Ⅱ.細菌の感染症


1.溶連菌感染症


2.百日咳

3.カンピロバクター腸炎

4.腸管出血型大腸菌感染症

5.マイコプラズマ肺炎

6.結核



Ⅱ.細菌の感染症

1.溶連菌感染症


溶連菌感染症は、A群β溶血性連鎖球菌による感染症です。溶連菌感染症は、感染して2~4週後に急性糸球体腎炎(PSAGN)やリウマチ熱、アナフィラクトイド紫斑病を引き起こすことがあり、完全に除菌することが必要です。

溶連菌の症状

潜伏期間は、通常1~4日で、感染経路は咳などからうつる飛沫感染が主で、食品による経口感染の報告もあります。

症状は突然の38℃以上の発熱、のどの腫れや痛み、首のリンパ節の腫れが多く、溶連菌の出す毒素による赤く細かい小さな発疹がくび、胸、わきの下や臀部、大腿部に広がります。

溶連菌によるのどの出血斑を伴なう咽頭炎は特徴的で、典型例では検査をしなくても、小児科専門医なら診断がつくほどです。苺舌はあまりはっきりみられないことが多いです。咳はあまりみられません。

病初期に頭痛を訴えることも多く、また嘔吐、腹痛を伴うことも少なくありません。

解熱後、指の皮が剥けてくることがあります(落屑)。これらの症状が幼稚園児、小学生に見られれば、溶連菌感染症を疑わなければなりません。


3歳以下のお子さまの場合は、より軽い微熱、鼻汁、リンパ節の腫れがだらだら続くこともあります。

とびひや皮膚の化膿巣が、溶連菌によることもあります。

年齢は515歳の子どもに多くみられますが、家族内感染でお母さま、お父さまにうつることもあります。

溶連菌の検査

診断は咽頭培養といって扁桃の細菌を培養して確定しますが、結果が出るまでに1週間以上かかるため、溶連菌迅速試験がよく用いられます。

溶連菌迅速検査はA群溶連菌抗原を検出するもので、A群溶連菌感染の有無が5分で判断できます。血液検査では、ASO(抗ストレプトリシンO抗体、溶連菌の菌体外毒素に対する抗体)が感染の1週間後から増加し、3~6週でピークになるため、この上昇は診断的価値があります。

溶連菌感染症は症状の無い健康保菌者への検査と抗菌剤投与は意味がありません。国立感染症研究所のHPより引用します。

→学校での咽頭培養を用いた研究によると、
健康保菌者が15〜30%あると報告されているが、健康保菌者からの感染はまれと考えられている。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎とは;IDWR 2003年第37号掲載 

当クリニックは過剰診断、過剰投薬を防ぐため、全く症状の無い児への溶連菌検査は行いません。

溶連菌の治療

治療は、ペニシリン系抗生剤(ワイドシリン、パセトシン)を10~14日間服用することが原則です。これは現在の急性感染を治療するだけでなく、合併症を予防するために投与しています。ただし、ペニシリン系抗生剤の服用後、1週間ごろに発疹が出る場合があり、その時は抗生剤を変更します。

抗生剤を飲み始めると、1~2日で発熱、咽頭痛、発疹などの症状はほとんどおさまりますが、必ず10日間は服用してください。

抗生剤服用終了1週間後に尿検査を行い、尿に異常がないことを確認して、治療を終了しています。

万が一、尿検査で血尿や蛋白尿がみられれば急性腎炎と診断し、治療を始めます。ただ、発病後1~3週間後に腎炎になる例もあるため、検尿時は正常でも、その後に腎炎を発症することもあります。そのため、尿検査で異常がなくても、その後おしっこが出なくなったり、むくんできたり、尿の色が褐色になったりしたときには再診してください。もう一度、尿検査を行います。

また、検尿で微小血尿などの病気が見つかることもあります。


予防方法としては、手洗い、うがいをよく行うことが勧められています。

登校・登園基準

学校保健安全法では「医師が感染のおそれがなくなったと認めるまで」、保育所における感染症対策ガイドラインでは「抗生剤治療開始後24時間~48時間を経過していること」が登園の目安とされています。

当クリニックでは、抗生剤治療開始後、1~2日目に再度診察を行い、症状が改善していれば、登校・登園許可をお出ししています。




2.百日咳

現在、東京では百日咳が流行しています。これは、百日咳含有ワクチン(三種混合ワクチン、四種混合ワクチン)を1歳半に打ってから10年がたち、免疫の低下した学童の間で流行しているものです。したがって、年長児の長引く咳は要注意です。

百日咳の症状

潜伏期間は、通常7~10日で、感染経路は咳などから移る飛沫感染と、痰などに触って移る接触感染の2つです。

百日咳の症状は、3期に分けられます。以下はワクチンをしていない子どもの、典型的な百日咳の症状の経過を述べていきます。

第1期は、最初は咳、鼻などのかぜ症状から始まり、徐々に咳がひどくなります。大体、2週間続きます(カタル期)。

その後、最も症状のひどい時期になります。こんこんと短い断続的な咳で激しく咳込んだ(スタッカートといいます)後、ひーと笛を吹くような音を立てて、息を吸い込みます(笛声 ウープ whoopといいます)。
 
この咳発作を繰り返すことを、レプリーゼと呼びます。この状態が2週間続きます(痙咳期)。(実際の百日咳の咳の様子はこちら

激しい断続的な咳を繰り返し、刺激で咳が止まらなくなり、吐くこともあります。息を止めて咳をするために、顔の血管の圧力が高まり、顔中に点々と出血斑が浮き出ることがあります。1979年の百日咳の大流行の時は、このようなお子さまを外来でよく見かけました。

この時期を過ぎると、激しい咳は次第に減り、2~3週間で落ち着いてきます(回復期)。


百日咳は母親から免疫をもらえず、新生児でも感染します。生まれて間もない赤ちゃんが百日咳に感染すると、激しい咳よりは呼吸が止まって窒息したり、けいれんや脳症を起こしたりして重症の経過を取ります。

死亡率はアメリカの調査では、新生児では0.6%に及ぶといわれています。

百日咳の検査

①血清診断

百日咳の診断は、従来は血液検査で行いましたが、乳児期早期にワクチンを接種されているため、結果の判定は難しい例もありました。また、抗百日咳毒素抗体(抗PTIgG)測定は結果が出るまで数日かかること、しかも、2回採血し、抗体価の上昇を確認することが推奨されており、今日ではあまり行われなくなりました。

②遺伝子検出法(LAMP法、Loop-Mediated Isothermal Amplification法)


2016年11月から、百日咳菌核酸同定検査(LAMP法)が百日咳の診断に使用できることになりました。LAMP法による百日咳菌核酸検出は、
感度や特異度が高く、百日咳の診断もっとも優れていると評価されています。

当クリニックも正確な百日咳の診断を行うために、この検査法を採用しています。(→LAMP法の原理
 
LAMP法は、検査会社への外注のため、結果が出るのに3日かかることが最大にネックになっており、症状から百日咳を疑う場合は治療を始めながら、検査結果を待つことにしています。


百日咳の治療

治療は、マクロライド系抗生剤(ジスロマック、クラリス、エリスロマイシン)を5日間服用することが原則です(ジスロマックは3日間)。

予防方法は、生後3か月から1歳半までに、四種混合ワクチンを4回しっかり接種しておくことです。

登校・登園基準

学校保健安全法、保育所における感染症対策ガイドラインでは、「特有な咳が消失していること、または5日間の適正な抗菌剤による治療が終了していること」が登校・登園の目安とされています。

当クリニックでは、5日間の抗菌剤内服後、症状が改善していれば、登校・登園許可をお出ししています。




3.カンピロバクター腸炎

カンピロバクター属は赤ちゃんの敗血症という重い病気の原因菌(Campylobacter fetus)として知られ、ヒトに感染することはあまりない、珍しい細菌だと思われてきました。

ところが、検便の技術が進歩し、酸素のあまり存在しない真空に近い環境下(微好気性)で下痢便を培養すると、この仲間(Campylobacter jejuni/coli)が高率に検出され、ヒトの細菌性腸炎の主要な病原菌であることが明らかになりました。

カンピロバクタ-は自然界に広く分布し、いろいろな動物に感染しています。ヒトにはペットとの直接の接触や汚染された鶏肉を介して感染します。また、汚染された水道水を飲んで集団発生した報告もあります。
(写真は国立感染症研究所HPのカンピロバクタ―感染症より転載。

カンピロバクター腸炎の症状

潜伏期は2~10日で、感染経路は生食肉、特に鶏肉の経口感染が主だといわれます。また、調理に使った包丁、まな板、手指などを介して感染することもあるようです。

カンピロバクターは酸素(空気)と触れると死滅するので、室温に放置された食品は感染力は低下しますが、逆に冷蔵した場合は長期間生存し、食中毒を引き起こすといわれています。感染を防ぐ一番確実は方法は、食品の加熱をしっかり行うことです。


カンピロバクター腸炎の主な症状は、発熱、腹痛、下痢、血便です。1~3歳の乳幼児では赤い血の混じった粘血便がよくみられますが、他の発熱、嘔吐などの症状は軽いようです。

一方、学童ではかなり強い腹痛と水様の下痢が頻回で、血便も伴ないます。体温は37~38℃の発熱が1~2日続き、頭痛も訴えますが、嘔吐はあまりみられません。


食中毒としてのカンピロバクター腸炎

カンピロバクター腸炎は汚染された水道水によって集団発生したという報告もあります。また、生の鶏肉などにより、食中毒をおこします。

カンピロバクター腸炎の治療

治療は、カンピロバクターに効果のある抗生剤(エリスロマイシン、ホスミシン)を投与します。また、下痢に対しては、整腸剤(乳酸菌製剤)も併用します。ロペミン(ロぺラミド)はカンピロバクターなどの細菌性腸炎では使用してはいけません。

登校・登園基準

登校・園基準は、特にありません



4.病原性大腸菌感染症

大腸菌のなかには、病原性を持つグループがあります。特に、ベロ毒素をまき散らす、腸管出血型大腸菌は溶血性尿毒症症候群を併発し、死に至ることがあるので、要注意です。

病原性大腸菌感染症の症状

潜伏期間は、通常10時間から6日で、特にO157は3~4日です。

感染経路は、菌に汚染された生肉や加熱が不十分な肉、菌が付着した飲食物からの経口感染、接触感染です。


症状は無症状の例もありますが、多くは水のような下痢便や血が混じった粘血便になります。激しい腹痛や嘔吐を伴うことも少なくありません。

病原性大腸菌感染症の検査

診断は便培養といって糞便中の細菌を培養して確定します。ベロ毒素を検出する検査もあります。

病原性大腸菌感染症の治療

治療は、ホスホマイシンを服用することが原則です。また、脱水を防ぐために輸液を行います。

登校・登園基準

学校保健安全法では「医師が感染のおそれがなくなったと認めるまで」、保育所における感染症対策ガイドラインでは「抗生剤治療開始後24時間~48時間を経過していること」が登園の目安とされています。



5.マイコプラズマ肺炎

マイコプラズマ肺炎は、マイコプラズマ・ニューモ二アエ(肺炎マイコプラズマ)という、細菌とウイルスの中間の大きさの極小細菌による感染症です。

マイコプラズマという名称は、培養すると細長い糸状になり、カビのように見えることがあり、ギリシャ語でキノコを意味するmykesに由来するmykoと、形を意味するplasmaから名づけられました。

オリンピックの年に発生するといわれましたが、2000年以降は毎年患者が発生し、限定された地域や小学校、家族内で小流行をくり返していました。近年では、2011年に流行があり、2016年にも、再び大きな流行がありました。


マイコプラズマ肺炎の疫学

潜伏期間は、通常2~3週です。

感染経路は咳などからうつる飛沫感染が主ですが、咳で飛び散った痰などに接触して移る接触感染もあるようです。

感染力は弱いため、学校や家族のような閉鎖した空間の中の小集団で流行します。

秋~冬にかけて多いようですが、春~夏にも発生しています。
2016年の今回の流行も、7月(27週)ごろから患者が増えてきています。

マイコプラズマ肺炎の症状


症状は、まず発熱と頭痛を伴った全身倦怠感が現れます。3~4日このような症状が続くと、咳がだんだんひどくなっていきます。

最初は、しつこい乾いた咳で、次第に強くなり、夜間、明け方に激しく出ます。咳のため、吐いたりします。胸痛を訴えることも、まれではありません。また、血が混じることもあります。

咳が最もひどいのは2週目ぐらいで、その後も発病1ヵ月ぐらいはひどい咳がなかなか改善せず、長引くのが特徴です。

発熱の程度と持続する時間はさまざまで、
23日から1週間以上も熱が続くこともあります(抗菌剤が有効なら、2~3日で解熱することが多いです)。時に赤いぼつぼつや蕁麻疹様の発疹(じんましんや多形滲出性紅斑)がみられることがあります。鼻水はあまり目立ちません。

子どものマイコプラズマ感染症の25%は悪心、嘔吐、下痢などの消化器症状を起こすという記載もあります。


年齢は5歳~15歳、特に小学生に多くみられますが、大人にも感染するので、マイコプラズマ肺炎とお子さまが診断されたら、マスクと手洗いの励行が必要です。赤ちゃんにも感染しますが、肺炎にはならず、かぜの症状で終わることが多いようです。

マイコプラズマ肺炎の合併症

マイコプラズマ肺炎は軽い肺炎なので、必ずしも入院する必要はありません。ただし、肺に水がたまったり(胸水貯留)、ひどい肺炎で呼吸が苦しくなったり、脳炎・髄膜炎になったりした場合は、入院した上で強力な治療が必要です。

合併症としては、肝機能が悪くなるマイコプラズマ肝炎や、脳炎、無菌性髄膜炎、ギラン・バレー症候群(足の力が抜けて、歩けなくなる神経の病気)などが知られています。

マイコプラズマ肺炎のX線像

聴診上では、呼吸音に雑音は聴かれず、異常がないことが多いです。

マイコプラズマ病原体は空気とともに侵入すると、まず呼吸器の上皮細胞の外側で増殖します。増殖したマイコプラズマ病原体は、今度は「気管」や「気管支」、ガス交換が行われる「肺胞」などの気道粘膜を破壊していきます。

特に、体内に侵入してきたきた病原体を肺から外に追い出す働きをしている気管支エリアを攻撃します。
そのため、気管支の表面の粘膜が破壊されたり、潰瘍(組織が下掘れになった状態)を起こし、 マイコプラズマ肺炎に特徴的な激しく頑固な咳が引き起こされます。

気管支、細気管支が破壊されたり、炎症を起こし、腫れたり、いろいろな液体、物質が溢れたりすると、以下のX線のようなマイコプラズマ肺炎のX線像になっていきます。



マイコプラズマ肺炎の検査

①血清診断

血液検査では、寒冷凝集反応(単一血清では64倍以上、ペア血清では4倍以上)やマイコプラズマ抗体(PA)検査(単一血清では640倍以上、ペア血清では4倍以上)を行いますが、結果が出るまで数日かかるため早期診断はできません。しかも、2回採血し、抗体価の上昇を確認することが推奨されており、今日ではあまり行われなくなりました。

②遺伝子検出法(LAMP法、Loop-Mediated Isothermal Amplification法)


2011年10月から、マイコプラズマ核酸同定検査(LAMP法)がマイコプラズマ肺炎の診断に使用できることになりました。LAMP法によるマイコプラズマ核酸検出は、肺炎マイコプラズマに
特異的なDNAを、直接検出する高感度な遺伝子検査で、感度や特異度が高く、マイコプラズマ肺炎の診断もっとも優れていると評価されています。

当クリニックも正確なマイコプラズマ肺炎の診断を行うために、この検査法を採用しています。(→LAMP法の原理
 
LAMP法は、検査会社への外注のため、結果が出るのに数日かかることが最大にネックになっており、症状からマイコプラズマ肺炎を疑う場合は治療を始めながら、検査結果を待つことになります。

③イムノクロマト法

最近、マイコプラズマ感染症に対し、新しいイムノクロマト法の検査キットが相次いで発売されました。感度、特異度はLAMP法に及びませんが、15分で判定できることから、使用している医療機関もあるようです。

当クリニックは診断の正確性を重視しており、イムノクロマト法はLAMP法に感度、特異度ではるかに及ばないため、LAMP法を引き続き、使用しています。

プライムチェックマイコプラズマ抗原(アルフレッサファーマ)は特異度はよい(偽陽性が少ない)が、感度がLAMP法に比べて悪いようです(陽性率が低くなります)。

リボテストマイコプラズマ(旭化成)は感度はよいが、偽陽性が多く、特異度がよくないようです。

その他、プロラクトmyco(LSIメディエンス)、イムノエースマイコプラズマ(タウンズ)なども発売されています。


マイコプラズマ肺炎の治療

マイコプラズマ病原体は、細胞壁を持たないため、ペニシリン系(パセトシン)やセフェム系抗生剤(メイアクト、フロモックス、トミロン、セフゾンなど)は全く効果がありません。マクロライド系抗生剤(エリスロマイシン、クラリス、ジスロマック)やテトラサイクリン系(ミノマイシン)は有効で、マイコプラズマ肺炎の発熱を2~3日で解熱させます。

有効な抗生剤を発病5日以内に飲み始めれば、症状を軽くすることができるので、マイコプラズマ肺炎をうたがい、正しい診断を行うことが大切です。

2010年ごろから、マクロライド系抗生剤(クラリス、ジスロマックなど)に耐性を示す、マクロライド耐性肺炎マイコプラズマ感染症が大幅に増えてきました。これは、クラリスなどマクロライド系抗生剤が乱用させたためです。従来、マクロライド系抗生剤を飲めば速やかに解熱しましたが、4日マクロライドを服薬してもよくならない場合、耐性マイコプラズマ肺炎感染症の可能性を疑います。

マクロライド耐性肺炎マイコプラズマ感染症の治療には、10歳以上ならミノマイシン、10歳未満ならトスフロキサシン(オゼックス)を投与します。

ミノマイシン(ミノサイクリン)はテトラサイクリン系の抗菌剤で、歯牙形成期にある8歳未満の小児が服用すると,歯牙の黄染やエナメル質形成不全、骨発育不全をおこす可能性があるため、9歳以下は原則投与をひかえます。10歳以上に使用する場合も、できるだけ短期投与にとどめることが推奨されています。(通常3~5日間)

マイコプラズマに対しては、良好な効果を示します。

オゼックス(トスフロキサシン)
はニューキノロンという抗菌剤の仲間で、このグループは関節障害などの副作用を起こす可能性があるため、小児の適応はありませんでした。オゼックスは小児に投与することが認められた数少ないニューキノロン系の抗菌剤で、マイコプラズマ感染症にも効果を示します。

そのため、マクロライドが効果がない(マクロライド耐性)マイコプラズマ感染症で、ミノマイシンが使用できない10歳以下の小児に対して投与されます。しかし、ミノマイシンに比べて、マイコプラズマ感染症に対しての効果は強くありません。また、副作用(他のニューキノロン系に見られる関節障害、光線過敏症、けいれんなど)や耐性菌を誘導しないよう、
やはり使用は短期にとどめることが推奨されています。

また、咳を鎮めるために鎮咳剤、痰を切るために去痰剤なども投与されます。

マイコプラズマ肺炎の予防

予防方法は、特にありません。流行時はマスク、手洗いの励行が必要です。

登校・登園基準

学校保健安全法では、第3種の「その他の感染症」に含まれます。

登校基準ははっきり定められていないため、熱が続いたり、咳がひどい間は自宅で安静にし、咳も落ち着き、熱が下がったら、登校も可と考えます。ただし、体育はしばらくお休みした方が良いでしょう。



6.結核

結核は全身の感染症ですが、肺病変が多いです。乳幼児は家族から移されることが多く、大部分は初感染結核になります。BCGの効果で死亡は少ないですが、結核は決して過去の病気ではなく、日本では毎年18,000人が新たに発病しています。

結核の症状

潜伏期間は、2年以内、特に6ヶ月以内に発病することが多いようです。その一方で、結核感染後、数十年後に症状が出ることもあるようです。

感染経路は、患者からの空気感染(飛沫核感染)です。喀痰塗抹検査で陽性の患者は感染力が強いと言われています。


症状は肺結核の病巣が形成されると、慢性的な微熱、咳、疲れやすさ、食欲不振、顔色の悪さなどがみられるようになり、進行すると、発熱、寝汗、血痰、呼吸困難が出現します。

血液を介して結核菌が全身に広がる(粟粒結核)と、咳、呼吸困難、チアノーゼが見られるようになり、結核性髄膜炎を併発すれば、高熱、頭痛、嘔吐、けいれん、意識障害の症状が現れるようになります。


結核の診断

結核の診断には、ツベルクリン反応やインターフェロンγ産生能試験(IGRA:Interferon Gamma Release Assay)を行います。IGRAにはクォンティフェロンとTスポットの2種の検査があります。

また、活動性結核の診断には、胸部X線や塗抹検査、培養検査、核酸増幅法検査などを行います。


結核の予防

結核の予防には、BCGを接種します(BCGについては、こちら)。BCGは定期接種で、生後5ヶ月から生後8ヶ月の間に接種できます。

BCGは、結核性髄膜炎、粟粒結核など重い結核の、発病予防、重症化予防の効果が認められています。


結核の治療

結核の治療には、抗結核薬を投与します。

登校・登園基準

学校保健安全法では「第二種の感染症」、「保育所における感染症対策ガイドライン」では「医師が意見書を記入することが考えられる感染症」に分類され、登校・登園の目安は、「医師が感染のおそれがなくなったと認めるまで」とされています。異なった日に行った喀痰の塗抹検査で、3回連続して陰性であることが、目安とされています。

それ以降は抗結核薬による治療中でも登校、登園は可能です。




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