定期接種(幼児の定期接種) 2024.8.1更新
1.MRワクチン
2.水痘ワクチン
3.日本脳炎ワクチン
1.麻疹風疹混合(MR混合)ワクチン
●予防接種の内容
MR混合ワクチンは、はしか(麻疹)と風疹を予防する生ワクチンです。
MR1期は、1歳から2歳の間が接種期間ですが、1歳になったら速やかに接種することが強く勧められています。MR2期は、小学校入学前の1年間(5~6歳)に、麻疹、風疹の抗体を高めるために追加接種を行います。
●予防する病気
麻疹(はしか)は、麻疹ウイルスが原因でおこり、今でも発病すると障害が残ったり命を落とす危険がある病気です。感染力はとても強く、自然感染すると10日間~2週間で発病します。
空気感染、飛沫感染、接触感染するために、同じ部屋にいるだけで免疫のない人は100%感染し、発病します。
麻疹は最初かぜ症状で始まり、一度解熱してから再度高熱がぶり返し、急激に全身に発疹が広がります。
せきがひどくなり、目も赤くなり、唇も乾燥し、中耳炎や気管支炎、肺炎、脳炎なども合併し、お子さまはひどく苦しみます。失明したり、脳炎になり、後遺症が残ったり、死亡することもある、決して侮れない、恐ろしい病気です。(→詳しくは麻疹をお読みください)
風疹は、風疹ウイルスが原因で起こる病気です。
全身に細かい発疹が出て、発熱し、頸のリンパ節が腫れます。数千人に1人の割で、血小板減少性紫斑病や風疹脳炎を起こします。
また、免疫を持たない女性が妊娠初期に感染すると、「先天性風疹症候群」という心臓、脳、目に障害を持つ赤ちゃんが生まれる可能性があります。
風疹もたびたび流行を起こしており、2018-2019年にも流行がありました。(→詳しくは風疹お読みください)
2012年~2013年、東京都では風疹が大流行しました。そのため、品川区では、妊婦の夫、妊娠を希望される女性に、MRワクチンの接種費用の全額補助を行なっています。(くわしくはこちらの品川区のお知らせを参照してください。)
2019年4月、成人男性の風疹感受性者を減らすために、風しん5期定期接種が始まりました。(品川区風しん第5期定期接種のお知らせ)来年2025年3月31日まで延長されています。
●接種の方法
定期接種では、1歳を過ぎたらなるべき早く(1~2歳)、上腕に1回、皮下注射を行います(MR1期)。
小学校に入学する1年前(前年4月1日から入学前日の3月31日まで)の5~6歳の時点で、もう一度、上腕に皮下注射を行います(MR2期)。
Q. 自然感染したほうが、免疫力が強いって本当?
はしかに限らず、どんな病気でも自然感染したほうが強い免疫力がつくに決まっています。もしも自然感染したのなら、もう予防接種は受ける意味がなくなってしまいます。
もともと予防接種のある病気は、障害が残ったり、死亡することのある恐ろしい病気ばかりです。だからこそ、自然に感染しないで免疫がつくように予防接種が開発されてきたのです。
ときどき「自然にかかったほうが本当の免疫がつくから、わざとかからせた。」などと平然と言う親がいるようです。病気に無知な愚かなふるまいで、お子さまがかわいそうです。
自然にかかったほうが免疫力が強く残るのは、それだけお子さまが苦しく、つらい体験をした代償なのです。
場合によっては肺炎、脳炎を起こしたり、SSPE(亜急性硬化性全脳炎。麻疹を発病した後、だんだん知能が障害されていき、最後は死亡する。治療法はない)のような怖ろしい後遺症を、後に発病することもあるのです(→麻疹)。
「自然に感染する」ということは、最も毒性の強い、「副作用」もケタはずれの危険な「天然ワクチン」を接種することなのです。
予防接種は最も安全に、効果的にお子さまを守る行為なのです。
Q. 接種後、熱や発疹が出るって本当?
MR混合ワクチンは、弱毒化した麻疹、風疹ウイルスに赤ちゃんを軽く感染させて抗体を作るものです。そのため、10人に1人ぐらいの割合で、接種してから7~10日目ごろに微熱や発疹など軽いはしかや風疹の症状が出ることがあります。
接種2~3日後に発熱したのなら、ワクチンの副反応ではなく、かぜなどの病気の紛れ込みを考えるべきです。心配なら、当クリニックに相談と診察にいらしてください。
Q. 卵アレルギーがあると受けられない?
現在のMR混合ワクチンのうち、弱毒生麻疹ウイルスはニワトリの肧培養細胞で、弱毒生風疹ウイルスはウズラの胚培養細胞かウサギ腎培養細胞で増やすため、これらの成分が極めて微量混入している可能性はあります。
しかし、高度に精製されているため、卵アレルギーがあっても、全く問題はありません。
卵アレルギーのある人がワクチン接種を行う場合、配慮しなければならないのは、インフルエンザ不活化ワクチン接種のみです。
Q. 赤ちゃんが接種したら、風疹にかかったことのないママにうつる?
MR混合ワクチン中の弱毒風疹ウイルスが、接種した人からほかの人へうつることはありません。たとえ次の子を妊娠していたとしても、接種した赤ちゃんからうつる心配はありません。
逆に、もしもお母さまやほかの家族がまだ風疹ワクチンを接種していないなら、流行による自然感染のほうが圧倒的に心配です。お母さまが妊娠中でなければ、この機会に抗体を調べて、ほかの家族や赤ちゃんといっしょに、ご自分も予防接種を受けましょう。
Q. 1歳前の赤ちゃんにMRワクチンは接種できますか?
生後6か月から接種は可能で、1歳までは任意接種となり、接種費用がかかります。
ただし、緊急接種は大流行時以外は必要性が低いため、1歳過ぎてから定期接種としてMRワクチンを受けましょう。
もしも、乳児期に緊急接種を行った場合は、免疫の獲得が不十分な可能性もあり、1歳過ぎに通常通りのスケジュール通り、再度MRワクチンを接種します。
具体的な接種のご相談は、来院して鈴木院長とご相談ください。(電話での相談は行っておりません)
Q. 男性も風疹ワクチン(MRワクチン)を接種した方が良いですか?また、接種後、男性も避妊したほうがよいですか?
風疹は少ないながらも、脳炎や全身に出血斑の現れる血小板減少性紫斑病を起こすことがあります。
しかし、何よりも、家族や周囲の妊娠している女性に、風疹を感染させてしまう可能性があります。
20~40台の男性は麻疹、風疹の抗体を持っていない人が少なくないためため、麻疹、風疹の流行が起これば真っ先に感染し、流行の中心になってきました。
自らを守り、妻や家族を守り、将来の子どもたちを先天性風疹症候群から守るために、積極的に風しん第5期接種を行いましょう。(2025年3月31日まで延長されました。)また、品川区の先天性風疹対策事業もご利用されるとよいでしょう。
また、風疹ワクチンウイルスが精子で確認されたことはなく、配偶者に感染させたという報告もないことから、避妊は必要ありません。
2.水痘(水ぼうそう)ワクチン
●予防接種の内容
水ぼうそうを防ぐ生ワクチンです。定期接種として、1歳から受けられます。
1回接種では発病してしまう人が少なくないため(有効率50~80%ぐらい)、3ヵ月以上あけて、2回めの接種を行います。
当クリニックは、1歳時にMR、水痘、おたふくの同時接種、1歳半に水痘、五種混合ワクチンの同時接種をお勧めしています。
●予防する病気
水ぼうそう(水痘)は、水痘・帯状疱疹ウイルスに感染して、強いかゆみを伴う水疱が全身にできる病気です。 最初は小さな赤い発疹ですが、まもなく水疱になり、全身に広がり、かゆみを伴います。その後、かさぶたになります。
水痘の特徴は全身中に発疹、水疱、かさぶたが広がり、混在することです。症状がなくなった後も、水痘・帯状疱疹ウイルスはヒトの神経節に潜んで持続感染を続け、体力が落ちた時、非常に痛い帯状疱疹として再発します。(詳しくは、水痘をお読みください)
水痘ワクチンは2016年(平成26年)3月から、50歳以上の高齢者に帯状疱疹予防ワクチンとして接種できることになりました。接種すると、50~69歳で約90%、70歳台で約85%に水痘・帯状疱疹ウイルスに対する細胞性免疫の上昇が認められると報告されています。(国立感症研究所の帯状疱疹ワクチンの説明はこちら)
また、シングリックスという帯状疱疹用の不活化ワクチンも2020年に発売になりました。
●接種の方法
上腕に1回皮下注射を行います。3ヵ月以上あけて、1歳半に2回目の追加接種を行います。
水痘ワクチンは、2014年10月より、定期接種として、2回接種が行われることになりました。
Q. 予防接種をしてもかかることがあるって本当?
本当です。もともと水ぼうそうのワクチンは、病気にかかると重症になりやすい白血病や免疫不全の子どもたちのために、日本で開発されたワクチンです。そのため効き目が穏やかで、接種しても約20~50%は後に自然感染してしまいます。
そのため、短期間で免疫を高めるために、定期接種となるときに、1回接種後、半年後に、もう1度接種を行うことが決められました。2回接種によって、95%水痘の発病が防げると報告されています。
Q. いつごろ受ければいいの?
水ぼうそうは感染力が強い病気なので、1歳を過ぎたらなるべく早く、MRワクチンとの同時接種を行いましょう。さらに半年後に五種混合ワクチンと同時に追加接種を行いましょう。
Q. 感染している子と接触。急いで接種しても間に合わない?
ウイルスと接触してから3日(72時間)以内なら、予防接種を急いで受ければ、発病を抑えられる可能性があります。発病を抑えられる確率は70~80%です。たとえ接種が間に合わずに発病したとしても、ワクチンを接種していれば軽く済むことが期待できます。
3.日本脳炎ワクチン
●予防接種の内容
日本脳炎を予防する不活化ワクチンで、生後6ヵ月から受けられる定期接種です。標準的な接種年齢は、3歳からとされています。
●予防する病気
日本脳炎は、日本脳炎ウイルスに感染している豚から吸血して日本脳炎ウイルスを持ったコガタアカイエカに刺された人が発病します。
40℃以上の高熱、嘔吐、頭痛、けいれん、意識障害を起こす重い病気です。発病した半数以上の人が、死亡したり、後遺症が残したりしています。(日本脳炎はこちらを参照ください)
●接種の方法
まず、1~4週(6~28日)間隔で2回、上腕に皮下注射を行います(1期初回)。
その1年後に、抗体を高めるため、追加接種として1回皮下注射を行います(1期追加)。
さらに5年後にもう一度、追加接種として、皮下注射を行います(2期)。
Q.流行していないと思うけれど、受けたほうがいいの?
たしかに現在わが国では流行は見られませんが、毎年10人近くの患者が発生しています。
また、豚は広範に日本脳炎ウィルスに感染していることが明らかにされています。
さらに東南アジア、中国、インドでは現在でも流行が続いています。
かかると後遺症が残る、重い病気ですから、接種を強くお勧めしておきます。
2015年8月、千葉県で0歳児が日本脳炎を発症しました。日本脳炎はまだまだ過去の病気ではありません。
Q.何歳ごろ受ければいいの?
定期接種で生後6ヵ月から受けられますが、流行の中心となる地域以外では、3歳から始める自治体が多いようです。
3歳からが標準接種年齢とされていますが、この年齢設定に医学的根拠はありません。したがって、当クリニックは、希望者には生後6か月から接種を行っています。
Q.20歳まで無料で受けられると聞いたんだけど?
平成17(2005)年5月、それまで定期接種として行われていた日本脳炎ワクチンが、ADEM(急性散在性脳脊髄炎)との関連が疑われるとして積極的な勧奨が中止され、それ以降は希望者のみが接種を受けるという変則的な状態が長く続きました。(詳しい経緯はこちら)
平成22(2010)年4月より、日本脳炎ワクチンの接種勧奨は再開されましたが、この時期に接種できなかった接種対象者が多数取り残されているため、特例処置として、平成10(1998)年4月2日から平成19(2007)年4月1日生まれの方は、20歳の前日までは必要な回数を全額公費で(自己負担なく)接種できます。
また、平成19(2007)年4月2日から平成21(2009)年10月1日生まれの方で、日本脳炎1期の打ちそびれがある場合、9歳から13歳の誕生日の前日まで、1期の未接種分を全額公費で(自己負担なく)接種できます。
具体的に示します。
全く接種を受けていない場合
20歳になるまでに、1回目(第1期初回1回目)と2回目(第1期初回2回目)を6日以上、標準的には6日から28日まの間隔をあけて接種します。そして、3回目(第1期追加接種)は2回目接種後、6か月以上、標準的にはおおむね1年度経過した時期に1回接種をします。
4回目(第2期相当)は3回目接種終了後、6日以上の間隔をあけて1回接種して終了します。
1回だけ接種を受けている場合(第1期初回接種1回目のみ接種)
20歳になるまでに、2回目(第1期初回2回目)と3回目(第1期追加)を6日間以上の間隔をあけて接種します。4回目の接種(第2期)は3回目の接種の終了後、6日以上の間隔をあけて接種して終了します。
2回の接種を受けている場合(第1期初回接種1回目と2回目を接種)
20歳になるまでに、3回目(第1期追加)の接種を接種したのち、6日以上の間隔をおいて4回目(第2期)の接種をします。
3回の接種を受けている場合(第1期接種が終了)
20歳になるまでに、3回目の接種から6日以上の間隔をおいて、4回目(第2期)を1回接種して終了となります。