Ⅰ-3.ウィルスの感染症3部(夏かぜ系の病気)

1.手足口病


2.ヘルパンギーナ


3.咽頭結膜熱(プール熱)


4.アデノウイルス感染症(扁桃炎)


5.流行性角結膜炎




Ⅰ-3.ウィルスの感染症(夏かぜ系の病気)  2023.8.1更新

1.手足口病

手足口病はヘルパンギーナと並ぶ代表的な夏かぜで、口の中のアフタ(潰瘍)と手足に水を持った赤いぽつぽつができる病気です。

手足と口の病気という意味で、「手足口病」と名付けられました。


コクサッキ―A16(CA-16)、コクサッキ―A10(CA-10)、コクサッキ―A6(CA-6)、エンテロウイルス71など、幾つかのウイルスが病原体として知られています。

特にエンテロウイルス71は中枢神経系に感染しやすく、過去東南アジアで多数の手足口病患者に髄膜炎を引き起こし、死亡例が相次いで問題になったウイルスです。

手足口病の症状

潜伏期間は、通常3~6日です。

感染経路は病初期の飛沫感染や、水疱からの接触感染とその後の経口感染(便→手、糞口感染)です。


熱は、38℃以下のそれほど高くない熱が1~2日だらだらと続くことが多いようです。

口のなか一面に、プラネタリウムのように赤い点と、中央部に白いアフタがみられ、ひどくなるとは食事をとる事をいやがったり、よだれをだらだらたらしたりします。

手足にも、赤いポツポツと硬い感じの水疱がみられますが、水ぼうそうと異なり、かゆみはなく、破れてかさぶた(痂皮)になることもありません。

お尻や太もも、肘に密集して出現することもあります。


ふつうは2~4日で、口の痛みは軽快します。

高熱が3日以上続く、頭痛がひどく嘔吐を繰り返す、元気がなく、ぐったりして食事も受け付けない、などの症状が続く場合は、髄膜炎の可能性も否定できないため、必ず来院し、診察を受けてください。

年齢は4歳以下の子どもが多くかかります。

原因となるウイルスが複数あるため、1回かかっても、又感染することもあります。毎年かかることも多いです。

また、大人にも感染し、典型的な症状をおこします。夏かぜですが、冬場にもみられることがあります。


手足口病の治療

特別な治療はありません。

口内炎がひどい場合は、アセトアミノフェンを痛み止めとして使用します。

食事はのどごしの良い食べ物(ゼリーや豆腐など)を与え、少量頻回に水分を取らせます。食事の後は白湯などを含ませ、口の中の清潔を保ちます。

どうしても水分が取れず脱水に陥れば、輸液を行ないます。


皮膚の発疹は、かゆみが無いため、ふつうそのまま様子をみます。かゆがるなら、非ステロイド系消炎軟膏を塗布します。

登校・登園基準

学校保健安全法では「その他の感染症」、「保育所における感染症対策ガイドライン」では「医師の診断を受け、保護者が登園届を記入することが考えられる感染症」に入っており、登校・登園基準は「発熱や口腔内の水疱・潰瘍の影響がなく、普段の食事がとれること」とされています。

発熱している間、口内炎がひどく食事が取れない間は、感染力も強いため、自宅で安静に過ごします。

熱が下がり、口の痛みがなくなったら、手足の水疱が残存していても、登校・登園してもかまいません。


しかし症状回復後も2~4週間は便中にウイルスが排泄されるため、おむつの扱いには注意が必要です。また、手洗いはしっかりと行いましょう。 

2011年の手足口病

2011年6-8月に流行した手足口病は、従来の手足口病とはかなり異なる症状を示す、特異なものでした(写真)。

すなわち、①口内疹は少ない。ただし、口の周りにも水疱ができる。②従来好発部位だった手背、手掌、足背、足の裏には水疱が少なく、臀部、大腿、体幹に巨大な水疱を含む、大小不同の水疱が密在する。③水疱をかゆがったり、痛がったりする。④水疱出現の前に高熱が1~2日先行する。などの特徴がみられました。

原因ウイルスはコクサッキ―A6(CA-6)が検出される例が多かったようです。(2011.7.31)

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2.ヘルパンギーナ

ヘルパンギーナは代表的な夏かぜで、1~4歳のお子さまが高熱が出て、口の中が痛くて、食事が取れなくなる病気です。

病原体はコクサッキ―Aグループ (アメリカのコクサッキ―地方で始めて発見されたので、こう呼ばれる)で、他のエンテロウイルスでおこることもあります(原因ウイルスは複数あります)。


ヘルパンギーナの症状

潜伏期間は、通常3~6日です。

感染経路は病初期の飛沫感染と接触感染、その後の経口感染(糞口感染、便→手)です。


症状は、突然39℃以上に発熱し、口の中を痛がります。のどの奥の口蓋垂(のどちんこ)のわきに小さな赤い点々とアフタが認められます。

ものを呑み込むと痛いため、ミルクを飲まなかったり、よだれをたらす子もいます。
3日ほどでのどのアフタは回復し、食事をしても痛がらなくなります。

原因となるウイルスが複数あるため、1回かかっても、又かかることもあります。

へルパンギーナの治療

口の中のアフタがひどく、水分も嫌がるようなら、アセトアミノフェンを痛み止めとして使用してもよいでしょう。抗生剤は無効です。

食事はのどごしの良い食べ物(ゼリーや豆腐など)を与え、少量頻回に水分を取らせます。少し大きいお子さまだと氷をしゃぶらせても良いでしょう。

また、食事の後は白湯などをふくませ、口の中の清潔を保ちます。

どうしても水分が取れず脱水に陥れば、輸液を行います。


登校・登園基準

学校保健安全法では「その他の感染症」、「保育所における感染症対策ガイドライン」では「医師の診断を受け、保護者が登園届を記入することが考えられる感染症」に入っています。

登校・登園基準は、「発熱や口腔内の水疱・潰瘍の影響がなく、普段の食事がとれること」、とされています。

発熱している間、口内炎がひどく食事が取れない間は、感染力も強いため、自宅で安静に過ごします。

熱が下がり、口の痛みがなくなったら、登校・登園してもかまいません。


しかし症状回復後も2~4週間は便中にウイルスが排泄されるため、おむつの扱いには注意が必要です。また、手洗いはしっかりと行いましょう。 

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3.咽頭結膜熱(プール熱)

咽頭結膜熱は、発熱、のどの腫れ、結膜炎を主な症状とするアデノウイルス感染症です。

以前は夏場にプールから流行することも多かったため、プール熱とも呼ばれています。


咽頭結膜熱の症状

感染経路は、通常は飛沫感染(せき)が主ですが、プールでは結膜からの接触感染や経口感染(口から入る)も考えられています。

潜伏期間は、2~7日です。病初期にウイルス排泄が多いですが、便からは数ヶ月ウイルスの排泄が続くといわれています。

39~40℃の高熱で始まり、頭痛、食欲不振、のどの痛み、くびのリンパ節の痛みと腫れが目立ちます。高熱は4日ほど持続し、その後急に解熱します。

結膜炎にともなう、真っ赤な眼や眼痛、羞明(まぶしさ)、眼脂(めやに)が見られます。

主な症状は、4~7日間続きます。  


写真の掲載については、お母さまのご承諾をいただいております。(無断転載厳禁)


咽頭結膜熱の診断

咽頭結膜熱をおこすのは、アデノウイルス3型が多く、1型、4型、7型、14型も原因となります。特にアデノウイルス7型は、重症肺炎になるため、要注意といわれています。

現在では迅速診断キットを用いれば、10分ほどで診断は可能ですが、検査キットの感度がやや低いことや、アデノウイルス感染症には有効な治療法がないことから、眼の症状がなければ迅速検査は必ずしも必要ではありません。


咽頭結膜熱の治療・予防

眼症状(結膜炎にともなう眼の充血、眼痛、めやになど)がひどい場合は、眼科での治療が必要です。
あとは小児科で経過をみます。


予防は、感染者との密接な接触を避けること(特に兄弟間)、うがいや手洗いを励行することが大切です。また、プールに入る時は、水泳前後に十分シャワーを浴びましょう。

ときにはプールを一時的に閉鎖しなければならない時もあります。

登校・登園基準

学校保健安全法では、咽頭結膜熱は「第二種の感染症」、「保育所における感染症対策ガイドライン」では「医師が意見書を記入することが考えられる感染症」に分類されています。

登校・登園の目安は、「発熱、充血等の主な症状が消失した後、2日を経過していること」とされており、解熱し、のどの痛み、結膜炎が治った後、2日間は安静にして、体力の回復を待ちましょう。


数年前まで、毎年夏になると「プール熱大流行」報道が、夏の風物詩のように繰り返されていました。

プール熱報道についての、2006年の当クリニックの見解はこちら(→プール熱は大流行しているか


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4.アデノウイルス扁桃炎(感染症)

アデノウイルスは、42(51ともいう)種に分類され、その症状も扁桃炎、肺炎や、胃腸炎、膀胱炎、咽頭結膜熱(プール熱)、流行性角結膜炎(流行り目)など多彩です。アデノウイルス扁桃炎は、滲出性扁桃炎(扁桃に白い膿栓が付く)で、アデノ1、2、3、5型が多く、おもに年少児~幼児にみられます。

アデノウイルス感染症の症状

急に39℃から 40℃の高熱がでて、5日ぐらい続き、急に解熱します。3日目ごろをピークに、扁桃に白い膿のような栓(滲出物)がみられます(滲出性扁桃炎という)。のどの痛みは軽度で、咳もあまりみられません。

アデノウイルス感染症の診断

抗生剤が全く効かず、のどが真っ赤で白い膿栓が付いていて、高熱が続く時は、アデノウイルス感染を疑います。

現在では迅速診断キットを用いれば、10分ほどで診断は可能ですが、検査キットの感度がやや低いことや、アデノウイルス感染症には有効な治療法がないことから、眼の症状がなければ迅速検査は必ずしも必要ではありません。ただし、眼も真っ赤ならば、アデノウイルス感染症のうち、咽頭結膜熱(プール熱)を疑います(咽頭結膜熱については、前項で解説しました)。


アデノウイルス感染症の治療

高熱が続くので、なるべく水分と栄養を十分に与え、安静にして様子をみます。高熱のためぐったりしていれば、小まめに経口補水液などを与えます。

うがいと手洗いを励行します。赤ちゃんはかかりにくい(お母さまから抗体をもらっているので)ようですが、1~3歳の子は重症になる(肺炎)ことがあるため、感染した兄弟には、なるべく近づけない方が良いでしょう。

アデノウイルスの中には重症になる型(7型)もあるので、熱が下がるまでは、元気、食欲、呼吸などのお子さまの全身状態は、よく注意して下さい。

登校・登園基準

学校保健安全法、「保育所における感染症対策ガイドライン」の対象になっているのは咽頭結膜熱であり、眼が赤くなければ、出席停止の必要ありません。熱が下がり、1日たてば登園は可能です。

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5.流行性角結膜炎

アデノウイルスによる、角膜炎と結膜炎が合併した眼の感染症で、感染力が非常に強いことが特徴です。

流行性角結膜炎の病原体

病原体は咽頭結膜熱と同じアデノウィルスです。潜伏期は2~14日です。

感染経路は、飛沫感染、接触感染。プールの水、手指、タオルなどから、感染します。便からウイルスは、数週間から数ヶ月排出されると言われています。

流行性角結膜炎の症状

主な症状として、結膜充血、目やに、まぶたの腫脹、異物感、涙など。角膜が混濁して、視力に障害が出ることもあり、要注意です。

流行性角結膜炎の予防

接触感染で感染力も強いため、感染予防として、手洗い、タオルなどは共用できません。ドアノブ、スイッチなどから感染することがあるので、消毒を行います。 飛沫感染、接触感染に対して、手洗いなど一般的な予防方法を家庭でも励行します。

登園、登校基準

学校保健安全法では、第三種の感染症に、「保育所における感染症対策ガイドライン」では、「医師の診断を受け、保護者が登園届を記入することが考えられる感染症」に含まれます。

登校・園基準は、医師(眼科医)によって「感染のおそれがない」と認められるまで、出席停止となります。他のアデノウィルス感染症と同じように、便からは1ヶ月近くウイルスの排出が続くので、手洗いなど感染予防はしっかり続けなければなりません。

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