●マイコプラズマ肺炎の検査
①血清診断
血液検査では、寒冷凝集反応(単一血清では64倍以上、ペア血清では4倍以上)やマイコプラズマ抗体(PA)検査(単一血清では640倍以上、ペア血清では4倍以上)を行いますが、結果が出るまで数日かかるため早期診断はできません。しかも、2回採血し、抗体価の上昇を確認することが推奨されており、今日ではあまり行われなくなりました。
②遺伝子検出法(LAMP法、Loop-Mediated Isothermal Amplification法)
2011年10月から、マイコプラズマ核酸同定検査(LAMP法)がマイコプラズマ肺炎の診断に使用できることになりました。LAMP法によるマイコプラズマ核酸検出は、肺炎マイコプラズマに特異的なDNAを、直接検出する高感度な遺伝子検査で、感度や特異度が高く、マイコプラズマ肺炎の診断もっとも優れていると評価されています。
当クリニックも正確なマイコプラズマ肺炎の診断を行うために、この検査法を採用しています。(→LAMP法の原理)
LAMP法は、検査会社への外注のため、結果が出るのに数日かかることが最大にネックになっており、症状からマイコプラズマ肺炎を疑う場合は治療を始めながら、検査結果を待つことになります。
③イムノクロマト法
最近、マイコプラズマ感染症に対し、新しいイムノクロマト法の検査キットが相次いで発売されました。感度、特異度はLAMP法に及びませんが、15分で判定できることから、使用している医療機関もあるようです。
当クリニックは診断の正確性を重視しており、イムノクロマト法はLAMP法に感度、特異度ではるかに及ばないため、LAMP法を引き続き、使用しています。
プライムチェックマイコプラズマ抗原(アルフレッサファーマ)は特異度はよい(偽陽性が少ない)が、感度がLAMP法に比べて悪いようです(陽性率が低くなります)。
リボテストマイコプラズマ(旭化成)は感度はよいが、偽陽性が多く、特異度がよくないようです。
その他、プロラクトmyco(LSIメディエンス)、イムノエースマイコプラズマ(タウンズ)なども発売されています。
●マイコプラズマ肺炎の治療
マイコプラズマ病原体は、細胞壁を持たないため、ペニシリン系(パセトシン)やセフェム系抗生剤(メイアクト、フロモックス、トミロン、セフゾンなど)は全く効果がありません。マクロライド系抗生剤(エリスロマイシン、クラリス、ジスロマック)やテトラサイクリン系(ミノマイシン)は有効で、マイコプラズマ肺炎の発熱を2~3日で解熱させます。
有効な抗生剤を発病5日以内に飲み始めれば、症状を軽くすることができるので、マイコプラズマ肺炎をうたがい、正しい診断を行うことが大切です。
2010年ごろから、マクロライド系抗生剤(クラリス、ジスロマックなど)に耐性を示す、マクロライド耐性肺炎マイコプラズマ感染症が大幅に増えてきました。これは、クラリスなどマクロライド系抗生剤が乱用させたためです。従来、マクロライド系抗生剤を飲めば速やかに解熱しましたが、4日マクロライドを服薬してもよくならない場合、耐性マイコプラズマ肺炎感染症の可能性を疑います。
マクロライド耐性肺炎マイコプラズマ感染症の治療には、10歳以上ならミノマイシン、10歳未満ならトスフロキサシン(オゼックス)を投与します。
ミノマイシン(ミノサイクリン)はテトラサイクリン系の抗菌剤で、歯牙形成期にある8歳未満の小児が服用すると,歯牙の黄染やエナメル質形成不全、骨発育不全をおこす可能性があるため、9歳以下は原則投与をひかえます。10歳以上に使用する場合も、できるだけ短期投与にとどめることが推奨されています。(通常3~5日間)
マイコプラズマに対しては、良好な効果を示します。
オゼックス(トスフロキサシン)はニューキノロンという抗菌剤の仲間で、このグループは関節障害などの副作用を起こす可能性があるため、小児の適応はありませんでした。オゼックスは小児に投与することが認められた数少ないニューキノロン系の抗菌剤で、マイコプラズマ感染症にも効果を示します。
そのため、マクロライドが効果がない(マクロライド耐性)マイコプラズマ感染症で、ミノマイシンが使用できない10歳以下の小児に対して投与されます。しかし、ミノマイシンに比べて、マイコプラズマ感染症に対しての効果は強くありません。また、副作用(他のニューキノロン系に見られる関節障害、光線過敏症、けいれんなど)や耐性菌を誘導しないよう、やはり使用は短期にとどめることが推奨されています。
また、咳を鎮めるために鎮咳剤、痰を切るために去痰剤なども投与されます。
●マイコプラズマ肺炎の予防
予防方法は、特にありません。流行時はマスク、手洗いの励行が必要です。
●登校・登園基準
学校保健安全法では、第3種の「その他の感染症」に含まれます。
登校基準ははっきり定められていないため、熱が続いたり、咳がひどい間は自宅で安静にし、咳も落ち着き、熱が下がったら、登校も可と考えます。ただし、体育はしばらくお休みした方が良いでしょう。
6.結核
結核は全身の感染症ですが、肺病変が多いです。乳幼児は家族から移されることが多く、大部分は初感染結核になります。BCGの効果で死亡は少ないですが、結核は決して過去の病気ではなく、日本では毎年18,000人が新たに発病しています。
●結核の症状
潜伏期間は、2年以内、特に6ヶ月以内に発病することが多いようです。その一方で、結核感染後、数十年後に症状が出ることもあるようです。
感染経路は、患者からの空気感染(飛沫核感染)です。喀痰塗抹検査で陽性の患者は感染力が強いと言われています。
症状は肺結核の病巣が形成されると、慢性的な微熱、咳、疲れやすさ、食欲不振、顔色の悪さなどがみられるようになり、進行すると、発熱、寝汗、血痰、呼吸困難が出現します。
血液を介して結核菌が全身に広がる(粟粒結核)と、咳、呼吸困難、チアノーゼが見られるようになり、結核性髄膜炎を併発すれば、高熱、頭痛、嘔吐、けいれん、意識障害の症状が現れるようになります。
●結核の診断
結核の診断には、ツベルクリン反応やインターフェロンγ産生能試験(IGRA:Interferon Gamma Release Assay)を行います。IGRAにはクォンティフェロンとTスポットの2種の検査があります。
また、活動性結核の診断には、胸部X線や塗抹検査、培養検査、核酸増幅法検査などを行います。
●結核の予防
結核の予防には、BCGを接種します(BCGについては、こちら)。BCGは定期接種で、生後5ヶ月から生後8ヶ月の間に接種できます。
BCGは、結核性髄膜炎、粟粒結核など重い結核の、発病予防、重症化予防の効果が認められています。
●結核の治療
結核の治療には、抗結核薬を投与します。
●登校・登園基準
学校保健安全法では「第二種の感染症」、「保育所における感染症対策ガイドライン」では「医師が意見書を記入することが考えられる感染症」に分類され、登校・登園の目安は、「医師が感染のおそれがなくなったと認めるまで」とされています。異なった日に行った喀痰の塗抹検査で、3回連続して陰性であることが、目安とされています。
それ以降は抗結核薬による治療中でも登校、登園は可能です。