定期接種(幼児の定期接種) 2025.5.20更新
1.MR混合ワクチン
2.水痘ワクチン
3.日本脳炎ワクチン
1.麻疹風疹混合(MR混合)ワクチン
●予防接種の内容
MR混合ワクチンは、麻疹(はしか)生ワクチンと風疹(三日ばしか)生ワクチンが混ぜてある、混合ワクチンです。
●予防する病気
麻疹(はしか)は、麻疹ウイルスが原因でおこり、今でも発病すると障害が残ったり、命を落とす危険がある病気です。感染力はとても強く、自然感染すると10日間~2週間で発病します。
空気感染、飛沫感染、接触感染するために、同じ部屋にいるだけで免疫のない人は100%感染し発病します。
麻疹は最初かぜ症状で始まり、一度解熱してから再度高熱がぶり返し、急激に全身に発疹が広がります。
咳がひどくなり、目も赤くなり、唇も乾燥し、中耳炎や気管支炎、肺炎、脳炎なども合併し、お子さまはひどく苦しみます。失明したり、脳炎になり、後遺症が残ったり、死亡することもある、恐ろしい病気です。(→詳しくは麻疹をお読みください)
2025春、麻疹は全世界的に流行しています。現在、麻疹が根絶されたはずの我が国でも、たびたび外国から持ち込まれた輸入麻疹が発生しています(解説はこちら)。1歳を過ぎたら、なるべく早く、MRワクチン、水痘ワクチン、おたふくワクチンをセットで受けましょう。
風疹は、風疹ウイルスが原因で起こる病気です。
全身に細かい発疹が出て、発熱し、頸のリンパ節が腫れます。数千人に1人の割で、血小板減少性紫斑病や風疹脳炎を起こします。
また、免疫を持たない女性が妊娠初期に感染すると、「先天性風疹症候群」という心臓、脳、目に障害を持つ赤ちゃんが生まれる可能性があります。
風疹もたびたび流行を起こしており、2018-2019年にも流行がありました。(→詳しくは風疹をお読みください)
●接種の方法
MR1期では、1歳を過ぎたらなるべく早く(1~2歳。2歳の誕生日の前日まで)、上腕に1回、皮下注射を行います。
MR2期は、小学校に入学する1年前(前年4月1日から入学前日の3月31日まで)の5~6歳の時点で、もう一度、上腕に皮下注射を行います。
Q. 自然感染したほうが、免疫力が強いって本当?
はしかに限らず、どんな病気でも自然感染したほうが強い免疫力がつくに決まっています。もしも自然感染したのなら、もう予防接種は受ける意味がなくなってしまいます。Q. 予防接種をしてもかかることがあるって本当?
本当です。もともと水ぼうそうのワクチンは、病気にかかると重症になりやすい白血病や免疫不全の子どもたちのために、日本で開発されたワクチンです。そのため効き目が穏やかで、接種しても約20~50%は後に自然感染してしまいます。
そのため、短期間で免疫を高めるために、定期接種となるときに、1回接種後、半年後に、もう1度接種を行うことが決められました。2回接種によって、95%水痘の発病が防げると報告されています。
Q. いつごろ受ければいいの?
水ぼうそうは感染力が強い病気なので、1歳を過ぎたらなるべく早く、MRワクチンとの同時接種を行いましょう。さらに半年後に追加接種を行いましょう。
Q. 感染している子と接触。急いで接種しても間に合わない?
ウイルスと接触してから3日(72時間)以内なら、予防接種を急いで受ければ、発病を抑えられる可能性があります。発病を抑えられる確率は70~80%です。たとえ接種が間に合わずに発病したとしても、ワクチンを接種していれば軽く済むことが期待できます。
Q. 今、水ぼうそうが流行っていると聞いたけど?(2025年5月)
現在、品川区でも水痘が保育園、小学校で流行っています。現在流行している水痘は、ブレイクスルー水痘と呼ばれる、水痘ワクチンを2回受けているにもかかわらず、発病してしまう軽症水痘です。一般的には、水痘ワクチンを接種すれば水痘にはかかりませんが、時に軽い症状で発症するケースもあります。しかし、症状は軽症ですが、感染力はあるので注意が必要です。
2025年5月現在、このブレイクスルー水痘を発病する子どもが増えてきました。お隣の埼玉県では、水痘流行注意報が発出されています。
ブレイクスルー水痘の症状は、発疹の数や水疱の大きさも小さく、熱も出ない人が多いです。また、発疹がかさぶたになる、消失するまでの期間がワクチン未接種の水痘に比べて短く、学校への登校停止も短期間で済むことが多いです。
水痘ワクチンは、水痘の発症を予防する効果が高いですが、ブレイクスルー水痘の発病も起こりえます。現在、ブレイクスルー水痘が年長児で流行しているのは、やはり2回接種のワクチンの効果が落ちてきた時期に、水痘-帯状疱疹ウイルスに感染する機会が増えたため、発病していると考えられます。
しかしブレイクスルー水痘は軽症であり、ワクチン未接種の水痘とは比べものになりません。今、ブレイクスルー水痘が流行っているからこそ、1歳児の水痘ワクチン接種は必要です。
Q.流行していないと思うけれど、受けたほうがいいの?
たしかに現在わが国では流行は見られませんが、毎年10人近くの患者が発生しています。また、豚は広範に日本脳炎ウィルスに感染していることが毎年発表されています。
さらに東南アジア、中国、インドでは現在でも流行が続いています。
万が一発病すると後遺症が残る、重い病気ですから、接種を強くお勧めします。
2015年8月、千葉県で0歳児が日本脳炎を発症しました。日本脳炎はまだまだ過去の病気ではありません。
Q.何歳ごろ受ければいいの?
定期接種として生後6ヵ月から受けられますが、流行の中心となる地域以外では、3歳から始める自治体が多いようです。
3歳からが標準接種年齢とされていますが、この年齢設定に医学的根拠はありません。したがって、当クリニックは、希望者には生後6か月から接種を行っています。
Q.20歳まで無料で受けられると聞いたんだけど?
平成17(2005)年5月、それまで定期接種として行われていた日本脳炎ワクチンが、ADEM(急性散在性脳脊髄炎)との関連が疑われるとして積極的な勧奨が中止され、それ以降は希望者のみが接種を受けるという変則的な状態が長く続きました。(詳しい経緯はこちら)
平成22(2010)年4月より、日本脳炎ワクチンの接種勧奨は再開されましたが、この時期に接種できなかった接種対象者が多数取り残されているため、特例処置として、平成10(1998)年4月2日から平成19(2007)年4月1日生まれの方は、20歳の前日まで必要な回数を全額公費で(自己負担なく)接種できることになりました。
また、平成19(2007)年4月2日から平成21(2009)年10月1日生まれの方で、日本脳炎1期の打ちそびれがある場合、9歳から13歳の誕生日の前日まで、1期の未接種分を全額公費で(自己負担なく)接種できます。
以下に具体的に示します。
全く接種を受けていない場合
20歳になるまでに、1回目(第1期初回1回目)と2回目(第1期初回2回目)を6日以上、標準的には6日から28日まの間隔をあけて接種します。そして、3回目(第1期追加接種)は2回目接種後、6か月以上、標準的にはおおむね1年度経過した時期に1回接種をします。
4回目(第2期相当)は3回目接種終了後、6日以上の間隔をあけて1回接種して終了します。
1回だけ接種を受けている場合(第1期初回接種1回目のみ接種)
20歳になるまでに、2回目(第1期初回2回目)と3回目(第1期追加)を6日間以上の間隔をあけて接種します。4回目の接種(第2期)は3回目の接種の終了後、6日以上の間隔をあけて接種して終了します。
2回の接種を受けている場合(第1期初回接種1回目と2回目を接種)
20歳になるまでに、3回目(第1期追加)の接種を接種したのち、6日以上の間隔をおいて4回目(第2期)の接種をします。
3回の接種を受けている場合(第1期接種が終了)
20歳になるまでに、3回目の接種から6日以上の間隔をおいて、4回目(第2期)を1回接種して終了となります。