(2017/2018の)インフルエンザワクチンについて

予防接種の内容

 わが国で使用されるインフルエンザワチンは、インフルエンザウイルスのとげ(H鎖)の部分をこなごなにして、精製した不活化ワクチン(HAワクチンと呼ばれます)です。

 インフルエンザワクチンには、4種類の(季節型)インフルエンザウイルス(A新型=H1N1pdm、A香港型=H3N2、B型山形系、B型ビクトリア系)のとげ(H鎖)の部分が含まれています。

 生後6ヵ月から任意接種で受けられます。(ただし60歳~64歳の一部、および65歳以上の老人は、法に基づく定期接種(B類疾病)として接種されます。

 2017-2018年のインフルエンザHAワクチン製造株の内容は、以下の通りです。

A型株
     A/シンガポール/GP1908/2015(IVR-180) (H1N1)pdm09
     A/香港/4801/2014 (X-263) (H3N2)

B型株
     B/プーケット/3073/2013 (山形系統)
     B/テキサス/2/2013 (ビクトリア系統)

予防する病気

 
A新型、A香港型、B型インフルエンザの重症化を防ぎます。鳥インフルエンザ(H5N1)には効果はありません。

接種の方法

 ワクチンの注射液を、年齢に応じて2段階で上腕に皮下注射します。2回接種する場合は、左右交互に打つことが勧められています(副反応=腕の腫れを減らすため)。インフルエンザワクチンの接種量は、2011/2012年のシーズンから変更・増量されました。→6か月~2歳は0.25ml、3歳以上は0.5ml。

 インフルエンザワクチンの内容は、2015/2016年のシーズンから、3種類から4種類に変更・増加になりました。
 6カ月~12歳のお子さまは、2回接種が必要です。13歳以上は1回接種でよいでしょう(65歳以上は、1回接種となっています)。

接種の時期

 インフルエンザワクチンは接種後2週目から抗体が上昇し始め、1ヵ月でピークに達し、その効果は5ヵ月持続します。2回接種の場合は、2回目を4週後に追加接種した場合が最も抗体の上がりが良いので、2回目の接種は4週間後に受けるのがよいでしょう(接種間隔は2~4週とされていますが)。

 ここ通年、インフルエンザは3~4月ごろまでだらだらと流行を引きずります。そのため、当クリニックは今季は2回接種の場合は10月中旬~11月初旬に1回目、11月下旬~12月初旬に2回目を、1回接種の場合は11月~12月上旬に接種をお勧めいたしました。

 他院がかかりつけのお子さまは、かかりつけの医院で接種を受けてください。当クリニックは一貫して、お子さまの体調をよくご存じの、かかりつけ医でのワクチン接種を強く推奨してきました。

 当クリニックもまた、いつも受診してくださるかかりつけの患者さんのために、現在ワクチン接種の準備を進めているところです。(しかし、今シーズンはワクチンの供給が滞り、当クリニックで接種ご希望の、多くの患者さんのご期待に添えなかったことを深くお詫びいたします。厚労省の締め付けが厳しく、当クリニックのように接種に実績があるところでも、ワクチンが確保できませんでした。詳細後述。)

接種の年齢

 生後0~6ヵ月まではワクチンを接種しても抗体の上がりが悪く、また母親の抗体の影響でインフルエンザにかかっても軽くすむ子が多いといわれており、ワクチン接種の対象から外れています(ワクチンは接種できません)。

 生後6~12ヵ月のお子さまについては、プライミングの問題(インフルエンザワクチンの効果参照)もあり、効果は限定的と思われます。

 乳児のインフルエンザワクチン接種を考える場合は、まず父親、母親をはじめ、周囲の大人や年長児が積極的にワクチンを受けることが大切です。周囲の人間がワクチンを受けて、赤ちゃんへのインフルエンザ感染の防波堤になることが、赤ちゃん自身にインフルエンザワクチンを接種することより効果的だと思います。

 当クリニックは、乳児のご両親のインフルエンザワクチン接種を強くお勧めしています。その上で、赤ちゃんへのインフルエンザワクチン接種を検討されるとよいでしょう。

 1歳以上のお子さまについては、当クリニックではワクチン接種をお勧めしています。

乳幼児(6歳未満)に対するインフルエンザワクチン接種について-日本小児科学会見解-」  (2004年11月16日)

平成12-14年度厚生科学研究費補助金(新興・再興感染症事業)「乳幼児に対するインフルエンザワクチンの効果に関する研究(主任研究者 神谷 齊・加地正郎)」の報告では、
 1) 1歳未満児については対象数が少なく、有効性を示す確証は認められなかった。
 2) 1歳以上6歳未満児については、発熱を指標とした有効率は20-30%となり、接種の意義は認められた。
 →(小児科学会の見解)わが国では、1歳以上6歳未満の乳児については、インフルエンザによる合併症のリスクを鑑み、有効率20-30%であることを説明し たうえで任意接種としてワクチン接種を推奨することが現段階で適切な方向である。

→ただし、この見解発表の後、2011年からワクチン接種量は上記のように、増量されました。

インフルエンザワクチンの効果

 インフルエンザワクチンは、インフルエンザウイルスのとげ(H鎖)を含む不活化ワクチンです。接種することにより、体内の血液中にインフルエンザウイルスへの迎撃用ミサイル=IgG抗体が作られます。
 しかし、空気とともに体の中に進入してくるインフルエンザウイルスは、鼻や肺への通路(気管支)に直接もぐりこみ、増殖するため(インフルエンザの増殖参照)、現在のワクチンはインフルエンザウイルスの感染そのものを抑えこむ力は弱いと考えられています(ワクチンで誘導されるミサイル=IgG抗体はこれらの粘膜面には存在していないため)。

 インフルエンザワクチンは、増殖したインフルエンザウイルスが全身に広がる時に、ミサイルのようにウイルスを破壊=不活化することで発病を抑えたり、症状を軽くしたりします。しかし、もしも一度もインフルエンザウイルスの進入を受けていないヒトの場合は、インフルエンザに対する備えが不十分で、ワクチンの誘導するミサイルもうまく作動しません(初めてのインフルエンザへの備えをプライミングといいます)。

 そのため、インフルエンザウイルスの跳梁を許し、結果として発病してしまいます(これが、一度もインフルエンザにかかったことのない乳児での、ワクチンの効果が弱い理由の一つと考えられています)。

 一方、過去にインフルエンザにかかったことのある人は、インフルエンザウイルスを免疫担当細胞が記憶しています。このため、ワクチンが接種されると十分に防御レベルが高まります。これをワクチンのブースター効果と呼び、このときはワクチンの効果が高まります。

 
 
また、現在のインフルエンザワクチンは、A型インフルエンザには十分な抗体の上昇が得られますが、B型インフルエンザに対する抗体の産生はあまり良くないようです。

 また、A型インフルエンザウイルスはとげ(H鎖)の組成を細かく変えて(ドリフト=連続変異)、ヒトの防御システムから逃れようとします。H3N2(香港型)でもシドニー型とパナマ型ではインフルエンザワクチンの効果に大きな違いが出てきます。この細かい変異に対応できたかどうかで、その年のワクチンの効果が決まってきます。

 赤ちゃんで問題になる、インフルエンザ脳症に関しては、小児科学会の見解は以下の通りです。(インフルエンザ脳症のガイドライン 改訂版(厚生省インフルエンザ脳症研究班。平成21年9月公表)はこちら。)

 
「インフルエンザ脳症の発症因子の解明と治療および予防方法の確立に関する研究」(主任研究者:森島恒雄)の成績(中間報告)は、脳症患者とインフルエンザ罹患者の間でワクチン接種率に有意な差はなかったとしており、この段階ではインフルエンザ脳症の阻止という点でのインフルエンザワクチンの有効性は低いと考えられます。

 しかし、インフルエンザ脳症はインフルエンザ罹患者に発症する疾患であるところから、インフルエンザ罹患の可能性を減じ、その結果として脳症発症の可能性のリスクを減じる可能性はあり、ワクチン接種の意義はあるものと考えられる、と結ばれています。

 
しかし、脳症のほとんどがA型であること(ワクチンの効果が期待できる)、インフルエンザ発病から脳症をおこすまで1.4日ほどしかないこと(抗インフルエンザウイルス薬による治療が間に合わない)などを考えると、インフルエンザワクチンの接種により、インフルエンザにかかる患者数を減らせば、脳症も少なくなるはずです。
 インフルエンザにかからなければ、インフルエンザ脳症は起こりません。シーズン前に、お子さまにワクチン接種を済ませることを、当クリニックではお勧めいたします。

インフルエンザワクチンとチメロサール

 インフルエンザワクチンは、1バイアルを2人~4人に分けて使用します。その操作を行う時に、汚染が起こる可能性があり、防腐剤の添加が必要です。そのために、安全性の高いチメロサールが用いられてきました。

 ところが、水銀の使用は自閉症になる、などという医学的に全く根拠のないデマ情報が、主としてワクチンを憎んで反対運動を行っているワクチン反対派のプロ市民から流され、それに盲従した一部の人たちからチメロサールは目の敵にされてきました。(チメロサールについては、こちらに詳細に解説したので、お読みになってください。)

 また、「患者が心配するから」などともっともらしい理屈をつけて、ことさらに「水銀無しのワクチンを使っています」と大宣伝する医療機関まで現れました。


 しかし、2016年は熊本大地震の被害により、化血研がインフルエンザワクチンを製造することができなくなったため、チメロサールフリーのシリンジタイプのインフルエンザワクチンは製造されませんでした。したがって、2016年のシーズンは、当クリニックが一貫して使用している、チメロサールが極微量添加されているワクチンしか、供給されないことになったのです。

 この状況に「当院は水銀を使っていません。」などと大宣伝していた医療機関がどうされたのかは存じ上げませんが、当クリニックの立場は常に一貫おり、今まで使用していたワクチンを、今までと同じ説明で、接種を行います。インフルエンザワクチンに対するかかりつけの患者さんに対する対応も、何ら変更する必要もありません。例年通り、ご予約をお願いいたします。


2017-2018年のシーズンのワクチンについて

 2017-18年は、インフルエンザワクチン供給に大きな問題が起こりました。

 まず最初に、インフルエンザワクチンのウイルス株の種類を決定する国立感染症研究所が、今季2017-18年のインフルエンザワクチンの香港型(H3N2)のウイルス株として、A/埼玉/103/2014(CEXP002)を選びました。

 これに従い、ワクチン製造メーカーがこのA/埼玉株を含んだワクチンの製造を始めました。ところが、このA/埼玉株は培養してみると孵化鶏卵のなかで増殖が悪く(下の製造過程③です)、シーズンまでに必要なワクチン供給量の70%しか製造することができない見通しになってしまいました。

 そのため、急遽、昨シーズンと同じA/香港/4801/2014 (X-263) (H3N2)を使用することとし、感染研の了承を得て、大急ぎでワクチン製造を開始しましたが、最終的に昨年の80%強しか、ワクチンを供給できない事態になったようです。


 
この事態に対し、厚労省は

①13歳以上は1回接種であることを徹底する。
②1バイアルを効率的に使用する。
③インフルエンザワクチンを過剰にストックする医療機関を厳重に監視し、もしも沢山ワクチンを返品した医療機関があったら公表する。
④薬卸問屋は、インフルエンザワクチンを1回に納入せず、少しずつ、医療機関に納品する。


という指導で乗り切ろうとしているようです(季節型インフルエンザワクチンの供給について)。

 しかし今までの歴史で、ヒブワクチンで、新型インフル騒動で、MRワクチンで、日脳ワクチンで、ワクチンが足りなくなったとき、この厚労省役人の机上の計算がうまくいったためしはありませんでした。今回も今までと同じように、「ワクチンがない!騒動」が性懲りもなく、繰り返されそうな雲行きです(ワイドショーなどの狂騒マスコミがここぞとばかりに、視聴率を稼ぐため大馬鹿騒ぎして、火に油を注ぐため)。

 懸念されていたように、今シーズン2017-18年は、インフルエンザワクチンの供給量が昨年よりも大幅に少ない状況です。しかも、厚労省の「指導」により、毎週ワクチンが少数ずつしか供給されないため、例年のように接種枠を設定して、予約を受け付け、接種を予定通り行うことは絶望的な状況になりました。

 変わらず、
当クリニックでインフルエンザワクチン接種を希望される、かかりつけの患者さんは今シーズンのこのような状況をご理解の上、来院の上、受付でご相談をお願いいたします

 今シーズンは薬剤卸問屋から納入されたワクチンの供給数に予約数が達した時点で、予約受付は一時打ち切りにさせていただきます。今シーズンは少数ずつ、断続的にワクチンが供給される見通しです(=厚労省の役人の命令のため)。
 そして、ワクチンが供給されるたびに、予約を再開し、接種予約を行います。お手数をおかけして、申し訳ございませんが、よろしくご配慮のほど、お願い申し上げます。


インフルエンザワクチンの作り方

インフルエンザHAワクチンの作り方の紹介です。

現在はA/ソ連型→A/新型になっています。また、B型も2種類含まれています。 インフルエンザHAワクチンができるまで(アステラス製薬株式会社)より

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