Ⅴ. 皮膚の病気

1.伝染性軟属腫

2.アトピー性皮膚炎(別稿)




Ⅴ.皮膚の病気      2023.9.1更新

1.伝染性軟属腫(水いぼ)

伝染性軟属腫(伝染性軟疣なんゆう腫)は水いぼと呼ばれ、身体や手足に小さな丸い疣(いぼ)ができる、皮膚のウイルス感染症です。乳幼児期(3歳がピーク)に保育園やプール教室でもらってしまうことが多い、ありふれた病気です。

伝染性軟属腫の病原体

病原体は、ポックスウイルスという、仲間の大型の伝染性軟属腫ウイルスです。接触感染で、皮膚から感染して広がります。

伝染性軟属腫の症状

潜伏期間は2~7週です。

症状は、2~5mm位の小さな光沢のある、丸いつるつるのイボが出現します。真ん中にへそのようなくぼみがあります。主に身体の体幹や手足の擦れやすい部分、腋下、胸部、上腕の内側などに、数個から数十個が集まって見られます。

かゆくないことがほとんどですが、気にして掻いて潰してしまうこともあります。時に炎症を起して化膿し、周りが赤く盛り上がることもあります。このときは痛がゆくなります。

年齢は、皮膚の抵抗力(バリア機能)の弱い乳幼児によく見られますが、アトピー性皮膚炎などの皮膚の抵抗力の落ちている学童や大人などに見られることもあります。

診断は、肉眼的に見て行います。慣れれば、診断は容易です。軟属腫を左右から潰すと、中からウイルスを含んだ白いおかゆのような汁が出てきます。この中にウイルスが潜んでいます。

伝染性軟属腫の治療

水いぼはウイルス感染症のため、免疫ができると、半年から3年ぐらいの経過で自然に消えていきます。したがって、特に治療もせずにそのまま経過を見ることも一つの方法です。
(小児科では、この対応を勧める先生が多いです。)

しかし、接触感染で移るため、他人に移すこと、出現場所によっては手で触って100個以上に広がるケースもあること、見栄えが悪く気にする子どももいること、などから積極的な治療を行う選択肢もあります。

特に、肌荒れがひどい人は水いぼもひどくなるようです。
 
治療としては、専用の水いぼ用のピンセットで摘まみ取る治療もよく行われます。

摘まみ取るときに出血し、痛みも伴いますが、とりあえず感染力は無くなり、取り切れれば治療は終了します。ただ、再発しやすいことや痛みを伴うため、子どもにとっては辛い治療になります。最近、痛みを和らげるため、局所麻酔薬のテープ(ペンレステープ)が保険適応になり、水いぼに貼って前処置することも行われるようになりました。

1時間ぐらいで痛覚は無くなるはずですが、やはり子どもは怖がって大泣きするケースが多いです。また、まれに局所麻酔薬(リドカイン)はショックを起すことがあるので、貼付した後は子どもの様子をよく観察することが必要となります。
 
または、皮膚科では液体窒素で焼いたり、冷凍凝固する治療も行われます。

飲み薬では、ヨクイニンという漢方薬もよく投与されます。

ヨクイニンはイネ科のハト麦の種皮を除いた種子から精製した薬で、皮膚のウイルス感染に対する免疫を高める効果があると言われ、イボの治療に用いられてきました。顆粒、または錠剤で子どもの水いぼにも処方されます。よく効くというほどではありませんが、効果がある時もあります。ただ、効果が見えにくく、長期間服用しなければならないため、途中で中断してしまう例も多いです。

最近、水いぼの治療に、銀配合クリームが用いられるようになりました。有効率は80%という報告もあり、1日2回水いぼに塗るだけで2~3ヶ月で水いぼが消滅します。ただ、保険適応になっていないため、費用がかかります。

当クリニックでも2022年から、投与を開始しています。水いぼでお悩みの患者さんは、鈴木院長までご相談ください。


登校・登園基準

特に登校・登園基準はありませんが、集団生活、水遊び、お風呂で皮膚が直接接触することにより、周囲の子どもが感染します。
 
プールの水を通して感染することはありません。したがって、プールに入ることはかまいませんが、タオル、浮き袋、ビート板などを介して、感染する可能性があり、これらの共有は避けます。

また、接触を防ぐため、水いぼを包帯などで覆う配慮は必要です。

水いぼは肌の抵抗力が落ちている所にできるので、日頃から保湿剤などによるスキンケアによって、肌の状態をよくしておくことが大切です。

参考: 日本小児皮膚科学会:水いぼ

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