任意接種 2023.8.27更新
おたふくかぜ(ムンプス)ワクチン
●予防接種の内容
おたふくかぜを予防する生ワクチン。満1歳から、任意接種で受けられます。当クリニックは、1歳時にMR1期、水痘1期、おたふくの同時接種を行い、5~6歳時にMR2期と同時に追加接種(おたふく2期)を受けることを推奨いたします。
●予防する病気
おたふくかぜは、ムンプスウイルスに感染して起こる病気。2歳以上でかかりやすくなります。耳の下やあごの下が腫れるほか、無菌性髄膜炎や脳炎を併発する恐れもあります。また、高度の難聴が後遺症として残ることが問題になっています。
●接種の方法
1歳時に1回、就学前にもう一回、上腕に皮下注射をします。
Q. 副反応で髄膜炎になるって本当?
ワクチン接種後、5000人に1人の割合で接種2~3週間後に軽い髄膜炎にかかる例があります。ワクチン反対派はこれを根拠に、「おたふくかぜのワクチンは髄膜炎になるので危険です!副作用が出ます。打たないで」などと大騒ぎしました。
髄膜炎とは、脳や脊髄を包んでいる髄膜という膜が炎症を起こして、けいれんや激しい頭痛を起こします。重症の髄膜炎になると、後遺症として、てんかん、発達障害や麻痺を残すことがあります。しかし、おたふくかぜワクチンによっておこる髄膜炎は軽症で、大半が1~2週間で治り、後遺症を残すことはまずありません。
一方、おたふくかぜに自然に感染したときに起こるムンプス髄膜炎は約10人~20人に1人という高率です。しかも、より重い脳炎(脳そのものに炎症が起こる)が6000人に1人の割りで起こり、この脳炎も重い後遺症を残します。
最近、永久に一方の耳が聞こえなくなる不可逆性の「ムンプス難聴」が、1000人に1人の割合で後遺症として起ることが耳鼻科学会の調査で明らかになりました(くわしい調査結果はこちら。ムンプス難聴の解説はこちら)。
このムンプス難聴は、おたふくの症状である頸部の腫れの起る4日前から腫れた後18日ぐらいの間に発症する、片耳(片側が多い)、感音性の高度難聴(大きな音も聴こえなくなる)です。
国立感染症研究所の上記報告の一部を引用いたします。
先天性でない場合、原因の多くは「ムンプスによる、高度感音難聴」である。
保護者からすると、「なにも症状がないし、本人にも聞こえが悪いという自覚がない」のに、突然「一側高度感音難聴」や「一側聾」と診断され、かつ、治らないことを告げられ、絶望の淵に立たされる思いをする。
しかも、それは「ワクチンで予防できる唯一の後天性感音難聴である」ことを知った際には、後悔と保護者としての責務にさいなまれることになる。
工藤典代(千葉県立保健医療大学健康科学部栄養学科)「ムンプス難聴と聴覚補償」 (国立感染症研究所 IASR Vol. 34 p. 228-230: 2013年8月号)より
おたふくかぜワクチンの副反応で髄膜炎を起こすことはありますが、実際におたふくかぜにかかったときの髄膜炎、脳炎とは、発生する頻度も症状の激烈さも比較になりません。お子さまの未来を守るために予防接種は必要です。
Q. 何歳までに受ければいいの?
おたふくかぜにかかりやすいのは、1歳から学童期の間です。お誕生日になったら、MRワクチン(麻疹+風疹混合)、水痘ワクチンと一緒に接種します。就学前にMRワクチンと同時に2回目の接種を受けましょう。
おたふくかぜワクチンの接種については、品川区では2007年4月より、1~3歳児には3000円の接種助成を行ってきました。
それに加えて、当クリニックの強い働きかけによって、2019年4月からおたふくかぜワクチンの2回目の接種費用助成が始まりました。2回目の期間は定められていないため、5歳MR接種を目安にお考えになると良いでしょう。(詳細はこちら)
Q. 親がおたふくかぜにかかっていない場合、親も接種しないとうつるの?
子どもが接種したおたふくかぜワクチンによって、親やまわりの人がおたふくに感染する心配はありません。
ただし、おたふくかぜにかかっておらず、予防接種もしていなければ、誰でも自然感染をする危険はあります。特に、2015~2017年は品川区でもおたふくかぜが流行しました。
思春期以降の年齢でおたふくかぜにかかると、男性なら睾丸炎、女性なら卵巣炎を起こします。また耳下腺腫脹の痛みは激烈です(痛みが我慢できないと、泣いてクリニックに電話をかけてきたお母さまもいらっしゃいました)。
お父さま、お母さまも予防接種を受けておらず、かかった記憶もないならば、ぜひ接種を受けてください。おたふくかぜは症状の出ないで感染している不顕性感染が比較的見られますが、ワクチン接種すれば既感染の場合、抗体を強化する(ブースター)効果も期待できます。すでにかかった成人がワクチンを接種することは、免疫を強化することになり、何も問題はありません。
インフルエンザHAワクチン(不活化)
●予防接種の内容
インフルエンザを予防する不活化ワクチンで、生後6ヵ月から任意接種で受けられます。インフルエンザA新型(2019pdm)、インフルエンザA香港型、インフルエンザBビクトリア系統、インフルエンザB山形系統の4種類のウイルスの殻が含まれています。
●予防する病気
インフルエンザは、インフルエンザウイルスによっておこる病気。毎年冬になると流行し、通常のかぜよりはるかに重症になるだけでなく、脳症や肺炎などの合併症が心配です。
●接種の方法
1~4週間の間隔をあけ、注射を2回皮下注射します。13歳以上は1回皮下注射を行います。
インフルエンザワクチンについては、別項で詳しく解説しました。詳細はこちらをお読みください。
Q.重くなる病気なのに、どうして任意接種なの?
以前は義務接種として学校で集団接種が行われていましたが、このワクチンを受けてもかかってしまう人が少なくないことがワクチンの効果がないと誤解されたこと、当時は正確にインフルエンザを診断できなかったため、インフルエンザ以外の病気もワクチンが効かないインフルエンザとしてカウントされたため、「このワクチンは効かない」、「副作用が怖い」とワクチン反対派や彼らに操られた捏造左翼マスコミが大騒ぎしたために、平成6年から現行のような任意接種に格下げになってしまいました。そして、一時ワクチン接種する人も激減してしまったのです。
それとともに、インフルエンザワクチンを勧めることがタブー視されるようになり、新聞などでも毎年インフルエンザのシーズンになると、感染症の専門家とともに毎回同じ顔の、ワクチン反対派の自称「小児科医」が登場し、新聞記事でもワクチン勧奨派とワクチン反対派のコメントがちょうど半分ずつになるよう、記事が構成されるようになりました。
そして、これらの記事の最後は、ワクチンを接種しましょう、ではなく、ワクチンについてよく考えましょう、という意味不明の無責任なフレーズで結ばれていたのです。
ところがインフルエンザワクチンは、インフルエンザの発病は防げなくても、インフルエンザの症状を軽くし、死亡を減らすことが明らかになりました。アメリカなどは老人へのインフルエンザワクチンに以前から熱心でしたが、最近では「子どもでもインフルエンザにかかる!」といって、健康な子どもへのインフルエンザワクチンの積極的な接種を呼びかけるキャンペーンを始めています。そして、現在アメリカではインフルエンザワクチンの接種を6ヶ月の乳児から18歳の少年まで積極的に勧奨しているのです。
ワクチン反対派は「学童集団接種などという馬鹿なことをやっているのは日本だけ。外国はどこも子どもにワクチンなんか勧めていない。」などと非難していましたが、何のことはない、外国の方が1週遅れで走っていただけだったのです。(もっとも先頭を走っていた日本は、この後、この左翼プロ市民連中や無責任な捏造マスコミ、無能な厚労省の役人のために1周遅れどころか、北朝鮮とブービー争いをするところまで落ちぶれてしまったことは、周知のとおりです。)
ところが、学童集団接種を行っている時には少なかった、老人のインフルエンザによる死亡者や乳幼児のインフルエンザ脳症が、集団接種を中止した頃から激増し始めたのです。
実は健康な学童が集団でワクチンを受けることによって、インフルエンザにかかると重症になるお年寄りや赤ちゃんをインフルエンザの流行から守っていたのです。集団接種の中止により、老人や赤ちゃんがインフルエンザの脅威に直接さらされることになり、肺炎や脳症が増加したと現在では考えられています。(同じ現象は7価肺炎球菌ワクチン接種でも認められました。アメリカで、7価肺炎球菌ワクチンが乳幼児に開始されると、高齢者の重症肺炎球菌感染症が減少したのです。)
このような経過に加え、目前に迫ってきた新型インフルエンザの過熱報道や、かつてのワクチンたたきを思わせる馬鹿げたタミフルバッシングによって(笑止なことに、現在なお、タミフルを勧めることが一部のマスコミ連中の間ではタブーになっているようですが)、インフルエンザワクチン接種は必要なことであり、積極的に勧奨するべきだ、という健全な常識的な考えが盛り返し、昨今の大勢を占める情勢になってきました。
得意げに不勉強な捏造マスコミの手下記者どもをはべらせて、「インフルエンザワクチンは打たないで」と酒を飲みながらお説教を垂れていたワクチン反対派の大御所は、育児雑誌に成りすました偏向雑誌とワクチン反対のインターネットの密教サイトに「国立機関に勤めていた過去」が大看板の女サンチョや下僕どもと立て篭もり、日本の子どもの健康を脅かす邪悪な暗黒情報を発信してきました。
この方が無くなったとき、朝日新聞は歯の浮くような大弔辞を送っていましたが、麻疹ワクチンは危険だからいらない。麻疹ワクチンを打つとSSPEになる(この大嘘には、SSPEの患者さんから、猛抗議を受けました)。百日咳ワクチンは打つ必要がない。ワクチンを打つと、地球の生態系が乱れるなど、あきれるほどの荒唐無稽のほらを連発し、我が国の母と子どもを惑わし、どれだけ健康被害を拡大させたか、朝日新聞を始めとするマスコミ下僕記者どもを従えた、その洗脳力、破壊力は凄まじいものがありました。まさしく日本の子どもに敵対する、暗黒の破壊神のような存在でした。
しかし、その暗黒の破壊神の後継者たちも元気に暗躍しており、高額な講演料とワクチン拒否のお札を、全国を股にかけて販売して歩いている自称「小児科医」の教祖サマや、子どもの診察をしたこともないくせに、「子どもにワクチンを打たないで」などというウソ八百の本を書いて、さもしく生活費である原稿料をかすめ取ろうとしている、文芸春秋のお抱え三文ライター自称「元放射線医」など、相変わらず子どもをダシにした、しかも子どものことをこれっぽッチも考えたことなどない連中の、下劣極まりない破壊活動が止まらないのが、我が国の現状です。
ワクチンバッシングのなかで、インフルエンザワクチンは任意接種に格下げになってしまいました。その結果、日本の保護者は接種料金を払って、任意接種の名の不利な条件の下で、インフルエンザワクチン接種を受けなければならない、という現在の状況に追い込まれていったのです。
Q.受ける季節が決まっているの?何歳ごろに受ければいいの?
インフルエンザがはやり始めるのは1月から。ですから、その前に接種を終わらせるため、10月中旬~11月中旬に1回目、12月に2回目を接種するといいでしょう。また小さい赤ちゃんは、生後6ヵ月から接種を受けることができます。
Q.接種してもかかってしまうことがあるの?
インフルエンザはA型の中にもいくつものタイプがあり、しかも毎年流行する型が微妙に変わる面倒な病気です。そこでインフルエンザワクチンは流行しそうな型を予測して作られますが、違う型のウイルスに感染すると発病してしまうのですね。とはいえ、最近では予測も精度を増し、型が外れることは少なくなりました。
また、インフルエンザを発病したとしてもワクチンを接種していれば、重症化を防げます。合併症を起こす危険性も低くなることが期待されるため、予防接種は無駄にはなりません。
髄膜炎菌ワクチン(メンクアッドフィ)
●予防接種の内容
髄膜炎菌は、ヒブ(インフルエンザ菌b型)や肺炎球菌などと同じように細菌性髄膜炎の病原菌ですが、現在13種類の血清群に分けられています。そのうち、髄膜炎、脳炎、敗血症などの重症の感染症(侵襲性髄膜炎菌感染症、IMD:Invasive
Meningococcal Diseaseと呼ばれます)は、13種の血清群の中で5種の血清群(A、B、C、Y、W-135)が起こします。
髄膜炎菌ワクチンは、細菌の外殻を粉々して精製したポリサッカライドワクチン(MPSV:Meningococcal Polysaccharide Vaccine)と、さらにジフテリア毒素や破傷風毒素の蛋白質を結合して効果を高めた結合型ワクチン(MCV:Meningococcal Conjugate Vaccine)があります。
メンクアッドフィは破傷風毒素を用いた、4種の血清群(A、C、Y、W-135)を含んだ、4価の結合型髄膜炎菌ワクチン(MCV4)です。
2022年2月10日、4価髄膜炎菌ワクチンのメンクアッドフィ筋注が発売されました。これはメナクトラ筋注の後継品です。メンクアッドフィは免疫を誘導する髄膜炎菌血清群がメナクトラの4μgに対し10μgと増量されており、結合タンパクもジフテリアトキソイドから破傷風トキソイドへと変更されています。
その他、4価(A、C、Y、W-135)のポリサッカライドワクチンで、外国でよく使用されているワクチンとしては、メンセバックス(MPSV4)があります(わが国でも未承認ワクチンとして、トラベルクリニックなどで使用されています)。
●予防する病気
侵襲性髄膜炎菌感染症(髄膜炎、脳炎、敗血症など)の発病を防ぎます。
侵襲性髄膜炎菌感染症は、発熱、頭痛、嘔吐などから始まり、皮下出血、意識障害、けいれん発作などの症状が電撃的に進行します。未治療では半数が死亡し、抗生剤などで治療されても24~48時間以内に患者の10%が死に至り、回復した場合でも10~20%ぐらいに聴力障害、学習障害、手足の切断などの重い後遺症が残る、恐ろしい病気です。
日本では現在ほとんど見られませんが(毎年、髄膜炎菌性髄膜炎患者は20人弱ですが、2011年、宮崎県の高校で集団発生した事例、2015年、三重県の全寮制高校で発生した事例、2017年神奈川県の全寮制高校で集団発生した事例などが報告されています)。
世界では、毎年30万人の患者がアフリカ中央部(髄膜炎ベルト地帯と呼ばれている地域です。右図はFORTH髄膜炎菌性髄膜炎より転載しました。原図はこちら)やサウジアラビアなどの中近東などで発生し、3万人が死亡しています。アメリカやイギリス、近年はオーストラリアでも発生しています。
この地域に渡航する場合やアメリカの学生寮で生活する時に、髄膜炎菌ワクチンの接種を要求されることがあります。
●接種が推奨される人
日本小児科学会は、ワクチン接種を推奨する人として、
①髄膜炎菌感染症流行地域へ渡航する2歳以上の者
②2歳以上のハイリスク患者(補体欠損症、無脾症、HIV感染症などの病気の児)
③2歳以上のソリリス治療患者(発作性夜間ヘモグロビン尿症という病気で治療中の児)
④学校の寮などで集団生活を送る者
を上げています。(小児科学会:任意接種ワクチンの小児(15 歳未満)への接種)
●接種の方法
1回0.5mlを筋肉注射します。
アメリカでは2~55歳の人に0.5mlを1回、筋肉注射します。その後、髄膜炎菌感染症に感染する危険が高い場合には、2~6歳では3年後、7歳以上では5年後に追加接種を行うようです。
我が国では外国に旅行する場合を除いては、接種の必要のないワクチンと考えられてきましたが、国際交流が盛んになってきたこと、外国人と接触する機会の多い人、あるいは全寮制の高校に入学する人などには、メンクアッドフィ、メナクトラの接種を当クリニックではお勧めいたします。
三種混合ワクチン(DPT)
●予防接種の内容
百日ぜき、破傷風、ジフテリアの三つの病気を予防する、不活化ワクチンです。現在は定期接種は、四種混合ワクチンを用いることになっており、三種混合DPTワクチンを使用することはできません。したがって、DPTワクチンは任意接種ということになります。
●予防する病気
百日ぜきは百日ぜき菌が原因で、母親から免疫が移行しないため、新生児でもかかる可能性がある恐ろしい病気です。けいれん性の激しい咳が続き、夜も寝られず、呼吸が止まり死亡することもあります。また、進行すると肺炎や脳障害も起こします。
近年、三種混合ワクチン(DPT)、四種混合ワクチン(DPT-IPV)の効果の切れた、年長児や大人の間で百日咳は流行しており、家族に百日咳の患者や症状のない不顕性感染者がいると、ワクチンを受けていない3ヶ月前の赤ちゃんは90%以上の確率で感染し、大変な事態になると怖れられているのです。
破傷風はふつうに土の中にいる細菌で、傷口から入り込み、その破傷風菌の出す毒素で神経が侵され、開口障害、嚥下困難、背中の筋肉がけいれんし、最終的には身体がのけぞる後弓反張などを起こし、死亡率が80%を超えている、恐ろしい病気です。現在でも毎年10人ぐらいが死亡しています。意識は障害されないため、患者さんは大変苦しい思いをしながら、日々を送ることになります。
ジフテリアはジフテリア菌という細菌が、のどに偽膜というべっとりとした白い膜を作り、喉頭に炎症が及ぶと犬が吠えるような咳を反復します。クループというのは、もともとこのジフテリアの咳をいいました(真性クループ)。
ジフテリア菌も毒素をまき散らし、心臓の筋肉や呼吸筋が麻痺し、突然死を起こします。ソ連崩壊後、1990年代に混乱したウクライナなど東ヨーロッパの国々で、ジフテリアは大流行し、猛威を振るったのです。
この百日咳菌の菌体成分の一部(狭義の不活化ワクチン)と、破傷風毒素とジフテリア毒素を無毒化(トキソイド)して、これらを混ぜたワクチンが三種混合ワクチン(DPTワクチン)です.
●接種の方法
現在四種混合ワクチンのⅠ期3回とⅠ期追加の接種が終わった2歳以降は、百日咳が含まれたワクチンを接種する機会がありません(Ⅱ期は破傷風とジフテリアのみ=DTワクチン)。
その結果、年長児から成人になるにしたがい、百日咳の免疫が低下した人が増えてきて、近年小学生や親世代で百日咳が流行し、四種混合ワクチン接種前の赤ちゃんが感染し重症化することが問題になっています。
現在11~12歳で接種している二種混合ワクチン(DT)を、百日咳ワクチンを含む三種混合ワクチン(DPT)に切り替え、百日咳に対する免疫を強化するために、三種混合ワクチンが再び発売されることになりました。近い将来、DTワクチンはDPTワクチンに変更される予定です。(しかし、2023年4月現在、いまだに変更はスケジュールにのぼってはおりません。)
また、小児科学会やVPDの会は、MR2期(5歳)のタイミングで、百日咳の免疫を強化するために、再発売されたDPTの同時接種を推奨しています(下記)。
当クリニックもまた、MR2期に合わせたDPT任意接種(同時接種)をかかりつけの患者さんにお勧めしています。詳細はこちらをご覧ください。
三種混合ワクチン(トリビック)が2018年1月より、販売が再開されました。(医薬品情報はこちら)
Q. 三種混合ワクチンはいつ打つの?
現在定期接種は四種混合ワクチンを用いて行われており、1歳半で接種は終了します。それ以降、百日咳含有ワクチンの追加接種は行われておりません。
2005年以降、我が国では年長児や成人で百日咳が増加しており、そのために5~6歳で任意接種で追加接種を行うか、11~12歳の定期接種二種混合ワクチン(DT)を三種混合ワクチン(DPT)に切り替えるか、いずれかが必要と考えます。
百日咳抗体の低下する5~6歳に、MR2期に合わせて三種混合ワクチンを追加接種することは、WHOも推奨する適切な追加接種と考えられます。当クリニックも正会員となっている、VPDの会もこの方式を推奨しています(VPDの会の見解はこちら)。
特に5~6歳の兄弟のいるご家庭に新生児が生まれた場合は、ぜひ検討すべきと思われます。ただし、この接種は任意接種となりますので、費用が発生します。詳細はこちらをご覧ください。
帯状疱疹ワクチン(シングリックス)
●予防接種の内容
水痘(水ぼうそう)の再発である帯状疱疹の発病を防ぐワクチンです。現在、帯状疱疹を予防するワクチンは2種あり、一つは水痘生ワクチン(小児用のワクチンを高齢者にも使用する)、もう一つはシングリックスです。
シングリックスは、水痘・帯状疱疹ウイルスの表面に豊富に存在するVZV糖タンパクE(gE)という成分のみを含む不活化ワクチンです。ASO1Bというアジュバンドで免疫効果を高めており、発症予防効果は90%といわれています。
しかし、50歳以上が接種対象となっており、小児科専門の当クリニックでは、シングリックスの接種は行っておりません。当クリニックは子どもは小児科専門医を受診することを強く推奨しておりますが、同様に高齢者用ワクチンは内科専門医が接種すべきと考えているからです。
●予防する病気
帯状疱疹は、過去に水痘(水ぼうそう)にかかった時、ヒトの体内に侵入し、神経に持続感染し潜伏していた水痘・帯状疱疹ウイルスが、再び活動を始め、皮膚にかなり痛みを伴う水疱を作る病気です。
からだの免疫が落ちてくる50歳代から発病し始め、80歳ごろまでには3人に1人は帯状疱疹になるといわれるほどの身近な病気です。しかも、皮膚の水疱病変が治った後も、10~20%の人は神経痛が続きし、後遺症に悩むというやっかいな病気です。まれですが、目や脳に合併症が生ずることもあります。
●接種の方法
0.5mlを通常2ヶ月の間隔で2回、上腕三頭筋に筋肉注射します。
50歳以上が接種対象となっており、小児科専門クリニックの当クリニックでは、シングリックスの接種は行っておりません。小児のワクチンを小児科で行うように、高齢者のワクチンは内科で接種するべきと当クリニックは考えます。
品川区は2023年4月から、50歳以上の区民にシングリックスか水痘ワクチン(帯状疱疹予防)の接種費用の助成を始めることになりました。(くわしくはこちら)
●予防接種の内容
狂犬病は発病すれば、ほぼ100%死亡しますが、発病するまでに2~3ヶ月の長い潜伏期があります。その潜伏期間中に予防接種で抗体を作れば、発症を防ぐことができます。そのため、狂犬病は治療はできないが、予防はできる病気、といわれています。
狂犬病ワクチン ラビピュールは、狂犬病ウイルス(Flury LEP株)をニワトリの培養細胞中で増殖させ、濃縮・精製した不活化ワクチンです。
●予防する病気
狂犬病ワクチンの接種は、狂犬病流行地に行く前に、感染予防のために行う「曝露前ワクチン接種」と、狂犬病に感染した動物に咬まれた後に発病予防を目的として行う「曝露後ワクチン接種」に分けられます。
●接種の方法
発病を予防するためには、1.0mlを1ヶ月の間隔で2回、さらに21~28日後に3回目を筋肉注射します。1回目(0日目)→2回目(7日目)→3回目(21日目又は28日目)
嚼まれたあと、発病を阻止するためには、まずなるべく早く1回目を接種し、さらに1回目接種の後、3日、7日、14日、28日の計5回、筋肉注射をします。
海外渡航の方が行う特殊なワクチンのため、当クリニックでは接種を行っておりません。