Ⅰ-3.ウィルスの感染症(夏かぜ系の病気)

 手足口病

 ヘルパンギーナ

 咽頭結膜熱(プール熱)

 アデノウイルス感染症(扁桃炎)

 ヒトパレコウイルス感染症

 エンテロウイルスD68感染症



Ⅰ-3.ウィルスの感染症(夏かぜ系の病気)

手足口病

 手足口病はヘルパンギーナと並ぶ代表的な夏かぜで、口の中のアフタ(潰瘍)と手足に水を持った赤いぽつぽつができる病気です。手足と口の病気という意味で「手足口病」と名付けられました。

 コクサッキ―A16(CA-16)、コクサッキ―A10(CA-10)、エンテロウイルス71など幾つかのウイルスが病原体として知られています。特にエンテロウイルス71は1997年、マレーシア、大阪、台湾で手足口病の患者に髄膜炎をおこし、死亡例が相次いで問題になったウイルスです。

手足口病の症状

 潜伏期間は、通常25日です。感染経路は病初期の飛沫感染や水疱からの直接感染とその後の経口感染(便→手)です。

 熱は、38℃以下の軽い熱が12日出ることが多いです。

 口のなか一面に、赤い点と中央部にアフタがみられ、ひどくなるとは食事をとる事をいやがったり、よだれをだらだらたらしたりします。手足にも、赤いポツポツと硬い感じの水疱がみられますが、水ぼうそうと異なり、かゆくなく破れることもありません。お尻や太ももに密集して出現することもあります。

 ふつうは24日で、口の痛みは軽快します。

 高熱が3日以上続く、頭痛がひどく嘔吐を繰り返す、元気がなく、ぐったりして食事も受け付けない、などの症状が続く場合は、髄膜炎の可能性も否定できないため、必ず病院で診察を受けてください。

 年齢は4歳以下の子どもが多くかかります。原因となるウイルスがいつくかあるため、1回かかっても、又感染することもあります。また、大人にも感染します。冬にもみられることもあります。

手足口病の治療

 特別な治療はありません。口内炎がひどい場合は、アセトアミノフェンを痛み止めとして使用してもよいでしょう。食事はのどごしの良い食べ物(ゼリーや豆腐など)を与え、少量頻回に水分を取らせます。食事の後は白湯などを含ませ、口の中の清潔を保ちます。どうしても水分が取れず脱水に陥れば、輸液を行ないます。

 皮膚の発疹はかゆみが無いため、ふつうそのまま様子をみます。かゆがるなら、非ステロイド系消炎軟膏をつけてもかまいません。

登校・登園基準

 発熱している間、口内炎がひどく食事が取れない間は、感染力も強いため、自宅で安静に過ごします。熱が下がり、口の痛みがなくなったら、登校・登園してもかまいません。

 しかし症状回復後も2~4週間は便中にウイルスが排泄されるため、おむつの扱いには注意が必要です。 

  2011年の手足口病

2011年6-8月に流行した手足口病は、従来の手足口病とはかなり異なる症状を示す、特異なものでした(上写真)。

 すなわち、①口内疹は少ない。ただし、口の周りにも水疱ができる。②従来好発部位だった手背、手掌、足背、足の裏には水疱が少なく、臀部、大腿、体幹に巨大な水疱を含む、大小不同の水疱が密在する。③水疱をかゆがったり、痛がったりする。④水疱出現の前に高熱が1~2日先行する。などの特徴がみられました。

 原因ウイルスはコクサッキ―A6(CA-6)が検出される例が多かったようです。(2011.7.31)

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ヘルパンギーナ

 ヘルパンギーナは代表的な夏かぜで、14歳のお子さまが口の中が痛くて、食事が取れなくなる病気です。病原体はコクサッキ―Aグループ(アメリカのコクサッキ―地方で始めて発見されたので、こう呼ばれる)で、他のエンテロウイルスでおこることもあります(原因ウイルスは複数ある)。

ヘルパンギーナの症状

 潜伏期間は、通常24日です。感染経路は病初期の飛沫感染とその後の経口感染(便→手)が考えられます。

 症状は、突然39℃以上に発熱し、口の中を痛がります。のどの奥の口蓋垂(のどちんこ)のわきに小さな赤い点々とアフタが認められます。ものを呑み込むと痛いため、ミルクを飲まなかったり、よだれをたらす子もいます。3日ほどでのどのアフタは回復し、食事をしても痛がらなくなります。

 原因となるウイルスが複数あるため、1回かかっても、又かかることもあります。

へルパンギーナの治療

 口の中のアフタがひどく、水分も嫌がるようなら、アセトアミノフェンを痛み止めとして使用してもよいでしょう(ただし、痛いときだけ飲ませます。1日2回まで)。抗生剤は無効です。食事はのどごしの良い食べ物(ゼリーや豆腐など)を与え、少量頻回に水分を取らせます。少し大きいお子さまだと氷をしゃぶらせても良いでしょう。また、食事の後は白湯などをふくませ、口の中の清潔を保ちます。どうしても水分が取れず脱水に陥れば、輸液を行います。

登校・登園基準

 熱があり、食事が取れない間は保育園、幼稚園はお休みします。熱が下がり、食事もふつうに取れるようになれば、登園はかまいません。また、便へのウイルスの排泄は1~4週続くので、オムツの扱いには注意しましょう(良く手洗いを行いましょう)。

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咽頭結膜熱(プール熱)

 咽頭結膜熱は、発熱、のどの腫れ、結膜炎を主とするアデノウイルス感染症で、以前はプールで流行することも多かったため、プール熱とも呼ばれています(今は飛沫感染が主な感染経路です)。幼稚園児、小学生の間で、主に流行します。

咽頭結膜熱の症状

 感染経路は、通常は飛沫感染(せき)が主ですが、プールでは結膜からの感染や経口感染(口から入る)も考えられています。

 潜伏期間は、5~7日です。

 39~40℃の高熱で始まり、頭痛、食欲不振、のどの痛み、くびのリンパ節の痛みと腫れが目立ちます。結膜炎にともなう、真っ赤な眼や眼痛、羞明(まぶしさ)、眼脂(めやに)が見られます。主な症状は、4~7日間続きます。  

             写真の掲載についてはお母さまのご承諾をいただいております。(無断転載厳禁)

咽頭結膜熱の診断

 咽頭結膜熱をおこすのは、アデノウイルス3型が多く、1型、4型、7型、14型も原因となります。特にアデノ7型は重症肺炎になるため、要注意といわれています。現在では迅速診断キットを用いれば、10分で診断は可能です。

咽頭結膜熱の治療・予防

 眼症状(結膜炎にともなう眼の充血、眼痛、めやになど)がひどい場合は、眼科での治療が必要です。あとは小児科で経過をみます。抗生剤はアデノウイルスには無効です。

 予防は、感染者との密接な接触を避けること(特に兄弟間)、うがいや手洗いを励行することが大切です。また、プールに入る時は、水泳前後に十分シャワーを浴びましょう。

 ときにはプールを一時的に閉鎖しなければならない時もあります。

登校・登園基準

 解熱し、のどの痛み、結膜炎が治った後、2日間は登園、登校できません(学校保健安全法、保育所における感染症対策ガイドライン)。安静にして、体力の回復を待ちましょう。

   数年前まで、毎年夏になると「プール熱大流行」報道が夏の風物詩のように繰り返されていました。プール熱報道についての、2006年の当クリニックの見解はこちら(→プール熱は大流行しているか

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アデノウイルス扁桃炎(感染症)

 アデノウイルスは、4251ともいう)種に分類され、その症状も扁桃炎、肺炎や、腸炎、膀胱炎、咽頭結膜熱(プール熱)、流行性角結膜炎(流行り目)など多彩です。アデノウイルス扁桃炎は、滲出性扁桃炎(扁桃に白い膿が付く)で、アデノ1235型が多く、おもに年少児~幼児にみられます。

アデノウイルス感染症の症状

 急に39℃から40℃の高熱がでて、5日ぐらい続き、急に解熱します。3日目ごろ、扁桃に白い膿が多くみられます。のどの痛みは軽度で、咳もあまりひどくはなりません。

アデノウイルス感染症の診断

 抗生剤が全く効かず、のどが真っ赤で高熱が続く場合、アデノウイルス感染を疑います。現在ではアデノウイルス迅速検査で、10分で診断できます。ただし、目も真っ赤ならば、咽頭結膜熱(プール熱)という、別のアデノウイルス感染症を考えます(咽頭結膜熱‐プール熱)。

アデノウイルス感染症の治療

 高熱が続くので、なるべく水分と栄養を十分に与え、安静にして様子をみます。高熱のため、ぐったりして脱水をおこしていれば、外来で点滴します。扁桃に細菌の混合感染の可能性や中耳炎を合併していれば、抗生剤を投与します(アデノウイルスそのものには、抗生剤は効きません)。

 うがいと手洗いを励行します。赤ちゃんはかかりにくい(お母さまから抗体をもらっているので)ようですが、13歳の子は重症になる(肺炎)ことがあるため、感染した兄弟には、なるべく近づけないほうが良いでしょう。 

 アデノウイルスの中には重症になる型(7型)もあるので、熱が下がるまでは、元気、食欲、呼吸などのお子さまの全身状態は、よく注意して下さい。

登校・登園基準

 プール熱でなければ、登園証明書は必要ありません。熱が下がり、1日たてば登園は可能です。

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ヒトパレコウイルス感染症

 ヒトパレコウイルス(HPeV)は、以前は夏かぜを起こすエンテロウイルスのグループに属し、エコーウイルス22型、23型と呼ばれていましたが、遺伝子解析技術の発達により、エンテロウイルスとは別のウイルスだと確かめられたため、エンテロウイルス属から1999年に独立し、「エコーウイルスに似たウイルス」(=パレコウイルス:Par-echoVirus、PeV)と命名されました。

 1型から6型まで、6種類の血清型/遺伝子型が今までに報告されています。
多くの人は乳児期に感染し(症状の見られない、不顕性感染のことが多いようです)、ほとんどの成人は免疫を持っているといわれています。

ヒトパレコウイルス感染症の症状

 ヒトパレコウイルス感染症は1型と3型が起こすことが多く、1型感染は秋~冬、3型感染は夏~秋に多くみられると報告されています。

 1型ヒトパレコウイルスは、胃腸炎(下痢、嘔吐)の症状が多く、次いでかぜ症状(咳、鼻)もよくみられます。まれに心筋炎、無菌性髄膜炎を起こします。逆に3型ヒトパレコウイルスは、発熱、かぜ症状、発疹、口内炎が多く、3ヵ月未満の新生児~乳児に3感染した場合は、脳炎や敗血症のような重症感染症を起こすことがまれではなく、注意が必要です。3型ヒトパレコウイルスは、手足の小発疹と口内の異常(アフタや舌炎など)から、手足口病やヘルパンギーナと診断されることも多いようです。


 2014年の6月以降、発熱・敗血症疑いで入院した乳児から相次いでヒトパレコウイルスが検出されており、現在我が国で乳児の間でヒトパレコウイルス感染症が流行していることが問題になっています。2006、2008、2011年、2014年にも、ヒトパレコウイルスの流行が報告されており、現在小さな赤ちゃんが高熱や敗血症のような重い感染症にかかった場合、ヒトパレコウイルス感染症の可能性も考えなければなりません。

 数年おきに、6~9月ごろ、3歳以下の子どもを中心に手足口病に似た感染症が流行ったら、ヒトパレコウイルス感染症3型も考えなければならないようです。この時、年長児は軽症で経過することが多いようですが、3ヵ月未満の新生児~乳児のヒトパレコウイルス感染症は脳炎や敗血症のような重症感染症を起こすことがまれではなく、注意が必要です。手洗い、うがいなど、小さな赤ちゃんのいるご家庭は、感染防御に気を付けた方がよいでしょう。

ヒトパレコウイルス感染症の治療、予防

 特別な治療はなく、症状に応じた治療を行います。また、予防するワクチンはありません。

参考:伊藤雅ら:ヒトパレコウイルス(Human Parechovirus:HPeV)感染症:モダンメディア53;329-336.2007.
     <速報>生後3か月未満の乳児におけるヒトパレコウイルス感染症の発生:IASR35.221.2014年9月号

    ヒトパレコウイルス感染症について:横浜市感染症情報センター

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エンテロウイルスD68感染症

 エンテロウイルス(属)は、ポリオ(小児まひ)ウイルス、コクサッキ-ウイルスA群、B群、エコーウイルスなどが含まれるグループです。手足口病、ヘルパンギ-ナなど夏かぜウイルスは大体このグループに属しています。パレコウイルスはこのグループから独立しました(前項)。

 エンテロウイルスD68は、このエンテロウイルス属のD群と呼ばれるグループのウイルスの一つです。あまり、注目されないウイルスでしたが、2014年アメリカで大流行し、多数の重症肺炎の入院がありました。近年、わが国でも流行が報告され、肺炎や喘息と診断されています。

 また、このウイルスはエンテロウイルスとライノウイルス(鼻かぜの原因ウイルス)の両方の性質を持つ、ユニークなウイルスです。

エンテロウイルスD68の症状

 感染経路はウイルスに汚染された鼻水や痰などが付着した手や物からの接触感染や、飛沫感染(せき、たん)です。

 9月がピークで、夏から秋にかけて流行します。年少児が感染しやすく、我が国の患者のうち、77%が0~5歳だったと報告されています。

 発熱、咳、鼻といった軽いかぜ症状から、ぜいぜいして、呼吸が苦しくなる呼吸困難を示す重症肺炎まで症状は様々です。きわめてまれに手足がまひする症状を起こすことがあります。

エンテロウイルスD68の治療、予防

 特別な治療はなく、症状に応じた治療を行います。また、予防するワクチンはありません。

参考:エンテロウイルスD68(EV-D68)感染症に関するQ&A:国立感染症研究所感染症疫学センター
     エンテロウイルスについて:横浜市衛生研究所


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