小児のコロナワクチンについて        2024.5.15最終更新

令和6年(2024年)3月までは特例接種として、自治体が無料(公費負担)で接種を行ってきましたが、4月からは任意接種となりました。

●予防接種の内容

新型コロナウイルス感染症COVID-19を予防する、mRNA(核酸)ワクチンです。

*RNAワクチンの詳細については、こちらをご覧下さい。

●接種の方法

生後6ヵ月から接種できます。

現在、使用できるワクチンはファイザー社製のコミナティとモデルナ社製のスパイクバックの2種ですが、お子さまの年齢と、ワクチンの種類で、接種スケジュールが異なります。

対象年齢(1回目の接種時) ワクチン名 接種スケジュール
生後6ヵ月~4歳 ファイザー(コミナティ筋注6ヵ月-4歳) 【初回接種】計3回
2回目は1回目の3週間後、3回目は2回目の8週間後
    【4回目以降】
    前回接種後、3ヵ月以上あける
  モデルナ(スパイクバックス) 【初回接種】
4週間の間隔をあけて、2回接種
5歳~11歳 ファイザー(コミナティ筋注5-11歳) 前回接種から3ヵ月以上あけて接種
未接種の場合、4週間の間隔をあけて、2回接種
  モデルナ(スパイクバックス) 前回接種から3ヵ月以上あけて接種
    未接種の場合、4週間の間隔をあけて、2回接種
12歳以上 ファイザー(コミナティ筋注) 前回接種から3ヵ月以上あけて接種
未接種の場合、4週間の間隔をあけて、2回接種
モデルナ(スパイクバックス) 前回接種から3ヵ月以上あけて接種
  未接種の場合、4週間の間隔をあけて、2回接種

●予防接種の種類

Ⅰコミナティ筋注(ファイザー社)

1)開発元
ドイツの遺伝子医薬品開発ベンチャー企業だったビオンテック社とアメリカの製薬企業ファイザーが、共同で開発したmRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンです。

アメリカでは、2020年12月11日に緊急使用が認可され、イギリスではそれに先立ち2020年12月2日に通常認可がされました。

我が国でも、2021年2月15日、特例承認されました。

2024年4月からは任意接種となりました。(高齢者は定期接種B類)

2)作用機序
新型コロナウイルスが細胞に侵入するときに、細胞に密着するスパイクと呼ばれる糖蛋白(ウイルスから出ているトゲの蛋白質)を設計する情報を持ったmRNA(メッセンジャーRNA)を、脂肪の膜である脂質ナノ粒子で包み込んで、ヒトに接種するmRNAワクチンです。


成人用コロナワクチン(コミュナティ筋注 小児用コロナワクチン(コミナティ筋注5-11歳用

3)接種の種類
A.コミナティ筋注(1価ワクチン)
コロナ初期から使用されてきた、ファイザー社の1価武漢株(従来株、起源株、野生株)のワクチンです。現在接種は行われておりません。

B. コミナティRTU筋注(2価ワクチン)
オミクロン対応型の2価ワクチンです。武漢(従来)株とBA4/5の変異株のRNA断端が含まれている、2種混合のワクチンです。現在接種は行われておりません。

C. コミナティ筋注5-11歳(小児用従来型ワクチン)
5歳から11歳まで使用する、武漢(従来)株の小児用ワクチンです。当クリニックは接種を終了しました。

D. コミナティ筋注5-11歳(小児用オミクロン対応2価ワクチン)
5歳から11歳まで使用する、武漢株とBA4/5の変異株のRNA断端が含まれている、2種混合のワクチンです。当クリニックは接種を行っておりません。

E. コミナティ筋注6ヶ月-4歳(乳幼児用ワクチン)
生後6ヶ月から4歳まで使用する、武漢株の乳幼児用ワクチンです。当クリニックは接種を終了しました。

*コミナティは、成人用と小児用、乳幼児用は、全く別の製剤です。

4)ワクチンの効果
このファイザーワクチンの第3相試験は、2020年7月からアメリカ、ブラジル、アルゼンチン、南アフリカ、ドイツなどの154施設で開始され、43538例が登録され、38955例が2回ワクチンの接種が行われました。解析結果は、ワクチンの発症予防効果は95%と報告されました。
一方、デルタ株については、発症予防効果は88%と報告されています。

無症状の感染を含めた感染予防効果は、12歳以上で2回目接種後1ヶ月以内では88%でしたが、5~6ヶ月には47%にまで有意に低下したとの報告があります。

また、発症予防効果についても、2回目接種後7日~2ヶ月未満では96.2%でしたが、4ヶ月以降では83.7%と低下していくことが確認されています。

5)ワクチンの対象
乳幼児用コロナワクチンは6ヵ月~4歳、小児用コロナワクチンは5歳~11歳、成人用コロナワクチンは12歳以上が対象となります。

6)ワクチンの副反応
局所症状として、接種部位の痛み、腫れ、赤くなる、接種した側の脇の下のリンパ節の腫れがみられます。
全身症状として、発熱、全身のだるさ、頭痛、寒気、筋肉痛、関節痛がみられます。

即時型反応(接種4時間以内に起こる、じんましん、むくみ、ぜいぜい、アナフィラキシーなど)の発生率は0.63%、プラセボ(ワクチンに似せた生食水など)では0.51%と報告されています。

これらの副反応は接種後3日以内に起こり、多くは1~2日の経過で消失すると報告されています。また、1回目より2回目の方が、また55歳以上より18歳~55歳の方が多く起るようです。

ただし接種によって副反応が起きたとしても、新型コロナウイルスワクチン接種でアナフィラキシーショックのような重い症状が出た人、ポリエチレングリコール(PEG)やポリソルビートに重大なアレルギー歴のある人*で無ければ、2回目の接種は可能です。
*このような体質の人は、ワクチンに封入されている脂質ナノ粒子(LNP)にアレルギー反応を起す可能性があるためです。

mRNAワクチンは、他のワクチンと比較しても、接種後の副反応が強く表われます。注射の痛みは、最も痛いと評価されてきたプレベナーと同等か、それ以上と報告されています。

コミナティ筋注 コミナティRTU筋注 コミナティ筋注5-11歳 コミナティ筋注6ヶ月-4歳


Ⅱ.スパイクバックス(モデルナ社)

1)開発元
アメリカの遺伝子医薬開発ベンチャー企業のモデルナ社とアメリカ国立アレルギー・免疫研究所が共同で開発した、mRNAワクチンです。

アメリカでは2020年12月18日に緊急使用が許可され、イギリスでは2021年1月8日に通常認可されています。

我が国では2021年5月21日に初回接種(2回)が特例承認されました。追加接種については、2021年12月16日に薬事承認されました。

2024年4月からは任意接種となりました。(高齢者は定期接種B類)

*認可当初は、「COVID-19ワクチンモデルナ筋注」という名称でしたが、2021年12月16日、「スパイクバックス筋注」と変更されました。

3)ワクチンの効果
モデルナのmRNAワクチンの有効成分エラソメランの方が、ファイザーのmRNAワクチンの有効成分トジナメランよりも量が多いため、効果も強いが、副反応も強いようです。

<海外における臨床試験>
アメリカにおいて、約3万人の被験者を対象に、2回目の接種後14日以降の発症の有無が比較されました。その結果、過去に新型コロナウイルスの感染歴がない被験者において、94.1%のワクチン有効率が確認されました。(オミクロン流行前の研究です)

<国内における臨床試験>
日本人の健康成人200人をワクチンとプラセボ(生食水などのにせのワクチン)に分け、約28日間の間隔で2回接種しました。そして、2回目の接種から28日後の、接種した人のコロナウイルスに対する血液中の抗体を調べた所、抗体価の上昇が確認されました。

小児用ワクチンの効果
<海外における臨床試験>
12~17歳の約3000人の健康人を対象に、ワクチンとプラセボ(生食水などのにせのワクチン)に分け、約28日間の間隔で2回接種した時の、新型コロナウイルス感染症の発症がどの程度抑えられるか、比較しました。
2回目の接種後14日以降の発症について、過去に新型コロナウイルスの感染歴がない被験者では、100.0%のワクチン有効率が確認されました。

追加接種(3回目接種)の効果
<海外における臨床試験>
アメリカにおいて、18歳以上の人に、2回目の接種から6か月以上あけて、3回目のワクチン接種を行いました。接種した1か月後に、血液中の新型コロナウイルスに対する抗体を調べました。
1、2回目に100μgを接種した人に、3回目50μgを接種したところ、3回目接種の人で高い抗体価が得られました。

4)ワクチンの副反応
スパイクバックスの副反応は心筋炎の頻度とモデルナアームが注目されます。

5)ワクチンの対象
4歳以上が接種対象となります。


 
Q. 新型コロナウイルス感染症はオミクロン系統になって以来、軽症化していますが、今後子どもに対するコロナワクチンの追加接種は必要でしょうか?

2020年の発生当時、高い死亡率と、治療法、予防法も無い、得体の知れない恐怖の感染症として、突如登場した新型コロナウイルス感染症に対し、90%という驚異的な発病阻止率を持って、mRNAワクチンが登場しました。

ファイザーワクチンはその素晴らしい効果によって他のワクチンを圧倒し、世界中で奪い合いとなりました。

mRNAワクチンの決して軽くない副反応(これはもちろん全身がだるくて起きられない、高熱で体中が痛む、接種した手が上がらなくなった、などの急性の副反応のことです。今なお、ネットで飛び交うワクチンで死亡した、とか不妊になったなどの、非科学的なエセ情報の事ではありません。)も大して問題とはならす、世界中でこのワクチンの接種が強力に進められたのでした。

その結果、ワクチンの高い効果とコロナウイルス自身の変異によって、コロナの罹患率はそれほど変わらないものの、新型コロナ感染症の死亡率は劇的に低下していきました。

しかしワクチンの素晴らしい感染予防、発病阻止の効果も、度重なる変異ウイルスの免疫逃避能力によって徐々に低下し、免疫の効果も数ヶ月しか持続しないことが報告されています。(重症化を防ぐ効果は残ります。)

しかも、オミクロン系統になって以来、重症化率は低下しました。

しかし、その激しいmRNAワクチンの副反応は新しい改良型ワクチンでも軽減はされませんでした。

新型コロナワクチンの接種を今後接種した方がよいか、悩むところです。当クリニックはコロナワクチンの接種は、単純に一律に打つか打たないかでは無く、年代別に緻密に検討すべきと考えます。

①65歳以上の高齢者(と基礎疾患を有する人達)のグループです。当クリニックの患者層に照らして言えば、お孫さんを連れてくるおじいちゃん、おばあちゃん世代です。

この方々は死亡率が劇的に低下したとはいえ、まだまだ重症化率、死亡率が非常に高い集団です。高齢者層は最もワクチンの恩恵を受ける世代であり、最大限のワクチン接種が必要とされる世代でもあると考えます。

しかも、mRNAワクチン接種の最大の障壁となっている、激しい副反応もこの世代は免疫反応が低下しているため、比較的軽く済むようです。

この世代は新しい変異株が登場するたびに、追加接種を繰り返し、常に免疫を高めておく必要があります。オミクロン系統を始めとする新しく登場するSARS-CoV-2変異株に対応する追加ワクチンも積極的に接種し、免疫持続に努めるべきと考えます。

2024年秋からは、高齢者は重症化予防のための定期接種B類として、接種を受けることができます。当クリニックは、高齢者のコロナワクチン接種をお勧めいたします。

*2024年秋からの定期接種用に2024年5月17日、コミナティRTU筋注1人用が発売されました。このワクチンはオミクロン株XBB1.5を含む1価のコロナワクチンとなります。

②小児のグループです。
オミクロン系統が流行の中心になるに従い、小児の新型コロナウイルス感染者も激増し、相対的に小児多系統炎症性症候群MIS-Cの報告も増えました。

そのため、小児用コロナワクチンか乳幼児用コロナワクチンを最低3回は接種し、しっかりと基礎免疫をつけておくことが最大の防御と考え、小児のコロナワクチンの接種を当クリニックも積極的に推進してきました。


しかし、現在こどもの新型コロナウイルス感染症は軽症化し、子どもにとってコロナワクチンを接種するメリットは、ほとんどなくなってしまいました。さらに、2024年4月からコロナワクチンは任意接種となり、コストパフォーマンスのきわめて悪いワクチンになりました。

現在のmRNAワクチンのこれ以上の追加接種を当クリニックでは行いませんし、お勧めいたしません。

③親世代の成人層のグループです。
この人達は、コロナにかかっても軽症で経過する人が多く、また生命活動が活発なため、ワクチンの副反応も強く出現し、1日仕事を休んだ、高熱が出た、などの訴えも多かった世代です。

現在の新型コロナワクチンの効果は、医学的には明確に立証されています。その効果を報告した査読済みの医学論文もいくつも公表されています。

しかし、その効果は残念ながら数ヶ月しか持続しないこと、また、新型コロナ感染症の症状自体が軽症化したため、激しいワクチンの副反応とのバランスで、ワクチン接種の優越性が薄れてきてしまいました。

以上の点を総合的に検討した結果、2024年4月任意接種に移行されたことも踏まえ、健康な親世代には、コロナワクチンのこれ以上の接種を当クリニックはお勧めいたしません。

<付録>
厚労省新型コロナウイルス感染症対策推進本部が、2020年8月21日に委員会に提出した資料の図がわかりやすいので、転載いたします。

現在、使用されている小児のコロナワクチンはmRNAワクチンのみです。

 ピンクエリアは従来型ワクチン。グリーンエリアは新しいワクチン。(厚労省新型コロナウイルス感染症対策推進本部

 *新型コロナウイルスワクチンの4つの種類の解説アニメーションです。(There are four types of COVID-19 vaccines: here’s how they work


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