Ⅳ.新型コロナウイルスSARS-CoV-2のワクチンについて

 まず、2020年1月10日時点の、新型コロナウイルスワクチンについての現況について、解説いたします。
(ワクチンについては、状況が急展開しているため、毎月更新いたします。)

 現在、新型コロナウイルスに対するワクチン接種が、驚異的なスピードで進められています。もちろん、これは2021年1月10日現在、感染者9133万人、死亡者195万人という凄まじいパンデミックの大惨禍を一時も早く収束させるため、世界中の政府、国際機関、医学界が総力を挙げて取り組んでいるためです。

 何か、早く開発を進めること自体を批判することが「クールな態度」と勘違いしている、お気軽おバカ「コメンテータ」もいますが、毎日世界中でたくさんの人が亡くなっているのです。

 今は拙速巧遅が必要な時であり、できるだけスピードを上げてワクチンを完成させる必要があります。そのために、考えられない規模の資金とマンパワーが、新型コロナワクチンの開発のために惜しみなく投入されているのです。その結果の超スピードなのです。この動きはさらに加速させていかなくてはなりません。
 ただし、すっ飛び過ぎて、あとで多数の健康被害が出る事の無いよう、最大限の配慮と警戒を払うことは、もちろん当然の大前提です。
 
 近い将来、コロナワクチンの接種が日本でも可能な環境になった時に、ワクチンを打った方が良いか、少し待った方が良いか、迷う事態も起こるかもしれませんね。その時点でのコロナ流行状況、接種する方の年齢と、基礎疾患による発病後の重症化のリスクを考えて、コロナワクチンの接種を受けるかどうか考えるとよいでしょう。
 ただし、小児は2021年1月の段階では、ワクチンの接種対象に含まれておりません。

 当クリニックのかかりつけの患者さんとご両親には、そのときが来た時、ご心配なら鈴木医師にご相談ください。ご一緒に相談させていただきますので、安心してお待ちください。



①ワクチンの種類

 コロナワクチンについてお話しする前に、まず、ワクチンの基礎について簡単におさらいをしておきましょう。(ワクチン総論については、鈴の木版-予防接種のすべても、ご参照ください。)

 ワクチン(予防接種)とは、ヒトの身体の中に病原体そのものや、病原体のからだの一部、病原体の出す毒素などを、ヒトに有害な影響を及ぼさないように処理した上で接種して、病原体に打ち勝つ抵抗力を獲得するものです。

 ワクチンの投与方法には、注射(筋注、皮下注、皮内注射)、内服(経口)、点鼻があります。

 まず、ワクチンを分類してみます。(それぞれの解説は、後で詳述します。)

 大分類  小分類  ワクチン
Ⅰ生ワクチン ①生ワクチン MRワクチン、水痘ワクチン、おたふくワクチン、BCG、ロタワクチン
Ⅱ不活化ワクチン ①不活化ワクチン(狭義) インフルワクチン、ヒブワクチン、肺炎球菌ワクチン、日本脳炎ワクチン
②トキソイド 破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド
③VLPワクチン HPVワクチン
Ⅲ核酸ワクチン ①DNAワクチン AG0301-COVID19(国産コロナワクチン)
(遺伝子ワクチン) ②mRNAワクチン mRNA-1273(モデルナのコロナワクチン)、BNT162b2(ファイザー・ビオンテックのコロナワクチン)
  ③ウイルスベクターワクチン ChAdOx1nCoV-19/AZD1222(アストラゼネカのコロナワクチン)

Ⅰ生ワクチン

 毒性をきわめて弱くした病原体を、生きたまま体に接種して、病気に軽く感染させ、しっかりした免疫をつけようというものです

 麻疹・風疹(MR)混合ワクチン、水痘ワクチン、おたふくワクチン、BCG、ロタウイルスワクチンがこれに当たります。

Ⅱ不活化ワクチン

①(狭義の)不活化ワクチンは、細菌、ウイルスをこなごなにして、その一部の成分を体に接種するものです。
 ヒブワクチン、肺炎球菌ワクチン、四種混合ワクチン、日本脳炎ワクチン、インフルワクチン、髄膜炎菌ワクチンがこれに属します。

 さらに、このグループの中には、組換え蛋白・ペプチドワクチン(不活化ワクチンに含まれるさまざまな成分の一部を、遺伝子組み換え技術を用いて、大腸菌や酵母菌の中に遺伝子を転写し、免疫獲得に必要な抗原蛋白やペプチドだけを大量に作らせたワクチン。アミノ酸が多いと蛋白、少ないとペプチドと呼びます。)があり、B型肝炎ワクチンがこれにあたります。

②トキソイドは、細菌が産生する毒素を無害化して、人に接種するものです。
 ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイドがこれに含まれます。

③VLP(Virus Like Particle=ウイルス様粒子)ワクチンは、ウイルスを包む殻のタンパク質の部分を人工的に合成して、人に接種するものです。これはにせものウイルスで、肝心の遺伝子が含まれていないため、病原体が増殖することはなく、病気も発病しません。
 子宮頸がんを予防するHPVワクチンが、このVLPワクチンになります。(HPVワクチンについてはこちらをお読みください。)

 
この生ワクチン、不活化ワクチンの2種類のワクチンが、今まで実際の医療現場で長い間使用されてきましたが、コロナ流行の中で、全く新しいタイプのワクチンが華々しく登場したのです。(右図は、廣谷徹:ワクチンの種類より転載)
 


②核酸ワクチン

 
この新しいワクチンは、核酸ワクチン(遺伝子ワクチン)と呼ばれます。核酸ワクチンは、コロナウイルスの遺伝子情報をヒトの体に注入するもので、さらに遺伝子の種類によって、DNAワクチンとRNAワクチンに分けられます。

 DNA(デオキシリボ核酸)やRNA(リボ核酸)は核酸と呼ばれ、タンパク質の設計図(遺伝子と呼ばれます)です。塩基であるAアデニン、Gグアニン、Cシトシン、Tチミン、Uウラシルを対にして組み合わせて、対応するタンパク質を合成します。(わかりやすい説明はこちらをご覧ください)
 
①DNAワクチンはヒトの体に接種されると、mRNA(メッセンジャーRNA)を誘導し、この作成されたmRNAはヒトの組織を使って、DNAの指示通りにウイルス蛋白を合成させます。作り出されたウイルス蛋白は、ウイルス自身の成分であり、ヒトの体の一部では無いため、ヒトの免疫機構は異物(非自己)として認識し、抗体を作って攻撃し、体の中から排除します。

 この記憶は保存され、新たに同じ蛋白を持ったウイルスが侵入してきた時には、速やかに異物として認識し、攻撃して排除します。これが核酸ワクチン(DNAワクチン)の原理です。

②mRNAワクチンは、DNAを介さず、直接mRNAを体内に注入するワクチンです。しかし、注入されたmRNAは非常に脆弱で、ヒトのRNA分解酵素で簡単に分解されてしまうため、細かい脂肪の殻でmRNAを包み込み、脂質ナノ粒子(LNP:lipid Lipid-polymer nanoparticle)という安定したカプセルにして、注入します。LNPにカプセル化したことにより、ヒトの細胞内にmRNAが取り込まれやすくなります。

このワクチンで使用された、脂質ナノ粒子(LNP:Lipid-polymer hybrid nanoparticle)とは、直径が10nm(ナノメータ)から100nmの大きさの脂質(脂肪)を主成分とする粒子で、いろいろな成分が入っていて、細胞にくっつきやすい性質になっています。
 中にDNA、RNAや薬物などを包み込んで運搬する運搬係(ベクターと呼びます)として働きます。いわば、新型コロナウイルスを脂肪の殻で包んで、ヒトの細胞に入りやすく運んでいくカプセルのような存在、といえるでしょう。


 注入されたmRNAはヒトの組織を使って、自分の設計図通りのウイルス蛋白を合成します。合成されたウイルス蛋白は、ウイルス自身の成分であり、ヒトの体の一部では無いため、ヒトの免疫機構は異物として認識し、抗体を作って攻撃し、敵として排除します。

 この記憶は保存され、新たに同じウイルスが侵入してきたときには、速やかに異物として認識、攻撃し、排除します。これが核酸ワクチン(mRNAワクチン)の原理です。

 さらにmRNAを取り込んだ細胞では、ウイルス遺伝子の命令で作られたウイルス蛋白の一部が細胞表面から顔を出して、まるでウイルス感染細胞のような、ヒトの細胞とは異なったおどろおどろしい顔つきになるため、免疫細胞=T細胞(リンパ球)に正体を見破られ、T細胞に攻撃されて破壊されます(細胞性免疫反応といいます)

 mRNAワクチンは液性抗体だけでなく、この細胞性免疫も獲得するため、効き目がより強くなる、と考えられています。

 現在接種の始まった、ファイザー・ビオンテックのワクチン(BNT162b2)とモデルナのワクチン(mRNA-1273)は、このmRNAワクチンです。

 以上、見てきたように、核酸ワクチンは、生きた病原体を弱らせたり、粉々にしてその死骸の一部を体に注入するワクチンではありません。生きた病原体とは全く独立した核酸遺伝子断片を実験室内で化学的に作成し、さらに脂肪微粒子(LNP)で包み込んでヒトの体に注入するという、今までのワクチンとは全く異質な工程で作り出されたワクチンです。

 このワクチン製造には、病原体の存在は必要なく、必要なのは核酸遺伝子(の一部)のため、短期間に大量生産が可能です。しかも病原ウイルスはいないため、病気の汚染の心配もありません。また、RNAウイルスが変異しても、一部切り取ったRNA断片が同一ならば効果に問題はないし、変異した部分に該当するなら、別の核酸遺伝子の一部を増幅すれば良い、ということになります。

 「工業生産」されたワクチンで、生物学というよりは物理学の香りのするワクチンですね。


③一方、ウイルスベクターワクチンは、mRNAワクチンとは異なるワクチンです。このワクチンは、チンパンジーのアデノウイルスなど他のウイルスにコロナウイルスの断片を作る遺伝子情報を組み込み、このウイルスを人に注射します。

 人の体内に注入されたウイルスは、SARS-CoV-2のとげの蛋白質(スパイク蛋白)を持っているため、このトゲの蛋白質に対し、免疫が誘導されるようになります。このウイルスは、SARS-CoV-2のウイルスの遺伝子をヒトに運搬することになるので、ウイルスベクターと呼ばれます。

 英国で接種が始まった、アストラゼネカのワクチン(ChAdOx1nCoV-19/AZD1222)は、このウイルスベクターワクチンです。


 
核酸ワクチンは全く新しいタイプのワクチンであり、現在、臨床現場で使用されている、実用化されたワクチンはありません。ただし、がんワクチン、HIVワクチンなどを開発するために、さまざまな核酸ワクチンに対する研究が進められてきた歴史があります。この研究の蓄積が、今回のSARS-CoV-2ワクチン開発に大いに役立ったようです。

 厚労省新型コロナウイルス感染症対策推進本部が8月21日に委員会に提出した資料の図がわかりやすいので、転載いたします。

ピンクエリアは従来型ワクチン。グリーンエリアは新しいワクチン。(厚労省新型コロナウイルス感染症対策推進本部



③ワクチンの開発のプロセス


 新しいワクチンを開発するには、Ⅰ-基礎研究、Ⅱ-非臨床研究、Ⅲ-臨床研究の3つのステップを踏まなくてはなりません。

Ⅰ基礎研究

 まず、基礎研究とは、ワクチンに使えそうな物質を探しだし、安全性や有効性を検証します。この研究には、通常大体2~3年かかります。

Ⅱ非臨床研究

 そして、効果が確認できたら、第2ステップとして、非臨床研究に進みます。これは、動物実験や試験管内で実験を行い、探し出したワクチン候補が試験管内でどのように反応するか、動物に実際使ってみた時の効果や安全性はどうか、について調べます。この実験に、さらに3~5年かかります。
 非臨床実験で有効と判断できて、ようやく人間に対する臨床研究を行う事ができる段階になります。

 Ⅲ臨床試験(治験)

 人間に対する臨床試験は、まず、
臨床第1相試験(安全性確認)として、少数の健康な成人ボランティア(被験者)に対して、ワクチン候補薬の安全性や吸収、排泄などを調べます。

 さらに
臨床第2相試験(有効性試験)として、比較的少数(第1相試験よりは多い)の病気の患者にワクチン候補を接種し、使用量や使用方法の検討を行います。これで良い結果が得られれば、いよいよ第3相試験に入ります。

 
臨床第3相試験(本格的治験)は多数の患者に接種し、どのくらいワクチン候補が有効か、また副反応の発現についても調べます。このときに本物のワクチン候補とにせのワクチン候補(他のワクチンや生理的食塩水などを使う)を接種者には分からないよう接種し、試験が終わった後、薬と偽薬を使った時の被験者(接種された患者)の病気の発病の差を比較し、有効かどうかを判定します。(二重盲検法)
 この臨床試験に、通常3~7年かかるのです。

 この臨床試験の結果が良ければ、国に承認申請を行います。約1年の審査で承認認可が下りれば、晴れて正式のワクチンとして、患者さんに使用できることになります。

 この全過程が現在のコロナの脅威のため、各国で1年にも満たない超スピードで開発競争が繰り広げられているのです。

 アメリカNewYorkTimesの2020年9月23日号によれば、新型コロナウイルスワクチンは、世界各国で164種のワクチンが開発されており、臨床試験まで到達したワクチンが65種、第1相試験中が33種、第2相試験中が15種、第3相試験中が11種、すでに認可されたワクチンも6あるのだそうです。まるでカンブリア大爆発のようですね。

 2020年11月28日の時点では、認可されたワクチンはロシア、中国の製品だけであり、先進国ではまだ認可されたワクチンはありませんでした。
 しかし、ロシア、中国で開発されているコロナワクチンは、国威発揚と世界戦略のため、国家権力が強力に係わっている政治色と軍事色の強い製剤であり、特に中国製のワクチン開発は中国人民解放軍が強く関与しています。現在、中国製のワクチンはCOVID-19で苦しむ東南アジア諸国に対する政治的懐柔の道具として使われ、ワクチンはまさしく中国の生物兵器としてその威力を存分に発揮しているのです。もちろん、日本学術会議もこの中国人民解放軍の活動に、身も心も惜しみなく協力し、大きな貢献をしてきました。

 ロシアのワクチン(スプートニクⅤ)にいたっては、第3相試験をすっとばして、膨大な人数の健康な人達にかたっぱしから接種を行うという、信じ難い人命無視の暴挙が行われました。しかも、この暴挙を指揮したプーチン自身は、生来の臆病さからこの「安全な」ワクチンの接種を受けていないのです。



ワクチンの有効性

 ワクチンの有効性は、次の3つの項目で評価されます。
①immunogenicity:
免疫原性(血液検査の有効率)=ワクチンを接種されたヒトの血液中に出現した抗体のレベル(抗体価)が、感染や発病を阻止できるレベルに達したヒトの割合を調べます。
②efficacy:
臨床試験の有効率=接種したヒトの群と、ワクチンを接種していないヒトの群(対照コントロール群)を比較して、発病したヒトの割合を調べます。
③effectiveness:
実際の有効率=多くのヒトがワクチンが接種した後、実際にどのくらいヒトが発病し、感染症が実際に減少したかを調べます。
 有効率はおもに発病するかどうかで評価することが多いですが、重症化率致命率を指標にすることもあります。

 核酸ワクチンはまだ接種が開始されたばかりですので、 effectivenessの評価はこれからですが、efficacyは90%以上(ファイザー・ビオンテックのワクチンは95%、モデルナのワクチンは94.1%)と報告されています。

efficacy:臨床試験の有効率90%とは、1000人ワクチンを接種したら、900人がコロナにかからなかった、という意味ではありません。1000人にワクチンを接種し、1000人に偽ワクチン(他のワクチンや生理的食塩水など)を接種した時に、ワクチン接種群で10人発病(0.01)し、偽ワクチン接種群で100人発病(0.1)したとすると、このワクチンの有効率は1-0.1/1という計算で、90%と評価されるという意味になります。すなわち、偽ワクチンを接種した人と比較して、ワクチン接種したものの発病率(リスク)が相対的に90%減少した。あるいは、偽ワクチンを接種したもののうち90%は、ワクチンを接種していれば発病しなかった。ということです。
 
*表は感染症学会 ワクチン委員会 COVID-19ワクチンに対する提言より



ワクチンの副反応

 ワクチン接種は、健康な人に生きた病原体や死んだ病原体の一部を植えつけるものですから、必ず何らかの生体反応が起こります。このうち、生体に不利益な現象を有害事象adverase eventと呼びます。これは、ワクチン接種後のタイミングで起こる現象全てを含みます。極端な例として、ワクチン接種後、帰宅途中でころんで足を捻挫しても、ワクチン接種後の有害事象となるのです。

 この有害事象のうち、ワクチン接種自体によって誘導された、健康不利益な現象を副反応adverse reactionと呼びます。ワクチン接種後に起こる注射部位の腫れやアナフィラキシーなどは代表的な副反応です。

 コロナワクチンであるRNAワクチンに含まれるmRNAは、分解されやすく、長時間細胞の中に留まることはできません。また、細胞核内に侵入することはできず、ヒトの染色体に影響を与えることもありません。そのため、RNAワクチンは比較的安全なワクチンと考えられています。
 ただし、長期的な安全性やLNPに含まれる脂肪の長期的な影響は今後時間をかけて追跡され、明らかにされていくものと思われます。

 有害事象のうち副反応について、まず感染症学会 COVID-19ワクチンに関する提言から、「COVID-19ワクチン(mRNAワクチン、ウイルスベクターワクチン)の有害事象の頻度」の表を2点を転載します。


 

 mRNAワクチンの有害事象(とくにワクチンに関連する副反応)のうち、局所反応は、疼痛が70~80%にみられ、非常に高頻度で起こるようです。特に1回目の後30%、2回目の接種の後15%の人には、日常生活に支障が出るほどの激しい痛みが見られるようです(そのほとんどは、1~2日でおさまるようです)。 疼痛の頻度は、プレベナー13の68%を凌いでおり、mRNAワクチンは最も痛いワクチンと言われるようになるかもしれませんね。
 それ以外には、局所の発赤・腫れが5~6%に見られるようです。

 全身の有害事象では、全身倦怠感、頭痛が2人に1人、寒気、筋肉痛、関節痛などは3~4人に1人と、高頻度で見られるますが、発熱は2回接種後に10~15%見られる程度のようです。

コロナワクチンに比較的特異な副反応として、ワクチン関連疾患憎悪 (VAED:vaccine-associated enhanced disease)があります。 このVAEDとは、接種を受けた人がワクチンが対象とする病原体による病気を発症した時に、ワクチンの接種を受けていない人よりも、逆に症状がひどくなってしまう現象のことをいいます。VAEDは、ワクチンによって作られた抗体によって、病気の症状が悪化してしまう抗体依存性増強(ADE:antibody-dependent enhancement)によるもので、デング熱のワクチン開発中で観察され、この現象のためにデング熱ワクチンは製造中止となりました。
 ADEは、免疫細胞がウイルスを取り込んでも殺すことができず、むしろ寄生バチに侵された青虫のようにウイルスを細胞内で増やし、病原体を撒き散らし病気の症状を悪化させてしまうため、と説明されています。

 この現象は一本鎖RNAウイルスで起こりやすいと言われており、SARSやMERSに対するワクチン作成中にも報告されています。幸い、SARS-CoV-2のRNAワクチンでは報告がありませんが、ワクチン接種後でも十分な注意・観察が必要だといわれています。




⑥2021年1月に接種が行われているワクチン


 現在、我が国で接種に向けて準備が進められて、欧米ではすでに接種が始まったコロナワクチンが3種あります。
 mRNAワクチンである、ファイザー・ビオンテックのBNT162b2、モデルナのmRNA-1273、そしてウイルスベクターワクチンである、アストラゼネカ・オックスフォードのChAdOx1nCov-19 です。

 さらに、我が国でもベンチャーのアンジェスと大阪大学が共同で開発している、国産DNAワクチンであるAG0301-covid19が、実用に向けて着々と準備が進められています。

 開発品 社名・研究機関   作用
mRNAワクチン(脂質ナノ粒子組み込み)
mRNA-1273
 米モデルナ/米国立アレルギー・感染症研究所 メッセンジャーRNAを使用して、体内にタンパクを作り、抗体を誘導。
mRNAワクチン(脂質ナノ粒子組み込み)
BNT162b2
 独ビオンテック/米ファイザー メッセンジャーRNAを使用して、体内にタンパクを作り、抗体を誘導。
アデノウイルスベクターワクチン
ChAdOx1nCoV-19/AZD1222
 英オックスフォード大
/英アストロゼネカ
チンパンジーのアデノウイルスの遺伝子に、SARS-CoV-2の遺伝子を組み込み、体内でコロナウイルスのスパイク蛋白を生成させる。
DNAワクチン
AG0301-COVID19
 日本アンジェス/大阪大  大腸菌のDNA分子であるプラスミドをベクターとして利用する、プラスミドDNA・ワクチン。

BBCによる各ワクチンの比較も示します。( Is the Covid vaccine safe?より転載)


BNT162b2(ファイザー・ビオンテックのワクチン)
1)開発元
 ドイツの遺伝子医薬品開発ベンチャー企業だったビオンテック社とアメリカの巨大製薬企業ファイザーが、共同で開発したmRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンです。(写真はWikimedia Commons File:Pfizer-BioNTech COVID-19 vaccine (2020) C.jpgより)

2)作用機序
 新型コロナウイルスが細胞に侵入するときに、細胞に密着するスパイクと呼ばれる糖蛋白(ウイルスから出ているトゲの蛋白質)を設計する情報を持ったmRNA(メッセンジャーRNA)を、脂肪の膜である脂質ナノ粒子で包み込んで、ヒトに接種するmRNAワクチンです。

 ヒト体内に注入されたmRNAが、ヒト体内の細胞質でヒトの成分を使って、SARS-CoV-2のスパイク蛋白を作ります。ところがこのウイルススパイク蛋白はヒトにとって異物のため、免疫が誘導されます。

 ただし、この作成されたウイルスのスパイク蛋白自体は無害です。また、このスパイク蛋白が作られた後、ワクチンのmRNAはヒトの細胞で処理されて、数時間で破壊されます。mRNAがヒト体内に長く留まることはありません。また、このmRNAはヒト細胞の細胞質リボゾームでスパイク蛋白を作り出しますが、ヒト細胞核内に侵入することは出来ないので、ヒトの遺伝子情報そのものが影響されることはありません。

3)接種の方法
 21日の間隔を開けて、2回上腕三角筋に注射します。1回接種で52.4%、2回接種で95%のefficacyのため、2回接種が必要です。また、3回めの接種は認められていません。
 接種間隔が延びても、短かったとしても、接種回数は2回と決まっています。

 他のワクチンとの同時接種はできません。ファイザー・ビオンテックのワクチンを接種した前後14日間は、他のワクチンの接種は控えます。

 同じRNAワクチンでも、モデルナのワクチンとの互換性は認められていないため、同じファイザー・ビオンテックのワクチンを2回接種しなければなりません。(この辺はHPVワクチンやロタウイルスワクチンと同じです。)

4)ワクチンの効果
 このBNT162b2の第3相試験は、2020年7月からアメリカ、ブラジル、アルゼンチン、南アフリカ、ドイツなどの154施設で開始され、43538例が登録され、38955例がすでに2回ワクチンの接種が済んでいます。11月9日に中間解析の結果が公表され、全体で94例がCOVID-19を発症し、
ワクチンの有効率は90%だった、と報告されました。(詳しくは、ワクチンの有効性を参照ください。)

 すでに数万人に接種が蓄積されてきており、今後このワクチンの実際の有効率effectivenessが報告されていくと思われます。

5)ワクチンの対象
 16歳以上が対象となっており、子どもは接種できません。健康なご両親も当面接種の対象とはなりません。アメリカでは全国民が原則接種対象となっています。その中で接種を控えたり、注意したりする人はこちらで述べられています。

6)ワクチンの副反応
 局所症状として、接種部位の痛み、腫れ、赤くなる、接種した側の脇の下のリンパ節の腫れがみられるようです。
 全身症状として、発熱、全身のだるさ、頭痛、寒気、筋肉痛、関節痛がみられます。

 即時型反応(接種4時間以内に起こる、じんましん、血管のむくみ、ぜいぜい、アナフィラキシーなど)の発生は0.63%(プラセボ偽薬では0.51%)と報告されています。重いアレルギー体質のある人はアナフィラキシーを生ずる事があるようです。

 これらの副反応は接種後3日以内に起こり、多くは1~2日の経過で消失するようです。また、1回目より2回目の方が副反応が起こりやすく、55歳以上より18歳~55歳の方が多く見られるようです。

 ただし接種によって副反応が起きたとしても、新型コロナウイルスワクチン接種で重大なアレルギー反応があった人、ポリエチレングリコール(PEG)を含む薬剤か、ポリソルビートに重大なアレルギー歴のある人*で無ければ、2回目の接種が推奨されています。

 
 *このような体質の人は、ワクチンに封入されている脂質ナノ粒子(LNP)にアレルギー反応を起す可能性があるためです。

 RNAワクチンは、他のワクチンと比較しても、接種後の副反応が比較的強く表われるようです。注射の痛みは、最も痛いと言われるプレベナー13やニュ-モバックスと同等か、それ以上と報告されています。比較的”痛み”の強いワクチンといえるでしょう。

 副反応については、こちらもお読みください。

7)ファイザー・ビオンテックのワクチンの問題点
 ファイザー・ビオンテックのワクチンは、-70℃前後という超低温で管理、運搬しなければなりません。普通の冷蔵庫で5日間、輸送用容器に入れても最大15日しか保存できないことが、大きな欠点となっています。

 そのために、ワクチンの保管には、超低温冷凍庫(ディープフリーザー)を用いて長期保管するか、配送外箱にドライアイスを充填することで10日程度外箱にワクチンを保管しながら、接種することになるようです。

 1バイアル箱195本のバイアルがセットで収納されていますが、1バイアルを生食水で希釈して5人分に調整して接種します。したがって、1バイアル箱から最大975回接種することができることになります。したがって、接種方式は集団接種が考えられているようです。

8)日本での接種計画
 ファイザー社と2020年7月31日に合意し、厚労省によれば、我が国はこのBNT162b2を、2021年6月末までに、6000万人分供給を受けることになっています。

 2021年1月現在、地方自治体レベルでファイザー・ビオンテックのワクチンの接種について、準備が進んでいるようです。

2021年1月17日追記:

 Bloombergによれば、田村厚生労働大臣は1月15日のブルームバーグとのインタビューで、コロナワクチンの国内の早期の接種開始に向け、承認を「なるべく早くやらないといけない」とした上で、「2月中旬くらいには、順調にいけば承認が下りればよいと思う」と語った。ファイザー社から1月中に国内治験データが届く予定で、先行して審査している海外治験データと合わせ、最終的に判断すると話した。ということです(本文はこちら)。

 あれれ~??。たしか、2020年10月6日のjiji.comで、同じ田村厚生労働大臣は10月6日の閣議後記者会見で、新型コロナウイルス感染症の治療薬候補アビガンをめぐり、政府が審査を3週間で終えて11月に承認する方向で計画しているとの一部報道について、「申請前から承認時期が決まっていることはあり得ない」と否定した。厚労相は「有効性や安全性を確認した上で承認するか決める。時期が決まっていたら審査する意味がない」と述べた。と報道がされました。
 そして、アビガンは厚労省のペーパー医者役人の筋書き通り、葬り去られてしまいましたが、コロナワクチンやレムデシビルなら、承認時期が決まっていてもおかしくないけど、アビガンだけは絶対認可しない、ということですよね、田村さん。(アビガンの茶番劇については、別稿で詳しく検証いたします。)


mRNA-1273(モデルナのワクチン)

1)開発元
 アメリカの遺伝子医薬開発ベンチャー企業のモデルナ社とアメリカ国立アレルギー・免疫研究所が共同で開発した、mRNAワクチンです。
(写真はFierce Pharmaより)

 ファイザー・ビオンテックのワクチンと同じmRNAワクチンです。ただし、両者に互換性はなく、同じメーカーのワクチンを使用しなければなりません。1回目がモデルナのワクチンなら2回目もモデルナのワクチンを使います。(このあたりは、ロタリックス、ロタッテックのロタワクチン、ガーダシル、サーバリックスのHPVワクチンと同じです。)

2)作用機序
 新型コロナウイルスが細胞に侵入するときに、細胞に密着するスパイクと呼ばれる糖蛋白(ウイルスから出ているトゲの蛋白質)を設計する情報を持ったmRNA(メッセンジャーRNA)を、脂肪の膜である脂質ナノ粒子で包み込んで、ヒトに接種するmRNAワクチンです。

 ヒト体内に注入されたmRNAが、ヒト体内の細胞質でヒトの成分を使って、SARS-CoV-2のスパイク蛋白を作ります。ところがこのウイルスのスパイク蛋白はヒトにとって異物のため、免疫が誘導されます。

 ただし、この作成されたウイルスのスパイク蛋白自体は無害です。また、このスパイク蛋白が作られた後、ワクチンのmRNAはヒトの細胞で処理されて、数時間で破壊されるため、mRNAがヒト体内に長く留まることはありません。

 また、このmRNAはヒト細胞の細胞質内リボゾームでスパイク蛋白を作り出しますが、ヒト細胞核内に侵入することは出来ないので、ヒトの遺伝子情報そのものが影響されることはありません。

3)接種の方法
 28日の間隔を開けて、2回上腕三角筋に0.5ml注射します。3回めの接種は認められていません。
 また、接種間隔が延びても、短かったとしても、接種回数は2回と決められています。

 他のワクチンとの同時接種はできません。モデルナのワクチンを接種した前後14日間は、他のワクチンの接種は控えます。

4)ワクチンの効果
 2020年7月から、アメリカなどで3万人規模で第3相臨床試験が開始されました。11月16日、臨床第3相試験の中間解析で94.5%の予防効果が認められたと発表されました。

 3万人の被験者のうち、95人発病し、ワクチン接種群は5人、偽ワクチン接種群は90人。発症者95人には、65歳以上の高齢者15人、アジア人など多様な人種20人など、重症化しやすい層も含まれていました。さらに、重症者の11名は全て偽ワクチン群から進展したそうです。また、副反応は軽微で、重大な副反応はみられなかったと発表されました。

5)ワクチンの副反応
 局所症状として、接種部位の痛み、腫れ、赤くなる、接種した側の脇の下のリンパ節の腫れがみられるようです。
 全身症状として、発熱、全身のだるさ、頭痛、寒気、筋肉痛、関節痛がみられます。

 即時型反応(接種4時間以内に起こる、じんましん、血管のむくみ、ぜいぜい、アナフィラキシーなど)の発生は1.5%(プラセボ偽薬では1.1%)と報告されています。重いアレルギー体質のある人はアナフィラキシーを生ずる事があるようです。

 これらの副反応は接種後3日以内に起こり、多くは1~2日の経過で消失するようです。また、1回目より2回目の方が副反応が起こりやすく、55歳以上より18歳~55歳の方が多く見られるようです。

 ただし接種によって副反応が起きたとしても、新型コロナウイルスワクチン接種で重大なアレルギー反応があった人、ポリエチレングリコール(PEG)を含む薬剤か、ポリソルビートに重大なアレルギー歴のある人*で無ければ、2回目の接種が推奨されています。

 
 *このような体質の人は、ワクチンに封入されている脂質ナノ粒子(LNP)にアレルギー反応を起す可能性があるためです。

 RNAワクチンは、他のワクチンと比較しても、接種後の副反応が比較的強く表われるようです。注射の痛みは、最も痛いと言われるプレベナー13やニュ-モバックスと同等か、それ以上と報告されています。比較的”痛み”の強いワクチンといえるでしょう。

 副反応については、こちらもお読みください。

6)ワクチンの対象
 ファイザー・ビオンテックのワクチンと異なり、モデルナのワクチンは18歳以上が対象となっています。子どもや健康なご両親は当面接種の対象とはなりません。アメリカでは全国民が原則接種対象となっています。その中で接種を控えたり、注意したりする人はこちらで述べられています。

7)問題点
 ファイザー・ビオンテックのワクチンのように、-80℃という低温で管理する必要が無く、流通・管理は容易なようです。モデルナワクチンは普通の冷蔵庫(2~8℃)で30日、品質は安定しており、-20℃なら6ヶ月間保存できるようです。1バイアル10人分で、最小包装は10バイアルで100人分ということになります。

 ただし、有効期限が製品製造から6ヶ月しかなく、医療機関到着時では5~7週しか余裕がないようです。

8)日本での接種計画
 厚労省によれば、2020年10月29日にモデルナ社が新型コロナウイルスのワクチン開発に成功した場合、武田薬品工業株式会社による国内での流通のもと、2020年上半期に4000万回分、来年第3四半期に1000万回分の供給を受けることについて、正式に契約を締結したとのことです。

 しかし、国内における臨床試験が1月20日から始まるため、ワクチンが承認されるのは早くても5月以降になるようです。

    *Answers News:武田薬品「モデルナの新型コロナワクチン 日本承認は5月以降」


ChAdOx1nCoV-19/AZD1222(オックスフォード大/アストラゼネカのワクチン)


1)開発元
 オックスフォード大学とイギリスの製薬企業アストラゼネカが共同で開発した、ウイルスベクターワクチン(遺伝子組換え)です。
(写真はexcite/reuterより

2)作用
 SARS-CoV-2のとげ(スパイク蛋白)から遺伝子を採取し、チンパンジーのアデノウイルスの遺伝子に、このとげの遺伝子を組み込みます。このアデノウィルスをヒトに接種すると、ヒトの体の中でコロナウイルスのスパイク蛋白が作り出され、これに対し免疫が誘導されることになります。
 ファイザー、モデルナのmRNAワクチンに対し、アストラゼネカのワクチンはウイルスベクターワクチンです。

3)接種方法
 28日間隔で2回、上腕三角筋に筋肉注射を行います。

4)ワクチンの効果
 アストラゼネカ社は2020年11月23日に臨床第3相試験で2回接種群で62%、1.5回接種群で90%の有効性があったと発表しました。
 イギリス、アメリカ、ドイツ、フランス、イタリア、オランダの欧州包括ワクチン同盟(IVA)、インド、Gaviアライアンスなどと協定を結び、年間20億本以上の供給をめざしています。しかし、1.5回投与群は本来2回接種するところを、誤って半量にしてしまった結果であり、追加の臨床試験を行うことになるようです。

5)ワクチンの副反応
 重大な副反応は無かったと発表されましたが、疲労感、頭痛、腕の痛みなどが報告され、今後の有害事象の発生について、追跡調査が行われます。

6)ワクチンの対象
 まだ、明らかにされていません。

7)問題点
 ワクチンの価格が高額ではなく、またワクチン保存法も従来の季節型インフルエンザワクチンと同じ冷蔵庫保存(2~8℃)で済むことから管理はしやすいようです。
 1バイアルで10回分、接種が行えます。

8)日本での接種計画
 アストラゼネカ社と2020年8月7日に基本合意し、厚労省によれば、我が国は2021年初頭から、段階的に1億2000万回分供給を受けることになっています。(しかし、アストラゼネカ社製のワクチンは追試なども行われる状況であり、遅延される可能性もあります。)

 アストラゼネカ社の発表によれば、ワクチン原液が供給され、第一三共、メイジファルマ、KMバイオロジクスの国内メーカーが製剤化するようです。

 まだ、薬事承認前です。


NVX-CoV2373(ノババックス社)

1)開発元
 アメリカノババックス社です。

2)作用機序
 NVX-CoV2373は、SARS-CoV-2のスパイク蛋白と免疫を増強するためのMatrix-M1アジュバント(サポニン)を併せ持つ、遺伝子組換えワクチンです。バキュロウイルス(蝶の幼虫に感染するDNAウイルス。ヒトへの病原性はありません。)に遺伝子を組み込み、昆虫細胞に感染させて、作り出した抗原を用いて、脂質ナノ粒子に包摂してヒトに接種します。

3)接種の方法

 まだ公表されていません。

4)問題点
 開発のペースは遅れています。 開発状況は臨床第1相試験では有効な結果が得られ、有害事象も軽微なものだったと報告されています。現在、第2相試験に入っているようです。

5)日本での接種計画
 ノババックス社製ワクチンは、武田薬品が2.5億回分生産するようです。(何かいつも武田薬品のようですね。)


AG0301-COVID19(アンジェス/大阪大学)

1)開発元
 バイオベンチャーアンジェス社と大阪大学が共同開発しています。

2)作用
 大腸菌の細胞内DNAであるプラスミドを、ベクター(運搬係)として利用する、プラスミドDNA・ワクチンです。

3)開発状況
 健康成人30人で、臨床第1相試験が始まったところです。

4)問題点
 まだ、詳細は発表されていません。

5)日本での接種計画
 未定です。



⑦コロナワクチンは接種した方が良いか

 新型コロナウイルスのワクチンが接種できる状況になったら、接種するかどうか、悩むところですね。ただし、我が国が接種できる態勢になっても、高齢者、基礎疾患を持っている人、医療従事者がまず優先されると思われます。(新型コロナウイルスワクチンの接種について
 ①接種を考える対象者の年齢
 ②COVID-19の流行の状況
 ③ワクチン接種の海外の状況
この3点を踏まえて、考える必要があります。

 ただ、状況は流動的なので、そのときが来たら、HPでも当クリニックの見解を公表しますし、かかりつけ登録の患者さんのご家族には個別のご相談にも応じたいと考えております。




⑧付録:COVID-19 mRNAワクチン:あなたが知っておくべくこと(フィラデルフィア小児病院ワクチン教育センター)

 アメリカフィラデルフィア小児病院ワクチン教育センターは、さまざまな国の言語によるワクチン情報を発信しています。(日本語版もあります。)
 今回、新型コロナウイルスのmRNAワクチンについての解説記事が公開されたので、その一部を転載いたします。(原文全体はこちら。ご興味のある方は、全文をお読みください。)
 ただし、このリーフレットはアメリカの家族に対するものであり、我が国の状況とは少し異なる部分も見られます。ただ、わかりやすく、内容は充実しているので、ぜひ一読をお勧めいたします。
 以下、その一部を掲載します。
(右イラストはCDC COVID-19 Vaccinesより)

Q. mRNAとはなんですか?
A. mRNAはメッセンジャーRNAの略で、タンパク質を作るための設計図です。細胞の核内に存在するDNAは mRNAを作り、それを核外周囲の細胞質に送ります。一度細胞質に入ると、mRNAは多くの細胞タンパク質と酵素に翻訳されます。私たちの細胞は常にタンパク質を作るので、mRNAも常に作ります。タンパク質を作った直後に、mRNAは分解されます。

Q. COVID-19 mRNAワクチンの接種をすべきでないのは誰ですか?
A. いくつかのグループはワクチンを接種すべきではなく、また別のグループは医師に相談するか、特別な手順に従うべきです。
COVID-19ワクチンを接種すべきでない人
 • mRNAワクチン成分に対して重度のアレルギーを持っている人(すなわち、アナフィラキシーを引き起こす、または医学的介入を必要とする人)。
 •
16歳未満の人。
 • 現在、隔離またはCOVID-19の症状を有している人。 これらの人々は、ひとたび隔離が終了し、主要な症状が解消された場合、予防接種を受けることができま す。

リスクと利点を検討し、医療提供者と相談した後にワクチンを接種する可能性のある人
 • あらゆるワクチンまたは注射薬に対する重度のアレルギーの病歴のある人
 • 妊娠中の女性
 • 特定の免疫不全または自己免疫状態の人
 • 母乳育児中の女性
 • 抗凝固剤使用中の人

特別な手順に従うべき人
 • ワクチンまたは注射薬以外の(医学的介入が必要な)重度のアレルギーの既往がある人は、接種は可能ですが、ワクチン接種後30分間、ワクチン接種場所に留まって医学的観察を行う必要があります。
 • 予防接種後に発熱した妊婦は、アセトアミノフェンを服用する必要があります。
 • 最近COVID-19に感染し、抗体による治療法(例えば、モノクローナル抗体や回復期血漿など)で治療された人が接種を受けるためには、治療後90日まで待つ必要があります。
 • COVID-19曝露が判明している人は、接種を受ける前に、隔離が終了するまで待つ必要があります(老人ホーム、刑務所、ホームレスシェルターなどのグループ環境に住んでいる場合を除きます。この場合、隔離期間中でも接種することができます)。
 • 別のワクチン(非COVID-19ワクチン)を接種した人は、COVID-19ワクチンを接種する前に少なくとも14日、待つ必要があります。同様に、COVID-19ワクチンを接種した場合、他のワクチン(非COVID-19ワクチ ン)を接種する前に少なくとも14日、待つ必要があります。

Q. COVID-19 mRNAワクチンは何回接種する必要がありますか?
A. mRNAワクチンは、2回の接種が必要です。ファイザーのワクチンは、21日間隔、モデルナのワクチンは、28日間隔で接種する必要があります。
 2つのmRNAワクチンには 互換性がありません。最善の予防効果を得るためには2回の接種が必要であるため、接種者は初回接種としてどちらを接種したかを確実に把握し、特に2回目接種のためにいつ再診すべきかを明確にする必要があります。ただし、1回目と2回目の投与の間に推奨時間間隔を超えてしまった場合でも、接種回数を初めから再開する必要はなく、中断されたところから再開できます。

Q. mRNAワクチンは安全ですか?
A. はい。しかし、両方のmRNAワクチンはmRNAによって生成されたSARS-CoV-2スパイクタンパク質に対する免疫応答の結果として、副作用を引き起こします。副作用は2回目接種後に頻繁に発生し、55歳未満の人によく見られます。ある意味、免疫反応が活発であればあるほど、副作用は、より一般的になります。
 mRNAワクチンによる最も一般的な副作用は次のとおりです:
 • 倦怠感
 • 頭痛
 • 筋肉痛
 • 微熱
 • 悪寒
 • 関節痛
 通常、これらの副作用は1〜2日しか続きません。ほとんどの人では重大な副作用を認めませんが、一部の人は、もし気分が悪い場合、 翌日仕事を休む必要がないように、予防接種スケジュールの調整を希望するとよいでしょう。

Q. COVID-19の予防接種を受けた後であっても、ウイルスを拡散する可能性はありますか?
A. COVID-19に対するmRNAワクチンは、疾病予防に非常に効果的であることが示されていますが、症状を伴わない感染(不顕性感染)を予防できない可能性があります。
 要するに、予防接種を受けた人が症状がなくても感染した場合、彼らはウイルスを広める可能性があるということです。これが可能かどうかを判断するための調査はまもなく完了します。
 しかし、
この不確実性を考えると、予防接種を受けた人々は依然としてマスクを使用し、ソーシャルディスタンシング対策を実践する必要があります。




参考文献:廣谷 徹:新型コロナウイルス治療薬・ワクチン開発最前線
       厚労省:新型コロナウイルス感染症のワクチンについて
       厚労省:新型コロナウイルス感染症のワクチン
       大阪大学微生物病研究所:5.ワクチンと治療薬
       日経バイオテク:新型コロナワクチン、見えてきた4つの課題
       日本感染症学会 ワクチン委員会:COVID-19ワクチンに関する提言
       Chidren's Hospital of Philadelphia Vaccine Education Center:Q&A COVID-19 mRNAワクチン:あなたが知っておくべきこと(日本語)

2021.1.13 大幅に加筆修正しました。

コロナ情報コーナーに戻る
新型コロナウイルス感染症の治療薬についてに戻る
新型コロナウイルス感染症総説に戻る