HPVワクチンについて  2019年版                2019.10.15最終加筆修正



目次

Ⅰ.子宮がんとは
  ①子宮体がん
  ②子宮頸がん

Ⅱ.ヒトパピローマウイルス(HPV)とは


Ⅲ.HPVワクチン
  
①ガーダシル
  ②サーバリックス
  ③ガーダシル9
  ④HPVワクチンの効果
  ⑤HPVワクチンの副反応

Ⅳ.HPVワクチンの接種方法
  ①接種対象者
  ②実際の接種方法
  
接種費用
  ④接種後について




Ⅰ.子宮がんとは

 
 女性特有のがんである
子宮がんは、発生する部位によって、子宮頸がん子宮体がんに分けられます。
 
 子宮頸がんは、子宮の入り口である頸部に発生するがんです。原因はウイルス感染で、発病は30歳~40歳代が多く、20歳~30歳代でも前がん状態でよくみつかります。

 初期にはほとんど自覚症状がなく、進行すると性交時の出血、悪臭を伴うおりもの、不正性器出血(生理以外の時に出血する)などが見られるようになります。

 これに対し、子宮体がんは多くは女性ホルモンが影響して発生し、40歳からみられ、50歳~60歳代に多いがんです。

 不正性器出血(生理以外の時に出血する)や月経異常など、早くから何らかの症状が見られることが多いようです。

 この以外にも、子宮の筋肉層から発生する腫瘍があり、良性のものは
子宮筋腫、悪性のものを子宮肉腫(がん肉腫や平滑筋肉腫など)とよばれます。

 全体として子宮がんの罹患数(患者数)は年間約25,200人で、このうち子宮頸がんが約10,900人、子宮体がんが約13,600人、どの部位かはっきりしない子宮がんが約700人となっています(地域がん登録全国推計値2012年、上皮内がんを除く)。

 また、子宮がんの死亡数は、全体として年間約6,400人で、このうち子宮頸がんが約2,900人、子宮体がんが約2,200人、どの部位か情報がない子宮がんが約1,300人となっています(人口動態統計2014年から)。(国立がん研究センターの最新がん統計はこちら。)

 まず、子宮体がんの方から見ていきましょう。

①子宮体がん

 
 子宮体がんは子宮の筒のような部分(子宮体部)にできるがんで、子宮内膜から発生することから「子宮内膜がん」とも呼ばれます。

●原因
 子宮体がんは、出産経験がないこと、閉経が遅いこと、肥満などエストロゲンという女性ホルモンの刺激が長期間続くことが原因で発生すると考えられています。
  
 エストロゲン(女性ホルモン)と関係せず、血縁者に大腸がんとなった人がいるなど、遺伝が関係して発生することもあります。

●頻度
 子宮体がんは、年間約13,600人が発病し、約2,200人が死亡しています。このがんは40歳後半から増加して、50歳から60歳代が発病のピークになります。

●症状
 子宮体がんの主な自覚症状は、性器からの出血です。月経でない時期や閉経後に性器から出血が見られます。その他、排尿痛や排尿困難、性交痛、下腹部痛、腹部膨満感などがみられることもあります。

●検査
 子宮体がんは子宮の奥で発生するため、がん検診で発見することは難しく、また初期から症状が見られること、比較的がんの進行がゆるやかなことから、現在検診は行われておりません。

②子宮頸がん

●原因 一方、本稿の主題である、子宮頸がんは 、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染によって発生するがんです。

 ヒトパピローマウイルス(HPV)は200種以上の亜型(遺伝子型)があり、約40種類は性行為で感染することがわかっています。このヒトパピローマウイルス(HPV)はありふれたウイルスで、からだのさまざまなところから見つかります。

 このうち、遺伝子型16型、18型、31型、33型、35型、45型、52型、58型など15種類のHPVは、子宮頸がんを引き起こすことがわかっています。そのため、これらの15種類のHPVは、「発がん性高リスク型HPV」と呼ばれます。

 1983年、zur Hausen(ツア・ハウゼン)教授によって、子宮頸がんはヒトパピローマウイルス(HPV)の感染によって引き起こされることが発見されました。この功績により、zur Hausen教授は、2008年のノーベル医学生理学賞を受賞しています。

●頻度
 子宮頸がんはわが国では年間約10,900人が発病し、2,900人が亡くなっています。実に全女性性器がんの中で、死亡数が全体の35%を占める、死亡する人の多いがんです。

 しかも死亡はまぬがれても、ごく初期のがんでなければ、子宮を全摘出しなければならず、子宮や卵巣を失うという女性にとって耐え難い治療が必要になります。

 命は助かったが、子どもが生めなくなった。赤ちゃんは助かったが、母親が死亡した、などという悲劇が後を絶たない、悲惨ながんが子宮頸がん
なのです。

 しかも、この子宮頸がんは、高齢者は減ってきましたが、20歳代後半から30歳代前半の出産時期を迎えた若い女性の間で増加しており、「マザーキラー」とも呼ばれ、怖れられているのです。(右図。近藤先生提供)

●症状
 早期の子宮頸がんはほとんど症状はみられません。月経でない時期や性行為の後に性器から出血が見られる場合や、赤褐色や血の混じった異常なおりもの(帯下)がみられるときは、子宮頸がんがすでに相当進行している可能性があります。

 また、腰痛や太ももあたりの痛みを感じることもあります。

●検査 
 子宮頸がんの検査は、自覚症状がない時期に、いかに早期にがんを見つけるか、それによって、女性の生命や子宮をいかに守るか、そのために行われる検査です。

 子宮頸がんは、予防できるがんなのです。なぜならば、原因がわかっており(発がん性HPVの持続感染)、前がん状態(細胞異形成)が存在し、この時期に診断し治療すれば、命はもちろん子宮を温存して子どもを産むことも可能となるといわれているのです。

 しかし、残念ながら我が国の子宮がん検診の受診率は、国や区の懸命な勧奨にもかかわらず、40%台(欧米は先進国は70~80%)と低迷しており、特に20~30歳代は20%台とさらに激減しています。

 この検診の低迷について、自らは何の汗もかかず、何の努力もしないくせに、安易に地方自治体を攻める人がいますが、まずは危機意識を持つすべての関係者がそれぞれの立場で強力な啓発と勧奨を、自らの責務として行うことが重要なのではないでしょうか。

 子宮がん検診は、まず一次検診として問診、内診(子宮頸部の視診、子宮の触診)、さらに細胞診が行われます。(詳しくは、山梨大学医学部婦人科 子宮がん検診に行こう!!を参照ください)

 細胞診(PAPパップテスト)は子宮頸部をブラシなどで擦って、細胞を採取し、顕微鏡で観察して、がんかどうか判定します。検査自身は簡単で痛みも少なく、検査結果も比較的信頼できると評価されています。しかし、それでも前がん状態やがんを診断する感度は50~70%といわれており、5人に1人は見逃される可能性があります。

 また、欧米や中国で導入されているHPV-DNA検査は、子宮の入り口にHPVが感染しているかを見る鋭敏な検査で、CIN(後述)はすべて陽性になり、HPVの一過性感染も持続性感染も全て陽性になるため、解釈が難しく、検診システムとしては現在一般化されてはおりません(近い将来、検診システムに組み入れられる可能性はあります)。

 もしもこの1次検診で異常の疑いがあった場合は、コルポスコープ(子宮膣部拡大鏡)で子宮頸部を8~10倍に拡大し、酢酸液を塗ります。酢酸塗布によって、異形成細胞や上皮がんは白色に変色するため、この部位から組織を切り取り、精密な組織検査を行います(右図)。

 ただし、腺がん(後述)などは酢酸で異常が見つからない可能性があります。


 切り取った組織を顕微鏡下で調べて、がんかどうか、判定します。

 もしも組織診で子宮頸がんの浸潤がんと診断されれば、内診、膣鏡診、直腸診、直腸鏡検査、膀胱鏡検査、排泄性尿路造影、胸部X線、CT、MRI、腫瘍マーカー検査、PET(陽電子放射断層撮影装置)などあらゆる検査が行われ、がんの進行度を調べることになります。

●治療
 子宮頸がんは、がん細胞の広がりによって、進行期(ステージ分類*)が行われます。そのがんの進行の程度で、がん治療の方法が患者さんと相談上、選択されることになります。
      
*ステージ分類は適時変更されるようです。


 子宮頸がんは進行の程度で、以下の分類(病期)が行われます。
0期  上皮内がん  癌が子宮頚部粘膜上皮にとどまっているもの
浸潤がんの進行度
Ⅰ期 粘膜下組織に浸潤した癌が子宮頚部にとどまっているもの
  Ⅰa1  浸潤の広がり7mm以内。深さ3mm以内。
  Ⅰa2  浸潤の広がり7mm以内。深さ3~5mm以内。
  Ⅰb1  より大きいが、腫瘍径4cm以下。  
  Ⅰb2  腫瘍径4cmを越えるもの。
Ⅱ期 癌が子宮頚部を越えて、広がっているもの
  Ⅱa1  膣壁に浸潤し、腫瘍径が4cm以下のもの。
  Ⅱa2  膣壁に浸潤し、腫瘍径が4cmを越えるもの。
  Ⅱb   子宮傍組織に浸潤しているもの。
Ⅲ期 癌がさらに広く浸潤したもの
  Ⅲa  膣壁浸潤が膣の下1/3に達しているもの。
  Ⅲb  子宮傍組織浸潤が骨盤腔まで達するもの。
Ⅳ期  癌が小骨盤腔を越えて広がるか、膀胱・直腸の粘膜を侵すもの
  Ⅳa  膀胱、直腸粘膜まで浸潤があるもの。
  Ⅳb
  小骨盤腔を越えて広がっているもの。

 子宮頸がんの治療は、子宮頸がんの進み具合によって、異なります。CIN2~3、上皮内がん、浸潤がんのうちIa1ならば、子宮頸部の円錐切除という手術で、子宮を残すことも可能です。

 しかし、円錐切除術といっても、手術によって、子宮の一部を切り取ることには変わりありません。手術後、子宮頸管粘液の分泌が減少したり、子宮頸管が閉じてしまうなど、手術のリスクは厳然として存在しています。また、再発の可能性が常に存在します。

 この円錐切除手術を、現在我が国では年間9000人を超える女性が受けています。HPVワクチンを接種することにより、この手術を受ける女性が激減することが期待されているのです。

 浸潤がんがIa2以上の場合は、根治手術(子宮や卵巣、リンパ節などを広汎に取り出す)や放射線治療、抗がん剤の治療が行われます。

 治療法の進歩によって、子宮頸がんを発病した患者さんのうち、かなりの人が救命できるようになってきたことは、とても喜ばしいことです。しかし、がん治療によって、妊娠・出産ができなくなること、性交時の痛み、排尿や排便障害、足が異常にむくむリンパ浮腫、ホルモン不足の症状(ほてり、肩こり、いらいら、発汗、動悸など)、骨粗鬆症など、さまざまな後遺症や女性としてのつらい気持ち、がん再発への恐怖など、身体的精神的な苦痛に苦しむ患者さんが現在なお、少なくないのです。


 
現在、子宮頸がんについては、子宮頸がんの原因であるHPV感染をワクチンによって防ぐこと(一次予防、ただし16型、18型のみ)、 検診によるスクリーニングで前がん病変のうちに発見し、浸潤がんになる前に治療してしまうこと(二次予防)が世界的に認められた、子宮頸がんの予防・治療の標準的な戦略です。

 残念ながら、我が国はその両面で大きく立ち遅れているのです。

参考資料:  
子宮頸がん:日本産科婦人科学会
子宮頸がん(しきゅうけいがん):国立がん研究センター
子宮がん;がんに関する情報:がん研有明病院

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Ⅱ.ヒトパピローマウイルス(HPV)とは


 
次に、子宮頸がんを発癌させる、ヒトパピローマウイルス(HPV)について、詳しくみていきましょう。

 ヒトパピローマウイルス(HPV)そのものはイボなどの原因となる、ありふれたウイルスです。ヒトパピローマウイルスには、200種類以上の亜型(遺伝子型)があります。

 このうち、子宮頸がんを起こすのは、遺伝子型16、18、31、33、45、52、58型など全部で15種類のHPVであり、これらのウイルスは「発がん性高リスク型ヒトパピローマウイルス(HPV)」と呼ばれています。

 このうちHPV16型と18型が子宮頸がん全体の70%を占めており(下図)、特に20歳代の若い女性では90%、30歳代では76%にこの16型、18型が検出されています。

 また、この16型、18型は外陰がん、膣がん、肛門がん、陰茎がん、中咽頭がん(のどのがん)の主要な原因になっており、肛門がん、陰茎がん、中咽頭がんは男性のがんの原因でもあるのです。(そのため、アメリカでは、HPVワクチンは男性にも接種しています。



 このヒトパピローマウイルス(HPV)はありふれたウイルスで、性行為でしばしば感染を起こします。性交時に子宮粘膜の小さな傷から侵入して感染します。

 しかし、梅毒やHIVなどのように、特定の少数者が感染を広める性感染症(性病)とは異なり、HPVは性交渉を持った女性の50~80%が生涯に1度は感染するといわれているほど、ありふれたウイルスです。

 しかも、HPVに感染したとしても、そのほとんど(約90%)は、侵入したHPVは排除され、子宮に留まる時間は短期間に過ぎません。したがって、いつ感染したかわからないうちに感染し、治っていることも多いのです。

*しかし、B型肝炎ウイルスのように、HPVは検査で見つからなくなっただけで、実際は持続感染しているのではないか、と考える研究者もいます。HPV感染についても研究が進めば、どのような場合に持続感染が起こるのか、また、持続感染の頻度などについても、次第に明らかになっていくものと思われます。

 HPV感染の多くは無症状のまま、一時的な感染で終わり、すぐに治ります。そして、HPVは短時間子宮内にとどまるだけなので、十分な免疫が作られることがないため、HPVの感染は、繰り返し起こっているのです。

 十分な免疫が作られない理由は、HPVは侵入した子宮頸部の表面のあたりに留まり、子宮粘膜に炎症を起こしたり、近くの血管から血液中に侵入したりすることがないためです。つまり、おとなしく潜んでいるのです。

 そのため、からだの防衛をつかさどる、免疫担当のマクロファージやランゲルハンス細胞などといった抗原提示細胞(からだの防衛軍)がHPVの侵入に気づかないために、免疫が作られにくいと考えられています。HPVはヒトの免疫反応を巧みにすり抜けて、感染を繰り返しているのです。
 
 しかし、ごくまれに何らかの条件で、子宮上皮にもぐりこんだHPVが、排除されずにそのまま子宮内に留まることがあります。この場合、子宮内に留まったHPVのDNA(ゲノム)は子宮頸部の細胞のDNAに侵入し、組み込まれ、長期間にわたって周りの正常細胞に攻撃し続けます。

 その結果、正常の子宮頚部上皮細胞はしだいにおどろおどろしい異型のCIN(cervical intraepithelial neoplasia 子宮頸部上皮内腫瘍)*に変質(異形成化)していきます。

*CIN=cervical intraepithelial neoplasia 子宮頸部上皮内腫瘍。がんではないが、がん化する可能性がある異常な細胞を「子宮頸部上皮内腫瘍」と呼び、その程度により、CIN1(軽度異形成)、CIN2(中等度異形成)、CIN3(高度異形成~上皮内がん)と分類します。さらに、CIN1を軽度上皮内病変(LSIL:Low grade squamous intraepithelial lesion)、CIN2~CIN3を高度上皮内病変:HSIL:High grade squamous intraepithelial lesion)と呼びます。

 また、これら扁平上皮がんと呼ばれるグループ以外に、もう一つ腺がんというグループでは、前がん状態は上皮内腺がん(AIS:adenocarcinoma in situ)と呼ばれます。この腺がんは子宮頸がん全体の25%近く(2002年)を占めていますが、近年増加傾向にあります(大阪府のデータ)。扁平上皮がんに比べ、子宮がん検診で発見されにくく、放射線療法、抗がん剤の治療が効かないことも多い、たちの悪いがんといわれています。(右図:近藤先生提供)

 子宮の上皮細胞が異型化していくと、顕微鏡で見ると、コイロサイトーシス(細胞の核の周りがすかすかになる現象)という現象が見られます。


 そして、10年以上の長い年月ののちに、最終的に凶暴ながん細胞(浸潤がん)に変身し、手当たり次第、身体中に広がり転移していきます。そして、最終的にがんに侵された人(担癌生体)の命を奪うことになるのです。

 子宮頸がんは必ずこのCIN(子宮頸部上皮内腫瘍)の段階を通過してから、がん細胞に変化していきます。

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Ⅲ.HPVワクチン


 子宮頸がんが、ウイルス感染によって発病する病気ならば、その発がんウイルスに対する免疫を獲得し、子宮頸がんの発病を阻止すること(1次予防)は非常に合理的な治療戦略です。
 そして、HPVワクチンは、この目的のために開発された、ウイルスの殻だけを持つ不活化ワクチンです。

 ふつう、ワクチンというと、麻疹ワクチンやインフルエンザワクチンのように急性感染症が対象で、がん予防というと戸惑われる方がいらっしゃるかもしれません。しかし現在、がん予防のワクチンとして、HPVワクチンとB型肝炎ワクチンの2種類が実際に臨床で使用されています。
HPVvaccine
 このうち、HPVワクチンは遺伝子組み換え技術によって、ヒトパピローマウイルス(HPV)の殻の部分(L1タンパク)のみを取りだし増殖された、殻だけしかない、中身がスカスカの”にせウイルス”(=ウイルス様粒子(virus-like particle:VLP))です。
 みかけはヒトパピローマウイルス(HPV)にそっくりですが、中身がありません。したがって、感染力もありません。(右図)

 このワクチンを接種すると、自然感染で得られる数十倍の免疫が誘導されます。そして、この免疫力がHPVの感染を阻止するのです。

 また、効果を高めるためにアジュバンドが添加されています。アジュバンドとは、抗原認識細胞(免疫を発動させる細胞)の抗原を認識する能力を高める物質(予防接種の効果を高める物質)のことです。ガーダシルはアルミニウム塩、サーバリックスはASO4(後述)がアジュバンドとして、添加されています。

 現在、HPVワクチンのうち、わが国では接種できるワクチンとして、ガーダシル、サーバリックスの2種類があります。いずれも定期接種として無料で接種できます。この二つのワクチンはともに世界保健機関(WHO)が接種を勧めている、すぐれたワクチンです。

 しかし、アメリカなどではさらに新しく登場した新世代のガーダシル9が使用され始めています。このガーダシル9はほとんどの発がん性HPVの感染を阻止できる、すばらしいワクチンです。(後で詳しく説明いたします。)

 ワクチン反対派が跋扈し、新しいワクチンの導入に際して、さまざまな妨害と脅迫を繰り返し、日本の子どもたちが恐ろしい感染症の犠牲になっていた、かつての「ワクチン冬の時代」の再現のように、現在子宮頸がん予防に関しても、我が国だけが世界の趨勢から取り残され、日本の女性だけが悲惨な子宮頸がんで命を奪われていく、憂うべき状況になっているのです。


①ガーダシル(4価ワクチン=組換え沈降4価ヒトパピローマウイルス様粒子ワクチン)

●予防接種の内容
 

 子宮頸がんの主要な発がんウイルスである、ヒトパピローマウイルス(HPV)16型、18型に、 外性器にいぼができる「尖圭(せんけい)コンジローマ」などの原因となるHPV6型、11型の4つのHPVの感染を予防する、4価の不活化ワクチンです。

 ガーダシルにはアジュバンドとして、アルミニウム塩(アルミニウムヒドロキシホスフェイト)が使用されています。

 2013年4月より、定期接種になりましたが、現在も積極的な勧奨は停止されたまま放置されており、予診票は送付されてきません。しかし、
HPVワクチンはMRワクチンなどと同じ定期接種です。法に基づく接種として、無料で受けることができます。

●予防する病気

 子宮頸がんを引き起こす、発がん性高リスク型ヒトパピローマウイルス(HPV)のうち、HPV16型と18型の感染を予防します。

 また、尖圭(せんけい)コンジローマは性交で感染し、外性器、肛門周囲に1~3mmぐらいの球形~カリフラワー状のいぼ(乳頭腫)が次々とできる性感染症です。性器いぼとも呼ばれます。命に別状はありませんが、難治性で再発を繰り返すやっかいな病気です。

 原因ウイルスは主にHPV6型、11型です。HPV6型、11型は尖圭コンジローマの原因にはなりますが、子宮頚がんを起こすことはなく、また尖圭コンジローマも生命に危険が及ぶことはありません。そのため、これらのウイルスは、低リスク型HPVと呼ばれます。

 ガーダシルは尖圭コンジローマ(性器いぼ)を99%予防したと報告されています。したがって、男性にも適応があり、アメリカなどでは男性にも接種が行われています。ただし、日本では男性での接種は認められておりません。

 また、ガーダシルは出生時に生まれてくる赤ちゃんが、産道でHPVに感染して、出生後に(赤ちゃんの)喉にいぼができて、重い呼吸困難を繰り返す「再発性呼吸器乳頭腫症」という、稀ですが非常に重い病気の発生も防ぎます。

●接種の方法

 9歳以上の女性が対象で、計3回、上腕三角筋に筋肉注射をします。1回目の注射の後、2ヶ月後に第2回めの注射、さらに4ヵ月後に第3回目の注射をします。

 日本小児科学会は、中学1年女子に定期接種として、接種を勧めています。


②サーバリックス(2価ワクチン=組換え沈降2価ヒトパピローマウイルス様粒子ワクチン)

●予防接種の内容

 子宮頸がんの主要な発がんウイルスである、ヒトパピローマウイルス(HPV)16型、18型の感染を予防する、2価の不活化ワクチンです。

 2013年4月より定期接種となりましたが、現在も積極的な勧奨は停止されたまま放置されており、予診票は送付されてきません。しかし、HPVワクチンはMRワクチンなどと同じ定期接種です。法に基づく接種として、無料でワクチンを接種することができます。

●予防する病気

 子宮頸がんは原因は発がん性のあるヒトパピローマウイルス(HPV)16、18、31、33、45、52、58型などの感染であり、16型と18型がその過半数を占めています。このヒトパピローマウイルス16型、18型(HPV)のヒトへの感染を防ぎます。

 サーバリックスにアジュバンドとして使用されている、AS04アジュバンド複合体には、水酸化アルミニウム塩とモノホスホリルリピッド(MPL)が含まれ、ワクチンを接種した場所に抗原を長く留めたり、抗原認識細胞を刺激し活性化を高めたりして、少ない抗原量で免疫を高める働きがあります。

●接種の方法

 10歳以上の女性が対象です。1回目の接種の後、1ヶ月後に第2回めの接種、さらに5ヵ月後に追加接種を、左右交互に上腕三角筋に筋肉注射します。(計3回接種します)

 日本小児科学会は、中学1年女子に定期接種として、接種を勧めています。


③ガーダシル9(9価ワクチン=組換え沈降9価ヒトパピローマウイルス様粒子ワクチン)

●予防接種の内容

 アメリカでは2014年、FDA(米国食品医薬品局)がガーダシル9を承認しました。ガーダシル9は、子宮頸がんの主要な発がんウイルスである、ヒトパピローマウイルス(HPV)16型、18型に、31型、33型、45型、52型、58型を加えて、さらに低リスク型のHPV6型、11型の9つのHPVの感染を予防する、9価の不活化ワクチンです。

 ガーダシルがHPV16型、18型の2種類の高リスク型HPVを含有し、子宮頸がんの60~70%の発病を防ぐのに対し、ガーダシル9は5種類の高リスク型HPV(16、18、31、33、45、52、58型)を含むため、子宮頸がんの90%以上の発病を予防できると考えられています。

 ちなみに我が国のがん研有明病院のホームページでは、「HPV52型、58型は欧米の報告ではがんから見つかることが少ないとされ、あまり注目されていません。しかし、日本ではHPV52型、58型ががん組織から高率に見つかる傾向があり、私たちはこれらHPV52型、58型を高危険型HPVと考えています。」と記載があります。ガーダシル9はこれらのHPV16型18型以外の発がんウイルスにも対応しており、日本でも一刻も早い承認が待たれます。

 また、最近発表されたWHOのPosition Paper(声明書。後述)では、9~14歳の女児に対しては、2回接種(0ヶ月、6ヶ月の2回)で十分な効果が期待できるとされました(15歳以上は3回接種が勧められています)。

●予防する病気

  子宮頸がんを引き起こす発がん性高リスク型ヒトパピローマウイルス(HPV)のうち、HPV16型、18型、31型、33型、45型、52型、58型の感染を予防します。 ほぼ子宮頸がんの発病の100%近くを予防できるのです。

 すでにガーダシル9の接種を公的接種として行っているオーストラリアでは子宮頸がんの発病は激減しており、2028年までに子宮頸がんの診断を受ける女性が10万人あたりに4例未満(ちなみに我が国は16例)まで減り、2066年には10万人あたり1例未満と、先進国の中で最初に子宮頸がんという病気を制圧する国になると言われています(Lancetの論文はこちら。横浜市大産婦人科による日本語訳と解説はこちら)。うらやましい限りです。



 The projected timeframe until cervical cancer elimination in Australia: a modelling study Hall MT et al. Lancet Public Health. 2018 Oct 1.   (Lancetの原著です。)

 また、ガーダシル9は低リスク型HPV6型、11型の感染を防ぎ、尖圭コンジローマの発病を予防します。


④HPVワクチンの効果

 HPVワクチンは、発がんウイルスであるHPV16型と18型に対する感染予防効果が非常に高い、優れたワクチンです。すでにHPVワクチンのすばらしい効果を示す研究報告、論文が多数発表されているので、一部を紹介いたします。

1)HPVワクチンのHPV(16型、18型)感染および前がん状態への進展を予防する効果の研究発表

●2価ワクチン(サーバリックス)、4価ワクチン(ガーダシル)ともに、発売前にそれぞれの大規模な臨床試験(第3相試験)が国外で行われました。

 その成績は、HPVワクチンは、HPV未感染者においては、HPV16型・18型の感染をほぼ100%予防し、前がん病変(CIN2およびCIN3)の発生もほぼ100%予防するというものでした。

●HPVワクチンをすでに公費助成で接種している、オーストラリア、イギリス、アメリカ、北欧などでは、ワクチン接種を受けた世代では、HPV16型、18型の感染率が劇的に減少していることが報告されています。

 たとえば、接種率が90%の英国スコットランドでは、20 歳代女性のHPV 感染率は、HPVワクチン接種群で4.5%、HPVワクチン非接種群で30%と大幅な低下を認めました。(原著はこちら。横浜市大産婦人科による日本語訳と解説はこちら。下図は近藤先生提供)



 Prevalence of cervical disease at age 20 after immunisation with bivalent HPV vaccine at age 12-13 in Scotland: retrospective population study: Tim Palmer et al. BMJ .2019

●HPVワクチンの接種率が70%を超えているオーストラリアでは、すでに接種開始から7~8年以上が経過し、自然の経過で前がん状態になる人がでてくる年齢になっています。そのため、ワクチン接種の有無で前がん病変の発生の有無を比較することが可能になりました。

 その検討結果は、ワクチン接種前の世代に比べて、ワクチン接種世代では前がん状態であるCIN2(中等度異形成)、CIN3(高度異形成)、AIS(上皮内腺がん:Adenocarcinoma in situ)の発生が、半数程度まで低下していたのです。

 我が国でも、学会誌に掲載されるような、しっかりした学術的内容の論文が報告されています。

●Niigata Study:20~22歳における、HPV16型・18型の感染は、ワクチン非接種者の2.2%(10/459)に対し、ワクチン接種者は0.2%(3/1379)で、ワクチン接種者での感染率は有意に低く、ワクチンの有効性は90%と高い予防効果を認めました。(原典はこちら。横浜市大産婦人科による日本語訳と解説はこちら)。各図は近藤先生提供)

 

 Bivalent Human Papillomavirus Vaccine Effectiveness in a Japanese Population: High Vaccine-Type–Specific Effectiveness and Evidence of Cross-Protection :Risa Kudo et al. The Journal of Infectious Diseases, Vol.219, Issue 3,P.382–390.

 HPV2価ワクチンの日本人女性における有効性:HPV16・18型に対する高い有効性とクロスプロテクション効果の実証
(横浜市大産婦人科による、上記学術論文の日本語訳と解説)


●Ocean Study:大阪の研究では、20、21歳におけるHPV16型・18型の感染は、非接種群では4.9%(43/877)であったのに対し、ワクチン接種群では0.0%(0/170)と優位に低率でした(p<0.001%)。また、ハイリスク型HPV感染も、非接種群では19.7%(173/877)であったのに対し、ワクチン接種群では12.9%(22/170)と優位に低率でした(p=0.041)。

●秋田県における、平成26~28年度の20~24歳の女性の子宮がん検診データの解析において、HPVワクチン接種者のASC-US*以上の細胞診異常率は、有意に減少していました。

 *ASC-USとは、「意義不明な異型扁平上皮」の略で、がん検診の細胞検査を行った時に、異常として精密検査を行うべきなのか、正常な細胞としてそのまま様子をみてよいのか判断に困るような、「軽度の」異常細胞のことを指します。

●宮城県における、平成26~27年度の20~24歳の女性の子宮がん検診データの解析では、HPVワクチン接種者はASC-US以上の細胞診異常率だけではなく、HSIL(高度扁平上皮内病変)以上の高度な細胞診異常率も有位に減少していました。

 さらに、CIN1、CIN2以上という細胞診異常率もHPVワクチン接種者で有意に低いことが示されました。

2)HPVワクチンの浸潤がんに対する効果

●子宮頸がんは必ず前がん病変を経て浸潤がんへと進展していくことから、数年後〜十余年後には、これらの国々においては、子宮頸がんそのものが大幅に減少すると推測されています。

 
HPVワクチンが大規模に接種され始めて10年が経過し、HPV接種によって、前がん状態の減少だけでなく、浸潤がん(子宮頸がん)も減少するという報告が、HPV定期接種を行っている国々から発表され始めています。

 フィンランドでは、3つの臨床試験のワクチン接種者と非接種者のその後の浸潤がんの発病率を、2007年~2015年の7年間で比べました。その結果は、HPVに関連のない浸潤がんの罹患率は、ワクチン接種の有無で差がありませんでした。

 それに対し、HPVに関連した浸潤がんの発生は、子宮頸がん、外陰部がん、口腔咽頭がんにおいては、HPV非接種群では発病者が出たのに対し、HPV接種群では認めなかったと報告されました。(論文はこちら

 Vaccination protects against invasive HPV‐associated cancers . T.Luostarinen et al:Int J Cancer.2017.

3)HPVワクチンの効果の推計

 平成29 年11 月に開かれた、第31 回厚労省副反応検討部会において発表されたHPVワクチンの効果に関する推計によると、
ワクチン接種により期待される子宮頸がん罹患者数の減少(生涯累積罹患リスクによる推計)は10万人あたり859〜595人、ワクチン接種により期待される子宮頸がん死亡者数の減少(生涯累積死亡リスクによる推計)は10万人あたり209〜144人であり、接種により多くの子宮頸がんの罹患や死亡の回避が期待できることが示されました。

4)HPVワクチンの集団免疫効果

●オーストラリア、イギリス、アメリカにおける調査により、ワクチン接種世代と同世代の、ワクチンを接種していない人においても、HPV16型・18型の感染率が低下していることが報告されました。

 これは、ワクチン接種が進むと、ウイルスそのものに感染する機会が減るため、社会全体でウイルス感染率が下がっていくためと考えられています。この現象を
集団免疫効果と呼ばれています。


⑤HPVワクチンの副反応

1)一般的な副反応


 副反応は圧倒的に注射部位の症状で、疼痛99%、発赤88%、腫脹79%、全身症状としては疲労57%、筋痛47%、頭痛38%が報告されています。他のワクチンに比べ、やや副反応の程度は強いようです。

 HPV ワクチンは筋肉注射であるため、注射部位の一時的な痛みは90%以上、一過性の発赤や腫れなどの局所症状は約50%以上に生じます。

 また、注射時の痛みや不安・ストレスのため、心拍数の低下や血管拡張による血圧低下が起こり、失神する反応(血管迷走神経反射)が起こることがあります。

 発生頻度  4価ワクチン(ガーダシル)  2価ワクチン(サーバリックス)
 50%以上  疼痛  疼痛・発赤・腫脹、疲労感
 10~50%  腫脹、紅斑  掻痒、腹痛、筋痛・関節痛、頭痛など
 1~10%未満  掻痒・出血・不快感、頭痛、発熱  じんましん、めまい、発熱など
 1%未満  硬結・四肢痛、筋骨格強直、腹痛・下痢  注射部位の知覚異常、感覚鈍麻、全身の脱力
 頻度不明  疲労・倦怠感、失神、筋痛・関節痛、嘔吐など  四肢痛、失神、リンパ節症など

 HPV ワクチンの安全性については、WHO の「ワクチンの安全性に関する国際諮問委員会」(GACVS)が、世界中の最新データを系統的継続的に解析し、2013年以後繰り返し、HPV ワクチンの安全性を示しています。


参照:GACVSの声明(2015.12.17)

(厚労省による要約)
• 2006年から現在までに、2億ドーズ以上の子宮頸がん予防ワクチンが世界中で幅広く使用されている。

• これまでもGACVSはHPVワクチンの安全性に関して評価を行い、いくつかの声明を公表しており、これまでのところ推奨の位置付けを変更する安全上の問題は判明していない。

•GACVSは、フランス医薬品庁(French National Agency for Medicines and Health Products Safety)の、HPVワクチン接種後の自己免疫疾患に関する最近の後方視的コホート研究のデータを検討した。

 ギランバレ症候群をのぞき、検討された全ての疾患で同様の頻度が接種者と非接種者の集団において示されたが、ギランバレ症候群は主に接種後3ヶ月以内のリスクの増加を認めた。追加の十分な規模の研究が、今回の知見の評価を進めることとなり、もしこの結果が検証された場合は、最終的なリスクの程度のよりよい評価に資するであろう。このリスクは―仮に存在したとしても小さいものであるが―HPV感染症に関しては、長期に持続してがんを予防する利益との文脈において評価する必要がある。

• 同様に、HPVワクチン接種後の複合局所疼痛症候群(CRPS)と体位性起立性頻脈症候群(POTS)に関する懸念がいくつかの地域で生じている。これらは、いずれも不明確なものであるととともに、おそらく多様な病因による疾病と考えられ、いずれの疾病の疫学についても十分に特徴が明らかになっていない。

日本の状況に関しては、ワクチン接種者において慢性疼痛及び他の症状が発生し、国の予防接種プログラムにおける定期接種としてのワクチンの使用についての積極的勧奨が差し止められていることから、追加のコメントを要する。

 国の専門家委員会は、臨床的データの検討から、症状はワクチン製剤そのものには関連しないとの結論に達したが、HPVワクチン接種を再開するコンセンサスに達することは出来ていない。

 結果として、若い女性達は(ワクチン接種によって)予防しうるHPV関連のがんに対して無防備になっている。GACVSが以前指摘したように、弱いエビデンスに基づく政策決定は、安全かつ有効なワクチンを使用しないことにつながり、実害をもたらしうる。

• HPVワクチン使用に対する懸念に対して、実現可能なもっとも優れたエビデンスに基づいて確実に答えるために、継続的な医薬品安全監視が重要である。HPVワクチンのインパクトは、前がん病変を含むHPV関連の臨床的効果に関して十分確立している。

 世界的には、まだワクチン未導入かつ子宮頸がん検診未導入の国々において、多大な健康上の利益が予期される。この医学的介入から、最も利益を得る人々が、適切な安全性監視を伴った接種を受けることを確実にするために、予防接種後の有害事象について強化された自発報告制度が実施されるべきである。

出典:GACVS statement on safety of HPV vaccines :17 December 2015.

日本語訳は、リーフレット「HPVワクチンの接種に当たって医療従事者の方へ」参考資料:厚労省(2017)から、転載させていただきました。感謝申し上げます。


参照:GACVSの声明(2017.7.14)

(厚労省よる要約)
 2006年の承認以来、HPVワクチンは2億7千万ドーズ以上が使用されている。GACVSは早い段階でアナフィラキシーと失神の報告を受けたが、アナフィラキシーは100万接種あたりおよそ1.7症例とされ、失神は接種に対する不安もしくはストレス反応として確立された。その他の副反応は同定されておらず、GACVSはHPVワクチンが極めて安全であると考えている。

 ギラン・バレ症候群(GBS)については、2017年英国で行われた大規模Self-controlled case-series研究において、いかなるドーズのHPV接種後でもGBSのリスクが上昇しないことが示された。

 
複雑性局所疼痛症候群(CRPS)、起立性頻脈症候群(POTS)は、特にデンマークおよび日本から、HPVワクチン接種と関連のある症例報告として引き続き提示されている。GACVSとしては、最後のレビュー以来、HPVワクチンとCRPS、POTSまたは疼痛および運動機能障害を含む多様な症状との因果関係を示唆する証拠はまだないと結論付けた。

 2017年に、WHOはHPVワクチン接種後の重篤な有害事象の系統的レビューを行った。質の高いコホート研究により裏付けられた無作為化比較試験のエビデンスからは、HPVワクチン接種者、非接種者の間で重篤な有害事象の出現割合に差異はみられなかった。

 
GACVSは、ますます多くの国々で、事実でない主張がワクチン接種率に負のインパクトを及ぼしていることを懸念し続けており、これが実害をもたらす結果に到ることを懸念している。

 HPV予防接種プログラムが効果的に実施されているところでは、そのベネフィットはすでに非常に明らかである。予防接種プログラムにHPVワクチンを導入したいくつかの国では、若年女性の子宮頸部前がん病変の発生率が50%低下したと報告されている。


 対照的に、HPV予防接種が積極的に推奨されていない日本の子宮頸がんによる死亡率は、1995年から2005年にかけて3.4%増加し、2005年から2015年にかけて5.9%増加すると見込まれている。


 HPVワクチンの承認以来、GACVSは、多くの非常に大規模で質の高い研究に基づいて、新たな有害事象は認められていないと考えている。今回のミーティングで提出された新たなデータがこの立場を強化した。

出典:GACVS Safety update of HPV vaccines :14 July 2017.

日本語訳は、リーフレット「HPVワクチンの接種に当たって医療従事者の方へ」参考資料:厚労省(2017) から、転載させていただきました。深謝申し上げます。

(次の部分は重要なので、当クリニックで和訳をつけて、引用します)
CRPS and POTS continue to be presented as case reports in association with HPV vaccination, particularly from Denmark and Japan. These were initially assessed by GACVS in 2015.24 These conditions include a spectrum of diverse symptoms, making assessment using administrative health collections challenging. In June 2017, new data from Japan that assessed cases with diverse symptoms, including pain and motor dysfunction, were presented to the Committee. The cases were identified from a nationwide epidemiological survey involving multiple hospital medical departments of various disciplines including pain, neurology, rheumatology, paediatrics and psychiatry/psychosomatic medicine. These complex syndromes manifested in both sexes, although were more common in girls, and occurred in both vaccinated and unvaccinated individuals. The Committee concluded that since their last review, there is still no evidence to suggest a causal association between HPV vaccine and CRPS, POTS or the diverse symptoms that include pain and motor dysfunction.

(日本語訳)
CRPSおよびPOTS(CRPSは四肢に拡がる慢性の痛みが起こる症候群。POTSは座ったり立ち上がる際に心拍数が異常に上昇する状態で、頭痛や痛み・疼痛、悪心、疲労と同時に、めまいや失神、衰弱といった症状が現れる症候群。)は、特にデンマークや日本で、HPVワクチン接種に関連した症例として、報告が続いています。
これらは2015年に、GACVSによって最初に検討されました。これらの症状は、行政上の一連の集積された健康データを用いて評価された、幅広い多様な症候を含んでいます。
2017年6月、日本から痛みや運動機能障害を含む、多様な症状を持った症例を検討した新たなデータが、GACVSに提出されました。
これらの症例は、痛み、神経学、リウマチ学、小児科学そして精神医学/心身医学医学を含んだ、多数の病院の医学部門の参画による国際的な疫学的調査で検討調査されました。
これらの複雑な絡み合った症候群は男女両性に見られましたが、少女ではより一般的でした。また、ワクチンを接種された人にも接種していない人にも起こっていました。
GACVSは、最後の再調査以降、HPVワクチンとCRPS、POTS又は痛みや運動機能障害を含む多様な症状の間は、因果関係を示唆する証拠はないと結論しました。

Also in 2017, the WHO commissioned a systematic review of serious adverse events (SAEs) following HPV vaccines. A draft was presented to GACVS at the meeting. Using the GRADE system to systematically assess the quality of evidence, the quality of evidence in the studies was considered high across randomized controlled trials. The outcomes considered were all SAEs, medically significant conditions, new onset of chronic diseases, and deaths. Data for 73 697 individuals were reviewed. Lower level studies were excluded in favour of the large body of higher level evidence available. For all outcomes, the evidence from randomized controlled trials was supported by good quality cohort studies, with no difference in rates of selected SAEs between exposed and unexposed to HPV vaccine observed.

There are now accumulated safety studies that include several million persons25 and which compare the risks for a wide range of health outcomes in vaccinated and unvaccinated subjects. However, despite the extensive safety data available for this vaccine, attention has continued to focus on spurious case reports and unsubstantiated allegations. The Committee continues to express concern that the ongoing unsubstantiated allegations have a demonstrable negative impact on vaccine coverage in a growing number of countries, and that this will result in real harm.26 While ongoing monitoring and collection of robust data are important to maintain confidence, one of the challenges associated with the continued generation of data is that artefacts will be observed, which could pose further challenges for communication when taken in haste, out of context, and in the absence of the overall body of evidence.

(次の部分は重要なので、当クリニック和訳をつけて、転載します)
Where HPV vaccination programmes have been implemented effectively, the benefits are already very apparent.Several countries that have introduced HPV vaccines to their immunization programme have reported a 50% decrease in the incidence rate of uterine cervix precancerous lesions among younger women.
In contrast, the mortality rate from cervical cancer in Japan, where HPV vaccination is not proactively recommended, increased by 3.4% from 1995 to 2005 and is expected to increase by 5.9% from 2005 to 2015.
This acceleration in disease bu
rden is particularly evident among women aged 15–44 years.28 Ten years after introduction, global HPV vaccine uptake remains slow, and the countries that are most at risk for cervical cancer are those least likely to have introduced the vaccine. Since licensure of HPV vaccines, GACVS has found no new adverse events of concern based on many very large, high quality studies. The new data presented at this meeting have strengthened this position.

(日本語訳)
HPVワクチン接種プログラムが効果的に実施されている所では、その利点はすでにきわめて明らかになっています。 予防接種のプログラムにHPVワクチンを導入したいくつかの国では、より若い女性の間で、子宮頸部前がん状態の発生率は50%減少したと報告されました。
その反対に、HPVワクチン接種が積極的に推奨されていない、日本における子宮頸がんの死亡率は、1995年から2005年に3.4%増加し、2005年から2015年は5.9%増加することが予想されています。


  WHOは平成29年5月にHPVワクチン ポジションペーパーを発表しました。HPVワクチンは安全、効果的である、との見解を改めて発表しています。(原文はこちら

 ポジションペーパーの重要部分の、厚生労働省健康局健康課予防接種室仮訳を転載します。(原文はリーフレット「HPVワクチンの接種に当たって医療従事者の方へ」参考資料:厚労省(2017))(厚生労働省健康局健康課予防接種室仮訳)

 本ポジションペーパーは、ヒトパピローマウイルス(HPV)による疾患に対するワクチンの WHOポジションペーパー(2014)のアップデート版である 。9価ワクチンの承認を含め、最新のHPVワクチンの開発状況や、最近の有効性のデータ、ワクチンの選択に向けたガイドライン も示している。

 女性のHPV関連子宮頸がんハイリスク型のHPVの持続感染は子宮頸がんの進展と強く関連している。2012年には63 万人の新規のHPV関連がん患者が発生したと推測されるが、そのうち 53 万人(84%)が子宮頸がんであった。

 全世界での子宮頸がんによる死亡は26 万6千人と 推定され、その年における女性の全がん死亡のうち8%を占める。HPV-16, 18で全世界の子宮頸がんの71%を占める。

 より詳しく言うと、HPV-16 が 60.6%(95%CI:9.6-10.9%)、HPV-18 が10.2%(95%CI:9.6-10.9%)であった。HPV-31 は子宮頸がんの 3.7%、HPV-58 は2.3%であった。HPV-16,18,45,31,33,52,58 でHPV陽性子宮頸部扁平上皮がんのほぼ90%を占める 。

 高リスクHPVの感染が子宮頸がんの原因としてある一方で、高リスクHPVに感染しているほとんどの女性ががんに進展しない。女性の数%しか持続感染から慢性感染-前がん病変のプロセスをとらず、浸潤がんに至るのはさらにそのうちの一部である。

 大部分の(85%超)子宮頸がん症例(年間44万5千人)は、発展途上国で発生しており、女性の全がんの12%を占める。

⃝ Disease(疾患)
  HPVのウイルス粒子は、性器周囲皮膚や粘膜、体液への接触で感染し、またオーラル・セックスを含む性交渉でも伝播しうる。

 HPV感染のほとんど(70-90%)は無症候性で、1-2 年以内で自然消失する。適切に検出されなかった場合もしくは治療がなされなかった場合、高リスクタイプの持続感染は、性器周囲を中心として、感染部位の浸潤がんに進展する可能性がある。HPV感染の持続感染は子宮頸がんの発生に必須である。

 HPVの持続感染は、たいていは6ヶ月以上に渡って、複数回の臨床検体でタイプ特異的なHPV DNAが検出されることと定義されるが、この定義は全世界的に受け入れられているわけではない。

 HPV感染を起こした女性の5-10%が持続感染となる。月及び年の単位での持続感染は、組織学的には子宮頸部上皮内病変(CIN)と呼ばれる、腺および扁平上皮の前がん病変へ進展する可能性があり、さらにがんに進展する可能性がある。

 CINはさらに以下のように細分類される:CIN1軽度異形成;CIN2中等度異形成; CIN3高度異形成から上皮内がんの3つである。ほとんどのCINは年の単位で徐々に自然消滅するが、子宮頸部の病変はゆっくりとがんへ進展する。

 HPVの感染から、浸潤がんへ至るまでの間は、たいてい 20年もしくはそれ以上を要するとされている。

 この進展過程はよく分かっていない部分もあるが、素因となる状態およびリスク因子には次のようなものが挙げられる:
    HPV のタイプ、免疫状態(免疫が高度に抑制されている者、HIV感染者、免疫抑制治療を受けている者);
    他の性感染症に罹患している者(単純ヘルペス、クラミジア、淋菌感染など);
    経産回数および若い年齢での妊娠;
    喫煙者;
 HIV感染者は、そうでないものと比較して高率にHPVの持続感染を起こしており、しばしば複数のHPVタイプを有し、高度のCINもしくは子宮頸がんへの進展確率も高い。

 HPV感染は、肛門がん(88%)、外陰がん(15-48%、年齢による)、腟がん(78%)、陰茎がん(51%)とも関連しており、口腔咽頭がん(13-60%、部位による)とも関連がある。すべての部位において、HPV-16が最も優勢なタイプである。

 HPV-6, 11は、まれではあるが、気道閉塞の原因となり得る気道その他の部位にできる乳頭腫を形成する再発性気道乳頭腫症(RRP)の原因として知られている。

 RRP は2つの形態をとる:母体からの垂直感染による若年発症 RRPと、性交渉によって水平感染していき、典型的には 20代で発症する成人発症 RRPである 。RRPは生命の危険にさらされる機会が多く、気道確保のために複数回の外科切除が必要になることもある。 また致死的となる可能性もあり、病変は悪性化することもある。

⃝ Vaccines(ワクチン)
 高リスクタイプのHPV感染を予防する目的で3つの予防ワクチンがあり、HPV関連疾患の予防のために全世界で広く使用可能である:4価ワクチンが2006年に承認され、 次いで2価ワクチンが 2007年、9価ワクチンが2014年に承認された 。これらのすべてのワクチンは、可能であれば性的活動の開始(最初の HPV の曝露)前に接種することが望ましい。

 リコンビナントDNA技術を用い、ウイルス様粒子(VLPs)と呼ばれる、HPVのタイプ特異的な空殻が凝集したL1 構造タンパクを精製したものからすべての3ワクチンは作製される。
 どのワクチンも生ワクチンではなく、生きた生物学的成分やウイルスDNAを含まないため、感染性はない;抗生物質や保存剤を含まない。

 2017年3月 17 日までに、全世界のうち71カ国(37%)が、女児に対する国家ワクチンプログラムに導入しており、11カ国(6%)では男児に対しての接種も導入している。

⃝ Cross-protection(交差免疫)
 子宮頸がんの予防という観点では、市販されている3つのワクチンはHPV-16, 18に対して高い予防効果を示し、全世界的には子宮頸がん全体の71%をカバーしている。

 HPVワクチンは、ワクチンに含まれないHPVタイプに対しても交差免疫を示すことがある。臨床試験のデータおよび市販後調査に基づき、2価および4価ワクチンはHPV-16, 18以外の高リスクタイプ、特にHPV-31, 33, 45タイプに対して交差免疫を示す 。

⃝ Duration of protection(予防期間)
 4価ワクチンを3回接種スケジュールで使用した場合、ワクチン接種を受けた思春期前および思春期の人について、10年間のフォローアップの間にHPV-6, 11, 16, 18に関連する突発的な症例は認められなかった。

 2価ワクチンにおいては、3回接種スケジュールによる、子宮頸部病変に対する予防効果および感染予防の免疫原性に関して、HPV-16に対しては8.4 年、HPV-18に対しては9.4 年と報告されている。

⃝ Vaccine safety(ワクチンの安全性)
 WHO のワクチン安全性に関する諮問委員会(GACVS)は HPVワクチンの安全性に関する報告を定期的にレビューしている。

 委員会は承認後に得られた、米国、オーストラ リア、日本や何らかの懸念のあった国からのサーベイランスのデータ、メーカーからの情報を収集してレビューしている。

 得られるすべてのデータからは、3つすべてのワクチンについて、安全性のプロファイルが再度確認されている。GACVSでは、根拠の乏しいエビデンスに基づいて、安全で有効なワクチンを使用しないでいることは深刻な害悪をもたらす、と発言し続けている。

⃝ WHO position (WHO のポジション)
 
WHOは、全世界の公衆衛生上、子宮頸がんとその他のHPV関連疾患の重要性を認識しており、HPVワクチンが国家の予防接種プログラムに組み込まれるべきだと繰り返し勧告を行っている。

 子宮頸がんはHPV関連疾患の84%を占めるが、HPV予防接種の優先度が依然として高い。子宮頸がんの予防の最も良い方法は、性的活動を始める前の女児に予防接種することである。3つのHPVワクチン-2価、4価、9価ワクチン-はどれも優れた安全性と有効性を有している。

実施に当たっての戦略:
 HPVワクチンは、子宮頸がんおよびその他HPV関連疾患を予防するための包括的で組織化された戦略の一部として予防接種プログラムに組み込まれるべきである。

 本戦略には、HPV感染を増やすような行動を減らすための教育、医療従事者の研修、子宮頸部前がん病変および子宮頸がんのスクリーニング、診断、治療に関する情報提供を含む。またこの戦略には、質の高いスクリーニングと治療を受ける機会の増加及び、浸潤がんの治療および緩和医療を受ける機会の増加も含まれるべきである。

 HPVワクチンの導入に当たっては、子宮頸がんの有効なスクリーニング・プログラムの開発および維持に対する資金を縮小したり流用してはならない。ワクチンそのものは、すべての高リスク タイプHPVを予防できるわけではなく、またワクチン接種が推奨される年齢以上の女性に対しての効果は限定的であるため、HPVワクチンは一次予防のツールであって、子宮頸がんスクリーニング検査の必要性を完全に排除するものではない。

 HPVワクチンの導入に当たっては、同年齢で行われる他のワクチン(ジフテリアや破傷風など)や、若い層を対象としたプログラム(学校や思春期の健康サービスなど)との関連を重要視すべきである。しかしながら他の関連する介入は同時にはできないので、HPVワクチ ンによる予防接種の導入を延期すべきではない。

 
WHOは、すべての国に対してHPVワクチンをプログラムとして導入するよう推奨している。ワクチンの導入は、保健医療施設を基盤とした、地域社会及び/または学校生活への支援、およびキャンペーンを組み合わせることで成功する。

 国は、
 (i)比較可能な配送インフラやコールド・チェーン、
 (ii)安価で、費用対効果が高く、持続可能で、
 (iii) 最も高い接種率を達成できる、
ことを念頭におくべきである。

 段階的な導入は、カレンダー単年度で国を挙げた予防接種プログラムの展開が金銭的にまた運用的に難しい場合の一時的な手段としてのみ使われるべきである。この場合、人生において子宮頸がんのスクリーニングを受ける機会の少ないと思われる集団を含めた戦略が最も重視されるべきである。

 第一、第二の対象集団:
子宮頸がんの予防のため、HPVワクチンの接種対象集団は、性活動前の9-14歳女児 を第一の推奨集団としている。ワクチン接種はまずこの第一の推奨集団に対して高い接種率を目指すべきである。

 高いワクチン接種率(>80%)が達成されれば、男児のHPV感染リスクも減少する。

 第二の対象集団は 15歳以上の女性もしくは男性であるが、これは、実行可能であり、安価で、費用対効果が良く、第一対象集団もしくはスクリーニング・プログラムの医療資源を妨げない状況であれば、推奨される。

 HPVワクチンの導入に当たっては、単一年齢のコホートに実施するよりも、9-18歳 の複数年齢コホートに一度に導入する方が、直接効果や地域免疫の観点からもより早くより大きな効果が上がるとされている。

安全性:
 HPVワクチン接種後の有害事象は、一般に非重篤で、短期間で消失する。ワクチンは免疫不全者かつ/または HIV感染者にも使用可能である。

 妊婦に対する安全性のデータは限られているため、妊婦への接種は避けるべきである。もし若い女性が HPVワクチン接種のシリーズ中に妊娠した場合は、残りの接種は分娩後に延期すべきである。

 妊娠中にあやまってHPVワクチンを接種してしまった場合であっても、中絶の適応とはならない。授乳はHPVワクチン接種の禁忌ではない。授乳中の女性にHPVワクチンを接種して母胎もしくは乳児に有害事象のリスクが増大することは示されていない。

 HPVワクチンの接種で重度のアレルギー反応を起こした者へは、HPVワクチンを接種してはならない。

 HPVワクチンの安全性をモニターするためのサーベイランスも必要である。予防接種プログラムにおいて、関連のある重篤な有害事象を迅速かつ厳密な調査を行うことで、信頼が維持される。

(一部、省略してあります。詳しくは、原文をお読みください)


CDC(米国疾病予防管理センター)によるHPVワクチン実施の指針(対象、投与法、禁忌、 妊婦対応、 安全性、副反応)(2016)

  HPV Vaccine Recommendations

For the full text of CDC’s Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP) recommendations, see the Human Papillomavirus (HPV) ACIP Vaccine Recommendations.

Vaccine Safety ワクチンの安全性 

HPV vaccines are very safe. Scientific research shows the benefits of HPV vaccination far outweigh the potential risks. Like all medical interventions, vaccines can have some side effects.
All vaccines used in the United States, including HPV vaccines, are required to go through years of extensive safety testing before they are licensed by the U.S. Food and Drug Administr ation (FDA). During clinical trials conducted before they were licensed:

HPVワクチンは非常に安全なワクチンです。科学的な検討では、HPVワクチン接種の利点は、潜在的なリスクをはるかに越えていることを示しています。すべての医学的な処置と同様、ワクチンにはいくつかの副反応があります。

HPVワクチンを含む、アメリカで用いられている全てのワクチンは、米国食品医薬品局(FDA)から認可される前に、長期にわたる広範な安全性に対する試験が要求されました。

ライセンスが付与される前に実施された臨床試験中:9価のHPVワクチンは15,000人以上の男女、4価HPVワクチンは、29,000人以上の男女、2価HPVワクチンは30,000人以上の女性で調査されました。そして、各HPVワクチンはそれぞれ、安全で効果的であることが証明されました。

Adverse Reactions 有害事象

The most common adverse reactions reported during clinical trials of HPV vaccines were local reactions at the site of injection.In prelicensure clinical trials, local reactions, such as pain, redness, or swelling, were reported by 20% to 90% of recipients.A temperature of 100°F during the 15 days after vaccination was reported in 10% to 13% of HPV vaccine recipients. A similar proportion of placebo recipients reported an elevated temperature.A variety of systemic adverse reactions have been reported by vaccine recipients, including nausea, dizziness, myalgia and malaise. However, these symptoms occurred with equal frequency among both HPV vaccine and placebo recipients.Local reactions generally increased in frequency with increasing doses. However, reports of fever did not increase significantly with increasing doses.No serious adverse events have been associated with any HPV vaccine. Ongoing monitoring is conducted by CDC and the Food and Drug Administration.

Syncope (fainting) can occur after any medical procedure, including vaccination. Adolescents should be seated or lying down during vaccination and remain in that position for 15 minutes after vaccination. This is to prevent any injuries that could occur from a fall during a syncopal event.

HPVワクチンの臨床試験中に報告された、最も一般的な副反応は、注射部位での局所的な反応でした。認可前の臨床試験では、痛み、発赤、腫脹などの局所的な反応が、接種を受けた人の20%〜90%に報告されました。

 HPVワクチンの接種を受けた人の10〜13%で、ワクチン接種後15日間の体温が100℉(37.7℃)と報告されました。しかし、HPVワクチン接種を受けなかった人(にせのワクチン(プラセボ)を接種した人)でも同様の割合で、体温上昇が報告されました。

吐き気、めまい、筋肉痛、倦怠感など、種々の全身的な副反応がHPVワクチンの接種を受けた人に報告されました。しかし、これらの症状は、HPVワクチンとにせのワクチン(プラセボ)の接種を受けた人に同じ頻度で発生しました。

局所反応は一般に、用量の増加とともに頻度が増加しました。しかし、発熱は用量を増やしても増えませんでした。

HPVワクチンに関連した重大な有害事象は、認めませんでした。さらに、継続的な監視が、CDCおよび食品医薬品局(FDA)によって実施されています。

失神(失神)は、予防接種を含む何らかの医療処置後に起こるかもしれません。青年(思春期の子ども)は、予防接種中に座るか横になって、予防接種後15分間はそのままでいる必要があります。これは、失神による転倒で起こるけがを防ぐための処置です。

2)多様な症状(広い範囲に広がる痛みや、手足の動かしにくさ、不随意運動など)について

 ワクチンを接種した後に、広い範囲に広がる痛みや、手足の動かしにくさ、不随意運動などの多様な症状が、HPVワクチン接種の副反応の疑いがあるとして報告されました。

 我が国においてワクチン接種後に報告された、慢性的な痛みや運動障害、起立性調節障害(起きたときにふらふらする)などを含む
多様な症状が、HPVワクチン接種に関連するかを検討するために、現在HPVワクチンの定期接種としての積極的勧奨が停止されているのです。
「子宮頸がんワクチンが副作用が強いから、接種が中止になった。」というのは、全くの誤解です。

 平成29年11月の厚生労働省第31回副反応検討部会において、平成29年4月末までの副反応疑い報告数は3,080人(10万人あたり90.6人)であり、うち医師又は製薬会社が重症と判断したものは1,737人(10 万人あたり51.1人)あったと報告されました。

 この副反応疑いとはワクチン接種後に起きた、すべての健康状態の異常例を含みます。このうち、厳密な医学的因果関係が証明されなくても、HPVワクチン接種との因果関係が否定できない事例として、295人が救済の対象となっています。これは、HPVワクチン接種総数推計340万人中295人(10万人あたり8.68人)にあたります。

 平成29年11月の厚生労働省専門部会において、慢性疼痛や運動障害などHPVワクチン接種後に報告された「多様な症状」とHPVワクチンとの因果関係を示す根拠は報告されず、これら「多様な症状」は機能性身体症状と考えられる、との見解が発表されました。

 一方、平成28年12月の厚生労働省第23回副反応検討部会において、厚生労働省研究班(祖父江班)による全国調査結果が発表され、
HPVワクチンの接種歴のない女性でも、HPVワクチン接種歴のある人と同様の「多様な症状」を起こす例が、多数存在することが報告されました。
(12〜18歳女子では10万人あたり20.4人、接種歴不明を全員「接種歴なし」と仮定した場合46.2人となります。)

 年齢構成など多くの統計に影響をおよぼす因子が存在するため直接比較することはできませんが、HPVワクチン接種歴のある女性では、人口10万人当たり27.8人の頻度で多様な症状を示す可能性があると推計されました。

 国内の調査としては、名古屋市で行われた大規模な疫学調査で、ワクチン接種後に報告された多様な症状とワクチン接種との間に、有意な関連が認められなかったが報告されました。(原著はこちら。横浜市大産婦人科による、日本語訳と解説はこちら

No association between HPV vaccine and reported post-vaccination symptoms in Japanese young women: Results of the Nagoya study.S.Suzuki et al:Papillomavirus Research Vol. 5, 2018, P.96-103

 HPVワクチンと「多様な症状」の関連性を医学的に証明した、学会で認められた学術的な論文は現在まで一つもありません。

参照:
 
HPVワクチンと接種後に訴えられている体調不良との関連を調べた名古屋市における大規模疫学調査(2018)
(英語論文、日本語訳と解説

 
HPVワクチンとCRPS、POTSの因果関係はないと結論(欧州医薬品庁レビュー)(2015年12月11日)(日本語訳)

始めに戻る

Ⅳ.HPVワクチンの接種方法

①HPVワクチンの接種対象者

 HPVワクチンは定期接種のため、以下の対象年齢の方は無料で接種できます。(他の年齢は任意接種となり、接種費用が発生します。)

2019年度対象者

学年 助成額 有効期限

 平成15年4月2日~平成16年4月1日

 高校1年 全額  2020年3月31日まで

 平成16年4月2日~平成17年4月1日

 9年(中学3年) 全額  2021年3月31日まで

 平成17年4月2日~平成18年4月1日

 8年(中学2年) 全額  2022年3月31日まで

 平成18年4月2日~平成19年4月1日

 7年(中学1年) 全額  2023年3月31日まで
 平成19年4月2日~平成20年4月1日

 小学校6年

全額  2024年3月31日まで

 HPVワクチンは平成25年4月より定期接種となりましたが、ワクチン接種後に報告された多様な症状がHPVワクチンと関連があるかどうか調査するため、という理由で、厚労省はHPVワクチンの積極的勧奨を中断してしまいました。

 そのため、HPVワクチンは国が勧める定期予防接種であるにもかかわらず、該当者に予診票が送られてこないという、変則的な異常事態が今現在も続いています。

 このような国の不作為に対し、若い女性に対する子宮頸がんの啓発をしっかりと行おうとする、先進的な自治体も現れました。(下に掲示したのは、岡山県が中学、高校生の保護者向けに配布したリーフレットです。詳しくはこちら。素晴らしい取り組みです。)



 しかし、品川区もHPVワクチンの接種を希望する対象年齢の方には、HPVワクチンの予診票を送付しており、無料で接種できる事に変わりはありません。

対象年齢である、小学校6年~高校1年の女子(平成15年4 月2日~平成20年4月1日生まれ)で、HPVワクチンの接種を希望される方は、品川区保健所保健予防課に電話で申し込めば予診票を送付してもらえます。       

     品川区保健所保健予防課(区役所7階)       電話03-5742-9152

       品川保健センター (北品川3-11-22)       電話03-3474-2225

       大井保健センター (大井2-27-20)          電話03-3772-2666

       荏原保健センター (荏原2-9-6)           電話03-3788-7013

 また、アメリカの予防接種勧告委員会(ACIP)では、「性交渉の経験がない女性」以外でも、「13~26歳のすでに性交渉のある女性」、「子宮がん検診で異常が認められた女性」、「発がん性HPVに感染している女性」もワクチンの接種対象者に含めています。

 その理由は、HPVの感染は一時的なもの(一過性)で、感染しても免疫ができずに新たな感染を繰り返すため、HPVワクチンを接種することによって免疫を高めれば、それ以降のHPVの感染を阻止できるからです。その後の新しい感染が万が一持続感染となり、がん化していくリスクを防ぐ効果が期待されるからです。

 ただし、すでに感染しているHPVを排除したり、進行しているがん化を阻止する働きはありません。免疫ができた後、次の感染を防ぐ働きを期待する、ということになります。

  もしも
かかりつけのお母さまで、HPVワクチン接種をご希望の方には、当クリニックは任意接種としてHPVワクチン接種を行いますので、鈴木医師にご相談ください

②実際の接種方法

 
保健所から予診票が送られてきたら、まず電話か、クリニック受付で、HPVワクチンのご予約を行ってください。

         
03-3786-0318  鈴の木こどもクリニック受付

 接種予約当日までに、予診票に必要事項を記載し、ご来院ください。接種前に、青いリーフレット(1)、オレンジのリーフレット(2)に目を通していただき、チェックを入れていただきます。(緑のリーフレットは医療関係者用です。)

 

*この厚労省のリーフレットは、実は大きな欠点があります。それは、これまで詳細に見てきた子宮頸がんの恐ろしさにほとんど触れていない点です。さらに、「HPVワクチンは、積極的におすすめすることを一時的にやめています。」という大きな文字が踊っています。ワクチンの接種をお勧めしません、などと言われて誰が接種をするのでしょうか。きょうも子宮頸がんのために、若い女性の希望と未来が奪われているのです。女性のいのちと未来を見ないで、厚労省の役人はいったい誰に忖度しているのでしょうか。(上に掲示した、岡山県のリーフレットと比べてみてください。)

 その後、鈴木医師の診察の後、HPVワクチンを接種いたします。

 ガーダシルは 9歳以上の女性が対象で、上腕三角筋に左右交互に計3回、筋肉注射をします。
 1回目の注射の後、2ヶ月後に第2回めの注射、さらに4ヵ月後に第3回目の注射をします。(最初から数えると、0、2ヵ月後、6ヵ月後となります。サーバリックスとは2回目の注射の時期が異なります。


 サーバリックスは、10歳以上の女性が対象で、上腕三角筋に左右交互に計3回、筋肉注射をします。
 1回目の注射の後、1ヶ月後に第2回めの注射、さらに5ヵ月後に第3回目の注射をします。(最初から数えると、0、1ヵ月後、6ヵ月後となり、ガーダシルとは2回目の注射の時期が異なります。

 当クリニックは日本小児科学会の推奨に基づき、中学1年(12歳)でのHPV接種を、女性の生命と未来を守るために、強くお勧めしています。

 当クリニックでは、二つのHPVワクチンのうち、ガーダシルの接種を行っています。その理由は、
   ①4価のため、子宮頸がん予防とともに、尖圭コンジローマ(性器いぼ)を予防することもできる。
   ②サーバリックスに比べて、接種部位の痛みがやや少ないとされている。
という点を評価しているためです。


③接種費用

 
定期接種の対象者(小学校6年~高校1年の女子)は接種費用は無料です。HPVワクチン接種用の定期接種予診票をお持ちください。
 対象年齢以外の女性の接種希望者は有料になります。接種費用は、院内掲示をご覧になるか、クリニック受付でご確認ください。

 なお、ガーダシルはアメリカ、オーストラリアなどでは男子にも接種が行われていますが、我が国では男子への接種は認められておりません。

④接種後について

 接種後、稀にめまいやふらつき、失神などが起こることがあります。これは注射による痛みやストレスに対する、生理的な血管迷走神経反射のためです。そのため、接種後30分は背もたれのある椅子に座って様子を見ることが推奨されています。(当クリニックでは、HPVワクチン接種の後は、30分間2階カウンセリングルームでお母さまとお待ちいただきます)

 接種後は接種部位を強く揉むことは避け、軽く圧迫する程度にします。また、接種当日は過度な運動は控えます。(成人女性の場合は、飲酒も控えてください。)
 接種した日の入浴はかまいません。ただし、接種部位を強く擦ることは避けたほうがよいでしょう。

 ワクチンを接種した後、極めてまれに広い範囲にわたる激しい痛みや手足の動かしにくさ、逆に手足が勝手に動いてしまうというような不随意運動などが起きた、という報告があります。

 この現象は、現時点でワクチンと明らかに因果関係が認められた、という報告はありません。厚労省の研究班の調査では、この年齢の女子では、ワクチン接種の有無にかかわらず、一定の頻度でこのような症状が起こる事が明らかにされています。

 HPVワクチン接種の後にこのような症状が疑われたときは、ご来院の上、鈴木医師にご相談ください。現在、慢性的な痛みなど多様な症状に対しては、「診療の手引き」が公表されています。



 また何らかの症状が現れた方のための診療相談窓口が全国87施設に設けられており、拠点病院も整備されています。ヒトパピローマウイルス感染症の予防接種後に生じた症状の診療に係る、協力医療機関および厚生労働科学研究事業研究班の所属医療機関(令和元年6月10日現在)の一覧はこちら

 品川区周辺では、慈恵医大附属病院ペインクリニックがあげられています。

 また当クリニックも接種した患者さんにこのような症状が万が一出現した場合は、全力で患者さんに寄り添い、ともに歩んで参ります。

参考文献:

HPVワクチン接種後に生じた症状に対する診療の手引き:日本医師会/日本医学会(2015)
リーフレット「HPVワクチンの接種に当たって医療従事者の方へ」参考資料:厚労省(2017)


謝辞:子宮頸がん、HPVワクチンの基礎については、HPV insights Vol.1~7(メディカルレビュー社)を参考にさせていただきました。また、同誌よりより、イラスト、図12点を転載させていただきました。厚く御礼申し上げます。

 また、日本産科婦人科学会「子宮頸がんとHPVワクチンに関する最新の知識と正しい理解のために」、横浜市大産婦人科「横浜から、神奈川から、日本の子宮頸がんの予防を変える」のHPを参考にさせていただきました。深謝申し上げます。

 NTT東日本関東病院産婦人科医長近藤一成先生には、本論文をご校閲いただき、さまざまなご教授をいただきました。また、本稿で提示したスライドの使用もご快諾いただきました。厚く御礼申し上げます。

 その他、種々ご協力いただいた関係者のみなさまに深謝いたします。

 厚労省のHPV関連資料も利用させていただきました。深謝いたします。

 その他、多数の文献、HPコンテンツを参考にさせていただきました。本文中に出典を示させていただいています。ありがとうございました


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