが、シルガード9の定期接種化とともに、4価、9価HPVワクチンの男性への定期接種の拡大の早期の実現を当クリニックは強く望みます。

  
参考:NHK:子宮頸がんワクチン 男性接種も承認へ 肛門がんなど予防効果も…「子宮頸がんワクチン」などと表現しているところから、すでにレベルの低さが露呈している杜撰な記事。高給もらってふんぞり返っている親方日の丸なのだから、もう少し勉強してほしいものです。

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